カラダ探し in (偽)虎杖 作:カラダ探し怖すぎ
「っと、来たか」
目を開けると、いつの間にか学校にいた。
周りを見れば、また『昨日』と同じメンバーがいる。
「うぅ……」
「ひっく」
「ぇ……」
女子3人は泣いていたのか、今でも目が充血し、少し瞼も腫れている。男子の方は女子よりはマシだが、やはりこの状況に混乱しているようだ。
まぁ周りは気にしなくていいな。
周囲からの視線を感じながら、自分の装備を確認する。
バッグは……ダメだったか。
どうやら、『カラダ探し』のために用意したバッグは“転移”させられる時に没収、もしくは消されたらしい。
アレには、道具がいっぱい入ってたんだが……まぁいいか。
条件:『カラダ探し』に“転移”させられる時、制服やスマホ以外は持ち込み不可。
これが見つけたゲームの条件、その一つ目だ。
「……ん?」
スマホを取り出す時、逆のポケットに違和感を感じた。
ふーん? バッグは持ち込み不可なのに、ポケットに隠してた
考察していると、生徒玄関がガチャッ……と開いた。
考えるのは『明日』だな。じゃあ今日は……あぁ、コレがあるならあそこにいくか。
「ちょっと悠仁! どこ行くのよ!」
瑠美子に肩を掴まれ、静止させられる。
「はぁ? 工業棟だけど……あぁ、言い忘れてた。今日は工業棟には行かないほうがいいぜ。危険だからな」
「なに勝手に決めてんのよ! アンタは私たちがカラダを探してる間、『赤い人』を足止めしてなさいよ!」
瑠美子は甲高い声で叫ぶ。少々、ヒステリックになってるようだ。
その瑠美子の声に、翔太も強く頷いていた。
「言ったよな、お前を利用するって! 精々、役に立ってくれよ!」
「足止め……ねぇ」
瑠美子に掴まれた肩を回し、手を退ける。
何か、勘違いしてるみてぇだな?
「確かに翔太、お前は俺を利用するって言ったな。だが……俺がそれをいつ、了承した?」
「テメェ、逃げんのか! ぁあ!?」
今度は高広に制服の胸元を掴まれる。
「じゃあせめて協力しやがれ! 足止めはいいから、『カラダ探し』によぉ!」
高広はそう、一方的に捲し立てる。
瑠美子と翔太以外は、あまり強く反応していないが……内心では同意していることがわかる沈黙だった。
「なぁ、そんなに俺に構っていいのかよ? こうしてる間にも、『赤い人』が迫ってくるかもしれねぇんだぜ?」
「ッ……うっせぇ! それは、テメェが答えてからだ!!」
話を置き換えようとしたが、聞く耳持たず。他5人も校舎に入ろうとせずに、じっとこちらを見つめる。
俺の答えを、待っている。
だから仕方なく―――今ここで、俺もはっきりと明言することにした。
「お断りだバーカ。こんな
絶句。
まるで、俺の答えを予想できなかったかのように。全員が、裏切られた表情をする。
呆気に取られた高広の拘束を破り、俺は1人校舎へと入る。
「再度、忠告だ。工業棟には近づくなよ」
▼
扉を開く。
ガララッ! という大きな音は、隠れるという事を忘れているように、校舎に鳴り響いた。
「ここが工業棟ね……はっ、クソ臭ぇな」
その部屋は、工業科の生徒が着替えを置いている場所だ。散らばった衣類は、整理という言葉を忘れているように棚だけでなく机にも散乱している。
なんでも工業科の生徒はこの制服、または作業服を3年間洗わずに着るらしい。工業科に女子がいないから出来る、実に“漢”らしい所業だ。
同じ男でも少し引く。
「まぁこんだけ散らばってりゃ、俺も楽でいいけどな」
ポケットにしまっておいたコレ………
カチッと火をつけ、躊躇なく散らばった服に次々と点火していく。
僅か3分ほどで、キャンプファイヤーのような大火が完成した。
今回の『赤い人』の倒し方は………ずばり、“火炙り”だ。
『“赤い人”が工業棟2階に現れました。気をつけてください』
ちょうどよく俺のいる棟、俺のいる階に『赤い人』が現れた。
「し〜ろい ふ〜くも あかくする〜」
歌が聞こえる。
「まっかに まっかに そめあげて〜」
子供の声だからだろうか?
