有言実行出来ず、半年以内に更新出来なかったクソザコです。
仕事がごたついていたのと、転職活動していたのでまた遅くなってしまいました。申し訳御座いません。
まだ仕事も落ち着かないのでどうなるかは分かりませんが、ひとまず年内に更新出来て安心しています。
サブタイトルは例によって思い付かないので、後でつけます。多分。
また今回やりたいことを詰め込んだ結果9000文字突破したので、時間のあるときに御覧ください。
ブルアカふぇすもありますし、次回こそは1月中に更新出来るよう頑張ります。
「ふぁ……」
風紀委員会へ復帰してしばらく経った平日の昼下がり。利用者がまったくいないゲヘナの食堂で机に肘をつき大きく欠伸をする。
いつもなら昼時に休めているんだけど、今日は昼前に起きた喧嘩の仲裁だったりその調書を纏めていたらすっかり遅くなった。
まあ、他の風紀委員たちもいたけど女性に飯抜かせるわけにもいかないし。オレもオレで風紀委員会の業務を覚え直さないといけないからいいんだけど。
とはいえ、やることが多くて正直キツイ。
ゲヘナがアレなのは言わずで風紀委員会が忙しいのは仕方ないとして、万魔殿からの業務が無意味だけど手間が掛かって凄く面倒臭い。それに通常の授業に合わせて補習もある。
オレ自身頭がいい方じゃないし、特に理数系は苦手だ。
自宅に帰ってから予習復習しないと、来月ある留年を掛けたテストでボーダーラインを下回る自信がある。
昼間は風紀委員会と授業、放課後は補習、帰ってから予習復習。そんな生活をしばらく続けているのでプライベートな時間はほぼないし、飯なんかも銀鏡が簡単なご飯作ってくれたりレンチンで食べれるものを買ってきてくれている。ますます銀鏡に頭が上がらない。
そのせいで前の住居から持ってこれてない家財道具もあるし、陸八魔にも会いに行けてない。エデン条約のときの対策も自分の手が回せないからブラックマーケットの情報屋にまかせっきりだ。
生きている以上武器とか食料の搬入ルートはあるし、瞬間移動とかそういう理外の手段でも使ってない限り完全に痕跡を消すことは不可能だ。カタコンベの位置はおおよそ分かってるのでその付近で目撃される車両や生徒の目撃情報と範囲も絞り込めるから問題なく情報が集まると踏んでいる。
ミサイルに関してもアリウス自治区から撃たれたら仕方ないけど、アリウス自治区の外から発射するなら必ず現場調査が必要になる。見つかる可能性は低くても、ミサイルの発射タイミングと着弾予想が分かれば生き残る確率は高まる。現状このぐらいしか動けていない。
……どうせ先生が入ればいい方向に行くんだ。こんな面倒なこと、とっとと終わらせてぇ。
「はい、お疲れ様」
ぼんやりとしていると、机の上に料理が乗ったトレイが置かれる。
「あー…悪い
「他に人いないし、大丈夫。私も休憩したいし」
そういって愛清フウカはオレの対面の席に座る。
愛清ともオレがゲヘナ学園を出奔する前の知り合いで、混んでるの中で食うのがあんまり好きじゃなくて時間ずらして食堂に来てたお陰で話すようになった。
まあ話すといってもほぼ愚痴り合いで、給食部の仕入れに付き合ったり食堂の掃除手伝った程度でプライベートでどっか遊びに行ったことはないけど。
「今日は…鯵の開き?」
トレイの上に載った料理は白米と味噌汁、それと鯵の開きだった。
時間も時間だし、余ってるものでいいからと注文した。だけど日替わり定食も肉系だったはずだし、そもそも温め直した感じじゃなくて生のやつをちゃんと焼いた様子なので思わず首を傾げる。
「メインはお昼でなくなっちゃったの。それで仕入れのときおまけで貰った鯵しかなくて…。余り物しかなくてごめんね」
