カラダ探し in (偽)虎杖 作:カラダ探し怖すぎ
プロローグ
「ねぇ、私のカラダ探して」
「え、意味わかんねぇ」
教室で机に突っ伏した状態で寝ていた俺は、誰かに叩き起こされ、直後にそんなことを言われた。
いや、どう言うことだ? 相手は………遥、だったっけ?
あぁそういえば、コイツと俺って友達だったか。高校生になってから話さなくなってたし、忘れてたわ。
「ね、ねぇ……悠仁くんさっき、遥になに言われた?」
遥から意味のわからない言葉を言われたが、特になんとも思わずまた惰眠を貪っていた俺に、森崎明日香が話しかけてきた。
クラスメイトではあるが、正直、明日香とは話すほど仲良くない。
明日香の表情は、“恐れ”が多分に含まれている。それは俺に対するものではなく、さっきの遥に対してだろうか。
「あぁ言われたけど……『私のカラダ探して』って」
「やっぱり……」
やっぱり? なんか流行ってんのか、学校の怪談的なやつが。
「悠仁くんは知ってる? この学校の怪談にある、『カラダ探し』の噂」
やっぱり怪談だったか。つまらねぇ。
読めた。基本ぼっちの俺なら、そういう噂話で驚いてくれるんじゃないかー、とか内心考えてんのか? くだらねぇ。
「……知らねぇよ。悪いけど、俺そういうの興味ないからノれねぇわ。あと……そういう
「ち、違うの! さっきの、遥と私たちが協力して悠仁くんを騙してるとかじゃなくて、本当に遥が」
じゃあ遥が悪戯してるってことだろ? どっちにしろくだらねぇし。
「はぁ……明日香が悪気ないのは分かったよ。分かったから放っておいてくんない?」
「で、でも今日の遥……明らかにおかしかったし、もしかしたら噂、本当かもしれないよ?」
「そういう反応が、面白がられるんだよ。まぁいいや、これ以上遥にイジられるのも嫌だし、帰る」
俺は教科書も何も入ってない軽いバッグを取り、席を立つ。
「え、授業は?」
「サボる。じゃあな」
▼
唐突だが俺―――虎杖悠仁は転生者だ。いや、主人公に成り変わったのだから、憑依者が妥当だろうか。
気づけば、と言うやつだ。前世は高校生で、可もなく不可もなくな学生だった。
しかし、なろう系でお決まりのトラックに轢かれ、気づいた時には赤子だった。
成長していくに連れ、自分が『虎杖悠仁』であることに気づき、恐怖した。
何故か? 虎杖と言えば、難易度ルナティック世界の『呪術廻戦』が舞台の人物だからだ。
原作のままじゃ、俺だったらころっと死んでしまうと恐怖し、呪力を使えないながらにこれまで、ありとあらゆる鍛錬を積んできた。
しかしどうやら、それは勘違いだったらしい。
「ゆうじぃ〜、ご飯できたわよ〜」
「はーい」
ここは平凡な日本だ。俺には見えないが、恐らく呪霊なんていないし、呪術師もいないんじゃないだろうか。
原作ではいなかった両親も顕在、俺は現在高校2年生で原作とは乖離し、さらに高校は東北方面の学校ではない。
まぁ、幼少期から原作との齟齬を感じてはいたが、九分九厘ここは『呪術廻戦』の世界ではないだろう。
夕食も食べて落ち着き、特にやることもないので早めだが寝ることにした。
その時間、いつもは静かなスマホがやけにうるさかったが、俺の意識は速やかに闇へと消えていった。
―――つまらねぇ。
▼
「え……ここどこ?」
声が聞こえ、意識が覚醒する。
布団が
部屋で寝ていたとは思えない多くの異常事態に、俺はすぐさま飛び起きた。
は?
「なんで、学校にいんの? 俺」
目の前には俺が通う高校があり、現時刻は0時の深夜だ。
深夜の学校って意外と雰囲気あるんだな。
「すやぁ……」
「ちょ、ちょっと! なによこれ、ドッキリ!?」
「瑠美子、うるさいぞ。これは恐らく、昼間の『カラダ探し』が原因だろう」
「あ、明日香ぁ……これ、一体どういうことぉ?」
「理恵……私もわかんないよ」
「………」
俺以外にも、どうやら6人いるようだ。
昼間俺に声をかけてきた女『森崎 明日香』、よく
……まずは、状況の整理からだな。
俺は寝ている高広を優しく起こし、主に翔太に向かって話しかける。
「すまん、お前らがさっきから言ってる『カラダ探し』ってなんだ?」
翔太は俺の言葉にやれやれだ、というジェスチャーをする。コイツ、言動がうざいな。
「そんなことも知らないのか? 『カラダ探し』って言うのはうちの学校にある怪談話で、文字通り学校に散らばった『カラダを探す』んだ。でも、ただ探すだけじゃなくて『赤い人』から逃げながら探さなければいけない。もし『赤い人』に見つかったら、カラダをバラバラにされて殺される……らしい」
「怪談っていうより、まるで『ゲーム』の説明みたいだな」
まぁ、確かに恐ろしいものがあるのも事実だが。
「そんな説明どうでもいいわよ! 私、帰るから。こんな不気味な場所にいたくないし」
瑠美子がイライラしながらそう言って、校門の方へ行こうとする。
「無駄だぜ、さっき俺も帰ろうとしたんだが『見えない壁』みたいなのがあって出れなかったぞ」
見えない、壁? それってまさか、呪術師がよく使う『帳』じゃないよな?
