ビーチバレーをして楽しんだあと、僕たちは屋台の見て回った。ハロみたいな丸い形状の巨大わたあめを食べたり、トゲトゲした輪っかを使う輪なげをしたり、ガンプラを使って行う超長距離の射的をやったり。
そうして楽しんでいると、例の宝探しイベントの時間が迫ってくる。
「おおー……!」
「ウィザードクロス『朱雀』。デスティニーの翼を元に、ロゼアのバインダーを参考にして組み上げた自信作です」
「なるほどなるほど、青のロゼアに対して赤の『朱雀』……すごいね! 対になってて、まさに僕とアマツを体現してる感じが!」
「そ、そうですか? えへへ……」
赤色のバインダーユニット……、ロゼアのを参考にしたって言ったけど、確かによく似ている。けれどアーム型のバインダーでひとつの大型ブースターを制御するロゼアのものに対して、こちらは複数の小型スラスターを折りたたみ式のウイングで制御するらしい。いい感じにオリジナリティが出ている。
「まさしく、”天然女たらし”なのです……」
「そうね……」
「なにか言った?」
「なんでもないわ。それよりさっさと出撃準備よ」
今回はセオリー的に海がメインステージになる。水中は水圧に耐えるため機体の密度を高め、潰れてしまわないようにしないといけないらしい。もちろんそんなことロゼアに施しているわけがないので、僕は空中を移動できるサブフライトシステムとやらをレンタルすることになった。それはレシアのアデラバルデも同様だが、なんと自家製のティックバランというものを持ってきている。
なにがガンプラだ、ただの戦闘機じゃないかと思いつつ、レンタルしている身では何も言えないので黙って戦闘機に乗る。
「ツバキ! ゼフィランサス・ロゼア、行きます!」
というお決まりの台詞の後、テイクオフ。レンタル品とはいえ品質はそこそこのようで、揺れることもなく安定して飛ぶことができた。
「んー…………」
「ん、どうかしたのです?」
「やっぱりなんか違う気がする……脚とか」
「気のせいなのです」
「いや肩とかもっとゴテゴテしてたような」
「気のせいなのです」
「そう……?」
コネコ先輩の機体、ビーチバレーのときはよく見てなかったけど、やっぱりなんか違う。主に上半身。でも背負い物は一緒なんだよね……。…………まぁ、いいか。
『参加フォースが出揃ったところで、ルールの説明です! 皆さんはこのスタートラインから一斉にスタートし、数キロ先にある海底遺跡『アトランティス』に眠る”秘宝”を探し出してもらいます! そしてその秘宝を持ってこの場に戻ってきたフォースが見事、今大会の勝者となるのです!!』
「……ジャンル迷子じゃない? アトランティスって……」
「GBNにはSDガンダムの要素も入ってますからね……」
「こういうキメラじみた属性はこの世界じゃ日常茶飯事よ」
「よく成功したな、このゲーム……」
それはいいとして、海底遺跡ってことは水中か……。よりによって割と最悪なパターンだ。海の中にあるんじゃあロゼアでは取りに行けない。それどころか、僕たち(コネコ先輩はフォースとしては独立しつつART_Clubをサポートする形)の中に水中もいけるようなのは存在しない。
「アマツ、僕たちじゃ取りに行けないよね。どうすればいい?」
「取りに行かなければいいと思います」
「えっ、それじゃもう敗北宣言じゃ」
「なんでわざわざ激戦区に自分から飛び込むの、って話よ」
「どういうこと?」
「単純明快、奪えばいいのよ」
「…………はい?」
スポーツマンシップ、どこ?
『それでは、レディ・ゴー!!!』
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ゆったり進んでいる。それはもう、お茶できるくらいゆったりと。
「……本当にこれでいいのかな」
「ツバキさんは善良な人ですからね、胸が痛むのも無理はありません」
アマツがフォローしてくれる。優しい。
「でも勝てば官軍負ければ賊軍と言いますので」
前言撤回。容赦なかった。
「要するにかっさらうってことでしょ? 賊と何が違うの……」
「賊は敗者がなるものなので」
「えー……」
「まぁいいじゃない。勝てれば」
「水中じゃビーム兵器も使えないのです。我々の兵装じゃ、不利もいいところなのです」
少々複雑だが、コネコ先輩の指摘は僕の思っていたことと同じだ。ここは大人しくハイエナになった気分で爪を研ぐターンなのかもしれない。
「それに前線は激戦区だものね。水陸両用機っていうのは水中戦に特化しているのだから、私たちの装備じゃ飛んで火に入る夏の虫も同然よ」
「飛び込んでるのは水の中だけどね」
まぁ確かに、進んで敵がわんさかいるようなところに行くのは絶対の自信を持ってるか、そういう趣味の人でもない限りはありえない。
と、思っていたところに。
「ん……? ……振動感知センサーに反応あり! なんか来る!」
「目視不可! ミラージュコロイドです!」
僕の報告に反応したアマツが補足。その後すぐに来たビーム攻撃をロゼアのシールドで防いだ。
「チッ、感がいい!」
空中に浮かぶ灰色の機体。何かが点火する音と共に機体全体が黒いカラーリングに変化する。
「ブリッツガンダム!」
「見たら、死ね!」
血気盛んな掛け声と共に左腕のクローが飛んでくる。僕は飛んで回避するが、ロケットが積まれてるみたいで追尾してくる。厄介だ。
アデラバルデのイーシュヴァラが飛び、ビームサーベルを展開してリード線を切断。ただの鉄クズと化したクローが海に沈んでいった。
「レシアナイス! くっ、らっ、えっ!!」
「なっ、速っ──!」
ビームサーベルを引き抜いて、ブリッツの胴体を両断。しかし、その直前に背中から何かが発射される。その何かは煙を巻いて飛び、上空で爆発。一応盾を構えたがダメージはなさそうだった。
「まずい、信号弾です! これから応援が来ます!」
「なんで!? 僕たちお宝なんて持ってないよ!」
「あーいるのよね、こういうやつら」
「いるのです……」
「どういうこと?」
「私たちみたいな、虎視眈々と宝を狙う競合を先に排除して、安全に奪おうという輩よ」
「同じハイエナでも、フォースで方針は違うのです。中にはああいうのもいるのですよ」
「な、なるほど」
…………あれ? ということは、あの信号弾を見たハイエナ狩りたちが次々に襲ってくる………………ってコト!?