「いや、十分だよ。むしろ貰ったやつ食べていいのか?」
「うん。貰った数も少し多かったし。それに私も好きで作ったから」
「ありがとな。じゃ、いただきます」
しっかり手を合わせ、箸を取りまずは味噌汁から口に付ける。
前と変わらず美味しいとも不味いとも言えないやや薄味の味噌汁だけど、普段インスタントしか飲まないからか手作りってだけでも満足だ。
次は鯵だ。中心の切れに箸を入れ、頭側から身を解し口に運ぶ。身はふっくらしてるけど、皮はパリッとしつつも焦げてはなくて焼き加減も丁度いい。
愛清の料理は基本薄味で好みとは違うんだけど、不思議と毎日食べてても飽きない。…これが家庭の味か。
「……」
「…じっと見られると食べにくいんだけど」
「あ、ごめん。魚綺麗に食べるなーと思って」
「そうか?」
「ええ。骨も箸で綺麗に取り除いていますし、口から出すようなこともしていない。身も適度に解れていて、綺麗に食べられていると思いますわ」
「え、ハルナ!?」
「うわ出た」
気が付くと銀髪の少女──
「こんにちは、フウカさん。それにお久しぶりですね、カナタさん」
「…なんの用で?」
警戒が隠しきれず、やや低い声が出る。
…愛清と黒舘ハルナが揃ってるだけで嫌な予感してくるな。一応手は打っとくか。
「ふふっ、そう邪険にしないでください」
「どの口が」
上品に笑う黒舘ハルナに対して思わず悪態を吐く。
黒舘ハルナ、そして美食研究会とはブラックマーケットにいたときからの因縁がある。
それはオレが『武装探偵』の看板を掲げる前にいたヘルメット団の仕事で警備してたオークションに出品された高級食材の強奪に始まり、『武装探偵』の仕事で運搬していた珍しい食材を奪うために強襲されること数回、さらにはプライベートでよく食ってたお気に入りのラーメン屋を爆破され……
これで弱いならまだいいけど、やけに強いから面倒臭い。『武装探偵』やってて2番目に厄介だと感じていた。
1番? 当然玄龍門の構成員どもだ。立場上倒すわけにもいかず、だからと言って関わらないわけにもいかず。なのに竜華門主のせいでその怒りの矛先がこっちに向いて襲撃されるもんだから、命がいくつあってもたりない。…あれ、竜華門主の方が厄介なんじゃねえか?
「あれ? カナタとハルナって知り合いなの?」
オレたちの見知った様子を見て、愛清が首を傾げる。
「まあ、色々な」
「ふーん」
オレが言いたくなさそうなのを察してか、唇を尖らせつつも相槌を打つ。
当然ながら愛清にはオレがブラックマーケットにいたことも、『武装探偵』という便利屋をやっていたことも言ってない。だけど、こいつとの話になれば自然とそういう話が出てくる。
愛清はそういうのとは無縁だし、無駄なことを知って後ろ暗いことに関わらせることはしたくない。
それにあんまり話すと、前を思い出して頭が痛くなってくる。
ああ、本当にあのラーメン屋惜しかったな。ちょっと厨房が脂っぽかったりスープのアンモニア臭ちょっと強めなだけだったのに。またあそこの博多とんこつ食いたいなぁ……
かつて葬られたラーメン屋を思い出していると、黒舘ハルナの視線がオレの背後に向けられているのに気付き──
「確保ー!」
「ぎょわーー!」
突如背中に大玉スイカ──じゃなくて、
背後から両手首を掴まれ振り解こうとするも当然ヘイロー持ちに力勝負で勝てるはずもなく、抵抗する程背中に柔らかいものが押し付けられる。
その感触は確かめる必要もないもので、必然的に意識してしまう。
ドクンと、HSSの血流が強まるのを感じて──
「ふんっ!」
思いっ切り机に頭を打ち付ける!
