鍛えられた武術に、呪術が勝てるわけないだろッッ‼︎   作:チチメカ

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待ってくれ、私はただマキマイちゃん達を救済したかっただけなんだ。
こんなことになるだなんて…許して(白目)


幕間・京都禪院宗開祖、禪院 扇

 

大鬼強に敗北をきした日から、彼の人生は一変した。

「禪院家に非ずんば呪術師に非ず 呪術師に非ずんば人に非ず」

この家訓では、禪院以外の術師を見下し、そして、呪術師以外を人間ではないとしている。

 

詰まるところ、禪院家以外の…ましてや非呪術師にコテンパンにされたこの男の禪院家の居場所は、完全に消失したのである。

 

帰ってきた時から、既に憔悴としており、禪院家当主の息子からは「なんで、そんな恥晒して生きておれるん?」と罵られ、炳での会議では色々な感情を含んだ目で見られる。

 

その末、この男は引きこもり始めた。自分の妻や娘への八つ当たりなどをする気力もなく、ひたすらに憔悴しきっていた。飯を食べることも、眠る事も無くなった男。

 

少し経って、久しく彼の顔を覗こうと、障子を開けた妻はその瞬間、悲鳴をあげた。

 

そこで禅を組んでいたのは、ギラギラとした眼、ただでさえやつれていたその顔は、頭蓋骨の輪郭を写すほどになり、髪の毛は散れ散れ、肌けた袴の下には薄皮と骨しかないのかと思わせるほどの肉体。そして、絶え間なくブツブツと何かを口に出している。

 

これを見た禪院家当主は、禪院扇は正気を失ったとした。しかし、その夜。その男は禪院家から姿を消した。

 

姿を消した時、たまたまそれを見たものはこう証言したと言う。

 

「庭を出た時、扇様は外で禅を組み月を見ておりました。丸い満月でございます」

 

「あの、獣の如くギラギラとした、クマと骨の浮き出た眼光を月に向けていたのです」

 

「すると、その瞬間、扇様は叫び始めました。」

 

「発狂の後、あの身体からは到底不可能と思えるほどの脚力で、塀を軽く飛んで見せては、叫びながら姿を消したのです」

 

その後、1ヶ月間付近の山々で警察や、呪術師が捜索を行ったが姿は見えず。禪院扇は失踪の末、死亡した。

 

世界はそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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それからちょうど3ヶ月。

禪院家の門をとある男が叩いた。

 

それを出迎えた少女、禪院真依はその顔を見て誰だかわからなかったが、その男が喋った瞬間驚愕の後に、禪院全体が騒ぎ始めた。

 

発狂の末、死亡したかに思えた、禪院扇が帰ってきたのである。しかし、その姿は以前のそれとは大きく異なっていた。

 

目を閉じ、眉間に皺は一つもなく、肉つきは程々に。そして何より、あの特徴的なポニーテールが消失し、スキンヘッドになっていたのだ。

 

その服装も、修行僧のような姿で、頭に傘をして、錫杖を持っている。

 

誰がどう見ても異様であった。以前の姿とは大きく異なる。正気であった頃よりも更に異なる。

更に、変化はあった。

彼が禪院家に帰ってきた後に、最初にやった事は自身の妻と娘を呼ぶことであった。

 

不気味な程に変わった夫、又は父を見た三人は恐怖しながらも正座して、その男と対峙する。

そして、その男は驚愕の一言を発した。

 

「真希、真依今まですまなかった」

 

「えッ?!」

「はぁ?!」

 

二人は驚きを隠せなかった。

それと同時に、この男は禪院扇ではないのではないかと疑った。確かに声も、身長も、喋り方も禪院扇のそれである。だが、違う。

 

「一体どう言う風の吹き回しですか…?」

 

妻がゆっくりと、そう口に出す。冷静に、ただ淡白に、だがその声は少し震えており、目の前の男が禪院扇ではないかと疑いを持っていた。

 

「そうであった。私とした事が、それを説明するのを忘れておった」

 

目を見開き、少し微笑んで失敬、失敬と口に出す。怖い。とにかく怖い。誰だこいつは、この男は。

 

この会話をこっそり別の部屋から聞いていた他の炳の男たちもそう思った。

 

扇は、傘を持って庭に続く障子を開け、三人を手招く。

 

「来なさい、ここでは堅苦しい、縁側で話そう」

 

縁側では、小鳥が鳴いていた。日がさんさんと庭を照らし、それを心地良さそうに扇は縁側に座禅した。…気持ち悪い。なんだこれは。

 

「座りなさい。立っていては辛かろう」

 

「…いいえ、結構です」

 

妻は、この男の命令を聞かなかった。いつもなら、ここで逆上するはず。しかし、その答えは淡白なものであった。

 

「…そうか、ならこのままで話そう」

 

驚きの中、禪院扇は喋り始めた。その夜の事を。

 

扇には声が聞こえた。あの敗北の日からずっと。それは、意味の分からぬ言葉の羅列。まるで、お経のような一定のリズムを持った言葉が、一生続く。その怨霊は日に日に増大し、憔悴の中、扇はその言葉の意味は分からずとも、それを復唱するようになった。

 

そんなある日の夜…つまり運命の日。その意味不明の言葉が急に止まり、ふと月を見たいと言う欲求が湧いて出た。

 

外にあったのは、一つの欠けもない満月である。その瞬間、扇は何かとてつも無い欲求に駆られた。今までの人生に言い表す事の出来ない、強く純粋な欲求。

 

扇は駆けた。気づいていた時には、既に山の中であった。木木を躱し、夜のうちにとある小屋にたどり着いた。薄暗く、光のついていない小屋。

 

中に入り、電気を付けると、机の上には一つの袈裟(けさ)と傘が一つづつ。そして…

 

「これは…あの男と同じ錫杖…」

 

その瞬間、この扇の脳内にはとある真理が映し出された。

 

 

 

 

 

大鬼強は阿修羅の生まれ変わり、この世の不義を正す正義の僧であり、今までの行いや苦しみは私への説法であった。

 

 

 

 

 

 

扇は、真理に達した瞬間、今まで自分に内包された負のエネルギーが、とてつも無い勢いで体を駆け巡ったのを理解した。

 

これが真理に達した人間の至る場所か、そう解釈した扇はすぐさま自身の服を脱ぎ捨て目の前の袈裟を着ると、錫杖を持ち外へと出た。

 

その時から、扇はこうも理解した。これは天命である。この真理を私は布教しなくてはならない。阿修羅猊下大鬼は私にそう告げているのだと!!!!!

 




感想、表情の程よろしくお願いします。
結構長なりそうなので少し分けます。

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