「嘘つくんじゃないわよ高広……こんなの、飛び越えてっ……ていたぁっ! なにこれ、『見えない壁』がある!?」
「さっき俺が言ったじゃねぇか……」
ここはまさか、『呪術廻戦』の世界なのか? でも学校には『宿儺の指』なんてないし、俺は高校2年生になってる。
―――もしかして、原作崩壊していただけで、舞台は『呪術廻戦』のまま? そんなことがあり得るのか?
「……おい、どけ。俺もいく」
「は? お前も見ただろ? 何度やっても時間の無駄だ、それよりも皆んなで『カラダ探し』について考える方が」
翔太の話を最後まで聞かず、俺は駆け出す。
そのまま、全力の拳を校門に向かって解き放つ。
―――ギィィィイイイイイインッ!!
校門が凄まじい音を立て拳で歪み、地面と平行になって飛んでいく。
校門という障害物がなくなり、外に出ようとするが校門ではなく、高広が言っていたような『見えない壁』で阻まれて外には出れない。
「……物体は通るけど一般人は外に出れない。『帳』、もしくは呪霊の領域とか?」
そういう座学系統はあんまり覚えてねぇんだよなー。
どうすっかな? 呪力ないから、今の俺には呪霊を祓う手段がないんだが。
うーん、と眉間を揉む。
「お、お前! 何者だ!?」
そこに、高広の怯えが多分に混じった声が届く。
振り返ると、そこには“化物”を見る目をしている6人がいた。この場合、“化物”とは俺のことだろうか。
事態を考察するあまり忘れてた。パンピーは普通、鉄でできた校門を殴って吹っ飛ばすなんて出来なかったなと。
「あー……」
どう言い訳するかな。「昔空手やってた」は、無理がある。「実はオリンピック選手目指してて…」も、無理だろう。
言い訳って面倒臭いな。もういい、今は自分が生き残ること優先だ。この状況をどう乗り切るのかを一番に考えよう。
思考をシフトした瞬間、ガチャッ……と学校の玄関口が独りでに開いた。
「……誘ってるのか? まぁ、行くしかないか」
他6人が未だに俺を警戒し見つめる中、我関せず玄関に入る。すると、明日香たちも俺に遅れて入ってきた。
「うわっ……なんか寒くない?」
「そうだね、すごく不気味だよ」
「私怖いよぉ……」
女子が怯える中、男子の3人は女子を見て少し気を取り直したようだ。自分より怖がってるやつを見ると安心する、アレだろうか。
周囲を見る。
生徒玄関にずらっと並ぶ靴箱には、キチンと生徒一人一人の上履きが揃っている。窓の外は暗闇だが、常人よりも暗闇に慣れた俺の目には昼間と同じような光景が見えている。その俺から見ても、周囲におかしな点はない。
今のところ、“深夜の普通の学校”だ。
突如、ガチャッと音を立てて玄関が閉まった。
「んだこれ! 鍵もかかってねぇのに開かねぇぞ!」
高広が力一杯にドアを引いても押してもびくともしない。恐らく、閉じ込められたのだろう。
これも結界術なのだろうか……? いかんせん、呪術師として教育を受けたわけではないので分からない。
『“赤い人”が生徒玄関に現れました。気をつけてください』
学校のスピーカーが鳴り響く。
なんだ? 誰が喋ってる? これも呪霊の仕業か?