「カナタ!?」
「ええ!?」
オレの奇行に愛清たちが驚きの声を上げる。
だけどこの痛みのお陰で気が紛れてヒスりそうなのが少し落ち着く。この前の銀鏡のバックドロップから学んだ痛みによる【HSSキャンセル】だ。
「いってぇ…」
但し生半可な痛みだと効果がないので全力でやる必要があるし実際の効果は気が紛れる程度だし、周りからは変な目で見られるのが弱点だ。
「と、とりあえず縛っちゃうよ?」
背後から
どうせこの状況じゃ抵抗しても勝てないし、次に繋げる方が賢明だ。
「では、行きましょうかフウカさん」
「えちょ「はーい☆ ちょっとジッとしててくださいねー」もごー!」
目の前で愛清が
涙目でこっちに助けの視線を向けてくるけど、こんな状態なのでどうしようもない。
だけど、既に手は打っている。
食堂の外からドタバタと足音が聞こえてきて、扉が乱暴に開けられた。
「風紀委員会だ! 大人しくしろ!」
ぞろぞろと風紀委員たちが食堂に入ってきて銃を構えるが──銀鏡も空崎委員長もいない。これはちょっと不味いな。
「もう来たの!?」
「あら、いつもより早いですね」
まだ大きな騒ぎを起こしていないのにやってきた風紀委員たちへ美食研究会が視線を向けた。
オレはまだ猿轡を噛まされてないので、口を塞がれる前に指示を飛ばす。
「別の班に給食部の車抑えるよう連絡! 後、本部に応援要請!」
「は、はい!」
これでひとまず逃走経路と応援要請は出来た。
人質がいるとはいえ、これで形勢逆転も時間の問題だ。
「いつの間に通報を?」
当然この状況で通報出来るのはオレか愛清だけ。だけど今までの経験則か、黒舘ハルナは自然とオレに視線を向ける。
「ああ、アンタの顔見たときには通報してたぞ」
あのとき、どうせこういうことになるだろうと思って先に風紀委員会へ通報していたのだ。
正直な話、正面戦闘で美食研究会やり合ったら確実に負ける。前に何度もヒステリアモード抜きで撃退してるけど、それも状況を有利な方へ誘導することが出来たからというところが大きい。
愛清が人質に取られる距離にいること。他のメンバーがどこにいるか分からないこと。その場で戦闘になったとしてもすぐに応援がすぐ来る可能性が低いこと。
このあたりを考えて、オレが人質になってもあらかじめ通報して応援を呼んだ方が勝率が高いと判断した。
後は銀鏡たち主戦力が来てくれればどうとでもなる。なるんだけど…
「ええ、酷くない?」
「いくら美食研究会相手でも顔見ただけで通報って…」
何故か風紀委員に引かれていた。
どうせ騒ぎになるんだから先手打って何が悪い! 仕事増えるのはお前らなんだぞ!
「いえまあ、カナタさんとは前からこのような感じですので…」
「フォローすんな惨めになんだろうが!」
確かに美食研究会とは『武装探偵』のときからお互い容赦なくやり合ってたけど!
この状況で擁護されると惨めになるんだが!
チクショウこの変な風にフォローされる感じ、少し前にも味わった気がする!
「…ひとまず、ヒナさんが来る前にここから離れましょうか」
そう言って黒舘ハルナは制服からスイッチを取り出す。
まあ、
「ふせ──」
風紀委員たちに伏せるように言おうとするも間に合わず、食堂の入口が爆破される。
熱気と煙に思わず目を瞑り、収まりつつあるのを確認しつつ薄目で確認すると扉の前には風紀委員たちが倒れてる。ヘイローも消えてるし、頑丈とはいえ至近距離からの爆破は耐えられない。
「さて、ヒナさんが来る前に退散しましょう」
美食研究会が撤退の準備を始め、黒舘ハルナが愛清を担ぐ。
ここからはこっちの主戦力が来るのが早いか、こいつらが逃げるのが早いかの勝負だ。
オレはこいつらがいなくなった後で縄抜けして、風紀委員会に情報を共有すれば学外に出る前には片が付く。
「じゃあ、私頭の方持つからジュンコは足の方お願い」
「は?」
「いくよー。せーの」
「は?」
獅子堂イズミと赤司ジュンコに肩と足を持たれ、ハンモックの如く宙ぶらりんになる。
なんでオレ持ち上げられてんの? なんでえっちらおっちらと運ばれてんの!?
