モンスターハンターアルカディア   作:ぷにぷに狸

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03.狩人達の確執
ケインに諭され、猟団〝蒼天の翼″に入団したユウト。クエストを進めていく中でそれに関する情報を豊富に揃える必要があり、セツナは猟団同士が結束して設立された猟団同盟への加盟を考えるのだが。



02.狩人達の確執
序章:狙われる者達


 

 2350年、ギルドカフェを後にして――。

 

 時折、車が通り過ぎる際の風切り音が聞こえてくる。車両はそこまで多くない。市街区とは違って……。

 だけど、郊外と繋ぐビックブリッジの上を走っていることには違いない。たまたまなのかも知れないが、橋上は閑散としていた。

 いつもなら、行き交う車両で賑わっていそうな印象(イメージ)なのだが。

 ま、いずれにせよ、予定変更はなく向かう場所は決まっている。そのために献花を、道中の店で買って来たのだから。

 

「もうすぐだな」

 

 助手席にいる緒方純がぼやいた。その意味の察するところは、2通りあって。一つは墓地。もう一つは……。

 

「もうすぐって?」

 

 篠崎博士が疑問に思っていることを、代わりにホークが質問した。すると、

 

「例の現場だよ、現場」

 

 とのこと。現場と聞いて、博士は間を置いて、ピーンと来た。来て、僅かばかり胸が締め付けられそうになった。

 

「現場? ……あ〜、あそこか」

 

 運転席側にいる、ホークも半ば察した様であった。

 

 詰まるところだ。

 

 要するに、アカデミア図書館跡のこと。全ての始まり、と言うべき場所なのかも知れないが。

 ともかく、郊外にあってフリーダム領最大の図書館のことなんだと気付いた。と、そんな風に思っていると、カーナビから音声が流れて来て――

 

『あと5分。アカデミア図書館跡前、アカデミア図書館跡前』

 

 分かりきったことを、無機質に伝えて来たのである。

 

 〝跡″

 

 と言うからには何かがあった訳であり、要するに、焼け跡のことを指していた。炎が渦を巻くように天へと燃え上がるような大規模な火災。消火に数週間は余儀なくされたと言うが……。

 だけど、そんなことよりも、

 

「あれからどうなったんだろうな?」

 

 とホーク。その疑問に答えるは、緒方純。

 

「わかんねな」

 

 彼女も、その動向は分からない様であった。一方、篠崎博士自身も気掛かりだった。

 何せ、火事になった当初、一命を取り留めたとは言え、親友は大火傷を負ったのだから。

 しかも、そんな親友も、入院中、忽然と姿を眩ましただけあって。

 

「霊奈、どこ行っちゃの……」

 

 寂しい気持ちと心配な気持ちが相まって、そんな切ない言葉が口からこぼれ落ちた。

 

「でも、動ける様になるまでには回復はできていたんだよな?」

 

 と緒方。

 

「一応ね、最後に見た限りでは。時折、松葉杖付いて歩ける様にはなっていたから。でも……」

「でも?」

「……いえ、なんでもない」

 

 思い当たる節はあったけど、敢えて言うまでもない。と思った。当の彼女は、やや首を傾げていたが。

 そう、そこまで話す必要はないのだ。自分と霊奈の間だけの、それも、親友同士の間柄に限っての。

 脳裏に過っていたのは、霊奈の不可解な行動。それがあっただけのことだから。

 そう、霊奈は半ば何かに取り憑かれたように焦っていた。確かに焦っていたのだ、入院している間も。怪我の具合いかんに関わらずに。

 けれど、その理由を訊いてもまともに答えてくれなかった。耳を貸さない訳ではない。色々と取り繕って笑顔と〝大丈夫、大丈夫“と何度も同じパターンを繰り返すくらいは返してくれたから。

 だが、そんな中でただ一言、

 

 〝あの世界が消えないうちに、ね″

 

 と半笑いだが、応えるだけに留めて、意味深な言葉をふと漏らしたのである。当然、なんのことかは理解できない。

 彼女のその一言と共に出た半笑いの意味だけでなく、

 

 あの世界? 

