「あ、もしもし?確かまだ席って…あいてたよね?」
※こちらの文章を書くにあたり、語尾プッチンの省略をお許しくださいプッチン。
※また、こちらのお話はフィクションですプッチン。実在の人物・団体・出来事とは関係ありませんプッチン。
※さらに、こちらのお話はフィクションですプッチン。似たような人物・団体・出来事とは関係ありませんプッチン。
※電車で移動中の際に作成をさせていただきましたため、誤字脱字をお許しくださいプッチン。
※また、こちらのお話はとある方の小説の二次創作になりますプッチン。妄想の産物ですプッチン。公式設定ではないので、あしからずプッチン!
【これが最高のバッドエンド】
傷だらけの世界だった。
誰かが誰かを蔑み、妬み、嫉み、悪口が飛び交い、人は人を手にかけなくても殺してしまえるような世界だった。大人も子供も疲れはて、他人を傷つけることで溜まっていたものを発散する、そんな世界だった。
子供は学校にいかねばならず、必要最低限の勉学をその四角い箱状の建物で学び暮らす。1クラス30人ほどに分けられ、決まった部屋、決まった時間、決まった大人から学ぶのだ。最低限、生きていくための知識を。知恵を。偏った知識ばかりを植え付けられて。全員が同じ格好。同じ髪型。そして同じ表情。同じ言動を強いられ、個性を消されてしまう。周りと同調することを美徳とし、常に【普通】であることを強いてくる世界。
これが、私の世界だった。
…………大人は、私の世界をただの狭い世界だと馬鹿にするけれど。
思春期の妄想だとあざ笑うけれど。私にとっては、私のこの狭い世界こそがすべてだった。
梅雨。
ザーザーと降り続く雨はアスファルトの学び舎の色を変え、校庭も水びたしにしている。朝から登校したばかりだというのに、校庭にポツンとある机と転がった椅子が孤独と異質感を感じさせる。雨に濡れ、ずぶ濡れの机と椅子を見ながら、「ああ…今日もいつもの。」と冷静に構えられるのは、私がこの世界に慣れすぎてしまっているからかもしれない。
二階の教室では机を指差して笑っている輩たち。
「……よかった、私のじゃない…」
ほっと胸を撫で下ろす。
いつものように、傘をたたみ、靴を履き替え、階段をあがる。教室へ入るなり、つーんと腐ったような臭いが鼻についた。臭いのほうを見るなり納得する。
いつもいじめられている彼のこと。
友達とは名ばかりの集団が、特定の一人をいじめ笑う。
かわいそうだ、とは思うけれど。ここで手を出してしまえば自分が標的にされるのが目に見えている。どうしてもそれとは関わり合いになりたくなくて、背を向け、自身の席に座った。恐ろしいのだ。自分が標的になるのが。あとは何もしなくても、どうにかなる世界なのだ。
いじめられている彼は、二階の教室から机を落とされてしまったようだ。なんとか守り切った国語の教科書だけを握りしめ、いじめっこたちに囲まれながら昨日の残り物だった牛乳を頭からかけられていた。
「うわ…」
よく見れば、周りの生徒たちも囲むようにそれを見つめている。何一つ面白くないのに、みんなで笑ってカメラを向けている。教室の雰囲気は最悪だ。
カシャカシャと鳴るシャッター音。外は暗いのに、ピカピカと喧しく鳴るフラッシュ。
関わりたくない。私の世界は普通がいい。
一人、自身の席に座ったまま、私はそれを知らんぷりしていた。その対象が自分になってしまうことが怖かったからだ。今、いじめれている彼を庇うことが恐ろしい。関わりたくない。どうせいつものこと。
それなのに。
それなのに、……どうしてこんなにも、
自宅。
夜は、母親はお仕事にいったようで、家には自分だけになる。
一人の家の空気は、重くて苦しい。胸が押しつぶされるような。でも、自分ひとりではどうにもできない苦しみに耐える。
それは、殺されそうな恐怖とはまた違う恐怖だ。自分は独りぼっちなのだ、という孤独感と、明日の学校に行きたくない気持ち。口に出すとどうにかなってしまいそう。だから、なるべく口には出さないようにしている。
母が作ってくれたおにぎりを頬張り、さっさと風呂に入る。風呂から上がったら、髪を乾かし、布団にくるまる。そして、いつもの呪文を唱えるのだ。
「明日も平和でありますように」
これはいつも夜に唱える呪文で、私は私の平和のためにこの呪文をいつも唱えるのだ。
「学校が楽しいところでありますように」
口に出せば、きっといつか願いが叶うって誰かが言ってたような気がするんだ。もしくは、アニメのキャラが言ってたのかもしれない。
「何事もおきませんように」
お願いいたします、と祈るように、すがるように。胸の前で組んでいた手に力をこめる。
「明日も生き残れますように」
どうしてこんなお願いをするのだろう。
私はこんなに、食べ物もあって、綺麗なものを着て、学校にもいけて、勉強も学べる。こんな当たり前の空間にいるのに。
「死にたくない」
殺される、と感じるのは本当に殺されるからではないし、暗殺者に狙われている訳じゃない。
ただ。自分が。
組んだ手が震える。祈る言葉でさえも震えている。
布団にくるまり直し、組んだ手をとき横になった。
ベッドはふかふかで、とても気持ちがいい。すぐに眠れそうな気がする。
いつから、この呪文を唱えないと眠れなくなってしまったんだろう。自分の言葉が、空っぽみたいに思えるのはいつからだった?
