俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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エンドロールは終わらない ②

「っと、もうこんな時間だヨ。 Bye Bye、また明日ネー」

 

お風呂上り、アメリカにいるお母さんとの会話に耽っていると、既に時刻は12時近くになっていた。

向こうではまだ朝の10時ぐらいだろうか、お母さんとの通話はついつい話し込んでしまう。

 

「んふふ、もういくつ寝るといくらでも話せるけどネ」

 

部屋に飾ったカレンダーの日付にひとつペケ印を書き加える。

12月の日付も残り少ない、年が明けたら家族全員集まる約束をしているのだ。

久々の家族団欒を考えると、わくわくが収まらな……?

 

「……あれ」

 

不意に脳裏をよぎった違和感が声になって口から零れた。

そういえば、どうして私は家族と離れて日本で暮らしているのだろう?

あり得ないはずだ、いくら治安のいい国とはいえ子ども一人でアパート住まいなど。

 

あり得ないはずの「何か」が成立するはずのものが、ぽっかりと抜け落ちているような――――

 

「……やだネ、サムライガールのが伝染っちゃったカナ」

 

微かに感じる頭痛を振り払うように頭を振る。

考えすぎだ、それに最近めっきり寒くなって来たし風邪を引いてしまったのかもしれない

夜更かしなどせずに今日はもう寝てしまおうとベッドにもぐりこむと、枕元に置いた携帯が震え出す。

 

「んもー誰カナもう寝るって時に! ハーイもしもし!?」

 

『―――-コルトですか!? 私です!!』

 

「……サムライガール?」

 

電話を掛けて来たのは、まさにそのサムライガールだった。

スピーカー越しに聞こえてくるノイズは風の音だ、それにサムライガールも息を切らしている。 走っているのだろうか。

 

『町はずれの採石場! すぐに来てください、皆で迎えに行きます!!』

 

「ちょ、ちょっとまってヨ。 採石場って今から? それに迎えに行くって誰を……」

 

『――――――-■■■■!!』

 

「…………ぇ?」

 

まるで認識が拒絶されているかのように、サムライガールが叫んだセリフは聞き取れなかった。

それでも、それだけでも十分だった。 どうして今まで忘れていたのか

その不明瞭な音の羅列だけで私はあのほうき星を思い出すことができた。

 

『決して良い思い出ばかりじゃない、だけど忘れて蓋をして……そして終わりにしていいはずがない』

 

「……うん」

 

『誰かひとりが報われない終わり方なんて、まっぴらごめんです! 取り戻しますよ、()()()()()!!』

 

「うん……うん! 皆で必ず連れ戻すヨ、あの大馬鹿野郎をサ!!」

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

「ハァ……ハァ……ハァ……!!」

 

降り続ける雪がバチバチと頬を叩く、荒く繰り返す呼吸は肺に冷たい空気を流し込むばかりだ。

耳も頬も胸も痛い。 辛い、苦しい、止まってしまいたい。

そんな私の弱い心を汲んだかのように、足はもつれて盛大に雪の上へ倒れ込んだ。

 

「ハァ、ハァ……なんの、これしき……!」

 

疲労で言うことを聞かない足に鞭を打ちながら、なおも立ち上がる。

辛いからなんだ、苦しいからなんだ、なにもかもを忘れていたくせに。

私が覆い隠された平穏を謳歌している間にも、独り泣いている仲間がいたというのに。

 

「待っていてください、もう少しで……!」

 

「―――-みんなでと言ったのに、独り先走るのは感心しないな、葵」

 

再び倒れかけた私の肩を、誰かが支えてくれる。

後ろを振り返って見れば、いつの間にか駆け付けてくれたドクターが立っていた。

 

「パジャマ姿で飛び出すなんて君らしいが、防寒が出来ていないと余計に体力を消耗するだけだぞ。 これを着てくれ」

 

「ドクター……ありがとうございます」

 

「その呼び名の意味も君の電話で思い出したよ、ラピリス。 それに役者も揃ったみたいだぞ」

 

「―――-Hey! 二人とも、シルヴァーガールも連れて来たヨ!!」

 

「あ、葵ちゃん……! 私も思い出した……!」

 

さらにドクターの後ろから、他の二人も現れる。

各々が寝巻の上にコートや手袋を急いで身に着け、飛び出してきたような格好だ。

私が皆に電話を掛けてからすぐに家を出て来たのだろう。

 

「急ぐ気持ちも分かるけどサ、転んで怪我したら元も子もないヨ。 これから全員揃って最後の敵を倒すんだからネ!」

 

「ラスボス戦の前にHPに欠けがあるなんて許されないぞ。 シルヴァ、そっちの肩を頼む」

 

「う、うん……! 一緒に行こう、ラピリスよ……!」

 

2人に肩を抱きかかえられ、雪に塗れた道をゆっくりと歩き出す。

長いようで短い時間をかけ、ようやくたどり着いた採石場もまた、一面の雪景色に埋もれていた。

 

≪こっちよ、反応なら私が分かる≫

 

「……皆さん、着いてきてください」

 

傷だらけのスマホから聞こえる声に従い、雪道を歩く。

やがて辿り着いた場所を掘り返すと、求めていたものが露わとなった。

 

「…………あった」

 

それは■■■■が残した、最後の手掛かり――――複雑な模様が刻まれた、巨大な石板の一部だ。

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