 

 とはなんなのかをも含めて。

 ただ、一つだけ言えるのは、あのアカデミア図書館の火事以降、霊奈は変わってしまったと言うこと。

 図書館に行く前はそんな焦る様には見えなかっただけに、心境がまるで180度変わってしまったのが、ハッキリと見て分かったのだ。

 

「だいぶ酷い火事だったんだな。ほぼ全焼じゃないか」

 

 通り過ぎる瞬間、アカデミア図書館跡の全景を見たホークが、感想を述べた。つられて篠崎博士もちらっと図書館を見たが、特段、気に留めることはなかった。

 なにせ、当初、火事の現場に居合わせていたから……。

 

 アカデミア図書館跡を後にして、ビックブリッジを渡り切った後、向かう先の墓地が見えて来た。

 共同墓地、と言うだけあって、かなりの広さがパッと見で伺えた。

 

「あれだな」

 

 ハンドル片手に遺族から予め渡された案内図を見ながら、ホークは彼方にある墓地に目を据えた。

 

「遺族は先に待っているんかな?」

 

 と緒方純。

 

「分からない。でも、手紙を渡すくらいだから、もう先についているかも」

 

 憶測だけを述べて、篠崎博士はそれに答えた。

 

「先に待っている、か〜。……かもな」

 

 そして、

 

「ただ、いずれにせよ緊張するな」

「どうして?」

「いや、なんて言うかな。あいつの親族に会うなんて、早々にないからさ。ほぼ初対面なわけだしさ」

「確かに……」

 

 ホークの言葉に、緒方純は同感だった。

 

「初対面、か……」

 

 (このこと、朋也はどう思ったんだろうな)

 

 未だに、システムによって眠らされている縁 朋也()のことを思う。なにせ、妹の様に可愛がっていたんだから。

 たがら――。

 

「ある意味、幼馴染みたいなもんだしな」

「でも、そう言うホークだって、昔っから親しかったんでしょ?」

「親しかったて言うか……。面識はあるけど、朋也ほどではないぜ」

「そう……」

 

 意外なことに篠崎博士は、少しだけ驚いた。でも、よくよく思えば、朋也の友人だけに、彼の〝連れ”の範疇でしかないよな〜、とは思った。

 つまりは、接点はあるものの、濃い親しい仲、でもないことには合点するような気がしたからだ。

 

「見えた。あれか〜」

 

 緒方純のボヤキに、博士は前方を見た。共同墓地とやらは塀で囲まれているのか。フロントガラスの向こう景色の半分を埋め尽くす様な塩梅で、高い塀が見えてきた。

 

 それから数分後――

 

 共同墓地から僅かな距離で、隣接するような場所に駐車場はあった。篠崎博士達はその駐車場に止めた。

 車外に出て空を見上げれば、曇天とばかりに天候は芳しくなく。いつ、雨が降るか分からない感じであった。

 

「傘、持って来てないよな?」

 

 これには頷くしかなかった。急に天候が悪くなったような感じだけに、準備不足感が否めなかったのだ。

 

「だよな〜」

「ホークは?」

 

 と緒方。しかし、

 

「俺もだな。今日、晴れるって聞いていたから、まさに迂闊だったよ」

「長居はできそうもないね」

「ああ。……つってもな〜」

 

 駐車場周りを見渡す。同じく向き直って篠崎博士も、ホークと同じく、見渡してみた。

 第一印象からして、自分らを除いて車一台も来てない様子なのだ。恐らくではあるが、先に〝亡き彼女”の墓前に来ても誰もいない。

 そう見る方が妥当。そんな風にさえ思えたのである。

 

「早すぎたかな? うちら」

「そうね〜」

 

