ガンダムビルドダイバーツバキ   作:レイメイミナ

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計画⑨:灯

「ハァ、ハァ…………!」

 

 強い。

 

 ただのお気楽なオタクかと思っていたが、もしかしなくとも失礼だ。この人は間違いなく強い。

 

「フッフッフッ、息が上がっているのですよ?」

「うるさい、です……!」

 

 接近し、刀を振るう。VPS装甲の前に実体剣が効かないことは承知している。故に、これはただの揺さぶり。

 

「おっと……!?」

「くっ!」

 

 完全な死角からの攻撃、ビームブレイサーのビームはノワールの後退によって容易く回避される。よくもまぁあんな大層なものを背負って、ここまで動けるものだ。こんなところで出力の違いを見せつけられるとは。

 

 最近のアップデートによって、GBNは二年ぶりに大幅な改修が施された。その中でも目を引くのが、機体設定のフィードバック。

 

 今までGBNの設定フィードバックは、あくまでもガンプラバトルという『対戦ゲーム』を維持するために必殺技を除いて控えめなものであった。例えばストライクを始めとしたバッテリー機は原作では活動限界があるが、GBNにはそれがなく、ある程度の出力差だけであるとされている。

 

 しかし、今のGBNはそのフィードバックがあまりにも濃く、強く出ている。バッテリー機には活動限界が設けられ、そのうえPS装甲とVPS装甲は被弾する度にそのバッテリーを消費する。そして規定量消費すれば、フェイズシフトダウン状態となってしまう。

 

 これ以外にも原作の設定が色濃く反映されるため、あるユーザーからは賞賛され、あるユーザーからは批判された。この賛否両論のアップデートはGBNのガンプラバトルを大きく変え、戦法や制作におけるまで、今までにない『深み』を演出している。

 

 私としては、複雑であるが。

 

「そろそろ、バッテリー限界じゃないのです?」

「ッ……、なんの!」

 

 レールガンによる攻撃が飛んでくる。ヤタノカガミ対策だ。私は横に逸れて回避してから、三基のビームブレイサーによる一斉射撃を喰らわせた。それもビームシールドによって防がれる。

 

 相手は核エンジン、こちらはバッテリー。確実に分が悪い。それでも、勝てない相手じゃない。

 

 核エンジンはSEED本編において、補給を受けることなく無限にエネルギーを生成し続けることができる。でも、そのエネルギーの供給が追いつかなく(・・・・・・)なれば、例え核エンジン搭載機であってもフェイズシフトダウンを起こしてしまうのだ。

 

 ならば、絶え間ない攻撃と相手の攻撃を誘発し続け、強制的にダウンさせてやる。名付けて、『ブレーカー作戦』!

 

 前方にヤタノカガミを展開しながら突貫。レールガンによる攻撃は避けて、着地直後すぐにショットガンを構えて発射。ノワールはいつも通りにビームシールドで防ごうとするが、散弾故にカバーし切れず──

 

「なっ!?」

 

 右肩のガトリングに被弾、誘爆した。

 

 やはり実弾に強く腕まではやれなかったが、このまま攻撃し続ければエネルギー切れを起こせる可能性は大いにある。

 

 絶え間なく攻撃を浴びせるため、背後と頭上にビームブレイサーを飛ばす。反応したコネコ先輩は攻撃を避けてから上空に避難。という流れを読んで、彼女より先に私が空を取る。

 

「っ……! ……へぇ、結構やる奴なのです?」

「遅いですね。ツバキさんはずっと前から気付いてくれてました、よッ!!」

 

 後にこの発言を後悔するのは言うまでもない。

 

 ガーベラストレートによる上からの打撃。叩き切ることは不可能だが、ビームコーティングのおかげでビームシールドを相手に焼き切れることはない。続けてビームブレイサーによる攻撃は、流石にドラグーンが出張って封じ込めるようだ。

 

「気付かれた……!」

「じゃなきゃ死ぬのですッ!!」

「ぐッ!」

 

 出力差で押し返され、パンツァーアイゼンで掴まれる。そしてノワールが空中で一回転し、慣性によって私のクロスレイは地上に投げ飛ばされた。

 

 ……ドラグーンのビームはなんとか避けたから、ビームブレイサーは三基とも健在。やれる。このまま絶えず押し続ければ、例え核エンジン搭載機といえど、不利な状況にまで押し込める!

