「アマツ、ビリーヴ先輩……、二人同時にロスト……?」
「みたいだね。こっちはカスミ、コネコがロストしてる。その前にカグラもやられたから……」
現在、こちらに残されてる戦力は僕とサモネさんの二人のみ。そしてあちらもカスミさん、コネコ先輩、カグラ先生がやられたわけだから……。
「お互い、残っているのは二人だけみたいですね」
「だね。けれど戦局はこっちの方が有利だよ? ツバキちゃんはランクCなりたてだし、サモネもランクはギリBかAの瀬戸際ってところでしょ。私はS。ランカーひとりボコればSSくらいだね」
そう、人数差が埋まったところで、いる人間の”質”次第で状況は変わってくる。
元より不利なマッチアップだったのだ。相手はSランク二人にSSSランクのトップランカー、対してこちらはレシア除いてほとんど初心者の低ランク揃い。これほどジャンケンの結果を恨んだことはないだろう。僕ジャンケンやる頻度少ないけど。
まぁいい、そんなことを今更考えてもしょうがない。
今は目の前にいる、
この人とは何度かミッションで一緒になった。その時の感覚からして、シルヴィーツヴァイの強さは異常だ。桁外れの出力に、パワー、機動性、索敵能力に、特異性。どれを取っても化け物クラス。カスミさんの動画での言葉を信じるなら、それを成立させるのには途方もない微調整を完璧にこなし、そしてそれを完璧に使いこなす必要がある。
つまり、製作技術も操作技術も、圧倒的にあちらが上だ。
「……僕にできることは……」
囮……ぐらいにはなれるか。けれど、雑に揺さぶりをかけても気取られるだけ、となると……正面切ってやり合う? 勝てるわけがない。残念だけど、ロゼアにはガンビットのオールレンジを捌き切れるだけの性能も、それをできるだけの技量も、僕にはない。
…………やるしか、ないか。
「サモネさん、援護をお願いします」
「はい。無理はしないでくださいね」
「わかってます」
ビームライフルを構え、ノータイムで発射。撃ち出されたビームはシルヴィーツヴァイ目掛けて真っ直ぐ飛んでいき、機体を覆うバリアによって掻き消された。
「避けもしない!?」
「避けさせるだけの動きをしろって話!」
機体各所からガンビットが飛んで来る。スラスターを使って避けていくが、そろそろ滞空するのが限界になってきた。
「うぉっ!!」
ガンビットが数基集まってバリアを形成、上からの狙撃を防いだ。本人が驚いていたってことは、もしかしてオート制御?
「先にあっちから……いや。こっちからでいいか」
「どっちでもいいみたいな扱い、僕好きじゃないな」
蔑ろにされてもらっちゃ困るよ。僕だってロゼアには相応の思い入れがあるし。
一度地上まで降り、追ってくるシルヴィーの着地点にドンピシャでライフルを撃つ。直前でガンビットが防ぐが、対応が遅れたのか姿勢が崩れた。今がチャンス!
「今ッ!」
「くっ……!」
ビームサーベルで切りかかる。相手はライフルからビーム刃を出して応戦。けど、腰が入っていない。こんなもの、クロスレイの太刀の方が重かった!
「いい気に、なるなァッ!!」
「ッ!?」
シルヴィーの背後からビームサーベルが出現。けれど両腕はふさがっている…………これは、隠し腕!?
両サイドから、ハサミのように迫ってくる。これは不味い……、けど、負ける気は、ない!!
