なんかスラスラかけちゃいました
最近、後輩である蒼望ニアがエンジニア部に居ることが少なくなってきている。別に彼女がどこで何をしようとも私が干渉すべきことではない。
例えばゲヘナの風紀委員会と仲良くしたり、なんなら一緒にご飯を食べたりとか
例えばトリニティのシスターフッド、正義実現委員会と一緒遊びに行ったりとか
例えばヴァルキューレの警官と一緒に見回りという名のおさんぽしたりとか
例えば例えば例えば…………
そんなことばかり考えては思考の海に浸る
………
……………
最近のニアはエンジニア部を蔑ろにし過ぎじゃないだろうか?
君はミレニアムサイエンススクール所属であって他校の生徒では無いんだけれど?
まだミレニアムサイエンススクール内での他の部活との交友なら
いいや良くない蒼望ニアはエンジニア部所属の「私の」後輩だ
はぁ………二人っきりで切り盛りしてた頃が懐かしいな。今のエンジニア部も勿論いいとも。後輩が二人増えたのだから。だがしかし、1つ下の後輩と2つ下の後輩。まして一緒に居た年数諸々を考えるとどうしてもニアのほうが優先度が高くなってしまう…
というよりはあの子が危なっかしいというかなんというか…ほっとくと危ないこともする。他校に行ったときは行きも帰りも襲撃されたことがあって包帯ぐるぐるで戻ってきたときは倒れたよ流石に
…駄目だ、作業に身が入らない。少しだけ…仮眠をしようか。そう思い、椅子に体重を預けて目を閉じる
──初めて彼女にあったのは私が1年生のとき。まだマイスターと胸を張って名乗れるほどの実力があったかというと。答えはNOだった、あまりうまく行かなくて。がむしゃらにやってたといえば聞こえはいいけれど生産性はない、そんな頃だった。
『…………』
まだ当時中学生だった彼女は、ミレニアムサイエンススクールを外からじっと眺めていることが多かった。彼女の背中にはいつも下げカバンがあって、そこに色々な工具が収まっていたのはあとから知ったことだ
放課後、いつものようにエンジニア部に顔を出すこともなく。憂鬱な思考のまま街を練り歩いていると、彼女にばったりと遭遇した。場所はミレニアムの端っこ、こじんまりとしたスクラップ置き場だった
『……お姉さん、誰?』
レンチで部品を外している手を止めて彼女はこちらを見る、機械油で汚れている作業服で汗を拭っている。少し気になっただけで声をかけるつもりはなかったんだけど。あちらから声をかけられるとは思わなかった
『私かい?私は白石ウタハ。君は?』
『私は…蒼望ニア。ニアでいいよ、ウタハのお姉さん』
挨拶を交わし合うと彼女…ニアは手元に視線を戻してまた機械いじりをする、どうやら不当に捨てられたスクラップを解体して分別しているようだった。
『ニア…ちゃんで良いのかな?機械が好きなのかい?』
そう問いかけるとコクコクと頷いてる、仕事工具を覗いてみれば…なるほどよく使い込まれてる。ちゃんと終わったあとに手入れも忘れてないんだろう、ピカピカだ
『ウタハのお姉さんも機械好き?』
『私は……どうだろう、昔は。ちゃんと好きだったんだけれどね』
依頼を受けて、仕事として受け持った作業は退屈なものではなかったけど。楽しかったかと言われると……わからないな、その感覚は忘れて久しいんだ
『そっか……じゃあ』
そういうとニアは自分の工具を私に手渡して、そこらへんの廃材を引っ張り出して目の前に置く。意図を測りかねていると
『一緒に遊ぼう、ウタハのお姉さん』
『……そうしようかな』
そのあとは暫く無言でお互いに機械いじりに勤しむ、思えばこうやって機械を暇つぶし感覚でいじるのはいつぶりだろうか。そんなことをかんがえながら没頭していく
ふと横を見ると
『……できた』
ニアは不揃いなパーツでロボット…のようなものを作り上げていた。形は不格好だけど、本人はすごく満足げで今にも鼻息がむふーと聞こえそうなぐらいである
『ふふ、上手だね』
『!……ありがとう』
なんとなしに言うとニアはとっても嬉しそうに笑いながら幸せそうな顔をしている
『そのロボット…の名前とかはつけてるのかな?』
『うん、名前はメディアント』
メディアント……普通のっていう意味か。
『でも名前変える。プレシャスって名前にする』
『…どうして名前を変えるんだい?』
『それは……ウタハのお姉さんがこの子を褒めてくれたから。だからプレシャス、お前は素晴らしいんだよって』
純粋な視線を受けると、なんとなしに言葉を発してしまった自分がどういうわけか恥ずかしく思えてきてしまう。
────そういう日々が暫く続いた後。一般開放含めたコンペティションが始まった、あまり意欲が出ていなかったがニアのお陰でなんとか間に合うぐらいにはモチベーションが回復している。
当然のようにニアも来ていた。
『ん、ウタハのお姉さんこんにちは』
『あぁ…こんにちは。今日は一人かい?』
『うん、一人』
手持ち無沙汰もあった私はニアと一緒にコンペティションの様子を見て回った。まだ背の小さかった彼女は私の背にすっぽりと収まるぐらいだったのでおぶりながら色々と回ってみた
『おぉ〜……!』
顔が見えなくても分かる、きっと興奮しているんだろう。話してわかったんだけれど、彼女無類のロマン好きだ。無駄な装備や機構なんかが大好きで。実践における耐久とかはほとんど気にしていないと言えるだろうね
『ウタハのお姉さんのはどれ?』
『あぁ……ええと、あれだよ』
間に合せで仕上げたものなんて見せたくはなかったんだけど、髪を揺らされてねだられてしまえば応じるしか無いぐらいには。私は好かれていた
『…カッコいい!』