 

「はああああぁぁぁッッ!!!」

 

 最大推力でノワールに迫ろうとした、その瞬間。

 

『EMERGENCY』

『energy down』

 

「ッ……!!?」

 

 まずい……!?

 

 こんなところで、エネルギー切れ……!?

 

「フッ、そぉいッ!!」

「うああっ!」

 

 スラスターが効力を失うと同時に、ノワールからの蹴りを喰らう。攻撃対象に到達することも叶わず、そのまま地面に叩きつけられた。

 

「フッフッフッ、このガンダムパーフェクトストライクフリーダムノワールのエネルギー残量ばかり気にして、自機のエネルギー管理を怠ってしまったのです。これは、とんだミスなのです」

「………………!」

 

 先輩の言う通りだ。これは完全に私のミス。

 

 ここで落ちるのか……。さっきレシアさんがやられたし、このまま私も落ちてしまえば四対五でかなり不利な状況になってしまう。できればどうにかしたい、けど……。

 

「残り10%……」

 

 一割を切ったバッテリーじゃあ何もできない。私はゆっくりと近付いてくるノワールをただじっと見つめていた。

 

「このまま、このガンダムパーフェクトストライクフリーダムノワールが、引導を渡してやるのです!」

 

 ノワールが、サイドアーマーからビームサーベルを引き抜く。そして振り上げたところで、完全に諦めた私は目を瞑る。

 

 …………こんなときでも、胸の高鳴りは止んでくれない。あの……シルヴィーツヴァイとの一騎打ちで、三月さんとのGPデュエルで感じたものと同じ高鳴り。

 

 そうか。

 

 私は、今この瞬間……”GBN”を、楽しめているんだ。

 

 劣勢をひっくり返し、勝つ直前まで行ったこと。そしてそんな状況で、バッテリーが切れてしまったこと。そんなジェットコースターのような移り変わる状況を、私は楽しんでいる。

 

 なんだよ、スタル。

 

 GBNは偽物なんかじゃなかったじゃないか。

 

 この世界にだって、熱い魂は宿っているんだ。私は…………。

 

 このガンプラバトルも、大好きだ。

 

「ッ……!!?」

 

 ──何かが阻むように、ノワールのサーベルを弾き返した。そしてその何かは、意志を持ってノワールを私から引き剥がした。

 

「……大丈夫? アマツ」

「はぁ、遅かったですね」

「ごめんね。レイメイとバトルしてたから」

 

 空中に佇む、青と白を基調としたGUND-ARM。『ガンダムネクサス』が、ノワールを静かに睨んでいた。

 

「ビリーヴ先輩……!」

「状況はわかってる。あとは任せて」

「は──」

 

 返事をしようとして、思いとどまる。

 

 せっかく、ここまで追い詰めたんだ。このまま漁夫の利みたいに持ってかれてたまるか。そんな、ダイバーとしてのプライドのようなものがわずかに火を強めた。

 

「いえ、ビリーヴさんは時間を稼いでください」

「……? …………あぁ、あくまで倒すのは、アマツってこと」

「そうです。盗られてたまるか……ってわけですよ」

「わかった。後輩の要望には応えるのが先輩だよね、コネコ」

「いや、私に振られても……なのです」

 

 ガンビットと共にネクサスが加速する。

 

「ちょっ──」

 

 急速に後退するノワールに、ガンビットとネクサスによる苛烈な攻撃が迫り来る。一秒の隙もない弾幕を前に、ノワールはただビームシールドを展開することしかできない。

 

「ちょっ、ちょ! ちょちょちょちょちょちょっ!!?」

「悪いけど、反撃の機会はあげない」

 

 充電切れとなったガンビットと交代するように本体に接続されていたガンビットが分離、続く第二波としてビームを乱射し始めた。ビームの撃てないガンビットは本体に戻り、急速充電される。

