過酷な世界でヒスりたくない   作:腹切りたい焼き

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お久しぶりです。
転職活動していた影響で執筆の時間が取れず、投稿が遅くなり申し訳御座いません。

仕事も365日シフト制勤務になったため、執筆時間が取れるのも不規則になりますが前の会社より時間に余裕があるのでもっと書けたら…と思っています。
目指せ年内エデン条約完結。(多分無理)

章の序盤なので、今回も山なしになってしまいます。
次話では少し話の時系列を飛ばして、少しでも面白味のある部分を書ければと思います。


12.推定裏切り者たちの顔合わせ

 正義実現委員会の部室から補習授業部のために割り振られた教室に移動した。

 

 とりあえず各々机に座り、先生は教壇の上に立つけど誰も言葉を発しない。

 

 どこか引き攣った顔をしている阿慈谷ヒフミ。

 

 まだ『バカ』のレッテルを貼られたショックから絶望に満ちた表情を浮かべる下江コハル。

 

 無表情なせいで何を考えているか分からない白洲アズサ。

 

 何が楽しいのかニコニコしている浦和ハナコ。

 

 出しゃばる気がないので黙って今後のことに頭を回しているオレ。

 

 そしてそんな光景を困りつつも笑顔で見守る先生。

 

 中々にカオスな空間だ。

 

 

「こ、これで全員揃いましたね…」

 

 

 そんな中、部長である阿慈谷が声を上げた。

 

 このまま時間を無駄にするようなら仕方ないからオレが、と思っていたので正直助かる。

 

 …いや、このままだと他の奴に話の腰折られそうだしフォローしとくか。

 

 

「それで、補習授業部って何をするんだ? オレは何も聞いてなくてな」

 

「それは私から。その名の通りだけど、成績の振るわない生徒たちが放課後に集まって勉強をして落第を回避する。ティーパーティーからシャーレに依頼されて例外的に作られた部活だよ」

 

 

 オレからの質問を先生が無難に答える。

 

 裏にある策謀を除けば事実だし、オレも変にツッコむこともないので成程と相槌を打つ。

 

 

「そう言えば、何故遠山さんはトリニティの部活に参加することに?」

 

 

 すると浦和が横からそう訊いてきた。

 

 確かに気になることだろうけど、オレも馬鹿正直に「羽沼マコト(クソバカアホ狸)に嵌められました」とか「エデン条約を妨害する危険因子としてこの補習授業部(ゴミ箱)に放り込まれました」とか言うわけにはいかない。

 

 

「そうよ! なんでゲヘナと一緒に補習受けなきゃいけないのよ!?」

 

 

 どう答えようか少し悩むと、正気を取り戻した下江が声を荒げる。

 

 こうも分かりやすく目の敵にされるのは面倒だけど、この程度で苛立つ程オレもガキじゃない。

 

 

「オレは万魔殿──トリニティでいうティーパーティーからの依頼で、エデン条約締結に先駆けて送り込まれた親善使節ってだけだ。本来ならオレの補習テストはエデン条約締結後が目途だったし、このタイミングでトリニティでも補習テストがあるって話が出たから交流ついでに一緒に受けてこいって言われたんだよ」

 

「ふ、ふんっ! それで1人しか来てないって、ゲヘナの中でも相当バカなのね!」

 

「何言ってる。ゲヘナ生がまともに補習とか受けるわけないだろ」

 

「ええ…」

 

 

 的外れな罵倒に事実を返したが、今度は蔑みの視線を向けられる。

 

 出欠席とか補習なんて風紀委員会でも放置されてる案件だ。まともに管理してないのに真面目にやる奴なんかいるわけないだろ。

 

 立場上拒否出来ないだけで、受けなくていいならオレだって受けたくない。

 

 

「まあ、オレも特別学力試験に合格しないとゲヘナに戻れないからな。やることはやらせてもらう」

 

「ふん。どうだか」

 

 

 真面目にやると伝えるも、信用されずそっぽを向かれた。

 

 こればかりは仕方ない。下江からすれば嫌悪の対象であるゲヘナ生が相手だ。

 

 こちらとしても変に踏み込むつもりはないし、最低限敵対しなければいいと思ってる。

 