「いや待てなんでオレまで誘拐されなきゃいけねぇんだよ!」
「カナタさんは玄武商会と仲がいいとお聞きしたので。是非紹介いただこうと」
「でっ、っきるか馬鹿野郎!」
んなことして万が一玄武商会爆破してみろ! そんなことになったらオレも山海経に出入り出来なくなるし、それで学園間の問題になったら玄武商会の飯とか漢方とか入手出来なくなる!
いや朱城さんなら絶対問題ないけど! それでもこいつら紹介とか絶対出来ない! てかしたくない!
最悪竜華門主が収めてくれるかもしれないけど、いらん借り──それも洒落にならないぐらいデカイ借りなんてあの人に作りたくない! もしそんなことになったら、どんなこと要求されるか分かったもんじゃねえ!!
クソッ! 呑気に構えてる場合じゃなかった。なんとしてでも学外に出る前に仕留めないと不味いことになるっ!
「はっなせ、テロリストどもぉっ!」
1秒でも美食テロリストどもの足止めをするべく、魚か芋虫のように体をくねらせて歩行を妨害する。
こうなったら頼みの綱は外部からの援護だけ! まだ廊下にすら出てないけど、余裕ぶってられない。みっともなくても、1秒でもこいつらの足を遅らせるしかない!
頼む銀鏡! 早く来てくれ!
「わわっ!」
「ちょっと! 暴れないでよ!」
無駄な抵抗のお陰で2人の歩幅が乱れ、ついにはオレの肩から獅子堂イズミの手から外れかけた。
現状オレまで誘拐するのが目的だから、これでオレが落下してさらに時間を──
「よっと! セーフ!」
突然顔に柔らかいものが押し付けられて、視界が黒く染まった。
女性特有の甘い匂いと汗の臭いが混じった香りが否応なしに鼻腔を擽る。
この現実から目を背けたいけど、顔に押し当てられている感触と匂いがそうさせない。
「ちょっ、イズミ!?」
「えへへ。あぶなかった~」
前後の2人が何か言っているみたいだけど、こっちはそれどころじゃない。
オレの頭を落とさないように獅子堂イズミが抱きしめているせいで、今抵抗すればもっと拘束が強まる。
ドクン、と血流が強まる感覚。
ああ、不味い。これは、逃れられない──
さっきみたいに気を紛らわせることも、この拘束を抜け出す術がない。それにさっきの感覚が中途半端に残ってるせいでいつもより猶予がない。
グツグツと湧き上がる感覚を自覚して、抑えつける暇もなく
──さて、こうしているのも良いけれど。あんまりのんびりしてたらイオリにも叱られちゃうし、それにフウカもこのままにしておけない。反撃といこう。
縄の中で後ろに回っている腕の方向を縦から横にして空間を作り、そのまま右手を腰にスライドさせてグリップを掴みホルスターに入ったまま発砲する。
「きゃっ──」
底が空いているタイプのホルスターなので暴発することなく銃弾は足の方にいるジュンコの方に飛んでいき、突然横を銃弾が通ったことに驚いて可愛い声が漏れた。
だけど、オレの目的はそれじゃない。
銃弾は体を縛っていた縄を貫き、下半身の拘束を解く。
そしてジュンコが驚いた拍子に足の拘束が緩んだので両足で蹴って廊下に着地。そのまま右足で思いっ切り地面を蹴り体を大きく回転させた。
「うわっ!」
回転の力でイズミの手から頭の拘束が解け、ようやく自分の足で立つ。
ベルトに仕込んでいる飛び出しナイフを使って上半身の縄を切り、制服の中から1つ物を取り出して彼女たちに見せるようにピンを抜く。
「目を塞ぐことをおすすめするよ」
そう告げて、
「ゲホゲホッ! 閃光弾じゃないじゃない!」
騙されたジュンコが抗議の声を上げる。
嘘をついて申し訳ないけど、今謝ると声で位置がバレるから全部終わった後。地下牢でしっかり謝るからね。
