王戦物語~聖剣抜いたのでヒロインみんなを笑顔にします~   作:ビスマルク

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タイトル&あらすじを変更しました


カプ厨要素たまにしか見せないし仕方ないね


タイトルに悩んだのでそのまま捻りないだろうけど『王戦物語』になりました


見てはいけない物

 

「そういえばさっきの対軍訓練もう王都じゃ放送されてたわよ」

「もう?そういえばあれ生放送なんだっけ?」

「編集とかそういうのは面倒だしやりたくないって室長は言ってたわね。だからそのまま垂れ流しになってるんじゃない?」

 

 つまり対軍訓練前のアリシアとのやり取りも見られているわけで。これ王都に戻ったらアリシアがまた赤面してしばらく部屋から出てこないパターンじゃないかな?

 

 いやまぁ僕もアリシアもあの映像は多分使われるとは思ってはいたけど、そのまま垂れ流す方向に行くとは。誰かしらが編集してる物とばかり思っていた。

 

「誰かそう言う事出来る人いないかな……。これからの『王戦』でも見せちゃいけない部分もあるだろうし、そういうのを国民に見せるなとか他国から色々と言われそう」

「こういう映像配信してるのうちの国だけだし大丈夫じゃねぇか?そんなことより次の肉焼いてくれよトーマ」

「はいはい、分かりましたよっと」

 

 色々と考えることはあれど今は肉をご所望な幼馴染のリクエストに応えるのが先決だ。こうやって肉を焼いていると故郷にいた頃を思い出す。

 

 ヒカリは先ほど言った通り大雑把なので料理には向かず、そのヒカリに影響を与えた母さんも大雑把でお酒に対しては詳しいが出す料理はどれも味にばらつきがあった。

 

 必然的に僕が料理を担当することになり、村人達からは大いに応援された。ぜひ酒に合うつまみを頑張って作ってくれと拝み倒されたのも今は昔の話だ。

 

 母さんの料理は当たり外れが大きかったからなぁ。それでロシアンルーレット見たいな賭け事をしていた人もいた。問答無用で母さんに拳骨を落とされていたけど。

 

 そんな風に懐かしい過去を思い出しながら焼けた肉をヒカリの口に運んでいれば騎士団員達の治療を終えたアリシアがこちらに向かってきているのが見えた。随分と魔力を使ったようで疲れているのが目に見えて分かる

 

「ふぅ……疲れました。もう、皆さん怪我を隠そうとして……トーマ君みたいでした」

「どっかの誰かさんの影響かしらねー。上司と部下は似るってよく言うし」

「国民全員がこいつの部下みたいなもんなのにそれが本当だったらやべぇじゃんか」

「それってどういう意味か詳しく聞いてもいいかな???」

 

 まるでみんなが僕みたいになったら世の中終わりみたいな言い草だ。いや冷静に考えてみれば終わりかもしれない。人はそれぞれ違うからいいのであってヒカリやアリシアが僕みたいになったらそれはそれで嫌だ。

 

 彼女達には彼女達の魅力があるように、みんなにはみんなの良さが必ずあるのだから。

 

 第一彼女達が犬と猫のカップルを見つけて異種族間の愛を観察してにやけているところなんて見たくはない。あんなのは僕だけで十分だ。

 

「ヒカリもアリシアも、あとキャロルも僕みたいにならないでね……」

「なろうと思ってなれるもんじゃねぇよ」

「トーマ君みたいな人は一人で十分なんですよ?心配で心臓が持ちませんから」

「冗談でそこまで深刻そうな顔できる奴になれる気はしないわねぇ」

 

 それはよかった。こういう他愛もない話を楽しめるのも僕の癒しであり行動基準になっているのだから。この日常を壊さないように、変えないように頑張っているのだ。

 