 オレの目的は『ブルーアーカイブ(原作)』通りに補習授業部編を終わらせること。特に浦和ハナコ(繊細な相手)がいる以上、無意識に地雷を踏んで敵対することは避けたい。

 

 

「とりあえず、みんな初対面だと思うし自己紹介しない?」

 

「そ、そうですね! で、では私から。阿慈谷ヒフミです、一応この補習授業部の部長…ということになっています」

 

 

 オレと下江の会話でやや険悪な空気になってしまったけど、すかさず先生がフォローを入れ阿慈谷がそれに乗っかる。

 

 こちらとしても時間を無駄にしたくないので、それに乗っかることにした。

 

 

「ゲヘナ学園2年、遠山カナタだ。向こうじゃ風紀委員会に所属している」

 

「浦和ハナコ、2年生です。よろしくお願いしますね」

 

「白洲アズサ、2年生だ。よろしく」

 

 

 オレがそれに乗っかると、浦和と白洲も続いて簡単な自己紹介をする。

 

 そして、自然とまだ名乗っていない下江に視線が集中した。

 

 

「うっ…下江コハル……」

 

 

 視線に耐えられず、ぼそぼそと名乗る下江を見て先生がにっこりと笑い自己紹介をする。

 

 

「え、えっと、補習授業部については先程先生が説明してくれた通りでして…。何か気になる点がありましたら…」

 

「大丈夫、大体理解した。これからは普通の授業に加えて、放課後に特別訓練があるってだけでしょ」

 

「えっと、訓練と言っていいのか分かりませんが、その通りです。3回ある特別学力試験の内、一度でも『全員同時に合格』すればそこで補習授業も終わりになります。先生も手伝ってくれますし、みんなで頑張って落第を免れましょう…!」

 

 

 不安混じりに阿慈谷は付け加える。

 

 浦和ハナコ(露出狂)白洲アズサ(ガスマスク)下江コハル(反発する後輩)遠山カナタ(ゲヘナ)なんてメンバー、不安を覚えない方がおかしい。

 

 ただなんというか、聞けば聞く程変な合格条件だ。テストの結果なんて個々人の問題だし、全員同時に合格しなきゃいけないとか怪しさ満点だ。仮に3回合格出来なかったらどうなるのか、それを桐藤ナギサから直接聞いているのか少し知りたい気もする。

 

 まあ、愛だのなんの可愛がっててくれた先輩が実は自分を退学に追い込もうとしているなんて普通は思えないよな。

 

 学園のトップだから。普段から気にかけてくれているから。だから、多少変なところがあっても気にすることじゃない。そう思うことは普通だ。…いや、単純にお人好しで疑うことをしないだけなんだろうけど。

 

 

「つまりこの集まりは、各自のリタイアを防ぐための措置。私にとっては特にサボタージュする理由もない」

 

「そ、そうですね! 頑張りましょう! えっとアズサちゃんは転校してからあまり時間も経っていないんですよね? まだ学園に慣れていなかったせいもあるでしょうし、みんなで頑張ればすぐになんとかなると思います!」

 

「あら? 白洲さんはこちらに転校されて来たのですか?」

 

 

 そう阿慈谷が激励すると、転校の言葉に気になって横から質問する。

 

 学園が国家相当であるキヴォトスの性質上、転校生ってのはかなり珍しい。

 

 マンモス校であるゲヘナ学園でも転校生はあまり遭遇したことないし、それにお嬢様学校であるトリニティ総合学園は転入条件はかなり厳しいはずだ。

 

 もし転入出来るとすれば誰かしらとのコネがあるか、もしくは何か特殊な事情があるのか。

 

 オレみたいに無駄に裏があると思い込んだわけじゃないんだろうけど、滅多にないことだから気になったのだろう。

 

 

「あ、書類上そう書いてあって…。も、もしかして余計なことを…?」

 

「いや、別に隠すことじゃないから気にしなくていい。こう言われるのは慣れるべきことだし、そのための努力もする」

 

 

 そんな白洲のまっすぐな姿勢に、浦和は笑みを零す。

 

 裏表のない、まっすぐなその言葉で白洲のことを気に入ったのかもしれない。

 

