俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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勝利のための方程式 ⑦

「あああああぁぁぁあぁぁあ!! なんなのよ一体ー!!」

 

運が悪い、なんてレベルじゃない偶然の連続だ。

まず倉庫から抜け出して、ひとまず隠れたコンテナがトラックに積み込まれ、事故で横転した荷台からコンテナごと投げ出され、何とか扉を開けると今度はワシのような魔物に掻っ攫われて空の旅だ。

気づけば大鷲は見覚えのあるハイウェイを通り過ぎ、忌々しい記憶しかない街の中へと侵入している。

 

「なんでよりにもよってここ通ってんのよー! こら、降ろしなさいバカ!!」

 

『ピエェー!!!』

 

「ピエーじゃないのよピエーじゃ!! ほんっとにいい加減にしないと黄金の拳が火を噴くわよ!!」

 

いい加減寒空に晒され過ぎて(かじか)んだ拳を握り、いざ必殺のネロパンチを繰り出すその寸前、大きな衝撃と共に大鷲の身体が揺れる。

 

「おわーっ!? あっぶな! ちょっと今度は何よ一体!?」

 

『ぴょ、ぴょえ……』

 

大鷲の頭には、強引に千切ったような断面の鉄塔が直撃していた。

脳を揺らされたのか、大鷲の高度はみるみる下がっていく。 ほとんど墜落同然だ。

このまま地面に到達すれば、私の身すら危ない。

 

「ちょちょちょちょ! おま、しっかりしなさい! せめてもっと安全な場所探してから落ちなさい!!」

 

目を回すワシの足を引っ張りながら、なんとか墜落地点を誘導できないか試行錯誤する。

このまま真下に落ちるのはまずい、身の安全もそうだが“やつら”がいる。

 

「本当に……なんでこんなことになってんのよー!?」

 

真下に広がる街並み、その中でも一際高い鉄塔の上に3人。

おそらく鉄塔を削り飛ばしたハンマー使いと、いつかハイウェイで見かけた金と紫の魔法少女たち。

いまだ距離は十分あるというのに、地上で待つ3人の瞳はしっかりと私を捕らえていた。

 

――――――――…………

――――……

――…

 

「うっし、当たった。 ブランク明けでも問題なし! どうよ今のナイスショット!」

 

「駄目だね。 見ろ、即死じゃない」

 

「入射角甘かったネ、当たりが良ければ頭蓋貫通してたはずだヨ」

 

「アンタら評価厳しくない!?」

 

上空を飛ぶ大鷲に気付き、ヴィーラに頼んで打ち落としたところまでは良かった。

だが流石に下からの攻撃で仕留め切るのは難しかったか、勢いを落とした大鷲は軌道を逸らしながら高度を落として行く。

 

「向こうの方角だと街中には流れないな、それに今死なずとも消滅は時間の問題だろう」

 

「好都合だネ、それにあの速度なら私達でも追いかけられるヨ!」

 

「いや、街中に落ちないなら別によくない? それに放っておいても死ぬんでしょ」

 

「ヴィーラ、先にかいつまんで説明するとボクらの狙いはあの魔物が鷲掴みにしていた少女だ」

 

「えっ、マ? 誰かいたの?」

 

「気づいてなかったのかヨ……」

 

経験の差か、危うくヴィーラの吹っ飛ばした鉄塔で目標を押し潰していたかもしれない。

……いや、その可能性は低いか。 なにせまだ彼女とハクは出会っていないのだから。

 

「とにかく追いかけるヨ、あのワシと一緒に"ネロ”がいる。 ハクが出会う前に私達が見つけないと!」

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

「あだだだ、めっちゃ腰に来たわ……よく無事だったわね私……!」

 

長いこと鷲掴みされていた腰を摩りながら、おぼつかない足取りで現場から離れる。

墜落の衝撃か、最初に喰らった鉄塔がようやく効いたのか分からないが、魔物は既に消滅が始まっている。

それでも早くこの場を立ち去りたいのだが、寒風に晒された四肢は半分感覚がなく、上手く歩が進まない。

 

「くっ、しっかりしなさいよ私の足……こんな所で捕まるなんてごめんよ……!」

 

ハンマー使いはともかく、あの紫と金の狙いは間違いなく私だ。

ハイウェイの一件で顔は知られている。 捕まれば最期、生きて帰ることはできない。

 

「駄目よ、そんなの……そんなの完璧じゃない……!」

 

私は完璧だ、そうでなければならない。 それこそが創造主に求められる機能なのだ。

違う、違う違う違う。 こんな泥まみれで、凍えて震えて、みっともない足取りで逃げる姿なんて全然完璧じゃない。

創造主を幻滅させてはならない、私は完璧な道具であることが存在意義なのだから。

 

「そうよ……だから……」

 

「――――――ネロちゃん!!」

 

「あんたなんかとは……全然違うのよ……! 旧型機ッ!!」

 

完璧じゃないくせに、捨てられたくせに、何も果たせなかったくせに。

それでも「私は幸せです」なんて面でのうのうと生きてるバカとは、今だけは絶対に会いたくなかった。

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