心の中でそう謝罪し、白煙の中身を屈めた状態でハルナへ接近する。
ヒステリアモードで感覚が強化されてるお陰で発煙弾を使う前の立ち位置は把握してるし、煙の中を動けばそれが軌跡となって居場所が分かる。パニックで乱射されるのは不味いけど、彼女たちも下手に発砲すれば同士討ちになることが分かっているので下手に攻撃をしない。
「くっ──」
近付いたことでオレの姿を見つけたハルナが咄嗟にライフルを構えようとする。
けど、遅い。ハルナの愛銃はアルと同じPSG-1。その重さは約8.1kgもある。いくらヘイローを持っていて力が強くても、人を担いだ状態で長物を片手で構えて照準を合わせるのは難しい。
こちらに銃口が向く前に懐に潜り込み、そのままのスピードでフウカを抱えている左肩にタックル気味にぶつかりフウカを奪い返す。
このまま逃避行をしたいところだけど、すぐに追いつかれてしまうことは分かっている。
なので廊下には出ずカウンターの内側まで逃げ込み、そこでフウカを降ろして拘束を解いた。
「怪我はないかい、お姫様?」
「おひっ──」
大きな声を挙げそうになった彼女の唇に人差し指で蓋をする。うん、いい子だ。
「フウカはここにいて。すぐに戻ってくるから」
「で、でも…」
「大丈夫。必ず君を守るから」
心配そうにするフウカの頭を優しく撫で、オレはカウンターから外に出る。
フウカを守りながら袋小路のカウンターで彼女たちを相手にするのは無理だ。少しでも有利に戦いたい。
「ふふっ、女性を待たせるのはマナー違反ですわよ」
オレたちが隠れている場所に検討がついていたのだろう、煙幕が薄くなった食堂でハルナがこちらに視線を向ける。
「それは申し訳ない。これから埋め合わせをするよ」
女性にそう指摘されて勝てる男はいない。
「なんかカナタの様子おかしくない?」
「え~? そうかな?」
「確かにいつもより雰囲気が柔らかい感じですね☆」
ジュンコたちが少し困惑気味に話しているけど、仕方のないことだ。
普段はどうしても厳しい態度を取ってしまっているからね。
「ですが、フウカさんを連れて逃げた方が宜しかったのでは?」
「そうだね。でも、
フウカだけならオレが囮になって逃がす道もあったけど、気絶している風紀委員の子たちを放置出来ない。
このまま彼女たちをオレ1人で制圧しなければいけないんだけど──やっぱり持つべきは頼れる相棒だね。
頬が緩むのを我慢して、自然体で会話を続ける。
「オレとしてはハルナたちこそ、すぐに逃げた方が良かったと思うんだ」
「ハルっ……ヒナさんなら学外にいることは調査済みですわ」
「成程。でも、風紀委員会の戦力はヒナ委員長だけじゃない。聞こえてくるだろ? 真っ直ぐで心強い、オレにとっての勝利の女神様の足音が」
耳を澄ますと僅かに聞こえてくるヒールブーツの足音。
それを伝えて彼女たちも近付いてくる気配に気が付き一斉に食堂の扉へと視線が向く。
それと同時に扉が蹴破られ、頼れる相棒がトレードマークの赤いライフルを構えて突入とともに発砲した。
「お縄につけ、規則違反者ども!」
「イオリ──いだっ!」
まずイズミの体にイオリが放った銃弾が当たり、苦悶の表情を浮かべる。
さて、オレもイオリにいいところを見せないとね。
「流石に拙いですね。それでは皆さん、いつも通り解散しましょう」
状況を見てオレやフウカの誘拐が難しいと判断してくれたようで、そう告げたハルナはかく乱用にまだ用意していたらしい起爆スイッチを手にする。
その用意周到さはオレも大好きだけど、逃がすつもりはない。
