王戦物語~聖剣抜いたのでヒロインみんなを笑顔にします~   作:ビスマルク

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今日のおすすめカプ


アンデラのアン風ですねぇ。アニメ素晴らしかった。風子の声がめっちゃ可愛かった

あの風子が二週目からはめっちゃ頼れるボスになるの楽しみ過ぎる。アニメそこまで続いて?


アンデラはカプ厨的には宝箱過ぎるのでマジで初期から楽しみに見てます




星空の下の約束

 

「おかえりなさいませ、陛下。帰ってそうそう大変ご迷惑を……」

「いやもう気にしないでいいよ。僕自身は楽しかったと言えるしね」

 

 結局あのトリコピスラちゃんを止めるのに夜中までかかってしまった。僕は彼?彼女?に捕まったまま空中睡眠を楽しんでいたがみんなは大変だったようでもう休んでいる。

 

 城内の非戦闘員と一緒に避難していたデプロン大臣はこの事件を公開しないように関わった人間全員に命じた後事後処理をしている。

 

 ぶっちゃけ今回の件で最も被害を受けていないのはあの柔らかな触手の中で休ませてもらった僕だと思う。とりあえずトリコピスラちゃんはヒカリを主体に斬り刻まれて核を中心にして小さくなってしまった。それこそ30センチくらいの大きさに。

 

 クラリスちゃんの嘆願もあり処分は見送られたが、彼女にはその分罰則を与えなければならない。これも王としての仕事だというので慣れていかなければならないが、元平民兼最近まで鍛錬三昧だった僕が出来るかどうかは心配だ。

 

「それじゃお休み。今日は大臣も早く休んだ方がいいと思うよ?」

「そうですな。この書類が片付けば休ませていただきます」

 

 僕に与えられた執務室から書類をもって出ていったが、ありゃ夜遅くまで仕事する気満々とみた。とりあえず彼の奥さんに報告して家に連れ戻させよう。

 

 急ぎの仕事がないことは把握しているので休んでも問題ないのに本当に真面目だと思う。

 

「さて、それじゃあ僕も休もうか……って言っても眠くないんだよね」

 

 鍛錬で最低限の睡眠で効率よく休む方法に慣れてしまったので捕まった間も寝てた僕は眠くない。あと三日間眠らずの戦いとかやらされたのでこのままでも明日に影響がないというおまけ付き。

 

 こういう時は困ったと思いながら部屋の窓から見える夜空を眺める。その空はかすかに残る朧げな前世の空と違い星が良く見えていた。

 

 手を伸ばせば届きそうなほどの数々の星がそれぞれの色を発している。人の個性のように星にも個性があるんだと思わせるそれに、思わず魅了される。

 

「よっと」

 

 たまらず窓を開けて身を乗り出す。掌に魔力を込めて一つの魔法を発動させる。

 

 『闇星』、聖剣に魔力を込めた場合発動した引力を聖剣を介さず作り上げる魔法。魔力は黒い球体となり僕の掌から離れた瞬間から決められた物を吸い寄せる魔法。現在は僕だけを引き寄せるよう設定してある。

 

 『闇星』を窓から上空に向かって投げる。ある程度上昇したところで止まり、その引力は僕を引き寄せようとその力を解放した。

 

 それに逆らわないよう窓から飛び降りる。すると身体は引力に引っ張られて空中に浮かび上がって星のよく見える王城より高い所まで行く。

 

「ここから見ても、やっぱり届かないもんなんだなぁ……」

 

 しみじみと呟くがそれでも現実は変わらない。よく見える場所に行っても、そこから手を伸ばしても、掴みたい星は何も掴めない。それは当然のことだけど、それでも少しだけ寂しく感じるのはナイーブなんだろうか。

 

「帰りたいなぁ……」

 

 帰りたい、思わず呟いた言葉は紛れもない本音だった。あの酒屋に、母さんとヒカリと一緒に毎日騒がしかったあの日々に帰りたい。

 