私の作ったのはドローンの改良型で撃ち落とされてもホバー移動で実戦に復帰できる…というような当たり障りのないものだった。けれどニアの琴線に触れるものがあったらしい
『ありがとう…あれは有線でも動かせるようなものだから』
『そうなんだ…あれってなに?』
『あぁ……あれは見世物でね。どれだけ優れた機能なのか、実際に使ってもらうんだ。テストとしてね。戦わせたりなんかもする』
『そっか……じゃあ『ウタハさん』……?』
後ろから声をかけられて振り向くと、現部長の先輩が声をかけてくる。目つきがあまり良くないとのことで萎縮されてしまうのだが。技術屋としての腕は確かだ
『遊んでないで、コンペティションの手伝いに回りなさい』
『…はい、分かりました。……ごめんねニア、ちょっと行かないと』
『……ん』
物分りの良い彼女はすぐに降りて邪魔にならないようにしてくれた。
『全く、サボるのも程々にね』
『すみません、部長』
『はぁ…しっかりして頂戴
───ただでさえ、貴女の作ったものは大したものじゃないんだから』
チクリ、言葉が刺さる。それはそうだ、間に合せの素材で作ったんだから。しょうがないといえばしょうがない、それと同時に今の私の限界でもある
そうだけれど……なんだか、苦しくなってしまうね。そう思いながら部長の後に続こうとしていると
『───その発言、気に入らない』
聞いたことのない声とともに手を掴まれる、手を掴んでいるのはニア。でもああいう冷え切った声を聞いたことはない、幻聴かな?なんて場違いなことを思ってしまう
『……貴女、誰?』
『ウタハのお姉さんのファンだよ』
部長が訝しげな視線を送るもニアは微動だにせず、ただただ平坦な声を投げかけられる
『人の創造物を貶すその発言、クリエイターとして0点だよ…ねえウタハのお姉さん』
『……な、何かな?』
部長が投げつけられた言葉に瞠目しているとこちらに視線が向く。いつもののほほんとした顔ではなく、全く別の顔だ。思わず声をつまらせながら聞き返すと。思いもよらない言葉が返ってくる
『その見世物のバトル、ウタハのお姉さんので僕が出るよ』
『ニアちゃん、少し冷静になろう?私は大丈夫だから』
思わず慌てながら止めにかかる、私を慮ってくれてるのは分かるけれど。流石に無茶だ、ありあわせのもので適当に作ったのが。先輩方の作品に勝てるわけがないんだから
そう宥めると、私の方を見て
『私が気に入らないから。……人の想像力と情熱を笑われて、頭にこないエンジニアは居ないんだよ』
そう言うと、テストバトルのほうへと向かって行ってしまった。恥をかかせてしまうとうなだれていると、部長のため息声が聞こえてくる。
『全く……血の気の多いコだこと。でも良い機会ね、貴女が作ったものの実力。自分で再確認してきたら?』
最初は大したことがない…なんて言う意味かと思ったが。部長の発言の意図が全く違うことに気付かされたのだった
───数分後、そこには
『今回のコンペティション。テストバトルの優勝者、使用者。蒼望ニア。作成者、白石ウタハに決定いたします』
機械的な音声から自分の声が流れていくことに現実味を感じなかった。勝った?私の作品が?あんなものが?
『……ぶいぶい』
壇上に上がりつつ、こちらを見つけるとVサインをしてくる、それを呆然と見ていると。隣りにいた部長が苦笑するかのように声をかけてくれた
『どう?貴女が作ったものの実力は?』
『わかりません……』
本当に、分からなかった。分かるわけもなかった。カタログスペックも出力も運動性も何もかも違うはずなのに、勝ててしまった
『あの子…ニアだったかしら?あの子が言ってたじゃない』
『……想像力と情熱……?』
『そう、貴女が本来持ってるものであり。貴女がマイスターに選出された理由』
そう続けながら元部長はこう言ってくれたのを今でも覚えている
『──おめでとう、貴女の想像力と情熱はたしかに。人を動かすには十分なものだったわ』
──そのあとはコンペティションの優勝者ということもあって。仕事も増えたけど、自信がついて上手くやれてる
……あのあと、ニアとは会えていない。いつの間にか消えてしまっていた、ちまたではエンジニアの妖精とか呼ばれているらしい
それから1年後、部長たちが卒業してしまい。部員一人になってしまった私の前に現れたのは
『お久しぶりですウタハのお姉さん。一緒に機械いじりしましょう!』
あのときと変わらない笑顔をみせてくれるニアだった
過去から自分のことを慕って、前に進ませてくれた後輩が怪我ばっかりして。2年生になったらあちこちの生徒と遊んでエンジニア部になかなか顔を出してくれない時のウタハの心境を述べよ
なお以前の小話は入学直後に起こったものとする
IFストーリーがあるとすれば
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原作ブルーアーカイブに放り込む
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ゲヘナルート(風紀委員会(アコ))
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トリニティルート(救護騎士団(ミネ))
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トリニティルート2(自警団(スズミ))
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アビドス(対策委員会(おじさん))
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ワルキューレ(警察学校(カンナ))