王戦物語~聖剣抜いたのでヒロインみんなを笑顔にします~   作:ビスマルク

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先に言っておきます


甘すぎて砂糖吐きそうになった


甘さに慣れてる人なら大丈夫だと思いますが注意してください!!!


幕間 いつかへの約束

 

「あー、やっぱりこういうラフな格好して美味しいもの食べるのは至福だよねー」

「一国の王様がそれで癒されていいのかは疑問が残るけどな」

 

 もう見慣れてしまった王様用の服とマントを外し、適当にアタシが選んだ服を着て変装用の伊達メガネを付けているトーマが紅茶を口にしながらそんなことを言いだす。以前の『王戦』が放送された影響でこいつは王都の殆どの人間から顔を知られている為バレないよう対策した結果だ。我ながらイイ感じに収まった気がする。

 

「王様って言ったって偶には休まないと潰れちゃうって。それはヒカリもアリシアもそうだよ?大臣達もクラリスちゃん達もそうだし。まぁ魔法研究室の人達はキャロル含めて全員仕事が楽しいってタイプだから当てはまらないかもしれないけどね」

 

 トーマの仕事が珍しく早く終わった日の午後、アタシ達は二人で街に繰り出していた。こういうことをするとデプロン大臣のおっさん辺りがしかめっ面するが、たまにはこういう時間を作らないとトーマの仕事効率が著しく下がると力説してなんとか納得してもらった。

 

 実際こいつはたまに仕事から解放されてないと奇行を繰り返すようになるからあながち嘘でもない。男女のただの仕事でのやり取りを見て興奮してる剣王を見られても良いなら別にいいけど、と言ったら困った顔で頭を抱えていた。

 

 気持ちは分かるが元々平民なのに王様の仕事を何とかこなしてるコイツのストレスはとんでもないことになってるだろうからこういう時間は絶対に必要だ。

 

「しっかし急に午後暇になったんだってな。何があったんだよ」

「それがさー騎士団のアランがブレットの妹さんと恋仲になったらしいって噂をチャーリーが耳にしてその真偽を確かめるって話でブレットが暴走し始めて、それを止めようとしたデニスが返り討ちにあってやり返すためにそこらへんに罠仕掛けまくったら今度はエドガーがそれに引っ掛かって、それを助けようとしたら連鎖的に騎士団メンバーが罠にかかって最終的に大喧嘩。ただいま罠の撤去とそんなことで喧嘩したことによる罰を受けてるから今日の午後の鍛錬がなくなったんだよね」

 

 いやー、大変だと笑っているがこの短時間に何人の名前を憶えてるのかわからなくて戦慄する。コイツは行動は馬鹿だけど頭の回転と物覚え自体はいいからこの程度は覚えられるんだろう。

 

 対するアタシは人の名前を覚えるのは苦手だし、誰かが何をしているかなんてものに興味もないのでそこらへんは目はいかない。

 

 故郷の村にいた時からそうだが、他人とすぐ仲良くなるところは明確なトーマの強みだろう。酒場でも酔っ払いと話してていつの間にか肩を組んで一緒に歌を歌っていたことが何回もあった。

 

 初対面の商人とだってそんなことしていたので最早筋金入りなのだろう。羨ましいとは思わないが、その在り方は凄いと素直に尊敬する。

 

「だけどアランがブレットの妹さんとそういう関係って言うのはただの噂だったみたいでね。本当はブレットにお弁当を持ってきててそれを渡してほしいってアランに手渡してたところを見られていたって言うのが真相だったらしいよ」

「それ明確に暴走しだした奴が悪いじゃん。妹さん怒ってもいいんじゃね?」

「実際みんなに迷惑かけたってことで怒って一週間は弁当抜きで頑張ることになったんだってさ」

 

 近況を話しながら喫茶店で紅茶とジュースを飲みながら静かに過ごす。こういう時間を昔はよく取っていたのだが今となっては大変貴重だ。

 

 二人きりなんてものはほとんどなく、大抵近くに誰かがいる。それがアリシアならアタシも何の遠慮をする必要もなくて気楽なんだけど必ずしもそうではないので気を抜く暇がないというのも事実だ。

 

 ただ自分で選んだ道なのでこうして過ごしていることに関しては文句はない。トーマと一緒にいて、一緒の時間を過ごしている。それだけで黄金以上の価値がこの時間にはある。

 

「あっ、そういえば言い忘れてたけど。その格好凄い似合ってるね。誰かに選んでもらったわけじゃなさそうだし、ヒカリが自分で選んだの?」

「言い出すのおせぇよ。ただまぁ気付いたことは誉めてやる」

「気付かないと思ってるの?そんなにかわいい格好で可愛く決めちゃってるのに」

 

 そういう言い方がいつもいつもアタシの頬を赤くしてるという事実にいい加減気付いてほしいが、気付いたうえでもやりかねないのでコイツは質が悪い。

 

