王戦物語~聖剣抜いたのでヒロインみんなを笑顔にします~ 作:ビスマルク
恋愛が主体じゃない作品だからこそ燃え上がるカップリングもいいですね
そういうことだと俺の推しはメルエム様とコムギが最高に好きです……
シオン・エースとの『王戦』から二週間ほど経ったある日、僕は剣王として国のかじ取りをする大臣達との会議に参加していた。
教育も何もされていないし、前世の記憶というアドバンテージもほぼ忘れかけている今まったく役に立たない状態である。それでも参加することに意味があると思い話を聞いているがやっぱり難しい話ばかりで口を挟むことも出来ない。
まぁ上に立つ者の役目は責任を取ることなのでそれでいいのかもしれないが。専門家に任せつつ分からないことは素直に聞けばいいのだ。元平民の僕に何かを聞いて失うものなど欠片も存在しないし。
「えー、前回の『王戦』にて得られた採掘場は問題なくこちらの領となりました。前任者はどの国にも所属しないことを条件に協力することを決めています」
「どの国にも所属しないって、それでどうやって生活してるの?」
国に所属するという事はいざという時保護してもらう、援助してもらう、後ろ盾になってもらうなど色々と利点があるのだが。
このソードリアでも各地に貴族がおり、その貴族が領を治めることで成り立っている。新たに手に入れた領地にすぐ領主が出来るわけではないが、それでもどこにも所属しないというのはどういうことだろうか。
疑問が顔に出ていたのか内政官の一人が発言を求め、それを止める理由もないので答えることを促した。
「採掘場、それとその周辺の土地ですが。過去に何度も『王戦』の賭けの対象になったことから国に所属するという事に拒否感を覚えているようです。その結果当時の領主が独立宣言をし、それが今も続いています」
「そんな土地をヤランリ王国は『王戦』で賭けたの?詐欺じゃない???」
「その代わり魔石の取引はこちらが優先的かつ他国より安く行えます。実質的に言うと優先売買権を取得した、と思えばよろしいかと」
まぁ理解できる流れだと思う。戦争とかで侵攻し領を併呑する、なんてことが起こらない『王戦』で全て決めるというシステムがあるからこその判断ではあると思うが。
その決まりごとがいつまで続くか不安にならないのか、とも思わないでもないが大抵の人は目の前の生活にいっぱいで来るかどうかも分からない未来について考えることをする人はあんまりいないのだろう。
「まぁそれで引継ぎの手間とか作業員をどこから募集するかとかは考えないでいいのはよかったよ。魔石の取引はどうなっているの?」
「我が国での取引中2割は王宮が買い取っています。出費としては高いですが……」
「儂の所でいっぱい使うからの!!新しく作った物とか既存の改良品を作るのに今まで苦労したがだいぶ楽になるぞ!!!」
「魔法研究室長がただいま言った通りになります。商人達との取引は副室長であるエリウス殿が行っております。もちろん一人ではなく我々の中から一人は助っ人として付けていますが、彼は将来物になります」
「ふふん!!そうであろうそうであろう!!儂の幼馴染じゃからな!!!出来んことはあんまりないのだ!!!」
エリウス君を褒められて非常に機嫌のよくなったクラリスちゃんを見ているとこう、微笑みが湧き出てくるというか涙が出てくるというか、尊いという感情でいっぱいになりそうになる。
「陛下、新しいお茶です」
思わず拝み倒しそうになったところに横からお茶が差し出される。そこにいるのは僕のお付きとして常に一緒にいるメイド姿のヒカリだった。
プライベートとは違い今の彼女は仕事中なのでアリシアから教わった敬語を使っている。ただし恭しくしているのは立ち振る舞いと言葉だけでその目は「余計なことすんなよ?」と言っているのがよくわかる冷たさをしている。
流石は僕の幼馴染。僕の思考を即座に見抜いてストップをかけに来たのだ。そんなに顔に出やすいかな、僕。
「研究室の現状じゃが、王様が連れてきたエルフが中々の働きをしておるぞ。儂ほどの天才ではないが長い人生を生きたが故の目線があるというか」
『魔霧の森』から連れ帰ってきたキャロルは魔法研究室の室長補佐として任命されたという。平からやっていくものと思ったがクラリスちゃんの熱烈な推薦があってとのこと。
