俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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勝利のための方程式 ⑥

《うーん、縁は結びましたけどこれで大丈夫でしょうか……》

 

電脳空間を彷徨いながら、赤い糸が結ばれた人差し指を見つめる。

“縁結びの魔法”に失敗はない、少なくとも過去の実例がそれを証明している。

だが問題は時間だ、私とネロちゃんが巡り合うのは確実だが、ンロギとの再戦に間に合わなければ意味がない。

 

《最悪のパターンは再戦の時に縁結びが果たされるという……っと、ここも行き止まりですか》

 

大気中に拡散した魔力による電波障害、それは電脳空間を泳ぐ私にとって行く手を塞ぐ壁となって立ちふさがる。

Wi-fiが届かない空間には進めない、東京を離れてからしばしば直面する行き止まりだ。

 

《しかし、なんというか……露骨に()()()()()気がしますね》

 

閉じ込められないように迂回しながら、思考を巡らせる。

別に電波障害自体は珍しくはない。 魔力と科学の相性は悪いため、電子機器が障害を起こしているだけだ。

だが、出会う頻度は縁結びを受けてから目に見えて増えた。

 

《これは誘導されている、と考えてよろしいんですかね……》

 

壁に阻まれながらも進む道は、なんとなく道しるべのように思える。

ネロちゃんとの距離を手繰り寄せているかのように、行き止まりに当たろうと私の歩みはいたってスムーズだ。

間違いなく前に進んでいる手ごたえは感じる、ならばあとは縁を信じて進むだけだ。

 

《待っててくださいよネロちゃん、すぐに見つけてみせますからね!》

 

「――――うっぎゃあああぁぁぁぁぁぁ………………」

 

《…………ん?》

 

何だか今、聞き覚えのある声が聞こえたような。

 

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

「なんで……なんでヴィーラがいるんだヨ!?」

 

「ははは、作った」

 

「止めろし、人を物みたいにさぁ……」

 

ヴィーラ、かつて魔法少女事変の際に魔女たちのリーダーとして立ちふさがった強敵――――そして、今目の前にいる少女の名だ。

だがありえない、魔女たちはローレルが生成した特殊な錠剤で変身を可能としていたはず。

製造元が消えた今、魔女たちが変身する手段は……

 

「まさか、ドクター……作ったってそういうことカナ!?」

 

「ああ、元々ローレルとは協力関係にあったんだ。 廉価版だが錠剤の生成に成功したよ、時間と労力はかなり費やしたけどね……あふぁ」

 

大きなあくびを立てるドクターの顔には、確かに疲労が色濃く見える。

3人で分担していた私達とは違い、ほぼ徹夜で錠剤の生成にいそしんでいたのだろうか。

確かに今は日本各地で魔物に対処する手が足りていない、だが……

 

「でもドクター、元から難航していた薬がそう何錠も生み出せるわけないよネ?」

 

「ああ、大丈夫だよ。 その点は前々から研究し……て……」

 

「へー、壁が崩壊する前から? 魔女薬の研究を? 不思議だネー」

 

「………………ヴィーラ、フォローを頼みたい」

 

「はっ、自業自得じゃん。 ウケる」

 

やはり、徹夜したにしてもあまりに手回しが早すぎると思った。

下手をすればローレルとの共同前線を張っていたころから研究していたのか、多くの悲劇を生み出したこの薬を。

 

「待て、確かに黙って秘密裏に研究を進めていたのは謝るよ。 だが悪用しようとしていたわけじゃない、賭けてもいい」

 

「ま、そこは信用しておくヨ。 ただ、黙っていた方がサムライガールたちも怒るんじゃないかな?」

 

「……そこは、まあ……反省している。 言い出す勇気がなかった」

 

「ヤバ、ヤブ医者のしょぼくれ顔初めて見たわ。 写真撮っていい?」

 

「で、なんでヴィーラは協力してくれてるのカナ。 知ってるとは思うけどサ、遊びじゃないんだヨ?」

 

贋作である魔女の基本性能は真作の魔法少女よりも劣る、それでもヴィーラなら大抵の魔物も倒せるだろう。

だが魔物相手に“絶対”はない、命を落とすようなリスクはどこまでも付きまとう。

それは彼女も知っているはずだ、なのにわざわざ命を捨てて戦うような真似を、何故?

 

「はんっ、知ってるっての。 ただ地元がこんな滅茶苦茶にされてさ、アンタなら黙って見てられるの?」

 

「それは……そうだけどサ」

 

「まあ正直、このヤブ医者はまだ全っ然許してないけど? 今日も半分拉致られたようなもんだし?」

 

「でも変身したのはちゃんと君の合意だ、契約書のサインも書いたじゃないか」

 

「それがなんか悪質だって言ってんの! ……けど、自分も人のこと言える義理じゃないし、これもちょっとは罪滅ぼしになるっしょ」

 

「……ヴィーラ」

 

そうだ、思えば魔女は皆何かを抱えて敵対していた者ばかり。

魔法少女事変が解決したとしても、心に残った罪の棘が抜けるわけじゃない。

 

「しかも3人だけでこの街護れとか無茶苦茶じゃん! どの道いつか潰れるだろうし任せてばかりじゃ駄目だし、魔法少女は助け合いっしょ!」

 

「なるほどネ、理由は分かったヨ。 前は敵だったけど、今回は安心して背中任せられるカナ」

 

「うっし、そうと決まれば早速行動! ヤブ医者、アンタはアンタで自分の仕事―――――」

 

「―――――あああああああぁぁあぁぁぁぁぁぁ…………!!!」

 

「………………うん?」

 

ヴィーラの話を遮り、上空を巨大な影が通り過ぎていく。

それは翼を大きく広げた巨大なワシ型の魔物の影だ、そしてよく見ればもう一人。

鉄板すら容易く切り裂けそうなほど鋭いワシ爪の先端に――――涙目で絶叫する、ハクとよく似た顔の少女がぶら下がっていた。

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