俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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雪野原にて ②

「……あれがブルームスター」 「すごい魔力……」 「ちっちゃ……」 「……怖い」 「どうして……」

 

魔法少女の視線が肌を刺し、小さく聞こえてくる話し声が胸を刺す。

彼女たちは見渡す限り皆程度の差はあれど疲労の色が見え、生傷も少なくない。

誰も彼もが魔力が溢れたこの世界で戦い、擦り切れて行ったものたちだ。

 

「……盟友、大丈夫か?」

 

「ん? ああ、俺は大丈夫だよ。 そっちこそ目の下にクマが出来てる、平気か?」

 

「うむ、まだ頑張れるぞ。 門の設置もすでに終えている」

 

「……そうか、ありがとう」

 

シルヴァは本当によくやってくれた、彼女が居なければボイジャーが回収した門の解析だってもっと時間がかかっていただろう。

おかげでンロギを倒すために手札は揃った、あとは俺が躊躇わずに引き金を引けるかどうかの話だ。

 

「ところでラピリスは……良いのか?」

 

「ああ、いいんだ。 あいつが居たら命がけでも俺を止めそうだからな」

 

「そうか……止められるような事をするのだな、盟友は」

 

「うん、ごめんな」

 

謝罪はするが、止める気はない。 ンロギを倒せるのは同じ賢者の石を持つ俺だけなんだ。

ラピリスが目を覚ませばきっと怒るんだろうな、もしかしたら俺の後を追って門を潜るかもしれない。

だが、その時にはもう()()()()()()()()から問題ない。

 

「……盟友、我は――――にゃぷっ!?」

 

「Hey! なに辛気臭い顔してるのサ二人とも、これから大団円になるんだから浮かない顔しちゃ駄目だヨ?」

 

俯いたシルヴァの頭に肘を乗せ、場違いなほどに明るく振る舞うゴルドロスが割って入って来た。

空元気を振り回しているが、やはり彼女もまた疲労が見える。

 

「これから悪の親玉をみんなの力で倒してエンドロール! 最高だとは思わないカナ、そんな終わり方?」

 

「そりゃいいな、最高だ。 俺も出来ればその結末が好みだよ」

 

「……ブルーム、私はあの時に河川敷であなたに助けられたんだヨ。 だからネ、もし一言でも弱音を言ってくれたらなんだって出来るんだヨ?」

 

「悪い、それでも俺は行くよ」

 

「HAHAHA……馬鹿だネ、本当に」

 

「そうだよ、最初から俺はそうだった」

 

俺の意思は変わらないとみると、ゴルドロスとシルヴァは無言で道を開ける。

目を潤ませて俯いたその頭に思わず触れてしまいそうになるが、少し考えてその手を引っ込めた。

 

「賢明だね、今の君の身体は馬鹿げた魔力の塊だ。 流石に接触するとボクの施した防護策もどうなるか分からないぞ」

 

「……ドクター」

 

「うちもおるでー。 なんや、酷い顔してはるなぁ」

 

「ロウゼキもか、なんだよ二人そろって」

 

ゴルドロスたちの代わりに現れたのは、白衣と和服のちぐはぐな二人だ。

松葉杖をついているロウゼキの片足は……膝から先が綺麗に無くなっている。

 

「ラピリスの件で文句を言いに来たぞ、手荒な真似で眠らせた訳じゃないだろうな?」

 

「馬鹿言え、外傷は一切加えていない」

 

「……まあ信じよう、だがボクの親友を泣かせたことは許さない。 例え彼女が憧れた人でもだ」

 

「あいにくそれも今日までだよ、流石に愛想も尽きただろ」

 

「バカは死んでも治らない、か……必ず生きて戻れ、その頭の悪さは治療が必要だ」

 

ドクターなりの激励だろうか、しかしメスを握る彼女から感じる怒気もまた本物だ。

だがこれだけ本気で怒ってくれる友達がいるのなら、あとは任せても問題ないはずだ。

 

「……ほな、ブルームはん。 準備はええのん?」

 

「ん? あ、ああ……けどそっちも大丈夫なのか? その足」

 

「他の魔法少女に遅れは取らんよ。 ただ、元凶をこの手でシバけへんのが心残りやな」

 

たしかにロウゼキの魔法ならば、ンロギにも攻撃が通るかもしれない。

それでも彼女が秀でているのは攻撃面だけだ、片足を失ったようにンロギの一撃は容易く人の身体を削り取る。

魔法少女を指揮する最高戦力に何かがあってはならない、ロウゼキの役割はあくまで俺が失敗した場合の保険だ。

 

「周りに湧いてくる雑魚は気にせんでええよ、うちらが全部落とすさかい。 ただ、持って5分ってところやな」

 

「ああ、5分を過ぎれば魔法陣から溢れる魔力と君達の戦闘の余波でこの世界の汚染が致命的になる。 ブルームスター、それまでにケリをつける自信はあるか?」

 

「大丈夫だ、とっておきの秘策があるんだ」

 

「とっておきというより最悪だろうな、君の秘策は」

 

「だから隠しておきたいんだよ。 ……じゃあ、そろそろ行くか」

 

道を開けてくれた二人の間を進めば、次に待っていたのは大勢の魔法少女たちだ。

見渡してみれば、以前にもどこかで見たことがある顔もある。 それでも相手は覚えていないだろうが。

 

「…………」

 

声をかけるまでもなく、まるでモーゼの如く割れる人の波を進む。

彼女達は皆、守るものがあってこの場所に来たはずだ。 

この世界の敵である賢者の石を抱えた俺は、彼女達にとってみれば酷い矛盾にしか映らない。

 

それを証明するかのようにぺしゃり、と柔らかい何かが後頭部を叩いた。

痛みはない。 手で拭ってみればそれはただの雪だ、空から降って来たには大きすぎる雪の塊。

 

「ちょっと、何してるの……!」

 

「だって、あいつのせいで……あいつがいるから皆こんな目に合ってるんでしょ!?」

 

「誰かその子を抑えて! ごめんね、ごめんね……っ!」

 

「……いいさ、気にしないでくれ」

 

雪玉を投げつけて来たのは魔法少女の誰かだ。

憎いだろうな、魔力なんてものを振り撒いた存在は。 

だからこれは仕方ないんだ。 その憎しみも、恨みも、悲しみも、全部背負って終わらせると決めたんだ。

 

≪ちょっと、一発ぐらい殴り返したっていいんじゃない!? あんたは何も悪くないはずでしょ!≫

 

「良いんだよ、俺も悪いんだ」

 

≪っ……馬鹿、バカバカバカバカバァーカ!!!≫

 

叫ぶネロの声を伴って、雪の降りしきる原を歩く。

やがて魔法陣の中心にまで到達すると、俺の到着を待っていたかのように、いつの間にか“やつ”は現れた。

 

「なんだよ……もっと仰々しく現われるもんだと思ったよ」

 

「へぇ、そんなに僕の登場を楽しみにしてたのかよ――――なあ、石ころと出来損ない?」

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