 だけどそれは叶わない。それは僕が一番よく知っている。『剣王』として認められているのは僕だけで、その立場を放棄したら結局母さん達にも迷惑が掛かりかねない。

 

 それを望まないからこそ自分で選んだ道だ。それでも、辛い思いをして消えない傷跡を、『魔霧の森』の影響で身体に残ってしまい今も痛む傷跡を撫でるとどうしても思ってしまう。

 

 ただあそこで過ごしかっただけなのに、それだけのことが叶わない不条理に憤りを感じてしまう。

 

「あー、クソ。涙が出てきた」

 

 いつも僕の傍にはヒカリがいてくれた。だから寂しくなかったし、僕にもプライドという物があるので泣かないでいた。大事と思える幼馴染に涙は見せたくなかったし、彼女に見せるのは笑顔だけだと決めていたから。

 

 それでも一人の時、ふとした時に涙は溢れてくるものだ。誰かがいれば耐えられるものも一人のままだと抱えきれないで泣いてしまう。幼い頃からの僕の悪い癖だ。

 

 空中でとどまって、静かに星に手を伸ばし続ける。決して届くことのないそれは何の意味もないのだけど。それでもなぜかそうしないといけない気がしていたから。

 

「トーマ様……?」

 

 気もそぞろで特に集中もしていなかったため聞こえてきた小さなその声。振り返って下を見てみればそこにはネグリジェ姿のアリシアがいた。

 

 僕と一緒で眠れずにベランダから星を見ていたのだろうか。大体の寝室にはベランダがありそこからそれを見ることが出来ることを失念していた。

 

 もう遅いかもしれないが涙を見られないように顔を袖で拭いて笑う。いつものように笑えているかはわからないけれど、それでも心配をかけるのはごめんだった。

 

「こんな夜中にどうしたの?僕はちょっと眠れなくて星眺めてたんだ」

「私もです。もうすぐ、ヤランリ王国との会談があると思うと、ちょっと眠れなくて」

 

 『闇星』を弱めながら彼女のいるベランダに着地する。結構高いけれど今更この程度で恐怖する程度の鍛錬はしていない。森を一望できる高さから落とされて、それに対処するという事もしてきたのだから。

 

 アリシアの姿は遠目から見ても綺麗だったが、間近に見てみればその美しさはやはり別物だった。いつもは肌が露出しない服をしているからか、薄いネグリジェは目に毒だ。

 

 白いけれど、それでも健康的な肌色をしているヒカリと違うその姿。日焼け一つなく、シミ一つない肌は彼女の普段の清楚さを想像させる。それでいていつもと違って丸見えな脚や、まだ暑いからからか出ている肩は男を魅了してやまないのだろう。

 

 ずっと見ていると襲ってしまいたくなりそうになるのでスッと目を逸らす。これでも健全な男なのでこんなことを見せられて我慢できる自信はないのだ。

 

「眠れない時は星をよく見ててさ。故郷から見た夜空も、ここから見た夜空も何も変わってなくて。星空だけはどこから見ても変わらないんだなって懐かしい気分になってた」

 

 そんな欲望を彼女に向けたくなくて、思わず聞かれてもいないことを話し出してしまう。それはヒカリに対しては言えない事、弱音を見せたくない彼女には言わない事で。

 

 僕がそんなことを言うのに驚いたのかアリシアは目を丸くしている。それにちょっと心外な気持ちを持ちながら、今までの行いを思い出してそんなこと考えるような繊細さを見せたことがないことを改めて再確認する。我ながら強メンタルなところを見せてきたなと。

 

「季節によって見える星が変わったりするし、ここでも同じように変化するのか確認するのが楽しみだよ」

「……トーマ様、一つだけ、いいですか?」

「いいよ。好きに聞いて」

 

 おずおずと、それを聞くのを酷く躊躇うように言葉に詰まりながら彼女は言った。それがとても聞き辛いことで、聞いていいモノなのか分からないように。

 