「あっ、そういやアリシア。さっきのトーマとの夫婦漫才王都に流れてたぞ。生放送って言うんだっけか」

「えっ」

「なんかまた熱狂的に燃え上がってたわよ一部。帰ったら大騒ぎなんじゃない?」

「えっえっ」

「ごめんねアリシア。からかわれる時は一緒だから……うん、羞恥心と頑張って戦おう」

「嘘って言ってくださいよぉーーーーーーーー!!!!!!」

 

 ようやく仕事から解放された彼女には悪いがこればっかりはもう現実であり変える方法もないのであきらめてほしい。王都に向かって「見ないでくださいー!!」って言ってるけどもうとっくに見られてるので完全に無駄だという事は言わないでおこう。

 

 慰めるように肉の刺さった串を差し出すと両手で顔を覆った彼女はそれを手に取ることが出来ないので「あーん」と声を掛けながら口元にもっていけば小さな口を開けて食べ始める。うんうん、食べることは大事だからね。

 

 そうやって次の肉と野菜を焼いていれば、皿を持って優雅に歩いているシオンが声を掛けてきた。どうやらもう食事は済ませてきたらしい。

 

「トーマ殿、先ほどの戦い見させてもらった。非常に勉強になり、今後定期的に手合わせを願いたくなったものだ」

「ああ、シオン。勉強になった、って言われてもかなり我流が入ってるからあんまり参考にはならないと思うけど……」

「確かに私の戦い方にはおそらく合わないだろう。だがあんな自由で身軽な戦い方があると知っているだけで随分と違うものだ。私の周囲にはあんな戦い方をする者はほとんどいなかったからな」

 

 そりゃ僕の剣術なんて剣術なんていうのもおこがましい、あの騎士団長との死闘の果てに生き残りつつ敵を倒すことだけを考えて身につけたものだ。そこにはそれ以外の何もないし、ただ敵を倒すだけの物。

 

 そんなものをあの流麗な槍捌きをするシオンに褒められたと思うと思わず顔がニヤけてしまう。これは言ったことはないが、彼女の槍にこそ僕は憧れた。

 

 堅実に積み重ねて、それを得るまでにどれほどまでの努力が必要だったかもわからない流れるような槍。戦っているうちは夢中でそれを気にする暇はなかったけれど、王都で流されている『王戦』の映像を見返すたびにその技量の凄まじさを知る。

 

 恐らく毒を使っていなければ彼女は最後までもっと慎重に攻めていた。そうなっていれば積み重ねた物の重さで僕は圧死されていただろう。あの戦いは非常に運が良かったと言わざるを得ない。

 

「僕は君の方が強いと思ってる。前回の『王戦』はただ運が良かっただけだとも。運も実力の内とは言うけどこの先それで勝ち続けれるとは思ってない」

 

 だから毎日こうして積み重ねていっている。ただそれでも強者との戦いが少ないのもまた事実だ。ヒカリや騎士団長とは模擬戦をしているが、それだけではいずれ慣れてしまう。

 

 慣れとは怖いものだ。特に僕のようなロクな経験もないような戦い始めたての存在には。「前はこうだった」で失敗することもあるだろう。咄嗟の判断で失敗することもある。経験は必要だが、慣れは油断を生み出す為いらない。

 

「だからシオンさえよければ僕と模擬戦を定期的にしてほしい。君の槍捌き、動き方、速度、その全てを僕は糧にして他国の王に勝ち続けたい」

「そうまで褒められては私としても悪い気はしない。その上こちらの望みにも合う、断る理由はないな。そもそも私は貴殿の物だからな」

「シオンみたいな美人さんなら大歓迎、と言いたいところだけど。周りの目が怖いからこれ以上は言わないよ」

 

 ここでの生活で僕の性格が分かったのか彼女は冗談めかして笑いながら言った。どうやらヒカリ達から僕の扱いを学んだようだ。学んでほしくないところはあまり学習しないでほしいが……それも多分難しい話なのだろう。

 

 ただいい意味で彼女は緩んでいる。初めて会った時のようなピリピリとした緊張感はなく、良くも悪くも警戒心が少ない。

 

