俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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エンドロールは終わらない ④

「―――――あ?」

 

金属同士がぶつかる透き通った音が響くと、ンロギの両腕が切断される。

俺の一挙手一投足に注意を払っていたンロギも、何が起きたのか分からない様子だった。

それはそのはずだ、奴の腕を切ったのは俺じゃないのだから。

 

「―――――……なんで」

 

「まったく、魔力が濃過ぎて頭がおかしくなりそうだ。 これじゃせっかくの対魔力処置も5分と持たないぞ」

 

「じゃあ5分で片付ければいいってことだネ、任せてヨ!」

 

「うむ、こちらは5人も居るのだ。 我負ける気がしない!」

 

「なんで……忘れてくれなかったんだよ……」

 

「あなたを助けに来たからですよ、ブルームスター」

 

蒼、金、紫、銀、膝をついた俺の前に現れた4人の影に涙がこぼれる。

二度と会えぬと覚悟したはずだ、二度と会わぬと誓ったはずだ。

なのに、どうして……俺はこの再会が嬉しいのだろうか。

 

「ああ……あああああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!! なんだよ、何だってんだよ!! なんなんだよお前らはァ!!?」

 

「――――ただの友達です!!」

 

ああ、この啖呵は幻覚でも幻聴でもない、本物だ。

本物のラピリス達が、助けに来てくれたのだ。

 

「ブルームスター、これを!」

 

「これは……」

 

ラピリスから投げ渡されたのは、俺があの世界に置き去りにした1台のスマホだった。

ハクの住処であり、今は空っぽのはずのスマホ……いや、違う。 この中にはもう一人の住民が宿っている。

 

≪私はね、対賢者の石として作られた存在よ。 あんたがいくら存在を燃やそうと、賢者の石が関わるなら忘れるはずがない≫

 

「……そうか、おまえのせいか」

 

≪私のお蔭って言いなさいよ、このネロ様のね!!≫

 

スマホに写されたのは怒りを隠しきれないネロの顔だった。

そうか、全て燃やし尽くしたはずの存在をネロが覚えていたから、起点となって皆の記憶にほころびが出たのか。

 

≪言いたい事は山っほどあるわ! けど後にする、文句言ってる暇もないもの!!≫

 

「そうだヨ、はやくこっちにも加勢してほしいんだけどナー!!」

 

悲鳴のように叫ぶゴルドロスは、ラピリスと共に俺たちの前に出て必死に飛んでくる攻撃を迎撃し続けている。

跳んでくるのはンロギが魔力を固めて撃ちだした不格好な礫だが、一発一発に秘められた威力は石礫なんて可愛いものではない。

 

「はっはははははぁ゛!!! ありがたいなぁ、どこから来たんだ? お仲間が助けに来たってこたぁ道が繋がったって事だなぁ!?」

 

「我が焼き切れた石板を直した、3時間もかかったぞ!」

 

≪私も手伝ったわ、そう言う事だから今あいつを仕留め逃すとヤバいわよ!≫

 

「お前ら……人の苦労をなんだと……」

 

「そんな苦労、ごめん被りますよ!!」

 

二刀流と纏う風で礫を逸らし続けるラピリスが叫ぶ。

 

「なんであなたはっ! 私達の意見を無視してっ! 全部全部全部っ! 独りで背負い込んでしまうんですか!!!」

 

「だって……俺が、一番なにもないから……」

 

()()()()()()()()()()()()()!!」

 

「何をだらだらくっちゃべって――――ぎハ゜!!?」

 

降り続ける二刀を巨大な大剣に束ね、ラピリスが礫を打ち返す。

跳ね返された礫はンロギの頭部に直撃し、血しぶきをまき散らしながらやつの頭蓋を貫通した。

 

「鈍いんですよ、あなたは! あなたが居なくなって私がどれだけ悲しいか分かってないですよね!?」

 

「だ、だってそれは……」

 

「だってもさってもないんですよ!! あなたは幸せになっていい!!」

 

「―――――……ぇ」

 

時間が、一瞬止まったような気がした。

ンロギの頭部が潰れ、礫の弾幕が止んだ僅か数秒間の時間が、とても長いものに感じられる。

 

「だから……自分を卑下しないでください……私が悲しいです。 それでもあなたが、自分の幸福を認められないなら……」

 

僅かに頬を染めたラピリスは、一瞬ためらいながらもこう言い切った。

 

「……私が、あなたを幸せにします。 だから一緒に帰りましょう?」

 

ラピリスは、泣いていたと思う。 滲む視界ではよく分からなかった。

気づけば自分の瞳からも涙がこぼれて、止まらなかった。

 

「ヒュー! 大胆だねサムライガール……!」

 

「そんな場合じゃないだろ、ンロギが復活する! このままじゃ逃げても追って来るぞ!」

 

「ドクターよ、ちょっと不機嫌に見えるぞ……」

 

≪なに浮かれてんのよ緊張感ない連中ねー! ほら、あんたも言われっぱなしでいいの!?≫

 

手の中のスマホが自己を主張するかのように震える。

ネロが映る画面に目を移せば、彼女は一枚のアプリを抱えて画面内を浮遊していた。

 

≪……お願い、姉の魔石を私に使わせて。 創造主を倒すために≫

 

それは、ブルームスターとして戦うために何度も世話になったアプリだ。

何度も何度も、俺を助けてくれたうるさい相棒が遺してくれた最後の魔法だ。

 

「…………ああ」

 

懐に仕舞っていた二つの魔石は、不思議な事に焦げ跡一つなくそこに在った。

ハクの魔石を画面に落とすと、まるで水面に沈むかのように魔石が吸い込まれる

 

俺の相棒はあの時に死んだ、間違いはない。

だから「それ」は、ただの聞き間違えだとか、設定された音声がそのまま再生されただけとか、理屈をつけることは簡単だっただろう。

だけど、真面目な理屈をいくつ並べるよりもきっと、俺が聞いたものは――――

 

《―――――――Are You Ready?》

 

「……ああ!!」

 

奇跡と呼ぶのが、最も綺麗なんだ。

 

「―――――変身!!」

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