 実際アタシは故郷で着ていたような作業着でもなく、今の仕事場で着ているメイド服でもない。この王都の服屋で売っている物で揃えた奴を着ている。

 

 普段結んでいる髪も全部ほどいてストレートにしている。動きにくくてあまり好きではないがたまにはいいだろう。アタシも女なので偶には違う格好をしていいように思われたいという欲はあるのだ。

 

「ただそこにいるだけで見惚れるくらいには可愛いよ。サラサラの髪をストレートにしていつもと違って深窓の令嬢みたいな感じだし、やっぱり元がいい上、服のセンスもいいとなると可憐さも際立つや」

 

 こういうことをさらっと言い出すからこの天然は厄介なんだ。しかも大切なことを話すときはこちらの顔をまっすぐ見てくるので本当に辛い、思わず顔を背けそうになるほどに頬が熱い。

 

「うっせぇ、あんまそう言う事口にすんなよ」

「考えてることたまに読まれるけどさ、こういうことは口に出さないと意味ないでしょ?分かってても直接聞きたいことがあるってことくらい僕だって知ってるよ」

 

 普段は馬鹿なのになぜこういうところだけこいつはこうなんだろう。そう思いつつ普段からトーマは真っ直ぐなため、実際はいつもと変わっていないことをアタシはよく知っている。こういうことを言うトーマは絶対に本音しか言わない為余計に顔が赤くなる。

 

 トーマの顔を直視できず、視線を彷徨わせていると大勢が騒いでるところがあるのが見えた。なにやらめでたいことがあったらしく、その大勢は全員が笑っていた。

 

「んー、何してるんだろうね?見に行ってみる?」

「好奇心には勝てねぇよなぁ。行ってみっか」

 

 お店にお茶と菓子の代金を支払う。トーマも今は市民が着る服を着て髪型を変えているせいか気付かれずに済んだ。ただ気付いててもあえて何も言わない、という店員さんもいる為全員が全員気付いていないわけではないと思う。

 

 そんなこんなで大騒ぎしている大人数に近づいていくと、その声の詳細も聞こえてきた。 

 

「わぁああああああああああああああああああ!!!!!」「おめでとう!!!その子を幸せにしてやんなよ!!!!」「エイミーおめでとう!!!」「夫婦喧嘩は絶対男が負けるからやんなよ!!!!」「絶対泣かせるなよ!!!」「女遊びとか賭け事してたら容赦なくケツひっぱたいてやんな!!!」「子供の名前決まったら教えろよ!!!」「純愛結婚とか最高じゃないかぁ!!!!!!」

 

 どうやらそれは結婚式だったようで、新郎新婦の友人知人家族、それどころか関係のない人までその二人を祝福していた。というか最後の声は隣にいる馬鹿の声だ。コイツは本当にこういうところに来ると見境がなくなるから困る。

 

 とりあえず邪魔しては悪いのでトーマの口を塞ぎつつこの場を離れようとすると丁度新婦が上に放り投げたブーケが風に乗ってこちらに降ってきた。

 

 その行方が気になった為少し視線を向けてみれば、本当に何の偶然か手を伸ばしている誰かではなくアタシの手の中に落ちてきた為思わずそれをキャッチする。

 

 当然、ブーケを求めていた人達もその行方を目で追っていた人達の視線もこちらに集中していく。誰かも知らない通りすがりがこんな大事な物を受け取るなんて空気が読めないにもあると思い、先程まで熱かった顔から血の気が引くような気分になった。

 

「やったじゃないかヒカリ!!!あの二人の幸せが君にもちゃんとくるってことだよ!!!」

「うるせぇ馬鹿!!今そういうこと言いだしていい空気じゃないだろ!!!」

 

 本当にこいつは空気を読めるのか読めないのかが分からない。せっかくのお祝い事を邪魔したら一生に一度の思い出が暗いものになりかねないのに。

 

 そう思っていたらおもむろに変装の為につけていた眼鏡や上げていた髪をいつものように戻して見慣れた、それこそ民衆も知ってる顔にする。

 

「結婚おめでとう!!!!僕も全力で祝福するよ!!!!ところで馴れ初めとか聞いてもいいかな!?」

「だから自重しろって!!!」

 

 本当に焦ってそんなことを言いだす馬鹿の口を塞いでその場を離れようとしようにもその場の視線が突き刺さって動けない。こういう風に注目されるのは非常に慣れていない為、アリシアやトーマのように気にせず動くという事がアタシには出来ない。

 

 どうなるのかが不安になってたら新郎が驚愕の顔のままこちらに走ってきた。何を言われるか分からず不安だったアタシの横にいるトーマの手をその青年は笑顔で取った。

 

「剣王様に祝福されるなんて本当に幸運です!!!あの『王戦』で見て、それで勇気をもらってプロポーズしたら受け入れてもらいました!!!」

「いやぁー、あれはその、忘れてほしいかなーって。僕としても恥ずかしいし……」

「恥ずかしがることないです!!!俺だけじゃなくって、剣王様に勇気をもらったって人は多いんですよ!!!あんな風にちゃんと聖女様を見て、この人だったら俺達の事考えてくれるって思って……。だから本当に感謝です!!!!」