 緒方の疑問に共感する形で、博士はなんとなく的な曖昧な受け答えだけを返した。

 

「ま、車の中で待っていようか? このまま、行っても無駄足になるだろうしさ」

「だな」

 

 ひとまず万事休す。その様な感じで、誰か来るまで待っていることにした。

 

 皆と歩く、墓土の上を。そして、その場所へと着いた。単なる墓参りの筈なんだけども、ホークの言葉通り、親戚と並んで歩いているだけなのに、その間、緊張の二文字が全身を駆け巡っていた。

 前を歩く親戚の方々は2人。あとの2人は、顔見知りの亡き彼女の両親だった。父親の方がこちらを振り返る。

 

「わざわざ本当にありがとうございます。由里もきっと喜んでいると思います」

「いえ、あたし達は、そんな程では。ただ手紙を受け取って、その内容通りに来ただけであって」

「それでもです。ありがとうございます」

 

 二度も感謝された。その気でもないだけに、なんだかこそばゆい感じではあった。

 

「ほんとは、朋也がいればよかったかも知れないが」

 

 とホーク。しかし、事情を知っていた両親は、そこを察して。今度は母の方が述べる。

 

「いいんです。今は来れないことは重々承知ですので」

 

 とそこで、親戚の1人が、母親の方に何かを耳打ち。彼女もすぐに分かったようで。

 

「ですね。早く済ませましょうか」

 

 とだけ答えた。――で、

 

「すみません、時間が押しているもので。すぐに済ませましょうか?」

「あ、はい。分かりました」

 

 多忙なのだろう。墓前に辿り着いた博士達は、早速、献花を添えた後、墓に手を合わせてお参りを始めた。

 

 

 

 

 両親とその連れの親戚は、礼を述べるとそそくさと帰ってしまった。後に残された篠崎博士ら3人は、今後どするのかをそれぞれ思案する。その中で、緒方純は墓に刻まれた字を呟くように言って見せた。

 

「佐々木家之墓、か〜」

 

 そして、誰が眠っているかをも読み上げる。

 

「佐々木由里、確かにな〜」

 

 と。その言い方、まさに何処か腑に落ちたような感じを醸し出していた。横目でその様を見ていた篠崎博士は、確かに面識がそこまでなかったことを、改めて認識したのである。

 

「さて、墓参りも済んだことだし、お前らはこれからどうする?」

 

 とケイン。

 

「え? あたしは〜」

 

 と、言いかけたところで、横槍的に緒方が意味深な言葉を投げかけた。

 

「そう言えば、まだ、じゃなかったっけ?」

 

 当然ながら、ホークは

 

「まだって?」

 

 と疑問符を浮かばせる。

 

「ほら、なんて言うか、朋也にさ。ダチ、なんだろう?」

「ダメよ! 純」

「別にいいじゃないか。一応、間接的とは言え、その辺りの関係筋なんだしさ。それに、責任者、なんだろう?」

「そう、だけど……」

 

 普通なら合わせてもいい間柄なんだが、なにぶん、朋也にまつわることで、機密事案がついて回るのだ。

 つまるところ、国家機密レベルだけに。だが、そのことを察してか、ホークは苦笑いを浮かべると

 

「俺はいいよ。本当は会いたいけど、事情が複雑そうだしさ」

「ごめん、ホーク」

 

 その表情は、複雑な面持ちだったのかも知れない。ホークと再会した側から、この件は説き伏せて朋也に会わせることだけを避け、今に至るだけにだ。

 

「ま、いいさ。半ば分かっていたことだし。それに、敢えて再会した際に朋也に会うことだけは言い出さなかったのも、そうなのかな〜、と想像していたからさ」

「ふ〜ん、そっか。……そうだよな。ホークが正しいな。悪かったな。無理強いな一言言っせちまって」

 

 緒方純も分かっていたのだろう。博士同様、謝った。当のホークは、遠慮がちに、そんな謝らなくても、と言いたげそうではあったが。

 