素早くホルスターからベレッタを抜き、そのスイッチだけを撃ち抜く。
と言っても、スピードは段違いに遅くなるけどね。
「な──」
動揺するハルナを尻目に銃口をこちらへ向けようとするアカリに向け、近くにあった椅子を放り投げる。
「くっ…!」
目に見える障害物が飛んできたことで銃撃での迎撃ではなく腕で庇い、彼女の銃口が少し上がる。
それを逃さず机を足場に接近し、彼女が持つアサルトライフルを蹴り飛ばし銃身を逸らす。
これで手元から離せれば良かったんだけど、そう上手くいくはずもない。だからもう1手打つ。
自然と感覚が研ぎ澄まされ、視界に映るものがスローになる。狙うのは、銃身が逸れたことで露わになった彼女の手。
経験と感覚が確信を告げる。
ベレッタから放たれた1発の銃弾は邪魔されることなく真っ直ぐ進み、グリップを持つ彼女の小指を弾く。
「痛っ…!」
小指というのはそれ単体では力の弱い部位だけど、物を握るという点ではその力の要になる。
ヤクザが小指を落とすことを責任を取る行為としているけど、あれは小指を無くすことで握力を弱めて刀やドスを持てなくするという意味もあるらしい。
そしてヘイロー持ちは銃弾に対する耐久力はあるけど、痛みを感じないわけじゃない。少なくとも殴られる程度には痛いそうだ。
つまり小指に銃弾を撃ち込まれるということは、ヘイロー持ちとは言え思わず銃を手放してしまう程の効果を発揮する。
名付けるなら【
「ちょっと失礼するよ」
着地してからそう謝ってから、銃を落として浮いたアカリの右手を取ってそのまま後ろに回して関節を軽くキメて拘束する。
アカリの背中越しにハルナの方に向き直るとこちらに銃口を向けているが、彼女の後ろに回ったせいでフレンドリーファイアを恐れ発砲出来ない。
この角度ではハルナの指は狙えないけど、この状況なら狙える。
気取られればアカリに妨害されるから、狙いを定めるのは一瞬。ハルナの持つスナイパーライフルの銃口へ照準を定め、狙い撃つ。
放った銃弾は彼女の銃口に捻じ込まれ、バレルを破壊する。
「っ…!」
これで2人は制圧出来た。イオリの方を確認すると、既にイズミとジュンコを制圧していた。
そしてカウンターの方を確認するとオレを心配してたフウカが顔を覗かせていたので、心配ないという意味を込めてウィンクしてさっき彼女の唇を塞いだ人指し指で自分の唇に軽く触れる。
「っ!」
すると顔を真っ赤にしてカウンターに隠れてしまう。照れている姿も可愛いね。
そんなことをしていると増援の風紀委員の子たちがやってきて、彼女たちを連行していく。こっちは任せて大丈夫だろう。
戦闘も終わったので、他の風紀委員の子に指示を出しているイオリにお礼を言いおう。
「ありがとうイオリ。助かったよ」
感謝を伝えると、何故かキッと睨まれてしまう。
「イ・オ・リ~?」
不機嫌そうに自分の名前を復唱して、自分の失言に気が付いた。
オレが名前で呼ぶということは、
少し落ち着いてヒステリアモードの血流が収まりつつあることもあって、失言に気付くと同時に徐々に素面になっていく。
「あ、いや違う。違うんだよイオリ」
「何が違うんだ! そうなってるだろ!」
「イオリ。悲しい誤解なんだ。不可抗力なんだ」
「うるさい! ヘンタイ! バカ!」
「いってぇ!」
尻尾で太ももを叩かれ、銀鏡は大股で食堂から出て行ってしまう。
「待った! マジで誤解なんだよ!」
周囲から情けないのまたやってるだの聞こえてきたけど、縋るように銀鏡の後を追いかけて謝り続ける。
結局放課後まで口をきいてもらえず、その日の晩飯は銀鏡監視の下大量のピーマンの肉詰めを食べることになったのだった。