毎日が恐ろしい。
きっと、そう思うようになってからだ。
それなら。それなら、
いつから、こんなにも恐ろしいと思うようにーーー。
朝。昨日の雨はすっかりやんで、快晴だ。空は雲ひとつないし、気温も暑くもなく寒くもない。
こんな日でも、学校に行かねばならないのだ。同じ制服。同じ髪に、同じ鞄。支度を終え、玄関のドアをあけようとしたら丁度帰宅した母が先に玄関を開けていた。
『あら、…これから学校?いってらっしゃい』
どうしても、その母の顔をみることが出来ず、こくん、と頷くだけ。そそくさと隣を抜けようとして、ぐいっと肩を捕まれた。それは肩に指が食い込むほど。痛い、と眉をひそめたのを感じたのか、母は私の顔を見て笑って。
『帰ってきたら、話をしましょう』
ふわっと香った母の香りはお酒の臭いと、…母からは匂わない香水の臭い。人差し指でなぞられた頬がぞわぞわと腐っていくような。
恐ろしくて声がでなかった。
逃げるように、頷いてその場を去ろうと数歩進む。
『ねえ』
その声は、私にしか聞こえてこない。
ドクンドクンと鼓動が早くなる。早くこの場から去らねば。
『……あ』
母の言葉が発しようとしたとき、走って逃げだした。
耐えられなかった。
その場にいることができなかった。
走って、端って。
奔って、橋って。
箸って、嘴って。
母の顔が見えなくなるまで。
母の声が聞こえなくなるまで。
母は、どんな声で私の名を呼んでいただろう。
母は、どんな目で私を見たのだろう。
今となってはもうわからない。
私は地獄についてしまったから。
今日も、家とはまた違う地獄が、きっと待っているのだ。
数秒、乱れた息を整えてから学校へと入っていく。
昨日、外に落とされた机は、今日は見当たらなかった。
「ああ、よかった」
そう胸をなでおろしたのに、それでもザワザワと不安がよぎるのは何故なのか。
登校している人たちも何事もなかったかのように校舎へと向かっている。
私も何事もなかったように校舎へと向かう。
「…どうか」
どうか何事もありませんように。
この不安が、何事もなく終わりますように。
重い足を引きずって、ようやく教室の前へときた。
そして、ガラリ、と教室のドアをあける。
視線がこちらへと突き刺さり、自分が亡くなるほどに見られている。
まるで穴が開きそうだ。
そして、自分の机にやってきてから、荷物を置き、席に座る。
ようやく、落ち着いたところで…いつも違う違和感を感じた。
なんだ?いつもの騒がしさはどうしたのだ。
昨日、これでもかというほどの騒がしさはどうしたのだ。
こんなに生徒かそろっているのに、皆、口を開かずに黙っている。
青い顔で下を向いているものもいれば、こそこそと話している人たちも見受けられる。
なんだ?どうした?
いつも話題の中心は、いじめられている彼だった。
そして、昨日も見た彼の机のほうへと視線をやると、机の上には大きな花瓶と菊、彼の写真が入った写真立てがおかれていた。
「……え?」
また誰かのいたずらなのか?
頭に食らった大きな衝撃は、まるで金槌のような武器や兵器で攻撃を食らったみたいだ。
まさか、という予感がした。
いや、違うとすぐにその考えを消し去るように頭を振る。
そんなわけない。
だって長年なんともなかったじゃないか。
ひそひそとクラスメイトの声が聞こえる。
彼をいじめていた人たちは、顔を伏せている者、ぼーっとどこかを見つめている者、携帯で必死で何かを打ち込んでいる者、さまざまだった。
もし、もし仮に、そうだとして……。
ぶわっ、と背中から冷汗がでた気がした。
冷たい空気のようなものを感じて、顔を隠した。
私たち全員がこのいじめを黙認していた。
つまり、私たちは全員加害者だ。
せりあがる何かを抑えるように、強く口元を抑える。
待て。待ってほしい。
どうして誰もこうなると予測できなかった?
