鍛えられた武術に、呪術が勝てるわけないだろッッ‼︎   作:チチメカ

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もうちょい面白い展開を書きたい…


第八話 まつろわぬ鬼

地下トンネルのような空間を抜けると、そこには数多の廊が続き、中心の巨大な樹木に向かって、明るく灯された不可思議な空間であった。

 

「私が案内できるのはここまでです」

 

「そうか、ありがとう夜蛾先生。今度酒でも奢ろうか」

 

そういうと、ひらひらと手を振りながら前に進み、廊の一つへと足を運ぶ。寝殿造を思わせる様な長い廊を抜けると、空洞があるであろう樹木の中へと入る。左右の薄暗い光を頼りに、先に進むと、そこには何とも形容し難い老人が座していた。

 

「初めまして鬼の子よ。」

 

「……お前さんが天元じゃな?」

 

大木の中は先ほどの廊よりも薄暗く、ふと見上げた天井は暗闇に包まれており、その端すら観測できない。まるで永遠と天井が上へ伸びている様な錯覚にすら陥る。

 

「そうだ。良くここまで来たね」

 

「呼び出されたからの。ほら、早く用件を言わぬか」

 

「せっかちだな、世間話でもしないのかい?」

 

薄気味悪い笑みを浮かべて、しわくちゃな顔を大鬼へと向ける。こんな気味の悪いところに一刻も長居したくないと言うのが、大鬼の思いではあったが、お偉い方となれば話は別だとして、仕方なくその場で胡座を組む。

 

「いやはや、ここに人が訪れるのは久しぶりだからね。私も少し気分が高揚しているよ」

 

「そうか。時に天元…お前さん、女…じゃよな?」

 

「そうだが?」

 

「そうか…皺がありすぎて男か女かもわからんな」

 

それを聞いてケラケラと笑う天元を横目に、大鬼はこの女について考えていた。自分を召喚した理由。本当に人間なのかなど…自分よりさらに歳を老いた良くわからぬ生物などに、大鬼は構っていたくないと強くそう思っていた。

 

「時に大鬼強よ、"縛り"を知っているかい?」

 

「縛り?知らんな、ワシは呪術師ではないもんでな」

 

「呪術において基礎の基礎だよ。縛りとは自身や他人との間に取り決めを作って、それを守る事で術式や呪力の力を底上げするものだと思ってくれればいい」

 

「ほ〜う。で、それがなんじゃ?」

 

「古い友の約束があってね。私は君の縛り(・・・・)を解かなくてはならない」

 

「ワシに縛り?!そんなのやった事ないぞ?」

 

驚愕の末、大鬼は立ち上がってしまう。呪術について知ったのもつい最近の自分が、縛りなんて結べるわけもない。他人と結んだ記憶すらない。

 

「いや、君は確かに縛りを受けている」

 

「誰とのォ?!」

 

「……大鬼家初代から」

 

「?!…どう言う事じゃ」

 

「大鬼強よ、君は"まつろわぬ民"と言う言葉を知ってるかな?」

 

「おお…知っとるぞ。朝廷に歯向かった民族の事じゃな」

 

まつろわぬ民とは、その昔、朝廷に服従ぜず抵抗を続けた民族の事を指し、中央政府と後になった朝廷は彼らを妖怪、もののけの類いとして、討伐運動を行っていた。

 

「今は知らないが、昔の資料は朝廷のいい様に改竄されていたからね。信用になんかならない」

 

「それで、そのまつろわぬ民がどうした?」

 

「…大鬼家の初代は朝廷から"大鬼(おぬもの)"と呼ばれていたんだよ。陸奥国…いまは岩手県かな大嶽丸と呼ばれる、末裔がいてね。彼の子孫が私の元に訪ねてきた」

 

昔を懐古する様に、天元は暗闇が広がる天井を眺める。

 

「とても背が高くて、豪快な人だった。呪術持っておらぬのに、その教養は多分にあって、酒を良く飲み、手には大きな槍を持ってた…彼がね、私に言ったんだ

 

『…この先、己が子孫に"強"なる者が生まれたら、己が縛りを解いてくれ。それが宿願なんだ。己が一族のな』

 

彼は、最後の最後に宿儺に戦いを申し込んだ末に、あと一歩のところで負けた。四本腕のうち三本を切り、首に刃を通そうとした時に死角からの攻撃でね…あの男最後まで笑ってたよ…宿儺と同じように」

 

「…それで、ワシのご先祖の話はもう良いから、早う縛りについて教えんか」

 

「すまないね」

 

そう言って、天元は膝下にあった古い剣を大鬼の前に持ってくる。槍であったのだろうか、持ち手の棒が黒く腐食しており、それが火と木の腐敗によって形成されたものであることがわかる。しかし、その刃は錆一つもなく、鏡の様に光り輝いている。刃を覗くと、自分の顔が反射するほどにだ。

 

「これは…」

 

「さっき話してた男の槍だよ。これに触れれば、縛りは解かれる」

 

「…縛りの内容は?」

 

「さぁ?」

 

「知らんのか?!」

 

「彼は、『刃に触れたらわかる』としか言わなかったからね」

 

普通に考えて、怪しい。

とんでもなく怪しく、胡散臭い。

しかし…宿儺と言われる者。夏油や五条の話から聞いたことがある。呪術全盛期において、暴れ回った呪いの王…とてつもない強さであったと言うが、そいつに一矢報いた男の強さには興味があった。

 

「ええじゃろう…わからぬ事は多いが、いつかは死ぬ老耄の身…ここでかけてみるのも悪くないッッ!!」

 

そうして、大鬼は刃に触れた。

 

 

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気がつくと、そこは宇宙であった。

薄く霧がかる世界。終わりの見えぬ夜空、星空が世界を照らし、草原がただ遠方にまで続く。

少し遠くの小さな丘で、男が一人が立っていた。

 

「よく来たな強よ」

 

「お前さんは誰じゃ?」

 

星空に照らされて、その表情が露わになる。

背は2m以上あるだろうか、酒を飲んだかの様な赤い顔に、とてつもない覇気。

 

「阿は大隠悪路王(りつぬあくろおう)。世が鬼神と言ふ男よ」

 

邪悪な顔で、大鬼を見下す大男はそう言って、笑うのだった。




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