王戦物語~聖剣抜いたのでヒロインみんなを笑顔にします~   作:ビスマルク

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真夜中の晩餐会

 

「ふーっふーっ……、とりあえずこんなもん。かなり疲れた……」

「そ、それをアンタが言うのか……!!」

「かなり疲れたとか言いつつ肩で息してる程度で済んでる癖に……!!」

「なんで一人で全員をぶっ倒してんだこの王様……!!」

 

 だってそれくらい出来なきゃこの先やっていけないし。間違いなく他国の王は全員ここにいる全員を同時に相手するよりもはるかに疲れるに決まってる。

 

 はっきり言ってこの程度で息切れしている時点で僕はまだまだだという事が分かる。もっと強くならねばこの前のアリシアを賭けさせられたりした時みたいなことが起きた時どうにもならない。

 

「とはいえこれ以上は無理に頑張っても効果はないかぁ」

「おいこの人まだやる気だったぞ。化物かよ」

「俺もうこの人が王様なの納得したよ。現時点でもこの国の誰よりも強いだろ」

「勝てる気がしねぇ……」

 

 流石にこの国の誰よりも強いなんてことはありえない。事実として未だに騎士団長には完全に勝てる気がしない。勝率3割もっていければ御の字という奴だろう。

 

 そもそも騎士団の彼らにしたって慣れていない一人に対する軍隊での戦いなんてしたからこうなったのだ。慣れていないことをやろうとすれば必ず隙は生まれる。僕はそれを突いてギリギリで捌いて何とかこうして立っているだけに過ぎない。

 

 多数を相手にするのと一人を相手にするのとでは隙の突き方とかも変わるだろうし、決して彼らが弱いわけではない。

 

「それでも“準”王クラスを相手にするにはまだまだ足りないか……」

 

 僕相手に倒されていては多分他国の王クラスになると足止めにもならないだろう。彼らは本物の化け物だ。聖剣を抜いたことで様々な能力を覚醒させていった僕もまだ槍王“候補”のシオンに勝てるかどうかくらい。このまま本物の王に『王戦』を挑まれたらなすすべなく負けることが容易に想像できる。

 

 強くならねばならない、さらに強くなる為“  に  せ”に。

 

「んあ?」

 

 何かが聞こえたような気がして辺りを見渡すも誰も僕に話し掛けてはいない。空耳だったのだろうか、それともほかの何か?

 

 しかしそんな些細な疑問もすぐに消えていく。元々勘違いだったかもしれない声に耳を貸してる余裕はないのだから。

 

 もっともっともっと、何かに突き動かされるように力を求めなければ

 

「飯だって言ってんのにいつまでブツブツ言ってんだ馬鹿」

「あぎゃっ!?」

 

 これからの予定を考えていたところで後ろから頭を叩かれて意識が現実に戻ってくる。目をきょろきょろさせて衝撃を与えた声の主を探すとそこには動きやすそうなラフな格好をしたヒカリがいる。

 

「今日は野営訓練もやるんだろ。飯作ってやったんだからさっさと食えよな」

「え、あ、うん。そうだったね。あれー……?」

 

 どうにも先程までの記憶がぼやけてる。強くなる方法を考えていたことは間違いないのだが、それ以外が何を考えていたのか、どういう結論に至りそうだったのかそれさえもあやふやだ。

 

「あんま根を詰めすぎんなよ。考えすぎたっていいアイディアが浮かぶとは限らないんだから。ほれ、今日はバーベキューだから色々と持ってきたぞ。ついでに部屋に籠ってばっかのキャロルも連れてきた」

「なんで私がこんな事しなきゃいけないのよー!!!あっ、その肉はまだ食うな!!!焼き加減がまだまだ甘い!!」

 

 そこにいるのはバーベキューのコンロの前で騎士団員達を相手に肉を焼いているエルフの少女だった。エメラルドグリーンの長い髪を後ろで結んでいる姿はいつもとは違う印象を受ける。

 

 それはとても美しいと思ったのだが、それ以上に気になることがあった。

 

「焼肉奉行みたいになってるんだけどあのエルフ。今更だけどエルフって肉食べないイメージがあるんだけどキャロルが例外なのかな?」

「さぁ?まぁあの魔道具マニアが標準的なエルフだって言うなら世のエルフ達は全員面白いけど面倒な奴だって広がってんじゃねぇか」

「聞こえてるわよ失礼な王様とそのメイド!!!というかヒカリはこっち手伝いなさいよ!!!!」

 

 大人数の騎士団員を相手にしているキャロルが悲鳴を上げる。なるほど、確かにメイドのヒカリがそう言う事をする方が正しい在り方なんだろう。

 

 うん、それは正しいんだけど。

 

「ヒカリ。お肉、焼ける?」

「おう、しっかり焼けばいいんだろ?タレもあるから多少焦げても大丈夫だな」

「やっぱり僕がやるからヒカリはお皿を準備してほしいかな?」

 