「えちょ、ヤバくない!?」
「噂をすれば、ですね。敵機多数接近中!」
ほらぁ!
「DUPE粒子でデコイを作ります。皆さん後退してください!」
「り、了解!」
アマツがなんだか変なものを使うと宣言した後、クロスレイの『玄武』から金色の粒子が発生。後退する僕らの機体の映像を空中に投影し、僕らとは鏡写し、逆方向に進行を始めた。クロスレイは踵を返すと同時に自分自身も投影、線対称に動き始める。
「なにあれすご……」
「分身はああやるのです」
ロゼアにそんな機能ないんだけど……。
「静止画をスクロールさせているだけなので、皆さんは自由に動いて構いません」
「これで時間稼ぎができるってわけね」
「えぇ、まぁ」
アマツが自信なさげに頷く。いやいや、もっと誇りに持った方がいいよ。あんなすごいこと僕にはできない。
後ろを見ると、さっきサーチに引っかかった敵機たちが僕らの幻影に向かって攻撃している。あ、ひとり抜けてきた。
「……やばっ!」
「ッ……!!」
デコイに気付き、次々にこちらに向かってくる敵機たち。
銃口をこちらに向け、攻撃を仕掛けようとした瞬間、コネコ先輩の機体が飛び出した。
機体のカラーリングが黒から白に変化する。それと同時に、バックパックのウイングが飛び出し、それらがビームを照射して近付いてくる敵を薙ぎ払った。
「えっ……、色が、変わった……!?」
ウイングが機体本体に戻る。コネコ先輩の機体は、この前のフォースバトルとは全く別の機体だ。
「あれは、ストライクフリーダム……?」
「チッチッチッ、広義的に名を呈すのであれば、ガンダムパーフェクトストライクフリーダム弐式! なのです!!」
「相変わらず長……」
名前はともかく、敵を目の前にしてこの堂々とした佇まい。格好の的じゃないか?
「その声……、もしかしてお前っ、ビルドリバイバルのコネコ!?」
「お、カスミさんのファンなのです? そうなのです〜。いつもうちのリーダーのG-tube見てくれてありがとうなので──」
「うるっさぁぁぁい!! お前、お前お前オマエ!! カスミ君と一体どんな関係なのか、コクピットから引きずり出して吐かせてやる!!」
…………………………ん?
