王戦物語~聖剣抜いたのでヒロインみんなを笑顔にします~   作:ビスマルク

15 / 76

カップルという関係性も好きですが家族的な関係性も好きです


具体的に例を挙げるとすると六畳間の侵略者のメイン達ですね。彼らの関係性は非常に好み

何というか平和に恋愛してていいんですよね……


エルフって神秘的 ただし見た目は的な

 

 霧の満ちた山をひたすらに登り続ける。麓はまだ軽い靄のような濃度だったが登れば登るほど霧は濃くなっていく一方だった。

 

 『魔霧の森』と名付けられてはいたがその実態は山、それもかなり高いのだろう。歩き続けて三時間以上経つが一向山頂に辿り着く気配がない。

 

 道、という立派なものはなく。ただ先行する騎士団長の後を必死に追いかけるのみ。むしろこれだけでも足腰の鍛錬になるのではという嫌な確信が持てる。

 

 というか霧が濃すぎて5mくらい前すらろくに見えないのだからどうしようもないと言える。おかげで慣れてない人は慣れてない人同士で手を繋いで進まないといけなくなる。

 

 転んだ時に咄嗟に掴まれるよりはこちらの方がマシだろうという判断からだ。

 

「ふー……ふー……」

「はぁ、はぁ、団長……。ちょっと休みにしない?そろそろ限界の子もいるからさ」

「む、そうですか。ではもう少し先に軽い広場がありますのでそこで休憩を挟みましょう」

 

 繋いでいた手から同行していた『聖女』アリシアの限界が伝わってきたので休憩を促す。それも仕方ないことだろう。王都から出たことなどほぼないという彼女はこんな山道を歩きまわることなどこれまでの人生で一度もなかったであろうことだ。

 

 何せ王都から出たとしてもその行く先は道の整備されている他国の街だ。自然豊かな森やら山やらとは縁遠い生活を送ってきたのだから仕方ない。

 

 一方の僕は幼い頃から故郷の近くにある森を遊び場にしていたわんぱく坊主。家出をしてしばらくの間森の中で生活したこともある生粋の野生児、村人からはモンキーボーイという綽名まで貰った男。

 

 この程度ならばアリシアの手を引っ張りながらでも多少息が乱れる程度で済む。ちなみにもう一人同行している元メイド服現軍服な幼馴染ヒカリさんは余裕そうな顔をしている。

 

 体力的には僕の方があるのだが彼女は身体の使い方が非常に上手いため体力を無駄に使うようなことはしない。非常に頼りになるが普通に悔しいのでいつかその余裕そうな顔を負かしたいと思っているのは秘密だ。

 

「さて、それでは休憩にしましょう。私は少し食料を集めてきます。目印はおいていくので迷うことなくこちらに戻れるでしょう」

「うん、よろしくねー」

 

 そして何よりやはりというか当然というべきか、まったく疲れた様子のない騎士団長はそのまま霧の中に消えていった。

 

 近くに川があるのだというので恐らく魚を獲ってくるのだろう。釣り道具も何も持っていなかったので恐らく川に入り素手でとるつもりだと推理する。

 

「あれだね、団長って人か熊かって言われたら熊の方に近いよね」

「それ本人に聞かれたらどうなるか分かんないからやめろよ?」

「ぷふっ」

 

 熊のごとく手掬いで魚を獲ってくる騎士団長の姿を想像したのか思わず笑ってしまった人がいる。ここまで山を登ってきた影響からか酷く疲れていた表情をしていたアリシアだ。

 

 吹き出してしまったことが恥ずかしかったのか赤くした顔を手で覆い隠してる。うーん、そのしぐさ一つ一つが可愛らしいのは流石というべきか。

 

「す、すみません。ちょっと思わぬ表現をきいてしまったから……」

「知り合いが熊扱いされたら笑ってもしょうがないって、実際そっくりだし。でもなんか納得は出来るよなー。身長も高いし、筋肉質だし」

「使う武器が大剣だって話だし、自由に使う為にはそれなりの体格が必要なんだろうね」

「団長さんは魔力があまりなく、魔法自体は肉体強化しか使えないらしいです。それもいざという時にしか使わないのであの体力や膂力は素のモノなんでしょうね」

 

