王戦物語~聖剣抜いたのでヒロインみんなを笑顔にします~   作:ビスマルク

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お久しぶりです。

諸事情ありプロット及び下書きが掻き消えてやる気なくしてました。

とりあえず何とか三章まで終わらせていきたいと思います……!!

四章は……『竜国訪問編』、または『赤き竜皇女編』かなぁ……
クソプライドの高いヒロインが出てくるゾ


王会合

 

 カリカリカリと書類にサインする音が鳴る臨時の執務室。体力が回復してきた僕は急ぎの案件ということで持ち込まれた書類を片づけていた。

 現在この部屋には『剣王』である僕と『槍王』であるジュリアしかいない。二人してそれぞれの仕事を進めている。たまに隣国として軽い調整をした方がいい案件が複数あり、一々聞きに行くのも互いに面倒だということで同じ部屋での仕事になった。

 書類仕事は大切なためサボることはしない。しないが……悩みが尽きることもない。

 

「仲直り大作戦を決行する前に仲直りが完了していた……馬鹿な、一体どうして……」

「あのパーティー完全に無意味だったし時間を返してほしいくらいなんだけど」

 

 シオンとシエルさんが仲直りした日から既に何日か経った。あれから普通に会話し以前と同じように仲睦まじい姿を見て安心したけどそのきっかけが何なのか分からなくて少しもやもやするのは秘密だ。

 とはいえ仲直りしてくれたこと自体はとてもいいことで悪いことなど何もないだろう。

 

「ねぇ聞いてるの。私の貴重な時間を返してほしいんだけど」

 

 訂正、あの件で色々と手伝わせてしまったジュリアの機嫌がひどく悪い。ただそれも無理もないのだろう。この数日間見ていた結果ジュリア・デュースという少女は無駄ということが大嫌いだということは分かった。

 特に時間の浪費を酷く嫌う。なんでもかんでも効率的に進めないと気が済まないのが彼女の在り方で性質なのだろう。彼女の過去を知らない僕にはそれが生来のものか後天的なものかまでは分からないが。

 

「うーん……時間を返す……。でもそんな現象を起こせるような方法は知らないんだよなぁ」

「真面目に考える辺りアンタってアホよね。こんなのただのいちゃもんだし無視すればいいのに」

「そうは言っても君に手伝ってもらったのは事実だし、その手伝いに時間を掛けさせたのも事実。だったらなんらかの対価を支払わないと対等とは言えないんじゃないかな」

 

 いつの間にか『剣王』になった僕と経緯は違えど『槍王』になってしまったジュリア。共に王になる気などさらさらなかったのにその立場になってしまった者同士出来るだけ貸し借りはなしにしておきたい。まぁこれに関しては僕の感情云々より王として、他国の王より下になってはいけないという考えもないわけではないが。

 

「こっちとしては大きすぎる借りがあるんだけど」

「レイラさんの相手をしてること?ジュリア大好きっこになってたもんね。でもレイラさんの相手をしてるのは主にヒカリだし感謝するならヒカリにした方がいいと思うよ?」

「そっちじゃないわよ。いや確かに今のレイラの相手をしてくれてるのはとても感謝してるけど」

 

 大きなため息をつきながら友人のことを考えているであろうジュリアの顔には疲れが見える。今のレイラさんはジュリアに対する接し方がどこかおかしい、というか好意の表し方が分かっていない気がするので疲れても仕方ないだろう。

 

 それはそれとしてシオン達の仲直りの為に付き合わせてしまったジュリアに対して悪いとは思っているのでなんらかのお詫びを考えてるのは本当だ。他のヤランリ王国の二人に関してはその必要はないだろうが。ライラの方は仕事を休めた上に美味しい物を食べれたと上機嫌だったし、レイラさんは服に興味のないジュリアを着飾らせる機会を得られたことで逆に礼を言われた。

 

「よくよく話したことないけど多分僕、レイラさんとちゃんと話せば意気投合できると思うんだよね。対象は違えど互いに物凄く好きな物がある者同士で」

「凄く想像しやすいけど逆に滅茶苦茶想像したくないわ。絶対テンション上がってへんなこと言ってるだろうから。あと対象が違うけどって言ってるけどそういう場合って仲違いした場合最悪なことになりそうじゃない?」

 

 否定は出来ない。解釈違いからの仲違い、これは十分にあり得ることだ。その場合どちらも譲らない可能性が非常に高い。

 

