「この人が、カスミさん……」
「はい」
僕が確認を取るように言うと、やたらハッキリとした声で肯定された。
「……です」
と思ったら急にしおらしくなった。どうした。
「……どうしたんです?」
「さっき無様晒したばっかだから気まずい」
「えぇ……」
アマツが様子を問うと、かなり情けないような言葉が返ってきた。この人本当にどうなっているんだ、アノマロさんと違いすぎる。
「情けないやつだろ、こいつ」
「え、いやそんなことは……」
僕は僕でさっき叫んでしまったのでなんとも言えない。
僕の作品の鑑賞をするつもりが、まさかの有名クリエイターカスミの乱入により中断。そのままセントラル・ディメンションでフォース『ビルドリバイバル』との顔合わせをすることになった。元々するつもりではあったが、プライベートが忙しいという理由でできなかったからだそうだ。確かにこんな大物がリーダーをやっているとなればそうだとしてもおかしくないだろう。
「あ、来た。サモネちゃーん!」
カグラ先生が呼びかけた方を向くと、いつぞやに出会ったサモネさんが小走りでこちらに向かってきていた。アノマロさん共々同じフォースだったんだ……。
「すみません、遅れました……」
「いいよいいよ、いきなり呼んじゃったんだし」
「いえ、せっかくカグラさんに呼ばれたのに10分も遅れちゃうなんて……」
「だからいいって、今度デートしてくれれば」
「そんな当たり前のことしても罰にならないしそもそもご褒美じゃないですか」
「もーサモネちゃんは可愛いなぁ!」
カグラ先生がサモネさんに抱き着く。なんというか、前情報はあったとはいえ教師のこういう現場はなんとも言えないところがある。
「惚気けてないで紹介するのです」
「あ、そうだった」
前に二人のことをアノマロさんに聞いたことがあるけど、彼は二人をハッキリと『バカップル』だと言い切っていた。あの人の評は信用できることが、今日ここで証明されている。
「じゃあ、改めて。サモネです。ビルドリバイバルとしては一番後輩ですけど、その辺のダイバーには負けないぐらいの自信はあります。で、一応そこのアノマロカリスさんの妹です」
「アノマロカリスって、妹いたのね……」
「そこかよ」
僕はサモネさんの方と先に出会ったから意外には思わなかったけど、確かにアノマロさんって言われないと妹がいるとかわからない風格がある。孤高の一匹狼というイメージが強いからか、そういう家族関係を彷彿とさせるオーラがないというか、ずっとひとりで生きてきたかのような…………そんな気がする。
「あぁそれと、カグラさんは”私の”ものなので、絶対に盗ろうだなんて思わないでくださいね。もし奪おうとしたら、『ポカン』ですから」
なんかいきなり様子がおかしくなってきた。「私の」を強調しすぎでは? というか、『ポカン』ってなに?
「気を付けろ、あれは『ポカン』じゃ済まないぞ」
「おわぁっ!?」
一体いつから近付いてきたのか、カスミさんが後ろから話しかけてきた。中腰は辛くないのだろうか。アバターだからいいのか。
「この前カグラをコミティアに誘ったらパソコン壊されかけた……。マジで怖いよあの子、逆らえねぇよ……」
「なんのお話ですか?」
「いえっ! 何も!! 異常は特にございませんッ!!!」
「…………」
このフォースの力関係がわかった気がする。いや、それでいいのか? はぁ、もういいや、どうにでもなれ。
「それでカグラさん、十人も集めて何するんですか? ビルドリバイバルだけならまだしも、この人達ってカグラさんの学校の子なんですよね?」
「ふっふっふ、やはりGBN初心者よサモネちゃん……」
カグラ先生が自信ありげに手を腰に置く。僕らもこの人数で何をするのか全く知らされてないので、彼女が一体何をするつもりなのかは気になる。
「こんなに人数集まったんだから、やるしかないでしょ! ガンプラバトル!!」
「うん。まぁそんな予感はしてた」
レイメイ先輩が冷静に呟く。僕も正直そうだろうと思っていた。
「十人なら五対五で割って団体戦ができる。ついでにSSSランクの怪物であるアノマロからビルドコインがたんまり貰える!」
「オイ」
「やるしかないっしょ!」
「やるとしてもコインはやらねぇよ」
アノマロカリスさんの制止も虚しく、団体バトルの話は進んだ。ごめんなさい師匠、僕こっちで欲しい服とかアクセサリーとか結構あるんだ。
さっきカグラさんが言った通り、バトルは五対五の団体戦。先に敵機を全て殲滅したチームの勝利。チームの内訳はビルドリバイバルと僕たち一年生組で分かれるけど、人数差があるためビルドリバイバルから二人をこっちのチームに加え入れる。
「サモネちゃぁぁーん!!」
「ビリーヴゥゥー!!」
ということで、
「さっきのことがあるから後ろ撃たれそうで怖い……」
「もう、そんなことしませんよ。本当にカグラさんに危害が及ぶわけじゃありませんし」
「……本当かしら」
「完全な敵意を持って対峙するんだったら撃ちますけど」
「やっぱり撃つじゃない!?」
ビリーヴ先輩はともかく、サモネさんと組むのは初めてだ。バトルしてるのも見たことないし、一体どういう戦い方をするのか……。
ところで、さっきからなんか大人しいアマツが気になる。まぁ十人もいれば内向的なアマツは萎縮しちゃうだろうが、そうだとしたら気を悪くしていないか心配だ。
「ツバキさん」
「おぅ、なに?」
と思ったら普通に話しかけてきた。人見知りだけど話せはするんだな。
「サモネさんって、私と口調被ってませんか?」
「そこなんだ……」
アマツへの心配は杞憂だとわかったので、バトル開始!!