「さて、これからどうするべきか〜」

 

 今後のことについて、改めて思案する。――と、ここで、バックに入れていたスマホから、バイブレーションが響いていることを感知。さりげなく取り出すと、その流れで画面を見た。

 すると、見知りあった者からだった。

 

「なんだろう〜?」

 

 興味が惹かれるホークと緒方純を尻目に、余程のことがない限りかかって来ない相手先からの着信に出た。

 相手先はどうやら真剣そのものであり、半ば焦っているようであった。触発されたみたく、博士の表情がすぐにガラリと一変した。

 

「篠崎……」

 

 とホーク。博士は声の主に耳を貸した。

 

「狙われています。そこから一刻も離れてください。ただし、気付いていない素ぶりをお願いします」

「あたしらは何処へ行けば?」

「あたしら、と言うことはツレがいるんですね。やむを得ません、これから端末に案内図(ルートガイド)を送ります。その指示に従ってくれれば、それでいいです」

「分かったわ」

「お気を付けて」

 

 そして、電話を切った。

 

「博士?」

 

 不思議そうな表情を見せる緒方純が、丁度、視界に映る。他方、ホークもこちらを見つめていることから、気になっているようだ。

 事情の分からない2人に、博士は一言、小さく唱えた。

 

「狙われている」

 

 と。

 

「え? 狙われ――」

「しー‼︎」

 

 すぐさま遮るや、博士は周辺を見渡した。――で、緒方に変わってホークは、静かに答える。

 

「相手は見当がつくのか?」

「いいえ、今のところは。ただ、信頼おけるSPからの報告だから、きっと間違いないと思う」

 

 そして、再び手元のスマホを見る。間髪入れずして、ピコーン……、と通知音が聞こえた。

 表示すると、ルートガイドが記されていた。ルートの先を見れば、いくつかのチェックポイントが記されており

 

「ともかく急ぎましょう」

 

 ホーク、緒方純を連れて由里の墓を後にした。

 

 

 〝狙われている“

 

 平常心を保つよう心掛けていたが、やはり、焦燥感が次第に高まってくる事には変わりなかった。

 前方を見据えつつ、襲撃犯の正体を確かめようと目を組まなく動かす。だが、どこに待ち構えているのか、見当もつかない。

 恐らく知らせてくれたSP側の視点でないと、分からないのかも知れない。ともかく、ガイドルートに従って共同墓地を出た。

 ――と、ここで、またもや通知が来た。

 

『車上は厳禁です。そのままバス停に向かってください』

 

 とのことだ。

 

「あれ? 車は――」

「しー!」

「……」

 

  事情は話せなかったが、ともかくそれだけで説き伏せるしかなかった。押し黙る緒方純。

 そして、角を曲がった辺りで、遠方にバス停が見えて来た。停留所には4人ほど待ち人が、居て屋根の下のベンチで寛いでいて――

 

「ん? ホーク? ちょ、ちょっと⁉︎ 博士!」

 

 え?

 

 振り向いた。

 

「ホーク⁉︎」

 

 何があったのだろうか? ホークが、いつの間にか倒れている様を目の当たりにしたのだ。

 続いて、

 

「うっ!」

 

 と純が小さく呻き声を。直後、そこで、倒れ伏してしまったのである。直感的に博士は悟った。

 2人が何者かにより狙撃されたと言うことを。より一層の危機感を抱いた博士は、遠方にいる停留所の待ち人達にむかって叫ぶ。

 

「だ、誰か――‼︎  誰か助け――‼︎」

 

 うっ!

 

 ――と次の瞬間、頸部にチクリとした感触を。直後、強烈な眠気に襲われて、声を叫び続ける余地もなく。

 そのまま視界が暗転し、意識が吹き飛んだ。その直前、微かにだが、羽音が聞こえたような気がして……。

 

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