そんな強引な出世なんかしたら不満とか出るんじゃないかと思ったがその心配はなかった。なぜなら魔法研究室の人間は魔道具や魔法の研究にしか興味のない文化人達で構成されていたのだから。ぶっちゃけヤベー奴らをひとまとめにしただけともいう。
何か起こっても様々な場所でいきなり起きるよりは監視の目があるところで起きた方が被害が少ないという判断でもある。言い過ぎと思うかもしれないがそんな人は先日のトリコピスラちゃんのことを思い出していただきたい。あの規模は珍しいが似たようなことは多々起こっているのだ。
「よって問題なし!!余った予算で何作ろうか悩んでおるぞ!!!」
「こっちが要求した物をそれ以上の品質で安く作ってくれるから別にいいけど、何作るか事前にちゃんとエリウス君に言ってね?問題起きたら予算削るからね?」
「う、む……。わ、分かったのじゃ。予算は大切だからの」
そうは言っても多分彼女達は好き勝手に作るのだろう。それでも釘を刺さないよりは遥かにマシだと考えておく。
微かに残る前世の記憶でも彼女達の騒ぎは止まらなかった。ただそれが役に立つことも多かったので完全に止めることはしない。というか強引な手を使えば逆に燃え上がるのがこういう人種だ。僕も同類なのでよくわかる。
「予算と言えば、他は問題ないの?」
「騎士団の予算が削られていることに関して少し不満があります。財務大臣にどういうことか説明していただきたい」
リチャード騎士団長が厳つい声を重々しく出す。やはり予算の問題となるとどこもかしこも欲しがるものなのだろう。
お金があれば出来ることが増えるからね、仕方ないね。そう思いながら財務大臣と騎士団長の話に耳を傾ける。
我が国の財政を仕切っているトップのクリフォード大臣はメガネをかけた瘦身の中年男性だ。デプロン大臣とは対照的な見た目だがプライベートでも仲がいいという話を聞く。剣王がいない時は互いに愚痴っていたとかなんとか。
「以前までの予算は『王戦』にて不在だった陛下の代役をこなすために必要と判断しました。だが現在『王戦』には陛下がおられる。ならばこれまで程の予算は他に回した方が得策と考えました」
「なるほど、確かに納得は出来る。だが以前と比較し4割を削られれば訓練の規模を縮小せねばならなくなる。せめて2割にしていただきたい」
「消耗品などは今回の鉱山獲得により得られた商人との取引で安くこちらに卸してもらえるようになりました。問題は少ないと考えます」
「必要なのは消耗品だけではない。軍事演習の為の移動の際に必要な費用なども予算内から捻出している。このままでは移動もままならん」
「ふむ……しかしその演習自体の頻度を下げるのは」
「今回の『王戦』のように陛下による単独戦ならばそれでも良い。だが団体戦となった時必須となるのは全体の練度だ。実習の頻度を下げてはいざという時に困る」
難しい話だ。双方に言い分があるのが分かるし、どちらも引き下がれないのも分かる。予算案は来月から適用される。実際僕も予算案の資料を提出されており目を通している。目を通してはいるが内容を理解しきっているとは言い難いが。
とはいえ彼らがこのまま話していても多分まとまらないだろう。こういう時に動くのが僕の仕事なんだろうと思い口を開く。駄目なところがあったら直してもらうとして、それでも場を治めようとする姿勢が大事だと考えて。
「はい、とりあえず双方それまで。問題は予算の分配、ってことでいいんだよね。騎士団の予算を削るのはもう絶対?」
「これまで騎士団に分配されていた予算が大きいのです。これを他の部署に回せばこれまで陛下がいなかったときに出来なかった政策も可能です。剣王教会が現在担当しているスラム街への支援も進めなければならないと考えます」
「疫病対策とかもしないといけないかぁ」
僕は戦うだけで許されていたのは実はずいぶん楽だったんじゃないかと思う。こういう他者との取引とかそこらへん面倒すぎる。
とはいえお飾りとはいえ王様ならやらないと。自分の足元で不幸になる人を眺めてて平気なほど人間性捨てていないのだ。というかそれ見たらアリシアとか泣くだろうし。
「それじゃあまず騎士団の予算は4割削るところから3割にする形で。その代わり魔法研究室の予算を少しでも増やして。作ってほしいものがあるんだ」
「む、こちらに話が来るのは予想外じゃな。作ってほしいって何をじゃ?」
「『魔霧の森』の夢と現実のリンクを起こす魔道具。それがあればかなり楽になるんだよね」