歌詞は物騒なのに、子守唄のような優しさすら感じさせる。不思議なものだ。
「おかおもおてても まっかっか〜」
そして扉の濁ったガラスより、その小さな影が見えた。
ガラッと、扉が開き遂に対面する。
明るい炎が照らしてくれるおかげで暗闇よりも鮮明に、『赤い人』の姿が目に映った。
その面貌は幼く、血がなければ綺麗だと言えるほど整っており、無邪気な笑顔を浮かべている。手に持って引きずるぬいぐるみに、『赤い人』の小ささと幼さが余計に目立つ。
やはり幼い。
こんな幼女が呪霊なんて、“呪い”とはかくも恐ろしいものだ。
まぁ祓うだとかそんなの、至極どうでもいいんだが。
「さぁ、殺るか♪」
心が弾み、鼓動が高鳴る。好敵手を前に、笑顔を抑えきれない。
対面した『赤い人』は、俺を認識してピタリと動きを止める。
そして、その無邪気な笑顔が段々と引き攣っていき―――
「イヤァアアアアアアアッ!!」
ペタペタと俺に背を向け、そのまま走り去っていった。
「……………」
「は……?」
惚ける。
事態を理解できず、状況を把握できず、俺はただ口を開け間抜けな面を晒す。
そして時間を経るこどに、沸々と湧き上がってくる。
激情が、憤怒が。
「てめぇ……待てやコラァアアアアッ!!」
お前が逃げんじゃねぇ!
ここに、追う者と追われる者が逆転した。
▼
―――
―――――
―――――全力で、
「逃さねぇぞ!」
目の前に迫った『赤い人』に、前蹴りする。
それが当たる直前、『赤い人』は小さなそのカラダを屈めて避け、逃走する。
速度なら、俺が数倍上だ。でも、逃げ方が独特すぎて予測できない。相手は達人でも大人でもない、子供故の予測不能!
「っち、さっさと本気出して襲え! 殺せ! 俺を見ろッ!」
「イヤァアアアアアアアッ!!」
クソガキが!
「え、なんで『赤い人』がここに!?」
廊下の少し奥に、健司と翔太の姿が見えた。
健司は驚いて逃げようとしたが、その襟を翔太に掴まれ、転倒した。
仲間割れ? 翔太の独断か。
「いっ……てめぇ! 翔太ぁぁぎゃっ」
通りすがりに健司の首が『赤い人』によって刎ねられる。情けない悲鳴ともいえない音を残し、健司が死んだ。
俺の視界には、『赤い人』だけで翔太がいない。上手く逃げたな。
ここは長い廊下の直線。だったら、フルスロットルで行く!
ドンッ! 床にヒビが入るほど強く踏み込む。そのまま脚の強かなバネで跳躍する。
一瞬で背後に追いついた俺は、その跳躍を利用しライダーキックの如く蹴りを繰り出す。
『“赤い人”が東棟1階に現れました。気をつけてください』
は?
しかし、俺の蹴りは空を切る。勢いを殺しきれず、そのまま教室の壁を蹴り砕いた俺は混乱した。
なぜなら、突然『赤い人』が目の前から消えたからだ。
なに? 瞬間移動? 術式? それともなにか別の……?