 

「私も、アズサちゃんって呼んでもいいですか?」

 

「…? 別にいいけど」

 

「では、アズサちゃん。ヒフミちゃん。コハルちゃん。それからカナタくん。うふふ、なんだかいい響きですね」

 

「…オレも名前呼びか?」

 

 

 オレのことも名前で呼ばれ、驚いて思わず口を挟む。

 

 『浦和ハナコ』がゲヘナに対して、下江のような嫌悪感を抱いている描写はなかったような気がするけど。それでも名前を呼ばれるとは思っていなかった。

 

 ただそれはあまり良くない。

 

 

「あら、ダメでしたか?」

 

「ああ、苗字呼びにしてくれ」

 

 

 その言葉に一瞬浦和の表情が強張り周囲の空気も凍るが、言葉を続ける。

 

 

「エデン条約でこれからは仲良くやろうって言ってるが、すぐに今までの対立関係が解消されるわけじゃない。補習テストが終わってもトリニティに残る以上、誤解を与えるような真似は控えるべきだ」

 

 

 憎しみ合っていた国同士が和平を結んでこれからは仲良くやろうとしても、国民の感情がすぐに良い方向に傾くとは限らない。

 

 あいつらは敵だと。そう長年教育されて(刷り込まれて)きたのに、たかがその程度で差別や対立がなくなる程人間は単純じゃない。根付いた意識を根絶することはまず不可能で、100年経ったとしてもその過去がある以上因縁は続く。

 

 特にパテル分派*1はゲヘナ嫌いで有名だ。エデン条約が締結しても、差別意識や対立意識が完全に解消されるはずはない。

 

 

「カナタ、それは──」

 

「放課後の補習授業には出る。だけど、それ以外では出来るだけ関わるな」

 

 

 先生が何かを言おうとするけど、被せるように拒絶の言葉を告げた。

 

 現状羽沼マコトに先手を打たれたせいで、補習授業部への妨害に関する対抗策なんてなんにも立てられていない。

 

 なのである程度オレが孤立していた方が裏で色々動きやすいし、これ以上不確定要素を増やして想定から外れるのも御免だ。

 

 それにゲヘナの生徒を親しげに名前呼びする生徒がいたら、トリニティ内でイジメのターゲットになるかもしれない。特に正実に所属している下江は立場上危うい。

 

 そういった後々のことを考えれば、一定の距離を取った方がいいに決まっている。

 

 その結果人から悪印象を持たれようと、必要なことだと割り切るしかない。どうせ補習授業部編(この話)が終われば、こいつらと関わることもない。なら、そんなことを気にして身動き取れなくなる方がバッドエンドに近付く。

 

 溜め息を吐き、カバンを持って席から立つ。

 

 

「これから風紀委員会の業務があるので失礼する」

 

「え、あ──」

 

「このホテルの滞在してるから、何かあるならフロントを通してくれ」

 

 

 あらかじめ用意していたホテルの住所が書いてるメモを机の上に残し、何か言いたげな阿慈谷を無視して足早に教室から立ち去る。

 

 試験勉強に風紀委員会の仕事、ティーパーティーと万魔殿から来る妨害への対策。どれだけあっても時間が足りない。

 

 最終試験まで縺れ込むから勉強はとりあえず後回しとして、まずは妨害への対策を考えなきゃいけない。

 

 最も警戒すべきは…2次試験でゲヘナに侵入するときか。多分ここでの妨害が一番激しくなるし、捕まったら即アウトな状況になる。

 

 となるとゲヘナ方面の動きを調べる必要もあるし、出来れば武器も準備しておきたい。風紀委員会には頼れないし、とりあえずブラックマーケットの情報屋に調べさせるか。

 

 後は銃弾とか爆弾のストックも欲しいところだけど、トリニティにいて監視もあると想定出来るから過剰に準備するのも難しい。

 

 今までオレ1人でやってきたこととは違う。後手に回っているこの状況から都合のいい結果へ持ち込む。失敗は出来ない。

 

 喉奥にある不快感を飲み込み、足早にホテルへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
トリニティ総合学園の最大分派の1つ。聖園ミカが現首長。

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