────────────────────
場面は変わって、機体を格納するコンテナ内。
僕はロゼアに乗るため、アマツ、レシアたちとここに来た。それと、まだフォース名を決めていなかったのでその発表も兼ねて。我ながら結構良い名前を思い付いたと思うので、僕は自信ありげに宣言した。
「『ART_club』…………ですか」
「そう、いいでしょ。三人のイニシャルを繋げたんだ」
「まぁ本当はLだけれど、元のラフレシアはRだから良しとしてあげるわ。それに中々良いセンスだものね」
「私も、いい名前だと思います」
「よし、じゃあこれで決まり!」
フォースに僕とアマツとレシアを登録して、名前を入力して保存。これでフォース『ART_club』の結成だ。
さて、フォースも組めたことだしそこにあるアマツの機体に注目しよう。リアアーマーに見慣れない武装があるから少し気になってたんだ。
「アマツ、これって新しいウィザードクロス?」
「あぁ、はい。過去の改造機体から拝借したので、少し心苦しいんですが……」
アマツの顔がほんの少しだけ苦悶に歪む。言われなきゃわからないレベル、それも一瞬。恐らくアマツの過去の出来事が由来のものなんだろう。触れたくない過去に触れてまで作ってくれたんだ、それだけ僕と、”GBN”でガンプラバトルをすることに、価値を持ってくれていることを嬉しく思う。
「有線式のビームブレイサー三基、とことんまで近接なのね」
「ビームブレイサーなら中距離もいけます。近距離特化なのは変わらず、そのまま対応距離を伸ばした形です」
クロスレイには新たなウィザードクロスの他にも『白虎』がそのままドッキングされており、白兵戦特化の仕様となっている。『玄武』『白虎』の防御力特化仕様が『戦神』なら、こちらはさしずめ『武神』と言ったところか。勝手に名付けちゃったけど。
「それで、このウィザードの名前は?」
僕はアマツに1番気になっていたことを問いかける。
「そうですね……、……『青龍』で、どうでしょうか」
「うん。いいと思う」
四聖獣に由来する四種のウィザード、その三種目がこの『青龍』……二種類に留まっていたヒカリの成長が伺えるドラマ性がある。それは僕の『美学』としても、素晴らしいと言えるものであった。
「よし、じゃあ先輩を待たせてもよくないし、早く行こう」
「はい」
「わかったわ」
「うん。フォース『ART_club』、始動!!」
────────────────────
『Battle start』
「そぉぉぉーいッ!! なのです!!」
「ぐっ……!!」
バトル開始、出撃直後から奇襲を仕掛けたのは特徴的な語尾のコネコ先輩。黒いストライクがシュベルトゲベールで攻撃してくるのを、私は『白虎』で受け止めた。
「アマツ!」
「大丈夫です! ここで一機落とします!」
ツバキさんが心配してくれてる、凄い嬉しい。……じゃなくて!