 

「ムリムリムリムリ!! 無理ゲーなのですーっ!!!」

 

「……よし」

 

 こちらが完全に見えてない。今ならいける。

 

 泣け無しのバッテリーを燃やして飛び上がる。遠隔で置いていた核エンジンを量子通信で起動して、備え付けられたデュートリオンビーム送電システムに電気を蓄えていく。

 

「デュートリオンビーム、照射!」

 

 レーザービームがクロスレイの額を貫く。だがダメージは無く、むしろ逆にクロスレイのエネルギーが回復し、二秒ほどでバッテリーは満タンとなった。

 

 こんな時のために、外付けのデュートリオン送電システムを用意しておいてよかった。元々が私がエネルギー切れの状態で、仲間がいて、その仲間が時間稼ぎをしてくれている状況ぐらいでしか使えない代物であったが、ビリーヴさんが助けてくれたおかげで役に立った。

 

 …………昨日の敵は今日の友、だなんて、よく言うものだ。

 

 全開となったエネルギーを存分に使い、今もなお熾烈な攻撃を耐え抜いているノワール目掛けて直進する。

 

「ッ……!! このパワー、核エンジンにも迫るのですッ……!!」

「さっきのお返し、ですッ!」

 

 ヤタノカガミでビームシールドを相殺しながら推力で押し込む。そしてしばらく、弾き返したノワールが力強く着地して、レールガンとドラグーンによる攻撃を浴びせる。レールガンは避け、ドラグーンはヤタノカガミで弾き返す。ノワールは反射されたビームをビームシールドで防ぐが、展開した瞬間、灰色が腕から全身にかけて侵食を始めた。これだ、ずっと狙っていた、フェイズシフトダウン!

 

「あっ……!!」

「もらったッ!」

 

 素早くガーベラストレートを抜刀して、効力を失った左腕を斬り裂く。続けて振り返しの斬撃を、ノワールが右腕のビームシールドで防ごうとするがしかし、頭上のビームブレイサーのビームによって、その右腕すらも破壊される。

 

「ッ!!? ……これは、一本取られたのです……!」

 

 『青龍』による加速を乗せた横薙ぎで、ノワールを一刀両断。刀を鞘に収めるのと同時に、背後が爆発によって照らされた。

 

「………………ふぅ」

「おつかれ」

「時間稼ぎ、ありがとうございました」

「ううん、アマツのおかげ。わたしはあのまま戦っても……えっと、じり、ひん? だったから」

「いえ、ビリーヴさんが来てくれないと、立ち上がれませんでした」

「……だぶるみーにんぐ」

「ふふっ、まぁ、そんなところです」

 

 この人のこと、最初は苦手というか、気まずかったんだけどな。素直になってからは、なんというか、頼りになる先輩だと心の底から思えている気がする。

 

 よし、このままツバキさんたちの応援に──

 

「アマツ!!」

「えっ──」

 

 突然、背後を殺気が襲う。

 

 高速で振り下ろされるビームサーベルを、ガーベラストレートでなんとか防ぐ。

 

「ハハッ! やっぱ気付くんだな!!」

「ッ……! アノマロ、カリスさん……!!」

 

 まるで悪魔が(わら)うように全身のダクトが煙を吐く。

 

『HADES』

 

 骸の騎士(スカルライダー)の瞳は、赤く燃えていた。

 




様々な言語を習得中のビリーヴさん
ビリーヴ「はっぴーはっぴーはーっぴー♪」
レイメイ「誰だぁ! ビリーヴにインターネットを吹き込んだのはぁッ!!」(般若のような形相)

XVX-0911/N ガンダムネクサス
エアリアル改修型をベースに、ビリーヴがカスタムしたガンプラ。
クリア素材が使われたガンビット三基を含む十一基のエスカッシャンによる多角的な戦闘を得意とし、サテライトシステムとの連携による『ガンビット・サテライトキャノン』を必殺技としている。
武装はビームバルカン、GNドライブT型内蔵GNビームライフル、エスカッシャン十一基、ビームソード二基。
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