王戦物語~聖剣抜いたのでヒロインみんなを笑顔にします~ 作:ビスマルク
ゲームでの推しカプと言えばTOSのロイコレですねぇ
攻略王ロイド君はマジでカプ厨の英雄ですよ。男女問わず攻略してくれるもん
ロイドを敵視する奴は例え美少女でも冷たくなる女好きゼロスとの関係が好き……
現在僕達は訪れていた魔法研究室の中で椅子に座っていた。
周囲を見渡してみれば何に使うかわからない実験器具や、未完成の魔道具が並べられている。
実験に何らかの影響が出るのか窓は締め切られており、カーテンによって外からの日の光も入ってこず全体的に暗い印象を受け、中の住人に対してたまには外に出た方がいいと忠告したくなる。
そんな部屋の真ん中で王様が座るには簡素過ぎるとセバスさんが苦言を呈していたが、正直柔らかいソファに座らされるよりは慣れている木の丸椅子の方が居心地はいい。
それに何より今はこの光景を集中して見ていたいのだ。
「だから言っただろ!!王様相手にいつもの調子でやってたら叱られるだけじゃすまないって!!!ほらさっさと謝って許してもらうんだよ!!!!」
「嫌じゃ嫌じゃ!!!なぜ儂が謝らんとならんのじゃ!!!!ここの主は儂!!!つまりここの神は儂!!!!神は絶対に謝らーーーーーん!!!!!!!」
「なーにが神だ!!!神様ならせめてトマトくらい食えるようになってから言えよ!!!!」
「と、トマト嫌いだもん!!!中がなんかクチャってして汁っぽいし!!!!!」
お調子者で中二病だが一流の幼い天才魔法師クラリス・バーン。
彼女はゲームの中でもそのトンでもなさをいかんなく発揮していた。魔法についてはこの国どころか世界的に見ても天才的であり、特にその両目の魔眼により事の本質を見抜きそれを解析することに長けていた。
最悪な状況になるとあるルートでもその能力は遺憾なく発揮され主人公たちのピンチを幾度も救ったものだ。
だがその本質は見た目通りの10歳未満の甘やかされている子供である。長い青髪を三つ編みにして身長よりも高い杖を持って、己の才能を理解している為他人から何かを言われることが大嫌い。
我儘放題やりたい放題。彼女の実験によって問題が起きたことも一度や二度ではなくその解決に主人公達が奔走する羽目になるのはお約束だった。
それが彼女、ソードリアの魔法研究室室長の座にいる少女クラリス・バーンである。
「ほーらまた口調が戻ってる!!!いい加減そのおばさん染みた奴やめればいいんだよ!!!」
「お、おば!?ち、違うもん!!!おばさんじゃなくて森の魔女!!!昔本で読んだから知ってるの!!!優秀な魔女はみんなこういう話し方してるって!!!!エリウスの馬鹿っ!!!」
「時と場合を選べってば!!!王様の前でそういう偉そうなこと言ってると処刑されちゃうぞ!!!」
「しょ、処刑!?」
そんな彼女と対等に、いや徐々に圧倒してきているのはクラリスの幼馴染でありお目付け役としてこの研究室のナンバー2として配属されているこれまた十歳にもなってない青髪の少年だった。
エリウスと呼ばれた少年、彼は問題を起こし続けるも同時に成果を出し続けるクラリスの暴走を何とか止められる者はいないかと探された結果見つかった人材である。
元々クラリスは前室長の孫であり苗字も貰っていた。苗字を貰うという事はこの世界においてその地位を一族単位で認められるという事だ。
そして今より幼い頃からその天才性を発揮していた少女に対して周囲はどう扱っていいのかわからず、叱ることさえ出来なかったのだ。
そんな中でエリウスは彼女と対等に接し続けた。クラリスがその才覚を発揮する前も後も関係なく真っ直ぐに彼女が間違えてると思えば必ず文句を言うし、凄いことをすれば素直に褒める。
大人びているがただの子供の彼がその地位にいるのは、クラリスを抑えられるのは彼しかいないと周囲が判断したのだ。
もちろん文句を言う人間もいたが、そういう者はクラリスの起こした騒動に巻き込まれそれを何とか止めている彼の姿と雄姿を見て己の間違いに気付くのだった。
クラリス・バーンを止められるのはその幼馴染であるエリウスしかいないのだと。
「うぅぅうぅ……」
「ほら、早く謝れよ。新しい王様、優しそうだからきっと許してくれるって」
「わ、わかったのじゃ……。え、えっと、ごめんなひゃああああああああああ!?!!?気持ち悪い顔で笑ってる!?!?!!」
「あっ、気にしないで続けて続けて?なんなら僕はそこらの実験器具か、なんなら雑草扱いでもいいから」
お調子者の天才少女としっかり者の幼馴染の少年のカップリングからしか得られない栄養素があるんじゃ~~~~。
この二人は互いに互いを想っていることがよくわかり、幼い頃からずっと一緒にいたこともあって幼馴染カップルとして有識者達の中でも尊いという意見が良く出ていた。
無論その一人の中に僕もまたおり、彼らのやり取りを画面越しでニチャニチャ笑いながら楽しんでいたものだ。
画面越しにしか見られなかったその光景が今や目の前で行われている。それだけで僕のテンションは跳ね上がっており今なら何をされても笑って許せそうな気がする。
心の底から思う、この世界に来れてよかったと!!!