 今更だが魔力は大半の人がもっている。それこそ普段使いする魔道具の多くはその魔力を原動力にしているか、オンオフにするスイッチになっていたはずだ。

 

 だがそれを魔法を使えるはイコールではない。魔力が足りず使えない者が大半だからだ。なので普通の村人や町人が魔法を目にすることなどほとんどない。魔法を使うのは騎士や傭兵、猟師など戦う術が必要な人が大半、その人達の中でも魔法を使える人間は少ないだろう。

 

 その理由は魔力を多く生み出すことが出来る能力は女性の方が高い傾向にあるからだ。これは魔力というエネルギーは生命力が生み出しているのでは、という考え方を補強している。

 

 女性は子供を産む為に生命エネルギーが高く、そこから生み出される魔力もまた多いのでは?という考え方が素になっている。魔力に関する考えではこれが主流だろう。

 

 なので男で魔力が多い人間はあまり多くない。それこそ魔法が使えるのは上澄みだけなのだろう。先ほどアリシアが騎士団長は魔力をあまり持っていないと言っていたがそれは光魔法を自在に使いこなせる魔力を持つ『聖女』だから言えることで、彼は男として見るなら十分すぎる魔力を持っている。

 

 なおそんな感じなので僕のようなため込む魔力が多く、さらには魔力の回復量が高い男というのは非常に珍しいらしい。らしいというのはここら辺の話はクラリスちゃんに聞いたからである。前世で見たはずの設定などとうの昔に薄らいでいる。覚えてるのは素晴らしきCPについてだけだ。

 

 あとこれだけだと女性の方が男性より強いというイメージを持つかもしれないが、男性は魔力を持たない代わりに身体能力が高い。前世での男女の身体能力差どころではなく高い。

 

 この世界にも「銃」は存在しているがほぼ普及していない。それは銃を撃ち込んでも多少の怪我はしても戦い続けられる騎士が多いから。鍛えれば鍛える程男の身体能力は上がるとのことだ。

 

 この世界で「銃」をメインウェポンとして使用してるのはただ一人だけだろう。

 

 とにかく魔力を多く持ち、かつ男の為鍛える程影響が出る僕はこの世界において戦士としては最高クラスの資質持ちとのこと。こんな資質はいらなかったとはもう今更言えないんだろうが愚痴だけでも言ってしまいたい。

 

「身長と同じくらいの大剣ぶん回せる辺りどこまで鍛えてんだろうなー。あんなのこんな遮蔽物が多くあるところじゃ使えないと思うけど」

「いえ、団長さんは木々程度なら簡単に斬るので……ここでもあの大剣を振るうのに何の影響もないかと」

「そんな人に僕は今から鍛えられるの?死んじゃわない???」

 

 どんな修行、鍛錬をするのか分からないが今の僕の身体能力などたかが知れてる。無論全力を尽くすのは問題ないがそれはそれとして辛すぎるのは嫌なものがある。

 

「そんなこと鍛えてる間は考えられないから安心だって言ってたぞ。生きることへの執着だけで頭が埋め尽くされるんだってよ」

「それのどこが安心なのか一から十まで説明してほしいかなって」

「アタシが最初から最後まで付き合ってやるよ」

 

 力強い、それでいて美しい笑みを浮かべるヒカリさん。こんなのもう惚れちゃいそうだよ、とうの昔に惚れてるけどさ。

 

 ただそれとは別にヒカリが鍛錬で酷いことをされるのは嫌なものがある。ヒカリはヒカリであってヒカルではないがその素質は変わらないのだろう。恐らく戦闘におけるセンスは抜群、僕より上だと思う。

 

 それはそれとして好きな子が戦う為の訓練をすると聞いて喜べるほど僕は男をやめてるわけではない。幸い剣王になったのは僕であって彼女ではないのだから、出来るだけ平和に過ごしてほしいものだ。

 

 平和、それがどれだけ貴重であり尊い物なのか、僕達はそれを知らな過ぎた。

 

 