「トーマ様は、家に帰りたいですか?故郷に帰りたいとは思わないんですか?なんでこんな理不尽に耐えられるんですか?」

 

 それは彼女が言うには酷く似合わないように見えて、そう考えるなら僕は彼女らしさを誤解していたのだと気付いた。

 

「私には、故郷はありません。過ごしてきた孤児院から聖女候補として選ばれてずっと聖女になる為にと訓練を重ねてきました。生まれた場所も分からないし、なりたいと思ったこともない聖女になる訓練だけを重ねて」

 

 アリシアは普通の女の子だ。聖女という仮面をつけて笑ってきたただの女の子。みんなその仮面越しでしか彼女を見てこなかった。だから彼女はその仮面を外すことはしなかった。

 

「聖女以外の生き方を私は知りません。剣王様に仕えることだけが目的だと言われ続けて、現われるかもわからない剣王様を待っていました。剣王様がいなければこの身には意味がないと、先代の聖女の方を見てずっとそう考えてきました」

 

 聖女の仮面を外してくれたはずの主人公はこの世界にはいない。僕がその代わりになれるとは思わない。それでも彼女がずっとこんな悲しそうな顔をしているのは我慢ならなかった。

 

「教えてください、トーマ様。なんであなたは耐えられるんですか?あんな血塗れになって、痛い思いも怖い思いもして、私と違って長年剣王になると分かって覚悟をしてきたわけでもないのに。どうしてそんなに自分の役割をこなそうと頑張れるんですか」

 

 それが分かればきっと私も。そう呟いたように見えたけれど、それは声にならずに彼女の口の中で消えていた。

 

 だけど彼女の聞きたいことは分かった。僕が何故あんな鍛錬に耐えられていたか、じゃない。彼女が本当に聞きたいのはそんなことじゃない。

 

 与えられた剣王という役割を何故そんなに必死にこなそうとするのか、それがアリシアの知りたいことだ。聖女として生きてきて、だけどその生き方に疑問を持っていた彼女の心の底からの疑問。

 

「……僕はさ、故郷でずっと暮らしてた。王都に来るまで村から出ることもなかった。文字とかはみんな教育されてるし、母さんが何故かいっぱい本を持っていたから色々と勉強はしたけどね」

 

 思い出すのはついこの間までいた故郷。確かに何もなかったしつまらない日常が続いていた。だけどその日常の中には必ず誰かの笑顔があった。

 

 農作業をしている人や鍛冶屋をしている人、商人をして村を転々としている人もいれば森で猟師をやって獣を狩っていた人も。

 

 そんな人が集まるのが僕の実家の酒場だった。毎日あったことを楽しそうに話している彼らが僕は大好きだったし、その話を聞く生活も悪くないと思っていた。

 

 カプ厨的癒しはもう犬と猫のカップルとか見ることで我慢してたけど。

 

「帰りたいよ、今すぐに。でも帰ったら迷惑がかかる。ここの人達だけじゃなくて、巡り巡って僕の故郷の人達にまで。だから逃げられないし逃げたくもない」

 

 王様なんて責任ある仕事を進んでしたいと思うほど僕は勤労意欲を持っちゃいない。それでもあの人達が苦しむようなことは絶対したくない。あの笑顔を曇らせるようなことはしたくない。

 

「王様なんて柄じゃないけど、やりたいとも思わないけど、責任感なんて持てないけど。それでも僕はこれを続けるよ。選ばれてしまってもう未来は決められたけど、せめてその歩き方だけは選べるから」

 

 そうだ。ずっと昔、前世とかそんなもの意識すらしてなかったあの頃、彼女に誓ったように。

 

「僕はずっと笑顔でいる。苦しそうな顔をしたら悲しむ人がいるから、無理にだって笑ってみせる。どんなに辛かろうと笑顔だけは忘れない。へらへらしてるって思われたってこれだけは変えない」

 

 彼女の笑顔が見たかった。泣いた顔を見たくなかった。だから約束したことを実践し続ける。彼女が笑ってくれる毎日を共に過ごしたいから。好きになった女の子に笑ってほしいと思うのは男として当然だ。