「多分結婚後の補償についてのこと言ってると思うけど、それ僕じゃなくて大臣達が」

「ありがとうございます!!!!おかげで安心して結婚できる人も多くなりますよ!!!!!」

「それはいいことだねッ!!!!!!!!!!」

 

 怒涛のお礼攻撃にあたふたしてるトーマだったが、結婚が増えると聞いた瞬間その手を上下にブンブン振り回す。なんでこいつはこんなに分かりやすいんだろう。犬が嬉しい時に尻尾を振り回すようにトーマと青年は勢いよくつないだ手を振り回している。

 

 それを呆れた目で見ているといつの間にか綺麗なドレスを着てる新婦が困った笑顔で隣に立っていた。

 

「ごめんなさい。彼、剣王様の熱烈なファンで……。以前から何回か剣王様とお会いすることがあるんですけど、その時もこんな感じだったんじゃないかなって」

「あー、どっかで見た事あると思ったら何回か王城に来てた商人の人か」

 

 なるほど、それで顔を覚えていたアイツはその性格も知っていた為あんなこと言いだしたのか。新郎の青年が「剣王様!!!」と連呼している為周囲もトーマが誰なのか分かったようで驚いた顔をしている。

 

 当然アタシに向けられていた視線はあちらに向いて、アタシは緊張から解放されていた。これも考えてやったんだろうと思うと何故だか胸が熱くなってくる。

 

「剣王様のおかげで勇気が出たって、この前プロポーズされたんです。ずっと待ってたからとても嬉しくて、そういう意味じゃ剣王様は恩人ですね」

「そういう事考えて言ったんじゃないと思うけどな。思ったことを全部口にするだけだから」

 

 そう、トーマはそういう奴で。だからアタシはこいつに救われて、ずっと傍にいたいと思うほどに好きになった。アタシのこの初恋はきっと死ぬまで変わらない。

 

 そう、だから

 

「おめでとうって言葉も絶対にお世辞なんかじゃなくて本気で言ってた。だからきっとこれからいい結婚生活を送れるよ。剣王とアタシが保証する」

 

 一瞬ポカンとした顔をした新婦のお姉さんは、そのあと女のアタシから見てもとても魅力的な、素敵な笑顔で嬉しそうに頷いて。

 

「はいっ!!絶対幸せになりますっ!!!!」

 

 アタシもいつかこんな風に笑いたいと思わせる幸せそうな顔で頷いた。

 

 

 

 

「いやー、いいもの見たね!!!」

「嬉しいからって一緒に乾杯なんてしてんなよ。全員笑顔で嬉しそうだったからよかったものの……」

 

 呆れの意味も込めて苦言を呈するが、トーマは変わらずずっと笑顔のままだ。多分反省はしているが後悔はしていないとか言い出しそう。

 

「だけど王都に来てよかったよ。あんな結婚式なんて」

「あー、初めて見たもんな。故郷の村じゃあんな大々的にやったりしないし」

「うーん、それもあるけどそうじゃなくてさ」

 

 隣を歩いていたトーマは急にアタシの手を握ってきて、その暖かさにびっくりしながら思わずその横顔を見つめてしまう。

 

「いつかヒカリが結婚する時、あの綺麗なドレスを着てる君が見れると思うと凄い楽しみだ。それだけで王様になった甲斐があったって思えるくらいに」

 

 それはとんでもない不意打ちで、その言葉の裏を読んで、こいつはそういうところまで考えて言いだす奴だってことを知ってるから余計に頬が熱くなる。耳まで真っ赤になっている自信がある。

 

「…………遠回しのプロポーズに聞こえんぞ」

「そのうち遠回しじゃない言い方するよ。そういうのちゃんとしたいって僕は思ってるからね」

「ちゃんと、約束できるか?」

「ちゃんと約束するよ。君との約束、破ったことないだろ?」

 

 本当にこいつは卑怯だ。人の心をここまで揺さぶって、その当人は飄々と笑っているんだから。

 

 それでも流石のトーマも恥ずかしいのか、その顔は赤く染まっていた。あるいは夕日のせいでそう見えるのだろうか。

 

 そんなことを気にしながら、王城につくまでアタシたちは手を繋ぎながら一緒に歩き続けた。

 






前回の話で聖剣の力について色々と考えてた人がいましたので少し説明しますが。


要するに対象との精神的な繋がりが強くなればなるほど能力も強くなります


S○Xとかキャロルが言い出したのは、彼女にとってそれが一番わかりやすい繋がりだからで必ずしもそれが必要という事ではないですね

キャロルは今までの人生でロクなことがなかったので繋がりが強くなる=肉体的接触が必要という思考の元ああいう発言をしています

幸せにしないと(決意)
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