「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!ここから魔道具の臭いがする!!!!それもかなりの貴重品の臭い!!!!!見せろぉおおおおおおおおおお!!!!!!!!!私にそれを見せろぉおおおおおおオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 突如何の脈絡もなく出てきたその人物は僕達の目の前で幽鬼のようにフラフラと体を揺らしながらこちらにゆっくり近づいてくる。

 

 見た目はとても美しい、それでいて可愛らしいものだ。身長はアリシアより少し小さめ、翡翠色の長髪はこの濃い霧の中でも輝くような艶をしておりまるで宝石のよう。

 

 何より特徴的なのは髪の隙間から伸びている長耳。ファンタジー作品における定番種族エルフの証であるそれは初めて見た僕を興奮させたのだろう。本来ならば。

 

 そう、彼女はきっと美しいのだろう。だがはっきり言って今の目の前の少女は恐ろしい敵でしかなかった。その灰色の目は血走っており僕の腰につけられている聖剣に視線をロックしてそれ以外が目に入っていない。

 

 黒い(つば)の広いとんがり帽子を被っている彼女とどう相対すればいいのか分からない僕はとりあえず慣れない剣を引き抜き、少女に向けて二人の女の子を背後に庇うように前に立つ。

 

 何が狙いかは見れば分かるので何かあれば僕が戦うしかない。エルフは魔法のエキスパート、なにをしてくるか分からない手札の多さが武器だ。

 

 ならば先手必勝しかないと脚に力を込め、いつでも飛び込めるように準備をし

 

「何をしている大馬鹿者が。俺の主君に疚しい目を向けるのはやめろ」

「あだっ!?な、なにをするのよ!?私に用があるのに私の脳みそ壊したらアンタらだって来た意味ないでしょう!!」

 

 彼女の後ろの霧の中から現れた偉丈夫の登場により準備は無駄になった。騎士団長は音もなくエルフ少女の後ろに立ち左手で帽子の上から拳骨をくらわす。

 

 ゴスッ!という音が鳴り、殴られた本人はたまらず殴ってきた団長に声を荒げて講義をするが、大きな魚を何匹か右手に持ったままエルフ少女を無視してこちらに歩みを進める。

 

「陛下、遅くなってしまい申し訳ございません。食料を持ってきましたのですぐに調理をします」

「ああ、うん。それはいいんだけどさ、彼女は一体……」

 

 前も思ったが彼はかなりの天然なのかもしれない。この状況で心配すべきはそこじゃなくてエルフ少女に関してだろうに。

 

「ああ、こいつはこの森に勝手に住み込んでいる不法滞在エルフです。今回の修行の手伝いをさせる為に連絡を取り、合流するように伝えておりました」

「時間感覚ずれてるエルフの私が言う事じゃないけどせめて何日に来るかくらい伝えてほしいんですけど?」

 

 つまり彼女は敵でも何でもなく、ただ聖剣という魔道具を発見してテンションを上げていたオタク、と。それでいて僕達の修行の手助けしてくれる味方というのか。非常に不安になる人選と言いたくなる。

 

「コイツに修行を手伝ってもらうの滅茶苦茶不安なんだけど」

「言いたいことは分かるが実力だけは本物だ。性癖は壊れているがな」

 

 流石はヒカリ!!僕達が言えないことを平然と言ってのける!!!そういうところ格好良すぎて男としての自信がぶち壊されそうだよ!!!

 

「失礼な。これでも昔に比べれば遥かに自重しているって言っても過言じゃないのに、本当失礼よね」

 

 自重してなお急に叫び声上げて登場してくるなら元は一体どんな奇行をしていたのだろうか、非常に気になるがそれを知ることはないのだろう。

 

 ボクだったら絶対に語りたくないから。

 

「とにかく、よろしく。私が現実時間で一ヵ月アンタ達の修行を担当するキャロル・マクシミリアンよ。かなり辛いと思うけど逃げられないから覚悟を決めておくことね」

 

 こうして僕達の過酷な修行は奇妙な人物との出会いから始まるのだった。

 






評価感想くれるとテンションぶち上げで続きを書けますのでよろしくお願いします!!!!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。