「流石はジュリアだね。僕とレイラさんのことをよくわかってる。確かに僕らはこの距離感が一番いいのかもしれない」

「私はただ単に変態二人が意気投合してさらに騒がしくなるってパターンが嫌なだけよ。アンタもあのメイドと聖女に面倒かけすぎるんじゃないわよ」

 

 確かにヒカリとアリシアには色々と手伝わせてしまって大変な思いをさせてしまってる気がする。特にヒカリはほとんど関係なかったのに僕に付き合わせてこんな所まで一緒にいてくれる。

 それに対して十分な何かを返せているか、そう問われたら僕は頷くことが出来ない。彼女達がしてくれたことに対して僕がしてきたことなど全く足りない。それくらい僕はあの二人に助けられている。

 

「でも今回手助けしてくれた一人はジュリアだし、君にも何かを返したいな」

「……別に気にしなくてもいいわよ。その分の対価は人材って形で支払われているし、あの『王戦』の時に先代『槍王』から助けてもらった恩も一応はあるわけで」

 

 もごもごと言いにくそうにつぶやく彼女は口は悪いが律儀なのがよくわかる。ただアレを恩と思われるのはあんまり気分がいいものではないのも事実だ。

 

「僕が君の身体に入り込んだ『槍王』と戦ったのは君を助けるよりもアイツが許せなかったからだよ。だからそれを助けられた、なんていうの恩だって思わなくていいよ」

「助けられた側からしたらそれでも負い目に感じるものよ。あのままだったら――――なんて考えたら、情けないけど身体が震えてくるもの」

 

 自らの肩を抱いていつの間にか震えていた身体を止めようとするジュリアの瞳にはいつもの強さはなくどうしようものないほどの不安が渦巻いていることが分かった。

 彼女との付き合いなんてこの短い期間しかないわけだが、ジュリアがこのような姿を他人に見せることなど滅多にあることではないことくらいは彼女の性格を知っていれば分かる。

 他人に身体を乗っ取られ、その心を封じられる。確かにそれは途轍もなく悍ましいことで、ジュリアがシオンを生贄に捧げてでも避けようとした理由も納得がいく。

 

「だから実際の所あんな下らない事でもそっちの助けになったならいいわ。私の精神的にもそっちの方が健康的だし」

「こういう貸し借りって面倒くさいからねぇ。そこを考慮して会話するとか僕には難易度が高すぎるんだ」

「脊髄反射で会話してるアンタからしたら確かにそれは難しいかもね」

「反射で会話してるんじゃないんだ。ただ思ったことをそのまま口にしてるだけで考えてはいるんだよ?」

「考えてそれなら私はアンタの思考回路の方を疑わざるを得ないわね」

「酷い言い草だ」

 

 互いに笑いながら会話を続ける。手元にある書類にサインをしていくことも忘れずにだ。ここら辺は慣れが大きいだろう。

 僕は『剣王』になってからこういうことをし続けてるし、もう殆ど忘れている前世でも恐らく同じことをしていたのだろう。元からあまり気にしてはいなかったがいよいよ現実味がなくなるくらいには忘れている。そのうち前世の存在自体も忘れてしまうのだろうが、それを恐ろしいとは思わないのはそれを殆ど覚えていないからだろう。忘却の彼方に置き去りにしても惜しくないと思う辺り僕は案外薄情者なのかもしれない。

 

「ジュリアも書類仕事慣れてるみたいだね。手伝いはしてるけど背丈を超える書類がもう殆ど片付いてる」

「前『槍王』があんなのだったから仕方ないじゃない。アレって武力に全振りしててそれ以外がおざなりすぎたのよ。だから配下の不正もやりたい放題。たまにアレにすら分かる馬鹿をやった奴が処刑されるだけ。塩梅を間違えなければやりたい放題したい放題。主に政治とか回してた連中もごく一部除いて腐ってたし」

「そんな環境で腐らずにいられる人は凄いと思うし尊敬に値するよ……」

「私にだって役得としてちょいちょい色々とつまんでたわ。高い化粧品とか、シャンプーとか」

 

 特にシャンプーはこだわってるのよねぇ、そう呟きながら弄っている彼女の髪を思わずガン見してしまえば確かにそのつややかな髪には相応のこだわりがあるのだと感じられるくらいには綺麗だった。

 サラサラで、手触りがよさそうで、それでいて邪魔にならないよう短く切り揃えられている。きっと彼女の髪をカッティングしている人はプロだろう。

 