スラスターを動かし、フル出力で離脱。ビームサーベルからすんでで避けて、上空に逃れた。
「うっそ、これ避ける!?」
「ゼフィランサス・ロゼアは伊達じゃない……って、自信ないから使うのやめよう」
確か、『逆襲のシャア』だっけ。うわぁ、過去作見ないと内容まるでわからなさそうなタイトルだ。そういや期末終わったら夏休みだし、泊まりがけで鑑賞会でもしようかな。ヒカリの家で。
「まったく降りたり昇ったりどっち対応なんだよ……」
「どっちもだよ」
「この後輩厄介な機体作るなぁ──おっとぉ!?」
「今日の天気は晴れ、ときどきビームです。忘れないでくださいね」
「うへぇ……」
上空から再びK1アストレイの狙撃が撃ち込まれる。それにしても、笑顔で怖いことしか言わないな、サモネさん。まさかこんな人だったとは……。ショックではないが、驚いた。
「じゃあ、まとめて飛ばすしかないか。パーメットスコア8……『トランザム・ドライブ』」
「っ……!」
即座に退避。間もなく展開される莫大なエネルギーの嵐が吹き荒れ、シルヴィーツヴァイが神秘の翼を広げる。
トランザム・ドライブ。シルヴィーツヴァイが誇る究極の形態。
アマツ知識だけど、トランザムというシステムは動力源の『GNドライブ』の出力が三倍になり、ありとあらゆるスペックが強化されるシステムらしい。そして、シルヴィーツヴァイはそんなGNドライブを四基、二基ずつ同調させる『ダブルツインドライブ』。ツインドライブは出力が二乗になるとのことで、つまるところシルヴィーツヴァイのトランザムは二乗の二倍のさらに三倍、もう数字で考えるのが面倒になるような莫大な出力となるのだ。
そんな狂った出力をモビルスーツ一機に押し込めれば確実に自壊してしまう。故に全てを外に吐き出し、それら全てを”風”として操るのがトランザム・ドライブだ。トランザムは本来機体の表面が赤くなるが、トランザム・ドライブは常に放熱してるようなものなので赤くはならない。要点を言えば、近付けないし本体はめちゃくちゃ強化されてるし、纏ってる風は当たれば即死。まさしく発動した時点で詰みなのである。
「どうしろと……」
「弱点はあります」
「あるんですか!?」
サモネさん曰く弱点はあるらしい。なになに、すごい気になる。
「粒子切れまで耐える。もしくはあれを越える出力で上から殴る。以上です」
「…………無理じゃないですか?」
「無理ですね。我々にはあれ相手に耐久できるスペックもあれを越える出力もありません」
「じゃあダメじゃないですかぁ!」
信じてたのに!
「落ち着いてください。スペックが足りないのであれば戦略で補えばいいんです」
「それができれば苦労しませんよ……」
「だったら苦労しましょう。大丈夫、カグラさんの教え子であるあなたなら問題ありません」
「それあっちもですけど」
「…………まぁそれはいいんですよ」
「誤魔化した……!」
それでも秘策はあるそうなので、作戦開始。
「K1降下、ロゼアは変わらず後退……タイミングを合わせて挟み撃ち? それで距離を取る? K1は依然射程外スナイパーライフルは効かない、それは承知のはず。ロゼアに関しては動きが読めない。機動力は高いけどそれだけでシルヴィーには完全に出力負けしてるビームライフルは当然届かないビームサーベルでの格闘戦もこっちに利があるとしたら残ってる武器はバズーカだけ……ハッ、まさか……!?」
バズーカを放つ。シルヴィーは、”風”を何重にも張り巡らせてそれを防いだ。
サモネさん曰く。
『強大な”風”に包まれているシルヴィーツヴァイには生半可なビームは有効ではない。それは”風”こと”GNストーム”がビームバリアとしての性能を持っているから。しかしビームバリアはあくまでもビームは力場で、実弾は熱で焼いているだけ。あれだけ拡散した粒子では”風”を維持するための力場でビームを防げても実弾での攻撃は意図的に風を張らないと完全に防ぐことは不可能。それによって”風”が弱い地帯が生まれるから、そこを狙えばダメージを与えることができる』
つまり、僕のバズーカにヘイトを向かせて、その隙をサモネさんが狙う。残弾五発…………残りの弾数で粒子切れに持ち込む!
「今」
「やってくれたッ!!」
シルヴィーは自らの機体から”風”を出して応戦。となると、あちら側も消費は激しいことは明白。このまま押し切れれば、この絶望的な戦力差をひっくり返すことだってできるかもしれない。
「粒子切れになんか、させるかァァッ!!」
「なっ!?」
シルヴィーが全速力でこちらに向かってくる。実弾持ちの僕の方から落とすつもりか!
シルヴィーが起こす粒子のかまいたちを避け、変わらず僕はバズーカを撃つ。相手は粒子を多く出すことでバズーカとK1のビームを同時に防いだ。言ってることとやってることがチグハグ……これなら数秒間のパワーダウン程度なら起こせるかもしれない。
と、思っていた。
「ツインソード・ライザーッ……!!」
「なっ、が……!?」
シルヴィーのライフル……いや剣が、超巨大なビームを二本同時に出している。そのビームは放出されたまま時が止まったように制止しており、放出が終わる気配がしない。これは、ありえないほどに巨大なビームサーベルなのだと、僕は理解した。
そして、その二対の光が振り下ろされる段階で、悟った。
これはもう無理だと。
このフォースバトル、僕たちの負けであると。
………………いや。
この絶体絶命な状況をひっくり返してこそ、僕だけの『美しさ』は手に入る。僕だけが持っているもの、僕にしかできないこと、それらは決して言語にはなり得ない。それでも、確かに”ある”んだとわかるようなもの。
それを手に入れようって頑張るのが、僕だよね。
「……月光蝶!」
「はっ!?」
バインダーを展開して、虹色の光を出現させる。その光を横に広げて、ビームサーベルの熱を丸ごと冷却、浄化した。
「うっそ……?」
調整して制御できるようにした月光蝶。まだまだ振り回されてる感はあるけど、なんとかなっている。
「さらにっ、ハァッ!!」
光をさらに広げて、シルヴィーの前で一回転。光に巻き込まれたシルヴィーの右腕が砂状に溶け、消滅。よし、この調子でもう一本!
