王戦物語~聖剣抜いたのでヒロインみんなを笑顔にします~ 作:ビスマルク
「理系が恋に落ちたので証明してきた。」はいい男女カプが多くておすすめ
理系過ぎてズレてる二人とか最高だし、それに冷静にツッコミ入れつつ恋する少女もいいし
なにより幼馴染で最近ちょっと拗れてる二人の男女が最高過ぎるんですわ……
「はっ!?ハッハッハッ……!?」
「あら、起きたの。案外早かったわね」
胸を貫かれた感触があったはずなのにその痛みは既に消えている。いやそれは何度も繰り返した死の後を思い返せばおかしい話ではない。
だが違和感は痛みだけではなく、死ぬ度に消えていた倦怠感や魔力の消費を感じる。いったいこれはどういうことなのか、手元にある聖剣を抜いて野営中のキャロルに向ける。
「危ない物向けないでよ。とりあえず今回の鍛錬がどんなものか体験してもらっただけなんだから。そのおかげで身体に渦巻く魔力を認識できるようになってるでしょ」
「……つまり、あれは夢と?ヒカリとアリシアが眠っているのもそれが理由と?」
「そう言う事。起きたてなのに思ったより理解力あるじゃない。嫌いじゃないわ、そういうの」
確かに、そう考えれば何度も死に続け、その度に繰り返してきたことも分かる。だが、あんなものを耐えられる人間はそうはいない。どう抵抗しても殺されるなんて経験を。
ヒカリもアリシアも耐えられない。僕が死を繰り返してなお諦めなかったのは本当に運がいいだけだと分かる。
「一刻も早く彼女達を起こせ。何度も死ぬなんて経験するのは僕だけで十分だ」
「…………何度も死んだ?えっ、なにそれ?貴方そんなのを乗り越えてきたの?頭修羅勢だったりするの???」
「何を白々しいことを。何度も僕の首や体を鎌で切り裂いたり、短刀で喉や心臓をぶち抜いたり、魔法で爆死させたり窒息死させたりしたくせに」
「えぇ……初っ端からそんなのやってきたの……?魔力を感じれるようにするって設定にして他は放置してたから知らなかったわ……」
何回死んだかはもう覚えていないが、魔力自体は60回くらい死んだ辺りから何とか掴むことが出来た。その後何度も繰り返して単純な闇魔法なら使えるようになったのだが……。
どうやら彼女のドン引き顔を見る限りそこまでやるのは予想外だったらしい。予想外であんな地獄を体験させられたこっちの身にもなってほしいものだが。
「貴方の方は結構順調そうだったから夢の中を監視してなかったわ。まさかそんな拷問染みたことをしてるとはね。こっちの二人はそこまでじゃないから安心しなさい」
「…………今はその言葉で納得しますけど、何かあったと思ったらすぐに止めますから」
「はいはい、心配性……いやそんな経験したなら信頼できなくて当然か。失敗したわね」
僕の顔をもし鏡で見ることが出来たら今までの人生で一番のしかめっ面をしてる自信がある。それでも彼女達が僕の経験したアレをやってるわけじゃないと聞いて一安心もする。
しかしアレが『魔霧の森』での修行効果……。一体何時から夢だったのか分からないし、本当の現実だとしか思えなかった。
こうして現実に戻ってきてなお夢とは思えないほどの現実感。だが思い返せば夢だと分かるヒントもそこら中にあった。
「そもそもあの状態でリチャード騎士団長が割り込まない訳がないんだよな……。ヒカリとアリシアの二人に関してもなんの介入もしてこなかったし」
後者の二人に関してはその実力がなかったと納得も出来るが、リチャード騎士団長に関しては現実の場合絶対に止めてくるだろう。
彼は僕を『剣王』にふさわしい強さを得られるように鍛錬をするつもりだが僕に死んでほしいとは思っていないはずだ。あの時の夕日の会話でそれくらいは分かるし、希望的観測かもしれないが敬意を示されてもいるはず。
それがなかった時点であれは夢だったのだろう。だがたかが夢だと馬鹿にすることはあの地獄を体験した後では出来ない。