 そう、この銀髪メイド幼馴染は致命的なまでに料理が出来ないのだ。肉を焼けば焦げるまで火に当て続けるし、野菜を切り出したら大抵はみじん切りにしかならない。

 

 それでいて本人は味覚の許容範囲が上にも下にも広い為大抵の物を食べられる。その身体の強さも相まってお腹を壊したことさえない。つまり彼女は味見をしても「まぁ食えるしいいな」で出しかねないのだ。

 

 よって彼女に料理は不可能、アリシアは現在怪我した騎士団員の治療に専念している。つまりこの場で料理できる人間は非常に限られている。

 

「ああもう!!!そんなに食いたきゃ私特製のタレもくれてやる――――」

「やめろぉ!!!そんなものを頑張った騎士団に出すんじゃあない!!!というかお前らも他にもコンロは他にもあるんだから自分で焼けぇ!!!!」

 

 キャロルが無茶苦茶なことを言いだしながらタレの入った瓶を取り出したのを見て大急ぎでその場に駆けつけてその手を抑え込む。当然(年齢不詳の見た目)美少女の手料理を食べるチャンスを失った騎士団員達は抗議しだした。

 

「馬鹿野郎!!!このタレの中身は毒キノコとかのうまみ成分を抽出した奴だぞ!!!確かに美味いことは美味いけど毒耐性なければ腹を下すならまだマシな方だ!!!!」

 

 そして僕の叫びを聞いて泡を食ったように逃げ出す団員達。その反応速度は素晴らしいもので、それをさっきの訓練の時に出せよと思わずにはいられなかった。

 

 まぁこのタレの破壊力をその身で実感する人間がいなくてよかった。僕も聖剣の第三能力がなければ一日トイレに籠りそうになった劇物だからね。

 

「ちょっと、なんで邪魔すんのよ。いい実験だ、被検た、玩具がいなくなっちゃったじゃない」

「本音駄々洩れだからもう少し抑える努力しよう???」

 

 どうにも長年人とのかかわりを断って生きてきたからかこのエルフはその年齢に反して随分と子供っぽい所がある。

 

 今も自慢のタレを使って大勢にその味を広めようとしたことを邪魔されたことで頬を膨らませて拗ねている。可愛い。いや、だが彼女の我儘で明日の騎士団員全員を行動不能にされても困るのだ。明日は明日で色々とやらなければならない事が多いのだから。

 

「というかキャロルの料理は(食べられるのが)僕だけが食べるって前にも言ったよね?他の人には(危険性が非常に高いから)食べさせない、僕だけ(毒耐性と聖剣の能力で大丈夫だから)に振る舞って、って言ったじゃないか」

「貴方のその言い方って本当に意識してないの?本気の本気でわざとじゃないの?わざとじゃないとしたらそれはそれで非常に問題があると思うんだけど」

 

 何を言いたいのかは分からないけど問題があるのは君です。毒同士が打ち消しあって旨味を作りつつ毒性を低めている為この肉タレはまだ危険性が低い。最悪でも精々一日腹を下す程度で済む。

 

 問題なのはこのエルフ、自分があらゆる毒耐性を持っているからか危険性を無視して毒のある物を使って調味料を作る癖があるという事だ。

 

 本人曰く「毒のある方が味にコクが出やすいのよ」とのことだ。確かに味に深みとコクが出ていることは間違いないし、その味は非常に美味で初めて食べた時など僕も唸らされたものだ。

 

 次の日丸一日気絶して『魔霧の森』の夢の中で超超超時間過ごす羽目になって一時の休憩もなく鍛錬させられたことがトラウマになりかけているが。

 

 幸いその時はタイミング良くヒカリとアリシアは食べていなかったためその被害者は僕だけだったからよかったものの……。その時心に決めた、彼女の料理は僕が全て平らげると。

 

「というわけで君の作った物は僕のものだ。僕は君の料理を楽しみにさせてもらう、だから他の人に食べさせちゃ駄目だよ」

「さっきまでの会話がなければ勘違いしそうになる言葉ね」

「そういう事をすぐにこいつは言うよな。でも今回だけは仕方ねぇや」

 

 肉と野菜をもって合流して来たヒカリはそんなことを言いながら素材を焼く準備を進めていく。彼女もキャロルのタレの恐ろしさはよく知っているため僕の言葉を否定しなかった。

 

 多分黄金の胃袋を持つ彼女でもキャロルの毒タレを付けた物を食べたら寝込むかもしれないので残当という奴だ。

 

「解せないわ……こんなに美味しいのに……」

 

 そこで解せないとか言っちゃうから駄目だって言ってるんだけど……。

 

 そんな言葉を飲み込みながらキャロルの焼いた肉を口に運び、その美味さに舌鼓をうつのだった。

 






難産回がたまに挟み込むが頑張って書きます


それはそれとして活動報告に書きましたがタイトルとあらすじの変更をするかもしれません


そうなっても内容は変わらないんですが、一応書いておきます
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