 

「凄いです、ね。私は、そんな風に思えない。私はそんな風に頑張れない。ずっと自分のことばかりで……」

「……僕はさ、アリシアが聖女をやめたいって言うならやめればいいと思う。そりゃ急には難しいかもしれないけど、引継ぎとかあるけどそれが終わった後なら自由に生きていいと思う」

「でも、自由なんて私には分からないです。ずっとこうして生きてきたから、これ以外の生き方なんて知らないし」

「それなら城でヒカリと一緒にメイドでもやればいいんじゃないかな。後輩が出来たってきっと喜ぶよ。スパルタで指導されるかもだけど」

 

 うん、余裕で想像できる姿だ。ヒカリはぶっきらぼうだけど面倒見のいい性格をしている姉御肌。きっとアリシアのことを支えてくれる。

 

「僕は、自分で剣王を続けるって決めたけど、君にはそんな選択肢はなかった。だから僕が作るよ。君が進んでもいい道を。進みたいと思う道が見つかるまで付き合うさ」

「……でも、聖女をやめた私には価値はありません。そもそも私は聖女らしくなんてないし、本当の私はもっと醜くて、みんなを騙してて」

「価値がないなんてことは絶対にない」

 

 その言葉は認められない。彼女に助けられてきた身として、その優しさに触れてきた友達として、その自虐だけは絶対に認めない。

 

「優しくできるってことがどれだけ凄いか分かってないよ。仮面をかぶっていようが何だろうが、その行動そのものに救われた誰かは絶対いるはずだ。それは君が聖女だからじゃなくて、君が笑顔で助けてくれたからだ。君の優しさは、誰かを助けてる」

「違います。だって聖女じゃなければそんなことしなかった。私はその程度の人間で」

 

 彼女が求めている言葉は肯定だ。「聖女にふさわしくない」それだけが聞きたくて、それを聞ければ納得できると思っている。でも僕にそれを肯定することは出来ない。

 

 彼だったら、主人公だったらどうするだろうと考えて、思い出すのをやめた。彼のやり方を真似したところで彼女に伝わることはない。本心で伝えてきてくれたその誠実さに嘘は返したくない。

 

「僕が、今の君に何を言ってもきっと伝わりきらないと思う。だって僕の接した君は聖女としての君だから。そんな僕の言葉なんて君には届かない」

「……………………」

「だから、これからは君を見るよ。聖女じゃない君を」

 

 僕は本当の彼女のことを何も知らない。知っていることは画面越しの彼女のことだけ、それがどれだけ正しいのかもわからない。

 

 だからこれから知っていこう。遅かったとしても、それが僕に出来ることだと勝手に信じて。

 

「ただの君を見て、その優しさが本当なんだって証明してみせる」

「聖女じゃない私を、あなたは見つけてくれるんですか?」

「見つけるよ。見つけて本当の君を知る。それで、きちんと伝える。僕が見た君がどれだけ素敵な人なのかを」

 

 その言葉にアリシアは聖女らしくない、ちょっと昏い笑顔を作る。これが本当の自分なんだと主張するように。

 

「……期待しないで待ってますね」

「期待してくれた方が僕としてはやる気が出るんだけどな。だから約束だけするね」

 

 これは僕が勝手にする約束だ。必ず果たすと誓う約束だ。

 

 彼のように彼女を幸せにすることは出来なくても、僕のやり方でそこに近づかせるという誓い。

 

 「僕がアリシアが笑顔でいていい理由を見つけるよ」

 

 聖女じゃなくても、君は素敵な人なんだと証明してみせる。

 

 






悩んで苦しんでる人を見て見ぬ振りできない甘ちゃんな主人公が大好きです

例えそれで自分が傷ついても頑張ると決めるその姿がとても尊いと思うのです




評価感想くれるとテンションぶち上げで続きを書けますのでよろしくお願いします
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