否、できるわけがない。
自分たちがいじめをしているなど…思ってもいないからだ。
「うっ…」
「…大丈夫?保健室…いく?」
隣にいたクラスメイトが気分の悪そうな私に声をかけてきてくれた。
ありがとう、と首を振ってから大丈夫、と返す。
それでも、本当かどうかもわからなくて、とにかくこの教室にいるのが気分が悪すぎて…席を立つ。
「ごめん、やっぱりちょっと…」
「えっ?ちょっと…!」
そう言って、教室を後にする。
真相は未だにわからない。
やっぱりここは地獄だ。
教室を出て、階段をあがる。
この時間は換気のために用務員さんが屋上の鍵をあけているのを知っている。
屋上へいこう。
外の空気を吸いたいのだ。
がしゃん。
倒れるように屋上のフェンスに寄りかかり、そのまましゃがみ込む。
まさかじゃないか。
まさか。
本当だろうか。
ああ、ああ。本当なのだろうか。
私は、彼とは友達でもなんでもなかった。
なのに、どうして。どうしてこんなに苦しいのか。
胸を抑える。苦しい。それは、なぜだ。
なんでだ。
「ぐ、うっ…」
はあ、と息を何度もはく。
友達だったら、何か変わっただろうか。
私が、彼を助けたのなら…何か変わっただろうか。
もし、もし本当に彼が、そう…だったのなら。
私は。
「---私は、どうするつもりだった?」
急に、しゃがみ込んでいる私の頭上から声がかかった。
なんだ。誰だ。
視線をあげると、私の隣に座っていた子だった。
私のこの状況を見て、大丈夫、とも声をかけないのだろうか。
「ね、どうして笑ってるの?」
笑っている?誰が?
彼の口から出た言葉に驚く。
あんなことがあって、どうして笑っていられようか。
それでも、頭上から私をみる彼がずっと私を見つめている。
うずくまったままの私を。
私は、口元の手をそっと、…そっとなぞる。
何度、何度なぞっても、私は笑っている。
「…笑ってる?」
確かに私の口元は歪んでいて。
ずっと笑ったままなのだ。
頭上から声がする。
「自覚がない?君、ずっと笑ってたよ。友達がいじめられた時も、今日教室に入ってからも…ずっと」
うそだ。じゃあ、この気持ちはなんだったのだ。
苦しくて、苦しくて苦しくて。毎日、こんなにも苦しい毎日を送ってきたのに。
ずっと殺されないようにと、それだけは気を付けてきたのに。
「…ずっと、笑って…?」
「彼がいじめられてるのを見ながらね。毎日、毎日。そのいじめを見て、ずっと笑っていたんだ」
「うそ」
私がずっと笑っていたのなら、この苦しい気持ちはなんだったのだ。
毎日寝る前にお祈りをしないと眠れなかった。
いじめを見ているのも苦痛だと感じていたはずなのに。
そのはず、なのに。
「いじめられていた子の名前、覚えてる?」
そういわれて、何度も何度も思い出す。
名前?そうだ、名前なんて…なんだったか。
いや、クラスメイトの名前を忘れたなんて…。
…いや、そうだ。記憶の中の彼には顔がない。違う。顔がないんじゃない。
牛乳をかけられて耐えていたのは。
机を投げ捨てられて耐えていたのは。
あの稲妻のようなシャッターの嵐に耐えていたのは。
そして、私は…昨日のうちに。
そうだ、あれは。
「……わたしだ」
思い出の中の自分の姿だ。
昨日も、一昨日も。ずっと、ずっと。
いじめられていたのは自分だ。
男子だとずっと思っていたいじめれていた彼は、私だ。
視線を上に向け、彼を見る。
「それじゃあ、今の私は…?」
彼の表情は見えない。
逆光で、暗くて、よく見えない。
「いじめられる自分を見て笑っている君は、夢の中の君だ。
ーーーおはよう。君を、起こしに来たよ」
えっ、と声を出したころには、頭の中をぐるぐるぐるぐる何かが這いずり回っていた。
何か靄のかかっていたものが晴れていくような。
いや、それとも逆か。
もやもやしていたものが戻ってきたような。
……そうだ。そうだ。そうだ。
思い出した。思い出したのだ。
現実の私は、ここから飛び降りた。
屋上から飛び降りて、そして…死ねなかった。
何度も何度も繰り返した。
何度も何度も同じ夢を繰り返して。
何度も何度も私は夢の中で死んで。
だから、私は自分のいじめを見守る存在を作り上げて。
それを私だと認識した。
そうだ。
せめて、夢の中では死なないように振舞ったのに。
自分自身に殺されないように、振舞ったのに。
また、私は屋上に来た。
そうか、私は、私の自殺を見たことで
それを見て、安堵して笑って。
無意識にもう一度、死のうとした。
私は、失敗したのだ。
生きることに。
夢の中でさえも、生き残ることに失敗した。
背をフェンスに預けるように上を向く。
私を見下ろす彼の表情は見えない。
「これからどうしたらいいのかわからない。
寝ても地獄。起きても地獄。どちらにせよ、いじめからは逃れられないのがしんどい」
また、口元を触る。
つつつ、と指で何度もなぞる。
まだ、私は笑っているようだ。
この絶望的な状況に笑うしかないとでも思っているのか。
「じゃあ」
ずっと私を見下ろしていた彼の顔が近づいた。
どうやらしゃがんでくれたようだ。
「俺の世界に来る?」
にかっと笑った彼の顔は、太陽のようにまぶしい。
青い空に映えていて、写真にとったらとても綺麗だろう。
「そうだなあ。俺の世界のナレーション!ナレーションになったら、面白おかしく毎日過ごせるよ!
