TS転生チートあり、夢や使命は特になし 作:風鈴
翌日、シールドウッドを討伐するため早速私は森にやってきたのだ。
鬱蒼と生い茂る木々のどこかに、憎きデク野郎は待ち構えている。
さぁこれからぼてくりこかしてやるからな、と森の中を進んでいく。
道なき道、目印のない道を進んでいく。
普通にやったら迷うが、そこは当然対策があるので問題ない。
どちらかといえば、気にするのは他の冒険者の存在だ。
現在、森には人影らしい人影はいない。
シールドウッドが出たというのだから当然だ。
シールドウッドの厄介さはもう既に語ったけど、そんな奴がいつどこで現れるかわからない状態で森をさまよっているわけである。
そりゃあ冒険者も、好き好んで森を歩き回ったりなんてしない。
これが、普通の街道とかならいいんだけども。
街道にぽつんとシールドウッドがいたら誰だって気がつく。
整備されていて一定の広さもあるから、木々に隠れて不意打ち使用にも距離がある。
ふいうちに気をつけていれば、倒すことは難しくても逃げるだけなら問題ない魔物なのだ。
木々の中に隠れられたらそうもいかないというだけで。
だから冒険者は数がすくない。
だが、いないわけじゃない。
人がいないということは、素材が取り放題ということだ。
森の中には回復に使うポーションなどなどの素材が生えている。
薬草とか、キノコとかそういうやつ。
だから、こういう状況でそれを求めてシールドウッドと出くわさないことを祈り、森に入る冒険者は少ないながらいる。
まぁ、そんな連中のことまで気にしていたら、冒険者なんてやってられないけど。
それはそれとして、
私はチート転生者だ。
そのチート能力は結構多岐にわたり、本気を出すと結構な強敵をソロで討伐できる。
シールドウッドはその中で考えたら、まぁそこそこ強い程度の敵だ。
だから倒すことは容易なのだが、どこまで力を使うかという問題がある。
まず、魔術を使うのは論外だ。
そもそも、実家を出てから魔術を人前で使ったことはないし、少しでも見られる可能性があるなら魔術を使うという選択肢はない。
あと、別に魔術を使ったところでそこまで圧倒的に強い訳では無い。
私の持てる最大火力は、魔術を含めたあらゆる手札を同時に切ることなわけだけど、そこまでする必要がある敵はそうそういない。
とはいえ、実を言えばこういう状況で私が使う力は既に決まっていた。
こういう状況が初めてというわけではないからだ。
森の中で、軽く一つ呼吸を置くと、私はそっと口から言葉を漏らした。
「スキル“身体強化”」
直後、森の中を前世のそれと比べたら明らかに超常的なスピードで駆け抜けていった。
***
スキル。
この世界にはそういうものが存在する。
魔術と双璧をなす人類の武器であり、人類が魔物という前世には存在しなかった脅威に対抗してこれた要因。
まぁ、なんてことはない、異世界モノにはよくあるやつという認識で間違いはない。
このスキルってやつは便利なもので、魔物の出現を探知したりすることができる。
疑問に思わなかっただろうか、シールドウッドは木に擬態して見つかりにくい、そんな奴が森に出現したことをどうやってしるのか。
答えはスキルの力だ。
魔物探知。
ざっくり言えば、発動した場所の周囲にどんな魔物が要るかを使用者に伝えるスキル。
これを人がいなくても使えるようにしたマジックアイテムでサーチするのが、ある意味でギルドの一番大事な仕事ともいえる。
もちろん、私も魔物探知のスキルは使えるが、こいつはあくまで探知した範囲に何が要るかを教えるもので、誰がどこにいるかを伝えるものではない。
そこで、別のスキルを使用する。
「スキル“気脈探知”」
気、という概念が創作には登場するが、これはその気を探知するものだ。
この世界には気があるのかって?
――ない。
実際には単純に、生命反応を探知するスキルである。
ただ、あくまで生命反応を探知するだけなので、その生命反応が何なのかは実際にその場に行ってみないと分からない。
スキルというのは便利なものではないのだ。
どっちかというと、魔術の得意分野である、そういう器用なことって。
まぁ、何がいいたいかといえば。
私のチートは、スキルに関するものだ。
ただ、スキルだけに関するものではない。
魔術を使えるのもチートのおかげだし、他にも色々とできることはある。
が、実際問題。
それを使う機会はあんまりない。
必要がないからだ。
「……見つけた」
身体強化で森の中を駆け回って、気脈探知で目標を見て回る。
アクションゲームで目標を探すためにマップを歩き回っているような気分だ。
ゲームと違うのは、やっぱり生身でやると爽快感が段違いってところだな。
ともかく、目標は木々の合間に隠れていた。
あの野郎、特に木々が密集していて足の踏み場もないところに隠れやがって。
それとも休憩のつもりでここを拠点にでもしていたのだろうか。
まぁ、細かいところに興味はない。
私は私の
***
チートは隠さなくてはならない。
魔術の使えない人間が、魔術を使えるチート。
それは世界を揺るがすレベルで常識をひっくり返すものだ。
だから、当然ながら魔術を普段の戦闘で使うことはないのだが。
それはそれとして、私は周囲に実力をある程度隠している。
ある程度というのがポイントだ。
はっきり言うが、実力を完全に隠すことは不可能である。
もしも完全に隠そうとしたら、そもそも使わない以外に方法はない。
それこそ魔術を使えるという事実を、使わないという方法でひた隠しにしているように。
もっと言えば、私が実力をある程度隠すのはそれが一種のカモフラージュになるからだ。
私は実力を隠して入るけれど、
知っている人間ならば知っているし、私の実力が今の私の実績に噛み合っていないことは注意深く観察すれば解ること。
その上で、ある程度の力を使って実力をほのめかすことで、まさかそれ以上の実力はないだろうと周囲に思わせている。
何よりも困るのは、私のチートがチートであるとバレることなのだから。
なのでこういう時――周りに人はいないが、見ている誰かはいるかもしれないという状況。
私は遠慮なく、自分が出していいと決めた全力を出すことにしている。
とはいえこれは、普段の日常生活が私の“出していい”全力で対処できる事態で成り立っているからというのもあるけれど。
何にせよ、特に世界の危機とかそういうものがないこの世界の現状には感謝しなくてはならない。
故に私は、その感謝の精神でもって今目の前に立ちはだかる敵。
シールドウッドに対し――
「――スキル“身体強化・上級”」
より強力な身体強化を伴った拳を放ち、一発でその胴体に風穴を開けた。
まさかシールドウッドも、一撃で自分を倒せる人間がいるとは思わなかっただろう。
ほとんど回避すらできない状態で、まともにそれを受けたシールドウッドはそのまま動かなくなってしまった。
私は魔術が使えない。
それは私を見れば、多くの人間がひと目で理解できる事実である。
なんでひと目で理解できるかの説明は、とりあえず後回しにするとして。
そんな私の、隠しているが隠していない全力は、すなわち純粋な暴力であった――
色々できますが、基本的にかなり雑なのがTS感ある気がするのは私だけでしょうか。
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