「お、おい! 悠仁どう言う事だ! なんで『赤い人』がここにいる!? 危うく死にかけたぞ!」
隣の教室の扉を開けて出てきた翔太は、顔を真っ赤に染めて怒り出した。しかし、今はそんな事どうでもいい。
「……翔太、お前の頭脳が必要だ」
「っ、なに?」
「俺が追いかけている途中、突然『赤い人』が視界から消えて、東棟の1階に現れた。なぜだと思う? なにかアイデアはあるか?」
翔太は俺の疑問に、鬱陶しがるように吠える。
「そんなこと後で考えろよ! 今はとにかく生き残る事だ! それに突然消えた? 事前に“放送”があっただろ!」
! 放送……確かにあった。
「じゃあ……例えば『赤い人』は自分の意思じゃなくて、いま“放送”している奴の意思で動かされているだけ、という風にも考えられるか?」
「知るか! それか、お前らの走り回る姿を誰かが見て、偶然『赤い人』も見てしまって、振り返ったら『赤い人』が現れたとも考えられるだろうが!」
………振り返る。
『カラダ探し』中に、振り返ってはいけない。もし振り返ってしまうと、死んでしまうから。
なぜ死んでしまうのか? それはもしかして、振り返ると『赤い人』が現れるから?
「とにかく! お前は『赤い人』の足止めをしろよ! いいな!?」
翔太は駆けていく。別の教室の探索を始めるのだろう。
そうだったな。翔太は過程を飛ばして、結論だけを述べる悪癖があるんだった。
「翔太……やっぱり、お前って頭いいな」
おかげで、走り回らずとも『赤い人』が喚べる方法がわかった。
▼
工業棟に戻る。
既に炎は、工業棟一帯を飲み込むほどの業火へと変わっていた。その炎の中へ、入り込む。
虎杖の肉体は、呪力がなくても素晴らしいものだった。毒物に耐性があり、火災の煙を吸って一酸化炭素中毒になって倒れる、などと言うこともない。我慢できる。
熱にも強い。肌が焼けこげ、焼ける匂いが漂おうと俺は平気だ。なぜなら“鈍い”から、これも我慢できる。
火の手を抜ける。着いたそこは四方八方を火に囲まれながらも、半径3メートルほどの円形の広さが保たれた、まるで戦うためにできたような天然の
ここが、今日の
燃えている制服を剥ぎ取る。
上着は全焼し上裸で、下は左は半ズボン、右は長ズボンと左右統一されていない格好となってしまった。まぁ、先鋭的なファッションだ。
さて……俺の推測が正しければ、ここで俺が振り返ると―――
そこには、『赤い人』が立っていた。
唐突、しかし『赤い人』は動じず、流れるような速さで俺の首を捥ごうと手を伸ばす。
「やっと、2人きりだな」
だが、予想できていた俺はその手を躱し、鳩に正拳突きを放つ。
吹き飛ぶ『赤い人』は、そのまま場外―――炎の海へとダイブした。
「アアァァァアアアアアアアアッ!!」
化物の咆哮が聞こえる。
火災でボロボロになっていた学校を更に破壊し、俺の前にその姿を現す。
それは初日に見た、黒い瘴気を纏った『赤い人』だ。
つまり……ここからが本番だ。
「その面倒な覚醒劇、これからはなくていいぜ? 最初からその状態だったら、こっちも楽しめるからな」
俺の煽りを無視し、黒い瘴気を纏った『赤い人』は突撃してくる。その速さは、先ほどまでと比べ物にならない。
そして繰り出す攻撃の強さは、正直俺よりも上だ。悔しい限りだが、俺は腕力で『赤い人』に一歩劣る。
だが、逆に言えばそれだけだ。
「???」
致命的に、『赤い人』には技術がない。だから簡単に、その速さを利用して
本日二度目、炎にダイブする『赤い人』。
「ァァァアアアアアアッ!?」
今度の叫びは苦痛を紛らわせるような響き、獣の慟哭だった。手応え、あり。
殴打は無限の回復によって効き目はゼロだったが、どうやら痛みがないわけではないらしい。
「お前は今日、“火炙り地獄”だ。たっぷり楽しんでくれ」
天使のようなその顔を、苦痛に歪める感覚の名は―――快感。
その日、俺は只管『赤い人』を投げ飛ばし殴り倒し、最後は炎に抱かれ“焼死”した。
お巡りさん! 血塗れの殺人鬼幼女を甚振る鬼畜外道上裸変態男がいます!
どっちを捕まえればいい?
どっちも逮捕でお願いします(^^)
次回は、明日花視点を書きたいと思います。