「あの先輩、一体どういう……」
「フフフ」
「いや笑ってないで答えてよ……」
「トップシークレット、なのです」
語尾にハートマークでも付いてそうな声で、コネコ先輩はそう言い放った。
その瞬間、敵機から大量の攻撃が押し寄せてくる。アデラバルデはアンビカーで防ぎ、僕もまたシールドで防ぐ。アマツは、避けてるか。ならいい。
「言え、言え、言え!! お前は全ての夢女子の心を踏みにじった!」
「んなもん知るかなのです!! 勝手に夢見てろっ、なのですっ!」
フリーダムが持つ全ての砲門が一斉に展開され、同時に発射される(フルバーストとかいうやつだ)。数機は防ぎ切ったが、多くの敵がそれによって撃墜される。
「ッ、あーもう! 数が多すぎます!」
「後退するわ! 私の装備じゃ心許なさすぎるもの!」
「了解、コネコ先輩!」
「もう十ッ分、ヘイト稼いでるのです! って、デストロイなのです!?」
海の中から一際大きい黒いガンダムが出現する。あれ箱が大きすぎて見た目だけ知ってる、デストロイガンダムって言うんだっけ。
「我ら夢女の怒り悲しみ憎しみ全て、お前にぶつけてやる!!」
「ブルコス並にしつこいのです! お付き合いどころか会いすらもできないお前らが、カスミさんの正妻面すんじゃねぇのです!!」
「本性現したな泥棒猫ォ! 死ねェェッ!!!」
なんだかすごい不毛な争いだ……。僕もひとりの女性に好かれてる身だけど、アマツにはああはなって欲しくない。いつまでも僕の一挙手一投足に赤面する乙女であって欲しい。…………何言ってんだ僕。
デストロイガンダムが持つ大量の砲門から、先程のフリーダムのように一斉にビームが放たれる。僕は対峙していたレギンレイズを掴んで盾にし、アマツはそんな僕の背後に回る。一方、コネコ先輩は左腕から”何か”を飛ばしたのち、前面にビームシールドを合計三枚展開した。
「避けもしない!?」
「どう避けろってんですッ…………!!」
超極太のビームの照射にも耐え切り、お返しとばかりにライフルとソードを連結させ強力なビームとして撃ち放った。相手は防御しようとするも、直前に顔面を”何か”が横切り、メインカメラを破壊した。
「まっ、前が──!!」
ビームに撃ち抜かれ、デストロイガンダムは派手に爆散していった。
「チッ、邪っ、魔!!」
ついでとばかりにライフルからビーム刃を形成して接近したトールギスを撃墜。
この先輩、やりたい放題である。
「オーバーフロー……!? さっきので無茶したのです……!」
「今がチャンス! お前ら、アレの用意をしろ!」
「「「応ッ!!!!」」」
とても熱気に溢れた掛け声がした。
フリーダムがバックパックを廃棄。その直後に見えたのは、鳥のフォルムをした大量の追加装備だった。
「なっ、あれは……!?」
「ゼウスシルエット……!」
「え、なにそれ」
「端的に言えば、拠点攻略用の戦略兵器……。やけにデスティニーが多いと思えば!」
なんだかよくわからないが、とてつもなく不味いらしい。
大量のデスティニー達が、一斉にそのゼウスシルエットとやらを装備し、砲口を構える。
「「「我ら有料会員の底力、思い知るがいい!!!」」」
「クッ、不味いのです!」
発射前にコネコ先輩が援護に回していた戦闘機が間に合い、その後部が分離。フリーダムの背中に接続され、機体カラーが彩度を落としたシックなものへと変化する。その直後にフリーダムは再びシールドを構え、ビームシールドを展開した。
「ガンダリウムでも防げるかどうか、いやこの『玄武』ならあるいは……! ツバキさん!」
「な、なに!? アマツ!」
「私の後ろへ! あなたは、私が守ります!!」
えっ…………?
僕のロゼアをクロスレイが庇う。『玄武』が赤く変色し、それらを使って僕を守る形だ。どうやらVPS装甲は赤色が一番硬いらしく、期待はできる。
それよりアマツ、勢いで出たんだろうけど、そんな頼もしい台詞言えるようになったんだね。僕、嬉しい。
…………一瞬、今から付き合ってもいいかなとか、思ってしまった。あーあ、このまま告白してくれればいいのにな。
「はああああぁぁぁッッ!!!」
デスティニーの砲撃と同時に、フリーダムの全ての砲門からビームが発射される。
砲撃のほとんどは当たらず、数機は撃つ前に撃墜される。しかし、一発はフリーダムの盾に命中。破壊される。そして、相打ちになる形で一機のデスティニーにビームが直撃し、撃墜。続けてフリーダムも彩色が失われ、水中へと墜落していった。
「アマツ、大丈夫!?」
「はい、一発喰らいましたがなんとか……!」
「くっ……!」
クロスレイの『玄武』が剥がれ落ちていく。肩の方は無事だから、ミラージュコロイドは健在のようだ。
よし、借りを返そう。あんなこと言ったのに告白もできないアマツへの、当てつけも兼ねてね!
「次弾装……はっ!?」
「これで、最後!!」
スラスターで急接近し、相手のリロードの隙にビームサーベルで真っ二つに斬る。爆発と共に粒子となり、辺りにはもう同じ装備の機体はいない。
「ふぅ……、守ってくれてありがとう。アマツ」
「……美味しいところ、持っていたくせに」
彼女の声色は、とても優しかった。
「また忘れられてるわね、私たち……」
「百合の花園を守れたのだから、本望……なの、Death…………」
おかしいな、主役の新装備のお披露目回のはずが前作キャラが暴れ散らかしてるぞ……?
ZGMF-X115AS フリーダムガンダムリベリオン弐式
コネコが「私の考えるコズミック・イラ最強のガンダム」をコンセプトに制作したフリーダムガンダムリベリオンの後継機。
高い基礎スペックと優秀な武装に加え、ストライカーシステムにより様々な武装を使い分けることができる。
リベリオン時の武装はサーベル複合対艦刀ジークフリート、アムフォルタス2改プラズマ収束粒子砲、バラエーナプラズマ収束ビーム砲の他、本体にも多数の武装を装備している。詳細は機体解説にて。