「ナノマシンじゃビットは意味無い! とすれば……! ……ッ!」
ビームライフルを撃って一度撹乱する。頭部狙いなので防御する瞬間は視界が塞がる……ので、生まれた隙に月光蝶を叩き込める!
「まずいっ!?」
「はぁぁぁッ!!」
これで、終わ──!
「ハイ、終了」
上空から放たれたビームによって、ロゼアが撃ち抜かれる。
『Battle ended』
『Winner:Build Revival』
────────────────────
「お……」
「お……」
「「大人気なぁーっ!!!?」」
コネコ先輩とカグラ先生の声が重なる。
突如始まった五対五のチーム戦、勝利したのはカスミさんら率いるビルリバチームであった。本当にもう、僕も大人気ないとしか言いようがない。
ログを追って状況を確認すると、どうやらアノマロカリスさんはビリーヴ先輩の必殺技をげしゅ…………たー? えーっと、げしゅまいでっひ……何だこの名前。とかで軌道を無理やり変えてヒカリ諸共吹っ飛ばしたあと、全速力でこちらに向かってスナイパーのサモネさんを完封し、奪ったライフルで僕を狙い撃ち。その後即座にK1アストレイを真っ二つにしたらしい。なんなんだこの人。
「俺五人中四人キルしたけど貴様らは?」
「うぜぇ…………」
「殴りたい、この笑顔」
「ビリーヴ、どこからそんな構文覚えたの……」
「カスミのG-tube」
「カスミ、お前のリスナーPKしてもいい?」
「ELダイバーもいるんでダメです」
そんな楽しい会話が聞こえてくる。いいな、ああいう雰囲気。僕らガンプラ部は何故かガールズで構成されてしまっているので、ああいう皮肉たっぷりの会話はできない。どうしても可愛い会話になってしまう。それでいいんだけどね?
「盛大に、負けたわね」
「はい。流石、前の戦いの英雄だけはあります」
「英雄……か」
そんな呼ばれ方をされてはいるけど、実際は年齢相応……いやもしかしたらそれ以下かもしれない、まるで学校の休み時間みたいな空気だ。ビルドリバイバルは、あのとき僕がスマホで得た印象から、遠く離れている。
……負けるのは、特訓ぶりか。
「あー、楽しかった!」
「最後はあまりにも理不尽でしたけどね」
「まぁいいじゃない。私も楽しかったわよ」
「…………私も、久しぶりに全力を出せました」
「お、アマツ強者っぽい」
「そ、そうですか? 負けちゃったんですけど……」
「HADES……だっけ? それ起動されてもあれだけやれてたなんてすごいよ!」
「そうね。トップランカー相手によくやるわ」
「そ、そうですかね。えへへ……」
ちょろい。かわいい。
色々あったけど、今日は楽しかった。みんなの作品見れたし、めちゃくちゃ面白いバトルもできて…………。
…………………………ん?
「僕の作品鑑賞、忘れてない……?」
「…………あ」
その後、ちゃんと僕の作品の鑑賞を済ませ、ビルリバのみんなも含めた投票により見事僕が優勝を飾った。
それでネコ先輩から貰った景品の日光のカステラ(すっごい良いやつ)をヒカリと一緒に食べながら、二人でガンダムのアニメを鑑賞したのだった。
ヒカリ「もうただのおうちデートじゃないですか!!!!」
GN-0666P/R2 ガンダムシルヴィーツヴァイ
レイメイがビルドしたオリジナルガンプラ。
ツインドライブシステムとGUND-ARMを両立し、多様なビットで敵を殲滅するコンセプトだが、常にスコア7以上を要求するピーキーな機体でもある。
専用システム「トランザム・ドライブ」は、強烈な粒子の嵐「GNストーム」を巻き起こす。
武装はGNツインピストル二基、GNビームサーベル二基、GNクロービット八基、GNソードビット二基、GNフェザービット。八基