いじめとかないし!あっても俺そういうの許さないから~」
「なにそれ…」
何を突拍子のないことを言っているのか。
ぽかんと彼を見たまま、呆れている。
これからどうしよう。
また、ここから落ちたら…どうにかなるのだろうか。
はあ、とため息をついた時だった。
「もし、俺の世界のナレーションになってくれるなら…絶対退屈させない!約束するって!
あ!そうだ!ホスピタルストレッチャーとかで毎日どんちゃん騒ぎ!
ね、どう?俺の世界。来る?」
それはあまりにも、あまりにも適当なナンパだ。
意味不明で、ハチャメチャで。
未だ眠っているであろう私を、自分の世界へと誘っている。
笑顔で私を誘う彼は、死神か何かの類なのだろうか。
いや、彼も私の夢の一部なのだろう。
どうせ、また私を失敗しないようにするのだ。
「…うーん、そうだね。……もし…もしさ、この世界から脱出できたら」
私がそう言いかけた時には、もう彼は私の手を握り輝く目で「ありがとう!」と笑う。
さっき私を追い詰めた言い方とは違う。
私を歓迎してくれている。
それがどれだけ嬉しかっただろう。
今更、人のぬくもりみたいなものを感じた気がした。
……こいつが人かどうかもわからないけど。
「ねえ、名前…教えてよ」
「俺?道本(どうもと)だよ。道本夢好(どうもとゆめよし)!」
また、にかっと笑った彼を見て。
いいな、彼の世界に行きたいと望んだ。
だって、本当にいじめなんてないんだろう。
誰がきもいとか、誰が汚いとか、誰が臭いとか。
服装がダサいとか、メッセージの返事が遅いとか、一緒にトイレにいかなかったとか。
そういうくだらないことでいじめられることなんてないんだろう。
それなら、なんでもよかった。
「そんじゃ、俺いくわ。俺の世界で会おう!待ってるよ」
立ち上がり、背を向けた彼に声をかけようとしてとどまる。
どうやって彼の世界にいけばいいのかとか、
私は今どうしたらいいのかとか、
そういうの全部、頭に入ってきたのだ。
それから、あっ、と彼のほうに視線を戻したら、
「ASAPでよろしく!」
そう言って、彼は目の前からすっと消えてしまった。
もし、私がこの世界で生きると思いなおしたら、
また何もかも忘れてしまうのだろうか。
それとも、なんにしても現実の私が起きるのだろうか。
そっとその場から立ち上がる。
ぱきぱき、と膝がなり、それがリアルと夢の境界線を曖昧させる。
でも、これは夢だ。
そして、私は今、彼の世界にいこうとしている。
私はこのまま、起きずに。
そう、起きずに、だ。
いつの間にか、背中のフェンスは消えている。
私の夢だからだろう。
夢だと自覚すれば、どうにでもなるのだろう。
いつの間にか、地面は見えないがけっぷちに立たされている。
ああ、そうだ。
私が現実でこの光景をみた。
あの時と、気持ちが同じなのは、私が、どうなるかわかるからだろうか。
そっと右足を前に出す。
風は吹かない。
体も揺れない。
勝手に落ちない。
ふう、とまた息をついて。
目をゆっくりと閉じて。
「ASAPね。……本当、バッドエンドばっかり」
そして、私は重心を前へと傾け。
そのまま。
落ちたのだった。
【END】
どうも「もしもし?かなべぇ?ナレーション!ナレーション見つけてきた!」
ナレーション「待って。マジで意識あるんだけど」
どうも「あ!やっほー!はいこれあいさつ代わりのホスピタルストレッチャー!!!」
ナレーション「ぎゃー--!!!」