俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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杞憂に非ず ⑦

《マスター……マスタァ……! 生きてますか……!?》

 

「…………なんとか、な……っ」

 

一瞬意識が飛んでいた意識が相棒の声に起こされる。

思うように行使できない魔力を何とかかき集めながら、胴体に風穴が開いた体を無理矢理動かす。

やはり再生は上手く働かないが、能力そのものを失ったわけじゃない。 こんな死体同然の身体で動けるのは幸運かは分からないが。

 

「気を付けろよ、今のお前らは賢者の石の加護も無くぽっくり死んじまうかもしれないんだからなぁ」

 

「はっ、わざわざ忠告なんてお優しいことで……」

 

「バカかよ、なんで殺さないか分かってないのか? お前らが無駄に足掻くほど魔力を放出してくれるからだよ」

 

無駄ななんてやってみなきゃわからない……なんて強がりも言える状態じゃない。

ボイジャーたちを逃がしてからまだ1分も過ぎていない、だがそれだけでもンロギが俺たちを痛めつけるには十分な時間だった。

魔力という武器を奪われ、2人揃って何の抵抗も出来ずに蹂躙。 ロウゼキに大口を叩いておいて不甲斐ない様だ。

 

「ほら、頑張って一矢報いて見ろよ僕に。 それともそろそろ首を撥ねられるか?」

 

「ぅ……ぁ……!」

 

うめき声を上げるスノーフレイクの頭を踏みつけながら、ンロギが切っ先のない独特な形状の剣を振り回す。

処刑人(エクスキューソナー)の剣(ソード)、これ見よがしにスノーフレイクの首筋へ押し付けられたそれは、断頭には最も都合のいい武器だ。

 

「……なんだよ、他人のふんどし巻いて随分と上機嫌だな」

 

「――――はぁ?」

 

「アンチ賢者の石ってのもネロの力だろ、お前はただ人の力を借り――――っ!!」

 

チリチリと空気が焦げ付くような感覚が肌を指し、反射的に上体を逸らす。

そしてコンマ数秒の差で先ほどまで俺の頭があった空間は、眩い閃光と共に爆ぜた。

 

「……バカかよ、お前はさぁ。 僕がッ! このネロを創ったんだ!! 道具の功績は、制作者の功績だろうが!!」

 

《マスター、何煽ってんですか!? 確かに妹ちゃんから意識は逸れましたけどこっちがピンチですよ!》

 

「問題ねえよ……! ハク、アレいくぞ!」

 

《アレって……ああ、もう!》

 

ンロギがこちらに向けて手をかざした瞬間、周囲の気温が急激に上昇する。

今度は全方位逃げ場のない空間爆破、防御する暇もなく幾重もの爆炎が視界を埋め尽くした。

 

「直撃だな、骨まで灼けて死ね」

 

「お兄ちゃ……!!」

 

「――――この程度の火遊びで勝利宣言は速いだろ」

 

「……!?」

 

()()()()―――――灼火体へと降格します≫

 

慢心した懐へ飛び込み、振り抜いた拳はンロギの腹に深く沈み込む。

ここにきてようやくの命中、よっぽど油断していたのかろくな防御もない。

 

「か――――……っ!?」

 

「お望み通り一矢報いてやった……ぜッ!!」

 

返す刀で振り抜いた拳はンロギのこめかみを正確にとらえ、派手な装飾が纏わりついた体が大きく吹き飛ばされる。

流石に二度目は反応されたか、魔力防御も合わされて距離を取られた。

 

「クソ、が……! テメェ、石ころの分際で……! 何だその姿は!!」

 

「灼火体って呼ばれてるよ、思った通りこっちの方がまだ動きやすい」

 

賢者の石の出力を落とすことで、ネロによる影響は免れることは出来た。

だがそれでも完全に逃れられたわけではない、体感だが灼火体でも7割ぐらいまで出力が落ちている。

最初の一発も相手の油断によるところが大きい、正真正銘ラッキーパンチだ。

 

「……ああクソ、クソクソクソクソクソクソクソ……!! 腹が立つなぁ、テメェはよく僕を腹立たせる!!」

 

「むかっ腹立ってんのはこっちもだよ、お前が居なけりゃこの世界は何も変わらなかった」

 

「変化を止めた先にあるのは死だ! 僕はただ、この世界に新たな進化の道を敷いただけだろうがよぉ!!」

 

「お前が持ち込んだのはただの劇薬だ、お前の目指す変化の先にいくつの犠牲があると思ってんだ!」

 

「今さら1個2個犠牲が増えても変わらないんだよ!! 最後に魔力を御した時、その世界で! 僕が讃えられればそれで良いッ!!」

 

「……ああ、そうかよ」

 

「ああ、そうだよ……」

 

「「――――だったらテメェが死にやがれ!!!」」

 

拳と拳が激突し、肉が裂けて骨が折れる。

やはり純粋なパワー勝負ではこちらの分が悪い、それでも背後のスノーフレイクが立て直すまでこの場は引けない。

 

「僕より弱いくせにしぶといなぁ! お前みたいな石ころが塞いでいい道じゃないんだよ!!」

 

「お前こそ! お前みたいな独り善がりが潰して良い世界なんかじゃないッ!!」

 

「ヒーロー気取りかよ、鬱陶し――――」

 

――――突然、ンロギの動きがピタリと止まった。

当然隙だらけな顔面に俺の拳が直撃するが、馬鹿げた魔力の壁に阻まれてビクともしない。

俺の攻撃を羽虫ほども気にせず、ンロギの顔はボイジャーたちが逃げた方へと向けられていた。

 

「……へぇ、なかなか面白い魔法だな。 ()()()()()()()()()

 

「なに……? お前、ボイジャーたちに何をした!?」

 

「囀るんじゃねえよ雑魚が。 ……うん、そうだな。 決めたよ」

 

狡猾な笑みを浮かべながら、ンロギが指を鳴らす。 

その音に乗せて微かな魔力が拡散された気がするが、俺たちの身体には何も起きていない。

 

「お前は絶望の中で勝手に死ね、石ころ」

 

「お前、今――――」

 

「――――お兄ちゃん、上……!」

 

スノーフレイクが唖然とした顔で東京の空を見上げている。

いや、正確には空ではなく東京の天を貫く壁を見つめているようだ。

 

「……さて、この街の魔力が外に溢れたら世界はどうなっちまうんだろうな?」

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