王戦物語~聖剣抜いたのでヒロインみんなを笑顔にします~ 作:ビスマルク
二人の少女の為、そしてまだ見ぬカップルをこの目に焼き付ける為という目的を再確認した僕は気持ちを新たに修行に挑むことになる。
何度も斬り殺され、喉を突き殺され、焼殺されたり溺死されたりと色んな死に方を経験した今、僕の死に対するアンテナは非常に高いと言っていいだろう。
そのアンテナが僕に全力で伝えている。ここから逃げろと。目の前のエルフが作りだすであろう劇物から逃げ出せとアラームが鳴り続けている。
「ねぇ、それ食べたら死んだりしない?」
「何言ってるの、最初は死なない程度の毒で慣らしていくわよ。まずは腹下しの奴からね」
そう言いながら目の前のエメラルドの髪を引っ提げて、見るからに毒と分かりそうな妙に明るい色の草を刈り上げるエルフに突っ込む。突っ込まざるを得ない。
「なんでわざわざ夢の中で毒なんぞ食らわないといけないの?」
「食べず嫌いしてたら大きくなれないわよ」
「それは毒を食べる理由にはならないよね???」
そもそも夢の中とはいえ、これは普通の夢ではない。『魔霧の森』の力で現実にまで影響を及ぼす騎士団長が選んだ修行場所なのだ。
僕もつい先ほどまで百回行くか行かないかくらい死ぬ修行を始めてその影響力を身をもって体験していた。
その僕が断言しよう。夢であろうとここで毒を食ったら現実でも毒の影響が来ると。
「そこらへんは安心しなさいな。現実の私が解毒してあげるから現実で死ぬことはないわよ」
「現実でってことは夢の中では死ねってこと?」
「今更ね。ここでの成長方法は主に二つ。死んで成長するか死に物狂いで成長するかだけよ」
「本当に今更だけどここに来たこと後悔しそうだよ」
「百三十四回死んだ割には心折れてないわねぇ」
どうやら僕の感覚はずれていたらしい。まさか百回以上ぶち殺されていたとは。というか殺し方が多すぎて目の前の綺麗なエルフ、キャロルが怖くなりそう。
実際には草刈り中で毒草を吟味している姿は、意外と可愛いと思っているのだが。
「ところでキャロルってもしかして魔眼持ってたりするの?」
「……なんでそう思うのよ」
「だって度々両目が光ってたから」
彼女の両目は普段は灰色だ。それが僕の聖剣を見る時に限ってその髪と同じエメラルド色に光り輝いている。
そして魔眼とはその名の通り魔法の力を自然と使うことが出来る眼だ。普通は使う魔法の理解度を上げなければ使用出来なかったり、未完成なままで発動したりするが魔眼にそれはない。
ただ一つの魔法だけとはいえ、その目は魔力を流すだけでそれ以外の一切を無視して魔法を発動できるのだから強力なのは間違いないだろう。
僕だってあの死闘の中で魔力を聖剣に込めることで魔法を発動することが出来たが、発動成功率は高いとは言い切れない。
「……そうよ。私の両目は魔眼なの」
「ふーん、やっぱりそうなんだ」
「……………………………………」
「うげっ……、その野草苦いから嫌いなんだけど。他のにしない?」
「いやそれだけ!?どんな魔法とか聞いたりしないの!?気にならないわけ!?」
いや気になるっちゃなるけど聞いてほしくなさそうなのに無理に聞き出そうとか現在進行形でお世話になっている人にしちゃいけないだろうに。それがキャロルの心の傷を開きそうならなおさら聞き出すなんて選択はない。
「気にならないと言えば嘘になるけどね。別にそれを知っても知らなくても僕のキャロルに対する態度が変わるわけじゃないし。僕の中での君は魔道具に目がなくて、急に来た人間にも親切に出来て、知り合ったばかりの僕の言葉を聞いて頑張ってくれてる可愛い女の子。それだけ分かってれば十分でしょ?」
