鍛えられた武術に、呪術が勝てるわけないだろッッ‼︎   作:チチメカ

9 / 10
ランキングに乗れてしまった…
驚きいっぱいです。
今回はプロローグ的なものです。


第七話 懐玉・因果

あの日から一年が経った。

 

「よし!来い坊主ども!」

 

「傑!絶え間なく行くぞ!」

 

「しくじるなよ悟!」

 

先に攻撃を繰り出したのは五条であった。

五条が、右ストレートを繰り出す。それに合わせ、夏油が大鬼の背後から回し蹴りを繰り出す。

しかし、その刹那。大鬼が五条の拳を避けると同時に、胸ぐらを掴み背負い投げを行った。

投げられた五条は夏油とぶつかる…そう思いきや、夏油はすぐに体の向きを調整し、投げた瞬間の隙がある大鬼に拳を突き出す。

 

「遅いわァ!」

 

突き出した拳をそのままの勢いのまま、掴み地面を蹴りバックステップを行う。その瞬間、体勢を崩した夏油の顔面に大鬼が膝蹴りを喰らわせる。

 

友がボコられている合間に起き上がった五条は、膝蹴りをしたことにより、片足になった大鬼の死角から、蹴りを繰り出す。流石に当たったと思った瞬間。五条は驚愕した。

 

「嘘だろ…この蹴りを止めるかよ…!」

 

自分の蹴りをそのまま、膝蹴りの返しで繰り出した蹴りで受け止められたのだ。この瞬間にできた隙を大鬼が見逃すはずもなく、鳩尾に拳を打ち込まれた。五条は、遂に倒れ手合わせはここに終了した。

 

五条と夏油はあの日からゆっくり、だが着実に変化していった。五条は、あの日を境に大鬼に近接格闘の訓練を申し込み、大鬼がそれを了承。東京校に戻った時、一悶着あったが、五条がそれらを黙らせ今に至る。夏油は五条とは異なり、自分の信念が否定された末、少しの間焦燥と苦悩していたが、五条の変わりつつある姿を見たことにより、以前の姿に戻りつつある。

 

そうして、始まる。 

 

「…クッソ!強すぎんだろォ〜!」

 

「まだ、届かないか…!」

 

開始から5分もかからず、二人は地面に這っていた。それを、満足そうに大鬼が見つめる。

 

「うむ。やはり、いい腕をしておるな」

 

「そんな事は言うけど、まだ一度も攻撃なんか当てられてねぇんだけど」

 

「それは、そうじゃろぉ!ワシだって日々研鑽しておるからの」

 

「なにか…何かコツなどないんですか?」

 

夏油が、膝を振るわせながら立ち上がる。炎天下の体育館の中、3人は手合わせとして模擬戦を行なっていた。しかし、術式は無しである。

大鬼は二人に

 

『呪力を使用せずの一級もしくは、特級呪霊の討伐』

 

と言う目標を課し、それを達成するためこうやって二人を指導しているのである。

 

「コツか。…お前さん達は何か習い事をしたことがあるか?」

 

「ぁあ?習い事なら、習字とか華道とか…」

 

「そうじゃない!武術を何処かで習った事はあるかと聞いているんだ」

 

「私は特にはないけど…悟は?」

 

「俺もない。術式ありゃそれでいいってのが、呪術界ってもんだろ」

 

二人の戦闘スタイルは、フィジカルと喧嘩によって積み重なったものであった。実際、呪術界と言う世界では、近接戦闘など、術式が強ければする必要はないと言う考えが強く、万が一それをするとしても、前提に"体を呪力によって強化する"と言う考えがある。

 

「やはりな。このまま何も技や武を習わずに戦おうものなら、ワシの課してる課題なんざできんままだろうし、ワシに勝つなど一生無理じゃな」

 

「……そうかよ」

 

「私達も格闘技とか始めた方がいいのかもしれないね….」

 

二人は、体育館はじに座り水を飲み汗を拭く。その時、体育館の扉が開いた。

 

「おい、二人とも任務だぞ。…大鬼さんもいたのか」

 

「おお!夜蛾先生か、お疲れ様ですな!」

 

「ちょうど良かった。大鬼さん貴方も来てもらいたい。」

 

三人は荷物を持って体育館を出る。外は鳥が囀り春の訪れを感じさせるような気温である。

 

「二人には正直にが重いと思うが…天元様のご指名だ」

 

「天元…様ァ?なんですかな、その人は」

 

「大鬼さん貴方にも関係のある話だ。話を聞いておいて下さい」

 

「そんで、何?依頼の内容は?」

 

「星漿体…天元様との適合者。その少女の護衛と…"抹消"だ。」

 

「ガキンチョの護衛と抹消ォ?」

 

任務について夜蛾と五条・夏油が語り合っている間、大鬼は考えていた。いや、感じていた。

不吉な予感とも言うべきであろうか、大鬼は今までに感じたことのないざわめきを感じていた。

 

「ー大鬼の爺ちゃん?」

 

「…んぁ?おうそうだな。ワシもそう思うぞ!」

 

「何も聞いてなかったでしょ、その反応」

 

夏油が呆れてそう呟く。夜蛾もため息混じりでパソコンをいじり、それを正面に向ける。

 

「…まぁ、続けるが…その星漿体の少女の所在が漏れてしまった」

 

「つまらところ、そいつらを倒せばいいんじゃろ?」

 

「そう言うことです…」

 

夜蛾の一通りの説明が終わり、二人への激励とも取れる一言を聞いた後、夜蛾は大鬼を呼び出した。

 

「なんじゃ、あの二人は聞けん話ですかな?」

 

「えぇ、実は…天元様が大鬼さんと会いたいと」

 

「ほう…」

 

ーなるほど、これか…この無騒ぎの原因は

 

呪術界の最重要人物の一人。そんな彼…または彼女が、ただの非呪術師である大鬼に興味を持った…しかし、すぐにそれはないだろうと考えを改める。数千年を生きる人間が、自身の行動にその様な軽率な行動をとる事はないだろうと考えたのだ。その理由の予想は付かずとも、大鬼はただ一つのことだけは理解できた。

 

大鬼(おのれ)に関する、何か重要な事を知っている。

 

重要人物であり、四六時中高専の最下層で胡座をかいてる人間が、わざわざ自分を呼ぶのだ。大鬼は悪い様はされぬだろうと予想した。

大鬼は天元からの申し出を了承すると、夜蛾に連れられる。

目的地は『薨星宮』。日本呪術界の基盤。天元が鎮座する呪術高専東京校最深部である。

 

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「ようやくか」

 

霧がかる世界。その場所は、無限の空、無限に続く夜空であった。星空が世界を照らし、草原がただ遠方にまで続く。そこの小さな丘で、男が一人禅を組んでいた。

身長は2メートルを超え、肌はやや赤く、その男はニカリと遠くを見つめ笑う。

 

気がつけば、その男の周囲にはまた別の男が、その近くにもまた別の男が。

その草原には、様々な格好と背丈をした男達が背の高く赤い肌をした男と同じ彼方を見つめていた。

 

「さぁ、縛りは解かれた。語り合おう(殴り合おう)じゃねぇか…大鬼強よ」

 

星の輝きによって照らされた表情は、正しく『鬼』そのものであった。




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