現に少し前は全くできなかった魔力の操作が、夢から覚めた後は手足を動かすようにできるようになっているのだから。
「ちなみに、寝ていたのは何時間なのかな?」
「一時間ってところね。多分貴方は丸一日分くらいは経験したんじゃない?とりあえず身体を慣れさせるってことで調整したし」
一時間で一日分、か。単純に考えると24倍だがこの話っぷりからもっと倍率を上げることは出来るのだろう。
確かに夢の中の鍛錬が現実にも影響を与えるというのは本当らしい。それは魔力の操作と、聖剣の「第二能力」を使えるようになったところからも分かる。
「その様子だと、『聖剣』の力もいくつか使いこなせるようになったようね。第二能力まで……、やっぱり思った以上に優秀かも」
「聖剣の力って、分かるのか?」
「言葉遣いがいつの間にか丁寧じゃなくなってるのが気になるけど……まぁいいわ。百回以上私に殺されたって言うならそれも当然か」
キャロルはその長い翡翠色の髪をかきあげながら視線を眠っている二人から僕の方に向ける。いや、僕ではなく僕が持っている聖剣に。
そして視線を向けてくる二つの目は、灰色だったはずなのに髪と同じエメラルドグリーンの輝きを発している。その目はまるですべてを見通すようで、不気味でありながら、それでいてどうしようもないほどに
「綺麗、だな……」
「ふぁあああぁっ!?な、なによいきなり!?目の色が変わるの見たら普通気持ち悪いって思うでしょ!!」
「いや別にそうでもないけど……綺麗な翠色でエメラルドみたいな、まるで宝石みたいな感じで凄く綺麗だと思うな」
「ほ、褒めたところで何も出ないわよ!!……ところでお茶とかいる?私特製のオリジナルブレンドあるけど」
「えっ、じゃ、じゃあまぁ一応貰い、ます?」
僕がお茶を貰う事を了承するとなぜか嬉々としてお茶の準備をし始めるキャロル。えっ、もしかして目の色を褒めたから機嫌よくなったの?言っちゃなんだけどチョロくない?
ただまぁ相手の事情を知らずにそう言うのも憚れるので素直に手渡しされたお茶を受け取り、一口飲む。
緑色の、前世で言う抹茶に似た色合いのお茶を苦そうだと思いながら飲むと一気に身体に魔力と力が戻ってくるのを感じた。流石に全快ではないがそれでもかなり楽になったことに驚いた僕の様子を見てカラカラ彼女は笑っていた。
「驚いたでしょ。私がこの『魔霧の森』で栽培している特殊なお茶よ。これだけ魔力の集まってる場所でしか栽培出来ない特殊な植物からしかとれないからあんまり人に振る舞うことはないのよ?」
「そんな貴重な物を僕に……。うん、なんかすみません。起きたら敵意むき出しにしちゃって」
「別にいいわよ。私に何度も殺されたんならその程度で済ませていることが凄いわよ。普通問答無用で襲い掛かってるでしょ、何度も違う方法で殺されてたら」
それは正しいかもしれないが、それは僕の側から見たらの話だ。彼女からしてみれば良かれと思って協力してくれたのに、その相手が起きたと思ったら剣を向けてくるんだ。納得できる方がおかしいともいえるし、キャロルの心は広すぎないかと心配になる。
「ああ、言っておくけど私は剣を向けられたりするのは慣れてるから気にしてないわ。エルフって結構嫌われ者だから。生まれ故郷とか人間に燃やされたし。でもここに住むことを許してくれたりたまに協力求めてくる代わりにこっちの要求もある程度聞いてくれる対等って扱いしてくれる奴もいるし」
「それが剣を向けてもいい理由にはならないでしょう?剣を向けられることに慣れてるからと言って、それで傷つかないなんてこともないだろうし。間違っていたなら謝るべきです」
勘違いで危害を加えようとする、威嚇する。それは間違ったことだ。少なくても彼女は味方で、僕達を助けてくれる人なんだから。
間違えてるならそれは謝るべきだ。例えそれが嫌っている相手だったとしても。