あらゆる疑問が脳内に溢れ、俺の身体は停止した。
―――ペタッ
―――ペタッペタッ
「あ〜かい ふ〜くをくださいな〜」
その時、子供が唄う声がした。
ばっと振り返る。
「し〜ろいふ〜くも あかくする〜」
そこには、血濡れの少女―――『赤い人』がいた。
―――あ、コイツ呪霊だ。
そんなことを思いながら、『赤い人』と目が合う。
刹那、アスリート選手のような速さで近づいてきた。
「キャハハハハハハハッ!」
駆けた『赤い人』は、血に濡れた腕を俺に振るう。
命を刈るその存在は―――
「まぁ、学校の呪霊ならこんなもんか」
俺の右ストレートを顔面に喰らい、頭部を破壊された『赤い人』は面白いように飛んでいった。
「ぇ……え? え?! なにさっきの! ていうかアンタ、人殺したの!?」
一泊遅れて遅れて瑠美子が騒ぎ出す。
「俺を殺そうとしたんだ、正当防衛だろ? それに、“呪い”には何言っても無駄だろ」
正直、期待外れだった。
呪霊と戦ったことはないが、原作の表現に則るとせいぜい三級呪霊程度ではないだろうか?
呪力を使えないとはいえ、こちとら生まれた頃から
「“呪い”というのが何なのか分からないが、あれは仕方ない。多分、あれが『赤い人』だったはずだ」
「え、じゃあ倒しちゃったから『カラダ探し』は終わり?」
翔太はどうかな……と不安そうに呟いた。
まぁ、十中八九終わりじゃないだろうな。“呪い”は“呪い”でしか祓えない。それが原作の決まりごとだった。
なら―――
「アアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
獣の雄叫びのような、身体の芯から凍えるような威圧感を放つ音が響いた。
それを聞いて、他の奴は腰を抜かし、倒れていた。
原作の虎杖悠仁ならば彼ら彼女らを心配し、助けようとしただろう。
しかし、ここにいるのは虎杖であって虎杖ではない。
他人を助けようなどとは思わない。他人よりも、自分や家族の命のほうが大切だ。
ならば逃げるのか?
そうだな、逃げよう。死にたくないから。
姿を表す、『赤い人』。先ほどまでの無邪気な笑顔は消えて、代わりに黒い瘴気なようなものがカラダから立ち昇っていた。
表情を見ればわかる。アレは、今“怒っている”。
自然と、俺の身体は『赤い人』に立ち向かうようにして構えていた。
「なんで……?」
逃げなきゃいけないだろう。別に、
身体は震えているのに、なんで……?
「ァァ、アアアアアアッ!」
「ッ!」
おんっっもッ!
先ほどよりも数段速くなった『赤い人』の腕の振り下ろしを、俺は腕で受け止めようとしたが相手の腕力に押され、吹き飛ばされた。
先ほどと真逆の展開。
ほら、超強い虎杖の肉体でも厳しい相手だ。逃げなきゃ、本当に死んでしまう。
「はは……」
「あっはははははははははははッ!!」
誰かが嗤っている。
―――違う、俺の嗤い声だ。
吹き飛ばされただけでダメージなどない俺は、立ち上がって生徒玄関に戻った。
辺りは血だらけ、『赤い人』の周囲には脚や腕、頭などが散乱していた。どうやらあいつらは全員、殺されたようだ。
でも、俺の心は凪いでいる。いや、彼らの死には一切揺るがなかったという方が正しい。
今の俺が凪いでいるなんて、冗談じゃない。
むしろ、過去最高に―――
「ハイッてやつだぁああああああッ!」
嗤いながら『赤い人』に殴りかかる。
俺の殴打の中にも、さまざまな技術が組み込まれている。正拳突き、アッパー、ラリアット、目潰し……。
そうだ、俺は“退屈”してたんだ。
あの“呪い”巡る世界が怖いと言いながら、恐怖していながら、同時に楽しみにしてたんだ。この磨き上げてきた身体を、技術を思う存分に使うのを。
俺は死にたくなかったんじゃない。まるでスーパーマンのように、漫画やゲームの主人公たちのように―――この“強い力”を、好奇心の思うままに使ってみたかっただけなんだ。
「アアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
怒り狂う『赤い人』は、俺がどれだけ本気で殴っても平気な顔をして戻ってくる。
もう玄関はズタズタのボロボロになっているのに、俺たちは無傷。いや、だんだん俺の方がダメージを負ってきた。
無尽蔵に思えるほどの体力と回復能力を持つ『赤い人』に比べて、最近はずっと鍛錬をサボっていた俺は全力で殴り続けて段々と息が切れてきた。
スタミナ切れ。
それで死ぬのか?
嫌だ。それは嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だッ!!
まだ他にも、使ってみたい技があるんだ! 道具だっていっぱいある! 剣だって刀だってナイフだってバットだってチェンソーだって拳銃だって毒物だって弓矢だって、他にもいっぱい試してみたいんだ!
「アアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
殺さないでくれ! まだやり残したことが俺にはいっぱい―――
そして約30分の戦いの末、俺は『赤い人』にとうとう首を掴まれ、そのまま絞殺された。
ホラーじゃなくね?
とりあえず、見切り発車なので今後も出来上がり次第投稿していきたいと思います。