俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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杞憂に非ず ③

「ろ、ロウゼキさん! 大丈夫かな、3人とも……」

 

「気にするのは後にしとき、足止めると命にかかわるで!」

 

ロウゼキさんが蹴散らした道を追い、戦場と化した東京からの逃走を図る。

友達(ネロぴ)たちの事が気にならないと言えば嘘になる、しかし自分が戻ったところでどうにもならない。

魔力の圧が違う、もはや私の魔力耐性なんて誤差に等しい。 あの場に一秒でもとどまれば即死だ。

 

「そろそろ壁に届くさかい、足止めずに――――」

 

「……? ロウゼキさん、どうかし……ぴえぇー!?」

 

“天の壁”、内部に満ちる魔力ごと東京を囲い込む始まりの十人の絶技だ。

この壁を突き破れば逃げ切りは近い、というのに突如ロウゼキさんの足が止まる。

理由はすぐにわかった、壁の前には振り切ったはずのンロギと呼ばれた魔法少女が立っていたのだから。

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

「ひぃふぅみぃ……あかん、分からんわ。 何人姉妹なん?」

 

「「「「「さあてねぇ? 少なくともここにいるのは10や20じゃ利かないだろ」」」」」

 

壁の前に並んだ魔法少女、魔法少女、そして魔法少女。 そして全員が同じ背丈で同じ顔で同じ声で同じ所作。

壁の前には何人ものンロギが並び、私達の逃げ道を塞いでいた。

 

「……本体ほどの力は感じへんわ、ブルームはんと同じような分身?」

 

「へぇ、分かる? ただ油断しないほうが良い、なにせ数が数だからな」

 

ニヤニヤと笑いながらもンロギの数は次々に増えていくように見える、その複製と増殖は留まるところを知らない。

すでに天の壁への進路は断たれ、いつの間にか私たちの背後までコピぺされたンロギたちが回り込んでいいる。 進退窮まり、完全に囲まれてしまった。

 

「そのちっせぇ箱置いていけば見逃してやるよ、自分の命は可愛いもんだろ?」

 

「……ま、マジ? マジで見逃してくれるの?」

 

「僕だってさぁ、人殺したいわけじゃないんだからな。 目的の邪魔しなきゃお前らなんてどうでもいいんだよ」

 

もはや数えるのも嫌になるほど増殖した人の山、いくらロウゼキさんとはいえこの数を相手に絶対勝てるとは言い切れない。

だがこのスイッチを手放せば少なくとも命は助かる、ならば答えは簡単だ。

 

「ぜ、絶対イヤ……!」

 

「…………はぁ?」

 

「これはうちの友達が命懸けで回収してくれたもんだし! なら、うちだって命張って守らなきゃ顔向けできないじゃん!!」

 

ミミズに食われずに残ったスイッチをありったけ取り出して構える、とはいえその数は4つしかないが。

私だって魔法少女だ、守られてばかりじゃない。 戦う勇気も、死ぬ覚悟もある。

 

「ふふっ、よう言うたわ。 てなわけで、生憎交渉は決裂やな?」

 

「……あぁそうかよ、ボケどもが。 じゃあゴミみてぇに死ねよお前」

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

「ああ――――もう、鬱陶しいんだよ石ころ共!!」

 

「くっ……!!」

 

地中から隆起した刃の山を躱しながら、距離を取ろうとするンロギを追う。

一秒一秒の感覚が長い、未来視や目前の情報が交錯して脳が焼ける。 

常に分岐する未来から正しいと思う道を選び続けても、奴の首に手が届かない状況が続いている。

 

《マスター、突出し過ぎです! 妹ちゃんと距離が離れてます!》

 

「っ……クソッ、流石に魔力の扱いは向こうが上か!」

 

戦闘が始まってまだ30秒も過ぎていないだろうが、それでも理解できる。 ンロギの能力は自分とほぼ同等かそれ以上だ。

基本となる魔力の無限運用、そして異常な肉体再生、武装の生成、そして少なくとも未来視は可能だと思われる。

ただ賢者の石を扱う“年季”が違う。 一動作や刹那の選択、そして細かい魔力の活用から生まれる差を縮めることができず、今一攻めきれない。

 

「ちまっちま鬱陶しいんだよクソが! なんで分かんねぇかな、千日手なんだよお前らはさぁ!!」

 

刃の山から引き抜き、投げつけた一本がンロギの肩を貫く……が、その傷は瞬く間に消えてしまう。

わざと攻撃を受けたのだろう、ほぼ不死に近い再生能力を見せつけるために。

 

「互いの実力は分かってんだろ? お前らに僕を殺す手段があるのかよ、なぁ?」

 

「耳を貸しちゃ駄目だよお兄ちゃん、倒せなくても拘束は出来るんだ」

 

「ああ、凍結さえ効けば対処法はある。 それに攻撃が効かないのはお互い様―――」

 

「――――なんだ、()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

愚かなものを見る様にンロギの口角が上がる。 

上空から俺たちを見下すその眼には、確かな哀れみも含まれていた。

 

「なら教えてやるかぁ、おいネロ」

 

「っ……」

 

戦闘の渦中から逃れた位置で、ただ座り込むまま動けないでいたネロの肩がビクリと震える。

 

「来いよ、使()()()()()。 なんのためにお前を作ったと思ってやがる」

 

「……わ、分かったわ。 私は……完璧だもの、ね」

 

ンロギが取り出したのは、変身時にも使用していたスマホによく似た黒色の板だ。

そしてネロへ向けて画面を見せるように構え、画面をタップした途端、ネロの姿は光の粒子になって画面の中へ吸い込まれた。

 

《ふぇっ!? まさか……!?》 

 

「不完全な石ころ共に僕が教えてやるよ――――本物の使い方って奴をな」

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