「……最後の一つは余分だと思うわよ」
「可愛い女の子ってところ?そこは外せないよ。だって本当のことだし」
僕は嘘も吐くが基本本当のことしか喋らないようにしている。そうじゃないといざという時に吐いた嘘が暴かれてしまうから。
本心を言葉にする男が嘘を吐いてもそれを疑う奴は相当少なくなるからね。信頼って大切。
まぁ一番の理由は赤くなった顔を帽子で隠して毒草探しを頑張っているふりをしている彼女の姿が可愛いからだけど。
やっぱり可愛い女の子の恥ずかしがる姿って身体を元気にする栄養素が出てると思うんだ。
「それで、結局僕はなんで毒を食べさせられるの?」
「……身体に毒を慣れさせるためよ。アンタがまず『王戦』をする仮想敵は槍王の所の次期後継者最有力候補でしょ。なんでもその槍に傷つけられると体が痺れて動けなくなるらしいわ」
「それで毒、か。毒耐性なんてそう簡単につくかな……」
「何言ってるの。耐性を付ける為じゃなくて、毒をくらった状態でも動けるようにする為の毒草探しなのよ。いつでも調子がいい状態で戦えるわけじゃないんだから、体調が悪い時の動き方を学びなさい」
これが遥かな時を生きてきたエルフの学んできた知識か。しかしそれでも情報があんまりないと言える槍の後継者の力。まったくもって油断できないな。
「実際に見れば暴けるんでしょうけどね。特に魔道具の力ならその聖剣みたいな「深い」タイプでもなければ分かるわ」
「でも行きたくないでしょ。ここに好んで住んでるってことは人の多い所になんて。僕も実は家でゴロゴロ出来るならしてたいタイプだから気持ちはよくわかるよ」
「アンタは人ごみに全力で突っ込むでしょ。そこに求めるモノがあるなら。同じタイプって言うならそういうところのことね」
草刈りを終え、鎌のようにどこからか出した鍋に毒草をぶち込んで煮込み始めた彼女はそう言いながら僕の目を見る。それは今までいなかった同士を見つけたかのような目だった。
「聞いてるわよ、恋人同士とかを見ると目を輝かせて他の何も目に入らないって。随分といい趣味をしてるわね」
「聖剣の、珍しい魔道具の気配を感じて山頂から下りてきて物凄い形相でこちらを見てきた人には負けるよ」
鍋から出てくる煙が紫で、間違いなく人が飲んではいけない色になっている毒草スープが気になって話に身が入らないが多分大事な話をしているんだろう。
ほぼ反射で話してる為自分でも何言ってるのか分からないが。
「そんなに前世の影響が出てる奴は初めて見たわ。結構長めに生きてるんだけどね、これでも」
彼女のその言葉に今まで鍋に向いていた意識と視線がキャロルに向く。当の彼女は鍋をかき回しながらこちらを見ない。帽子のせいで視線がどこを向いているのかも分からない。
「言ったでしょ、私の目は色々と見抜くの。魔道具もそうだけど、他人の魂も。見たくもないことも暴く目」
その声はどこか震えていて、それをどうして明かしたのかを知りたくて。それでも彼女の言葉を遮ってはいけないと思い黙り込む。
「そんな魔眼を持つ私を気味悪がらないなら、色々と話してくれていいんじゃない?」
「……それはずるいと思うよ」
そんなことを言われたら話さざるを得ないだろうに。彼女が差し出した毒草のスープを受け取り、それを一気に飲み干し僕は話し始める。
この世界に来る前の僕の話を。僕が僕になった話を。
「ひゃへはびょくにょじぇんしぇでのひゃなひ」
「うん。毒の即効性が思っていた以上にあったわね。びっくりだわ」
締まらないにも程がある。僕の身体はもう少し空気を読んでもいいと思う。
難産が続く……
面白いかわからねぇ……
というわけで評価感想くれるとテンションぶち上げで続きを書けますのでよろしくお願いします!!!!