617だってさ。どうにか生き延びるぞい 作:slow quick slow
_ガレージ_
「気分はどうだ。617、618、619。」
「普通」
「……」
「寝みぃ」
3人の顔合わせはすぐ済んだ。特に争うこともなく、親しくすることもない。受け答えをするのは617、表情1つ変えず、ウォルターの指示を待つは618、半目でいかにも眠たそうなのは619。ウォルターは想像していたよりも、物凄く大人しい3人に何処か寂しさを感じなくもないと思った。なにせ前任の615達は明るかった。やんちゃし、笑顔は絶えなかった。
「そうか。なら休め。今はまだ何もしない」
「あーい…」
619は適当な返事をするとそのまま自室に戻っていった。
「618、お前も自室に着いておけ。少しでも気を休めておくのが今の仕事だ」
言われた618は頷くと静かに自室に戻っていった。3機の素朴頭の探査ACの前に残るのは617とウォルターのみである。
「617、お前も」
「ウォルターは何がしたいの?」
突然の質問にウォルターは少し驚く。
「こんなやつを使って何がしたいんだ?俺はそれが知りたい。なんでも良いから教えてくれ。使い潰されるのか?」
無表情からは想像できない、感情の起伏。ウォルターは、成功に近いとはこういうことかと理解した。第4世代では珍しく感情の欠落がなかったのだ。しかし、その代償に人体の機能を失っている。
「……俺は、コーラルを追っている。いずれ現れるコーラルを手に入れれば、お前達のような脳を焼かれた人間が普通の生活に戻れる程の大金を得られるはずだ」
「お人好しなんだな」
「………そうかもしれん」
ウォルターは少し言葉を詰まらせながらも、それを濁らせるように肯定した。
「とりあえず、俺らを犬死させることはなくて良かった。まだ死にたくないからな」
安堵したのか、声のトーンも落ち着いた。
「今日は休め。これから忙しくなる」
「うん。わかった。じゃあね。ウォルター」
そう言い、617はガレージを後にする。
「……あくまで偽善者ぶるか…卑しくなったものだ…」
残ったウォルターは、目的を偽り3人を利用する己に、憤りを感じていた。
やるせない気持ちとはこの事か…いや違うかもしれないけどさ。でも、今俺がウォルターを説得できる材料はない。
ウォルターは旧型強化人間という存在に、とても思い詰まる。前世の考察の範囲で、ウォルターの父親が強化人間の前座を作ったナガイ教授の第一助手だとされてる。
父親が、技研が生み出した負の産物。脳神経にコーラルを流し込む「脳深部コーラル管理デバイス」とそれ諸々のチューブを埋め込み知覚強化を施した、コーラル技術の1つ。
正直言って正気を疑う。前世はサイコやなぁとしか思ってなかったけど、実際に受けてみてこいつら頭狂っとるわ、と。麻酔効いて身体に痛みが無いはずなのに、脳が焼かれるような苦しみがほとばしった。死ぬかと思った。もし耐えれなくて諦めてたら死んでたんだと。
そんなものを作り出したんだ。息子として父の罪を背負っているんだと思う。だから観測者として、コーラルを観察している。
「にしても、621の感情の欠損は酷い方だったんだな。619は普通に眠い言ってるし。基本的に一部感情が欠損しているのが第4世代なのか?」
よくわからん。俺は特に何もない。いや他と違って、補助装置ないと手足が動かないんだけどさ。まぁ、それはどうでもいいか。これからのことを考えないと……
_現在のガレージの所在地_
-木星-
そこでは、戦火の火蓋が切られようとしていた