「子供怖がらせてんじゃねーよ」
「あいたっ!!!」
いつまでも見ていたいという想いから現実になかった僕の意識を戻したのはメイド服姿のヒカリ、その掌による頭に対する平手打ちだった。
どうやらトリップしていた僕は目の前の少年少女を怖がらせてしまったようだ。反省しなければならない。
いやでも怖がってエリウス君の後ろに隠れているクラリスちゃんの姿というのはとても素晴らしいものでは?エリウス君も震えながら幼馴染を守ろうと踏ん張っているところがとても素晴らしい。
「怖がらせてごめんね?はい、お詫び……これでアイスでも買って一緒に食べてね。出来ることなら違う味を選んで二人で分け合う的な感じで」
「えっ、あっ、ありがとう、ございます……?」
「謝罪と一緒に金握らせてんじゃねーよ」
またヒカリに頭を叩かれる。僕の頭は楽器じゃないんだけど?スパーンといい音が鳴ったからって何度もたたくのやめてくれない???
だが確かにこれはあまりいいファーストコンタクトではなかったのだろう。おかげで少年少女の警戒度を引き上げてしまった。
ああ、でも最推しではないとはいえ推しカプというのはやはりいい、素晴らしく尊い……。彼らのやり取りの一つ一つが輝いて見える。この子達が大人になる頃には素晴らしいカップルに成長していると確信できる。
その幸せな光景を見るのが僕の理想であり、その理想の為にはこの国を守らなければならない。
『剣王』とか、正直言ってあまり乗り気ではなかったが守りたいものがあると思えば何の苦でもないと再認識した。
「わりーな、坊主ども。コイツちょっと頭おかしいもんだからさ。でも悪い奴じゃないから仲良くしてやってくれ。犬の夫婦見て興奮するような奴だけど」
「儂知ってる。それって変態って言うんじゃ」
「お、王様って大変な仕事だから。変態になっても仕方ないから……!!」
あれ、なんか改めて覚悟を決めてたら変態扱いされてるんだけど。
いやまぁ別に否定する気はないしそう思われてても別に構わないけど……。いやでもそれで警戒されてカップルの自然な姿が見れなくなるのは多大な損失だな。
うん、少しは自重した方がいいかもしれない。どこまで自分を抑えられるかはわからないけど。
僕にとってこれは文字通り死んでも治らない本能のようなものだ。前世の記憶が蘇る前から同じようなことをしていたので魂に刻み込まれているのだろう。
とりあえず僕の幼い頃からの奇行を語っているヒカリを止めなければ。ケフンと一回咳を挟み込み彼女の話に夢中になってる二人の子供の視線をこちらに移す。
「えっと、僕が聖剣を抜いてしまった結果『剣王』になってしまったトーマです。これから魔法について色々と教えてもらう予定だけど、よろしくね」
「ほ、ほらクラリス。王様が挨拶してくれたぞ」
「わ、分かっとるのじゃ!!!改めて自己紹介するぞ!!儂がこの魔法研究室のトップクラリス・バーンじゃ!!!王と言えど魔法に関しては儂が上、危険な技術故に儂の言うことは聞くように!!!!」
腰に手を当て精一杯に威厳を出そうとしている少女は何というか本当に微笑ましく感じる。
だがその実力は本物だ。聖剣によって与えられた能力によってその力は今の僕ではまるで太刀打ちできないという事がわかる。
今日から僕は彼女達に魔法の指導をしてもらい、一刻も早くいっぱしの戦力にならなければならないのだ。
原作主人公は幼い頃から自分一人で生きる為に剣を振るっていたが僕はただの酒屋の息子。余裕など欠片もないので強くなる為には彼らの指導が必須だ。
「さて、早速じゃが魔力の量と属性を調べるとするかの。準備はしておるのでさっさと終わらせるのじゃ」
「クラリス様、今回はただの顔合わせとなります。授業は明日からとなっておりますので……」
「あほう、授業をするにしても魔力量も属性も分かっておらぬのであれば準備も何も出来んわ。魔力量に関しては伝承通りであれば聖剣を抜いたことから問題ないが、属性によって指導方法も変わる。五分もかからず終わるのじゃから少し待つのじゃ」