ストライクを振り切り、地上に着陸。多少無理な体制だったが問題なく着地できた。スラスターを増設したおかげか。
ウィザードクロス『青龍』は、三基のビームブレイサーを持つ増加スラスター。デモニックバルバトスから拝借した、過去との決別の証…………のようなものだ。
ツバキさんと出会って、GBNを初めてまともにプレイして、私は多くのことを学んだ。というよりは、気付かされたのだ。この世界は、マスダイバーたちがあれほど忌み嫌うほど酷いものではなかったのだと、ただのバグだと一蹴していたELダイバーは、バグではなく紛れもない奇跡の存在なのだと。
だから、バルにも見せたかった。この世界を。でも、GBNにいるのはいい人だけではない。マスダイバーがGBNを嫌うのと同様に、ブレイクデカールを嫌うダイバーも少なくないはずだ。だからせめて、魂だけでも連れて行きたかった。
この『青龍』に、地獄に堕ちてしまった
だから、この初陣の舞台で私は…………絶対に勝ちたい!
「ヤタノカガミ……そんな高級装甲を白兵戦用の武器にするなんて随分贅沢するのです!」
「……っ、ノワールじゃない……? ストライクフリーダム……?」
咄嗟にストライクノワールだと認識してしまったが、よく見ればストライクの要素は胸部とアンテナぐらいで、他はほとんどストライクフリーダムだ。いやむしろ、これどこかで見たような……。
「ふっふっふ、気付いたのです。『P.S.F.N.』……題して、『ガンダムパーフェクトストライクフリーダムノワール』なのです!!!」
ででーん!! という効果音と共に、機体が飛び上がり、ポーズを取った。効果音は恐らく気のせいだ。
「……、長い……」
私は率直な感想を口にする。流石に誰だって思うだろう。
「気にしてること、言ったのです!!」
だがそれが逆にコネコ先輩の逆鱗に触れた!
……というのはさておき、スーパーアグニによる砲撃を避け、追撃のため分離した二基のスーパードラグーンを視認。こちらに撃ってきたビームを『白虎』のヤタノカガミで返して、ドラグーンを両方とも破壊した。
「あー!! 迎撃するのはナシなのです!?」
「ヤタノカガミなんだから当然でしょう!」
ヤタノカガミはビームを反射する鏡面装甲、これぐらいは覚悟してもらいたい。
『青龍』からビームブレイサーを射出。右腕に装備して反撃する。ノワールはビームシールドで防ぎ、スーパーアグニで攻撃。そのビームを反射して、再びビームシールドで防がれた。私はビームブレイサーのサーベルを展開、ノワールもアグニの状態のままビームを発生させ、激突。
「ッ、ッッ…………!! 強い……!」
「単純なパワーならこっちが上なのです!」
鍔迫り合いはあちらが勝利し、クロスレイは弾き返される。直後、肩部のパンツァーアイゼンが射出され、クロスレイの右腕を掴まれた。
「なっ──!!」
「これで終わり、なのですッ!」
リードが巻き上げられ、急速にノワールとへと接近。ノワールはリヒトファングを展開してトドメを刺そうと構えている。
「ぐっ…………!!」
ここでやられる訳にはいかない!
小型のビームブレイサーを射出、下からビームを撃ってノワールの左腕を破壊する。
「ッ!?」
左腕と共にリードも切れ、爆発の衝撃でどちらも吹っ飛ばされる。お互い地上に降り立ち、そのツインアイを煌めかせて睨み合う。
「ふぅ…………、私とこのクロスレイ『武神』は、こんなところで倒れません!!」
バトルは未だ、序章である。
EX-CD ウィザードクロス『青龍』
『玄武』『白虎』に続き、ヒカリがビルドしたウィザード。
リアアーマーに大型のスラスターユニットと大型一基、小型二基のビームブレイサーを搭載。対応距離を伸ばしたことによって、クロスレイの汎用性を更に高める装備となった。
ビームブレイサーは有線によって繋がれ、大型は威力の高いビームキャノンとして、小型は速射性の高いビームガンとして使用可能な他、どちらもビームサーベルを展開できる。
ガンダムパーフェクトストライクフリーダムノワール
凄腕ダイバー『マスクレディー』と戦ったコネコが、『ルージュがあるならノワールもあっていいのでは?』と思い制作したリスペクトモデル。
基本的な仕様は変わらないノワールカラーの機体で『P.S.F.N.』と呼称されるが、コネコのチョイスで格闘特化にアレンジされている。
武装は31mm近接防御機関砲二門、シュペールラケルタ・ビームサーベル二基、ロケットアンカー「パンツァーアイゼン」、ビームブレイド「リヒトファング」、コンポウェポンポッド、スタンユニット「インドラ」、ビームシールド、スーパードラグーン八基、クスィフィアス3レール砲二門、超高インパルス砲「アグニ」、対艦刀「シュベルトゲベール」。