 その隙を狙う誰かがいるかもしれないがその時は僕が間に入ればいいだけの話だ。先ほどの話とは矛盾するかもしれないがこちらとて大抵の相手に負ける気はないのだから。

 

 ただ今だけは互いに利害が一致し、そして互いに抱く感情も悪いものではない。だからこれからもよろしくという意味を込めて右手を差し出し、その手を彼女はとって握手をしてくれた。

 

「シオーン!!こちらのお野菜シャキシャキで美味しいわ!!!お城の人にも持って帰ってあげないと!!!」

「母さん!!!恥ずかしいからやめてくれ!!!!お城から持ってきた野菜なんだからお城には元からあるだろう!!!!」

 

 そしてその握手は一瞬で解かれシオンはシエルさんに向かって全速力で駆けていく。そこには騎士団員達に囲まれて野菜の刺さった串と肉の刺さった串を両手に持って笑顔で娘に向かって笑いかけて手を振っているシエルさんがいた。

 

 いやなんとも仲のいい親子だ。見ていてとても微笑ましい。当の本人のシオンは恥ずかしがってそれを止めようと必死だが。あれも見てはいけない物に入るんだろうか?

 

「ああいうのを見てるとやっぱり家族っていいなって思いますね」

「そうだね、僕も母さんを思い出すよ。僕が怒られてる側だったけど」

「そりゃお前が懲りずに色々とやらかしてたからだろ。アタシに贈り物する為に森に入ったり」

「だってせっかくの誕生日プレゼントだったし、自分で作りたいじゃないか。あっ、アリシアの誕生日は冬だったよね、ちゃんと用意するから!!」

「えっ!?わ、悪いですよ!!!」

「アリシアー、コイツに言っても無駄だぞー。もうプレゼントすることは決めてて何を渡すか悩んでるってところだから」

「う、うぅぅ……。そ、それじゃあせめてトーマ君の誕生日も教えてくださいっ!!私も誕生日プレゼント用意しますから!!!」

 

 美少女な上にそんなに健気な姿を見せられたら好きになっちゃいそう。いやもうそこを心配するのは遅いんだけど。四六時中一緒にいて、たまに夜の星の下で色々と話したりする美少女とか好きになってもおかしくないと思う。

 

「僕は12月だね。プレゼントなんて毎年ヒカリからしかもらってなかったから楽しみにしてるよ」

「任せてくださいっ!!全力を尽くします!!!」

「ま、王様になって大変だろうから色々と用意しといてやるよ」

 

 健気な二人の美少女にそう言われていい気しかしないが、それでも不安に思うことはある。僕は彼女達に笑っていてほしいが、それは僕の傍にいて出来るのかとか。

 

 僕は二人とも好きだ。この子たちの笑顔を守りたいし悲しい顔はさせたくない。幸せにいて欲しいし、出来ることならその隣に僕はいたい。

 

 我ながら気が多いと思うが、それが僕なので仕方ない。ただこの気持ちを受け入れてくれるかどうかは彼女達次第なのでまだ言う事はないが。拒否られてこの関係性が崩れるのは結構きついものがあるのだ。それも自分の気の多さが原因となれば僕は僕を呪い殺したくなること請け合いだろう。

 

「…………ねぇ、トーマ。今日初めて見たんだけど、あの小さい子が槍遣いさんのお母さんであってるの?」

「えっ、うんそのはずだけど。よく似た藍色の髪もしてるし、エルフの血を少し継いでて成長が止まってるって話だよ?」

 

 僕達がプレゼントについて話している間キャロルはその場から動かずその視線をシオンとシエルさんに向けていた。

 

 その目は魔眼を発動しているのを示すエメラルドグリーンに光っており、何故か知らないが冷や汗を流している。

 

「悪いことは言わないからあの二人とは距離を取っておきなさい。入れ込むと、いつか受けるダメージが大きくなるから」

「それって、どういう」

 

 僕の質問に答えず彼女はその魔眼の力を消してその場を去っていく。見てはいけない物を見たかのようにその顔は青く、僕は彼女の看病をすることを決めたのだった。

 

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