今後の予定が詰まっているのかセバスさんが早速実験を始めようとするクラリスちゃんを止めようとするが、それを理路整然とした反論で黙らせてその準備を終わらせていく。
これを見ると分かる通り彼女はエリウス君と接する時と魔法研究に夢中な時以外は割と口も強いので相手を黙らせることも多い。その為敵を作りやすいのだがそれを抑えるのがエリウス君の役割という事だ。
「さっさとこの水晶に掌を押し付けるのじゃ。そうすることでこの水晶は光る。光の色が属性で、輝きの大きさが魔力量という事じゃな」
「ちなみに赤色だったら火、青色だったら水、黄色だったら雷という風になってます」
「中には二つの属性を併せ持っている者もいる為色が混ざることもあるがの。その場合はどの属性により適性があるか詳細を調べることになる」
「へー、こんなもんがなー」
これもまたゲームでもあった話だな。やはりこうして話を聞くとかつての記憶も蘇ってくる。どんな話であっても決して無駄ではないのでちゃんと聞いておくことが大事になるな。
「アタシもちょっと試していいか?」
「よいぞ。儂としてもヒカリの属性は知りたいのじゃ!!」
うんうんと頷いている僕がいつまでも水晶に触らず暇を持て余したのかヒカリが先に水晶に触れる。
その瞬間水晶から溢れた緑色の輝きで部屋中が照らし出された。緑色は確か風属性だったはず。原作主人公の属性は初期設定で色々と変わる為予想は出来なかったが、風というのは便利な魔法が多かったはず。
僕の幼馴染はやはり優秀なのだと改めて思った。鼻が高いとはこのことだな!!
「ふむ、ヒカリも魔法を使うのに十分な魔力を持っておるの。というか魔力量だけなら儂以上かもしれんし、ただのメイドにしておくのはもったいないのう。儂の所で勉強するかの?」
「いやいいよ。ありがたいけどなぁ、ほらコイツこんなんだからさ。幼馴染として見ててやんないと心配なんだ」
「分かります、すっごい分かります。なんかやらかさないか見てないと心配になりますよね。俺もそんな感じでここにいるし」
「なんじゃとー!!!!」
なんか今、僕が問題児と同じ扱いをされた気がするがスルーした方がいいのだろうか。いや確かにツッコミを頑張ってもらったり暴走を止めてもらったりしてるけど……うん、ちょっと反省しよう。
エリクラが再び尊い喧嘩を始めそうで、僕としてはじっくりそれを観察したいのだが時間の問題もあり、これ以上ここにとどまっているわけにもいかない。
「じゃあ次は僕が触るね」
「ちょっと待つのじゃ。あまりの魔力量に目が潰されても困るからの。サングラスサングラス……」
聖剣は伝承によって魔力に最も愛された者にしか抜けないとされている。それが本当なら僕の魔力量はヒカリのそれを超えるだろう。確かに目が眩む可能性は大いにある。
そうして人数分のサングラスが全員に配られて、ついに僕の魔力が測られることになる。
どうなるか分からない為少しビビりつつその水晶に手を置く。
「うおっ!?」
その瞬間水晶から溢れだしたのは真っ黒な闇。光るかと思っていたのでまるで反応できず視界が闇に包まれる。
思わず水晶から手を離してしまうが魔力の余韻が残っているのか水晶から出てくる闇は未だ収まらず視界は未だ閉ざされている。
いきなりすぎて混乱した僕は思わず後退りしながら手を振り回して。
「ひゃんっ!?」
「えっ」
その結果何かとんでもなく柔らかい物を掴んでしまう。なんかとてつもなく可愛い声が聞こえてきたがそれが誰の物か一瞬把握できず。
闇が収まりようやく視界を取り戻すことに成功した僕の目の前にはヒカリがいて、その意外と大きかった胸を僕の右手は掴んでいて、彼女は顔を真っ赤にしていた。
「……何か言う事は」
「……とてつもなく柔らかかったし可愛い声だったです」
何をされるか分かった僕は羞恥と怒りで真っ赤になっている彼女の質問に素直に答える。こういう時嘘を述べると必ず悪い方向にヒートアップするのは経験則で知っている。
「このドスケベ!!!!!」
アッパーカットを顎に受けた僕の身体は宙に浮かび魔法研究室の外にまで吹っ飛ばされたのであった。