「……変な人間ね。結構生きてるけどアンタみたいな奴はそうそういないわよ」
「幼馴染曰く僕みたいな奴が大勢いたらヤバいから一人で十分だそうですよ」
「ま、それは分かるわ。それとさっきまでと同じようにタメ口でいいわよ。敬語苦手だし」
彼女は自身が淹れたお茶を飲みながら朗らかに笑う。聖剣の気配を察知して変顔しながら現れたとは思えないお淑やかなその姿は、森とエルフという抜群の相性もあり少し見惚れてしまう。
最近、僕の周りには美人が多すぎて目が肥えそうなのが悩みの種である。
「で、その聖剣の力引き出せたんでしょ。第一と第二」
「うん、何とかね。第一は「聖剣が手に戻ってくる」第二は「直観力の強化」ってところでしょ?」
「その通り。ただ第二の方は「能力全般の強化の結果、直観力も上がってる」と考えた方が正しいわ。筋力も体力も魔力も上がって、結果的に視覚や嗅覚触覚が上がり脳が得る情報量から近未来が頭に浮かぶって感じね」
第一の方はほぼデフォルトの能力だろう。何せ聖剣を抜いて魔力の扱いも何も分かってない頃から発動していたのだから。今回の夢の中の戦闘ではそれを利用して即座に掌に戻して意表を突いた。
第二の方は騎士団での体力測定の時、既に発現しかけていた能力だ。この力のお陰でヒカリの膝枕を体験出来たと思えば感謝の念がこみ上げてくる。
あの時は単純に体力を底上げしていた感覚だったが、今回はそれに加えて魔力を始めとした全能力が上がっていた。しかも使おうと思えば聖剣を離した状態でも使えるのだろう。
何より未来予知に近いレベルの直観力が凄い。夢の中のキャロルの攻撃を避けるのにも、そこからどうすればいいかも瞬時に浮かんできた。
とはいえ今はこの直感は自動で発動する形で、自分の意志で使うことは出来ないようだが。
「そこらへんは特訓である程度どうにかなるでしょ。自動で発動、ってところは変わらないだろうけど発動頻度を上げることや、使った後の疲労感の軽減は出来るはず」
「確かに、最後の相対の時に発動した時は酷く疲れたからなぁ……。そう考えると使い勝手はいいけど、体力を削る辺りそうそう使えないかな」
「慣れることから始めることね。つまりアンタがこの森ですることは剣術を覚えること、聖剣の第二能力を実践レベルにあげること。そして第三能力まで開放すること、よ」
「この聖剣、一体どんだけ能力持ってるの……?」
「あー、七つくらいかしらね。四つまでは私の目で見れるけどそれ以上は厳しいわ。これだから伝説級の魔道具はヤバいわね」
聖剣の能力についてそう言った彼女の瞳は先ほどと同じくエメラルドグリーンに輝いていた。どうやら魔道具の能力を見抜けるようだが、その力を使うと目が輝いてしまうらしい。
「綺麗だなぁ……」
僕はそれを綺麗だと思うが、彼女にとっていい思い出はないようなので呟く程度で済ませておく。
「うへへへへへ……。この鍛錬合宿中に調べられるだけ調べてやるわ……!!」
しかしどうしてだろう、今のキャロルの姿を見ていると何かを思い出しそうになる。まるで趣味に没頭しすぎて周囲の目をまるで気にせず醜態を晒すその姿がだ。
とはいえそれは言葉だけでなぜか彼女はその大きい帽子で自らの顔を隠している。流石に女性だから趣味に走るその顔を見られたくないのだろうか?
初登場の時に見られたからもう既に意味はないと思うけれど。
「っふー……。とにかく、アンタにはこれから予定日まで頑張ってもらうわよ。それこそさっきまでの夢での出来事と劣らないくらいの経験をね」
「望むところだ。僕はもう自分の戦う理由が分かった。だからもう折れたりはしない。なんだってバッチコイってやつだよ」
あの経験が僕を強くした。だから突発的な鍛錬にだって感謝しよう。
キャロルのすぐそばで寝ている二人の少女。彼女達の幸せを守る為なら僕はきっとなんだって耐えられる。
評価感想くれるとテンションぶち上げで続きを書けますのでよろしくお願いします!!!!