「あー……まぁあそこで長年生活しておったエルフもおるし、なんとかなるかの?だが作るのにも半年くらいかかるかもしれんぞ」
「ゆっくりとはいかないけど急かしても仕方ないからね。出来る限りいい物を作って、それを騎士団に使ってもらう形にしたい。もし出来なかったらその時考えるとしよう」
『魔霧の森』の夢の力は凄いものがあった。ただアレを利用するには遠出する必要があるので軍事演習するには時間が足りないのだ。
だったら同じような現象を魔道具で再現してもらえばいい。多分彼女達なら出来るだろう。
そして僕と同じような経験を頑張ってしてもらいたい。あの辛さを語り合える同士を増やしたいのだ。
「その間『王戦』は僕単独で行うように交渉を頑張ってもらうけどそれでいいかな、デプロン大臣」
「お任せください。陛下の期待に応えられるように尽力いたします」
「むぅ……。若干不満はありますが、納得いたしました。その間、演習は王都近くで行うことになりますが」
「うん、民衆への説明は僕がやるよ。事前に知らせておかないと音がうるさいとかって不満が出るだろうし」
とりあえず予算はこれで良し!!!完全な解決は無理でも出来ることはやった感がある。うんうん、ギスギスは嫌いだからね。僕は仲のいい人達を見るのが好きだ。
これで今回の会議は終わりだ!!あー、肩凝った、マッサージを誰かに頼みたい気分だ。
「では最後の議題。陛下の婚姻についてを話したいと思う」
「ブフゥ!?!?!!」
「「「「「異議なし」」」」」
「こんいん?」
ば、馬鹿な!?話は終わったんじゃないのか!?
というかなんで婚姻!?婚姻って結婚ってことだろ!?ソードリアの剣王選出の方式からしてそんな話題が出るはずがない!!!
「待った!!婚姻って聞いてないよ!?というか僕が結婚するとなったら王族とか出来かねないよ!?」
「はい、それが目的ですので」
「どう言う事!?それで全員納得してるの!?!納得してる人手を挙げて!!!」
クラリスちゃん以外のお偉い方全員が迷わず手を挙げる。根回ししてやがったなこの野郎!!!
「陛下、落ち着いてください。これには重要な意味があるのです」
「重要な意味?」
「今回の会議でもそうですが、絶対的なトップがいるという事がどれだけ大切なのかがこの場にいる全員が痛感しているのです。ですのでここから陛下の血を引く王族を作り、そのまま王として君臨していただきたいと」
言いたいことは分かった気がするが、それでも問題はあるだろう。
「でも初代剣王は聖剣を抜いた者が次の王だって言ってたよね」
「その次の王はトーマ陛下ですよね?ではその後の剣王を決める方法は他の方法でいいのではないでしょうか?」
知ってる?それって屁理屈って言うんだよ?
「前回の『王戦』の結果からそういった話も各地の貴族から出ています。これから先のソードリアの為を考えればこの方策は間違いではないと思っています」
まぁ船頭多くして船山に上るというようにトップが何人もいるというのは問題だが、絶対的なトップがいないというのも問題が起こるのだろう。
今回みたいな会議に僕が無理に口を挟むことが出来たのは僕が彼らの王だからであってそれ以外の、例えばデプロン大臣辺りが口を挟んでも多分余計過熱しただけだろうとも思う。
「次期王の選出方法に関しては我々でも考えます。しかしこの王族を作るという事に関しては決定事項としたいのです。本当に、王がいないと他国との交渉も貴族たちの抑えも本当に大変なんです……!!!」
内政官の一人がしみじみとそう語る。その目には随分と薄くなった隈が存在していた。最近眠れるようになったと喜んでいた彼だが、未だに残ってる隈を見ると以前の忙しさがどんなものかが分かる。
「あと民衆からも陛下とアリシア殿の結婚式はいつなのかやら、ヒカリ殿は捨てないよね?という問い合わせも多いのです」
「僕の知らないところでどんどん外堀が埋められてる気分!!!!」
もうこの流れは止められないなぁ……と遠い目をしながらふと気配を感じて後ろを見ればそこには真っ赤になっているヒカリとアリシアがいる。
共に会議中の中顔を手で隠すという事がはしたなく思えたのだろう。珍しく真正面から赤面を見れて僕は満足した。
評価感想くれるとテンションぶち上げで続きが書けますのでよろしくお願いします!!
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