「髪切るのはレイラに任せてるけどねぇ」

「……ねぇ、彼女ってシオンと君に次いで『槍王』候補だったんだよね?それとは違う技術かなり会得してない?」

「散髪って結構隙作るから信用できる相手にしか任せられないし。うちは信用できる奴あんまいないし。そういうわけでお互い信用出来る相手作ってそういうの任せ合ってるのよ。私はレイラとライラの髪を切り揃えてるし」

 

 驚きだった。彼女達の境遇も驚きだが何より驚きなのがあの三種三様の槍捌きを見せたこの三人が槍以外もかなり幅広い面で技術会得しているという事実が驚きだった。僕は剣術なんて闇魔法と聖剣の力で無理矢理こじ開けているようなもんだというのに。

 やっぱりここら辺は幼いと言っていい頃からの積み重ねが大きいのだろう。……そう思うと彼女達と対等に渡り合えるようになるこの聖剣の力が今更に凄いことを再認識する。しかもこれでまだその能力を全開に出来ていないというのだから驚きだ。

 

「あー、ちょっと思っただけで別に答えなくていいんだけど……。今ジュリアが持ってる『王槍』ってなんか特殊な効果とか持ってる?持ってるだけで力が強くなるとか」

「んー……。まぁ別に隠すことじゃないから言っちゃうけど『魔法強化』と『不壊』、『形状変化』の効果が付与されてるわよ。魔道具としては一級品なんじゃない?」

 

 やはり僕の持っている『聖剣』と似たような効果を持っているようだ。ただその効果は『聖剣』よりもはるかに少ない。それは彼女が隠しているのか、それともまた別の理由があるのか。

 …………恐らくだが後者なのだろう。今ジュリアが持っている槍には『槍王』が憑いていた。多分『聖剣』のように多機能にしようとすれば『槍王』による憑依という本来の能力を発揮しきることが出来なくなってしまう。だから他の機能を削り、最低限の効果だけをその槍に付与した……というのが真相なのだと思う。直感だが、当たりやすくなっている僕のこれは十分に信用出来るだろう。

 

「これ壊れないってだけでかなり便利だし普通に使わせてもらうわ。強く念じれば今まで使ってた槍の代わりにもなるしね」

 

 そう言って笑いながら『王槍』を二つに分けて両手に持ち笑う彼女はどこか無理しているようで、それも無理はないと思い直す。

 彼女が持っているそれはジュリアと、レイラさんとライラの身分を証明するものだ。『槍王』という彼女達の国のトップに立つ赤司であり、決して離すことの出来ない物。

 だがそれは同時にジュリアにとっては自身を乗っ取ろうとしてきた女の所有物でもある。憑依されたことを忘れることなど出来ない以上、自分が自分でなくなるなんて感覚を思い出させる物を持ち続けたいわけもない。

 

「……言っておくけど、同情なんていらないわよ。私は新米とはいえ『槍王』になるの。『剣王』であるアンタとはあくまで対等な関係。見下されるなんて御免だわ」

「そんなつもりは欠片もないよ。同情なんてしてないし、見下すなんてもってのほかだ。でもさっきその事を思い出すだけで震えるって」

「うっさい!!言ってないわよそんなこと!!!私は完璧で無慈悲な女王になるんだから!!!!」

 

 顔を真っ赤にして茶髪の髪を振り回す姿は年相応の少女にしか見えない。そんな彼女がこれから一国の代表として立っていく。『槍王』に乗っ取られかけたという事も乗り越えていく姿はとても力強く、何事も踏破していけそうで。

 彼女は尊敬できる人間、これは本心だ。他人に身体を乗っ取られそうになるなんて経験を、自分を失いそうになる経験をして。その原因になった物を持ち続けられる意志の強さこそ彼女の強さを表している。そんな少女と対等なのだと言われることに喜びを感じない程僕は無感情にはなれない。

 ただ、それとは別に対等であるからこそ力を貸したいと思うことも事実。だからこそこんな時の僕の選択は。

 

「よし!!とりあえず一段落したら一緒に外に遊びに行こう!!!甘い物食べてないとやってられないしここ観光地でもあるみたいだから見に行きたい!!!!」

「はぁ!?!!?」

 

 突拍子もないこと、そう言われればそれまでだが僕の人生今まで大体そんなものなので納得してほしい。

 





あと、この話の前に最初期の方に人物評とか書いてきました。
忘れた人はどうぞお読みください。 ぶっちゃけ俺用ですが

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