モンスターハンターアルカディア   作:ぷにぷに狸

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1章:激闘を制する者・2話

 

「あんた達、準備はいいわね?」

 

 俺も含めて、団長(セツナ)の問いに一同は頷く。この日のために周到に進めてきたのだから、断る理由もない。

 

「じゃあ、説明するわね」

 

 軽快な画面操作を経て、木製の長テーブル上に一枚の大きな羊皮紙が広げられる。色々と描かれてはいるが、いずれにせよフラヒヤ山脈全域を網羅した地図には変わらない。

 その中で、セツナはある一点に指を指すことから始める。

 

「ここが、今いるポッケ村。――で、恐らくこの辺りが、先日、最後に戦った場所」

 

 その場所とは、まさにガルド湖のこと。だが、あそこはすでに、半分近くが撃退戦を経て崩壊している。

 思い返せば、仲間の1人が崩壊に巻き込まれ犠牲になるとこだっただけに、正直なとこ、ゾッとした。

 

「でも、今となれば、多分、痕跡を得るのは確実でないと思う」

 

 そこで、J.O。

 

「だけどよ、とりあえず行ってみないことには確証がないんじゃないか? 例え無駄足になったとしてもよ」

「ん〜、確かに」

 

 J.Oの提案に、ケインは賛同したようだ。でも、俺の見解は違っていた。多分、セツナも同じことを考えているかも知れないが……。

 

「100%とまでは言い切れないが、いずれにせよ行くまでもないかと」

「なんでだ?」

 

 とJ.O。ズバリと見解を一言で言い表す。

 

「痕跡の残留時間だよ」

「残留、時間?」

「そう、残留時間。いつまでも残っていないと言うことさ。流石にあの戦いから1週間以上は経っている。残っている見込みはないと思うぜ」

「同意見ね。あたしもそのことを話そうと思っていたから」

「セツナ……」

 

 不思議そうに見つめるケインがいた。

 

「……確か、目撃情報があった気がする。パパ」

 

 そこで指名され、セツナの後ろで身を引いていたノブ公は、ズイッと一歩前へと躍り出た。

 皆の視線が彼に注がれる。

 

「聞いた話によると、2件、目撃情報があった」

 

 とチョキの形をしてみせた。

 

「一つは、間接的とは言えポポの遺体。もう一つは、黒い影だ」

「黒い影?」

「ああ」

 

 そして、J.Oの疑問に応えるかのように、広げられた地図に向けて指を示し――。……ある一点に落ち着く。

 

「ここだ。話を聞いた中で推測するに、この箇所でその黒い影を目撃したと聞いたな」

「え? その箇所って……、小屋アルね。人影の間違いなんじゃ……」

「俺もそう思う。それに、聞いた限りだと、その2つは目撃情報としては希薄だな。他にないのか?」

 

 すると、ノブ公は

 

「ない、今のところは」

 

 キッパリと言った。言っただけに、まさに確証が得られた訳ではなく。俺は確かめるように尋ねた。

 

「なら、具体的なところを教えて欲しい。先程聞いた限りでは、あまりにも情報不足だしな」

「ん〜、具体的なことか〜」

 

 ノブ公はさらに深掘りするべく、二の腕を組んでみせた。上を向き、思い返す仕草をしてみせる。

 そんな中、ミルクが横から話に割り込む。

 

「一つだけ、気になったことがあるにゃ」

「一つだけ?」

「そうだにゃ。……ジャム」

「うん」

 

 ジャムに頼み、木箱を持って来てもらっては、踏み台として上に立った。隣で疑問に感じて見つめるバターを横目にしながら、ミルクは話を続ける。

 

「気になったこと。それは、ズバリッ、ポポの遺体にゃ」

「ポポの、遺体? でも、んなもの、襲うモンスターって、いくらでもいるじゃんかよ。例えば、……ギアノスとか。或いは、ブランコだったり。あとは……」

「あとは?」

「そ、それは……」

 

 ミルクの追求に、ケインは言葉を詰まらせてしまった。詰まらせてしまっただけに、苦し紛れに強引に言い切ってみせた。

 

「と、ともかく。俺の知らないモンスターだっているかも知れないだろう。……な、なんなら、ユウトがその辺り詳しいんじゃないか? なぁ?」

「お、俺にフルのかよ」

「良いじゃないかよ。実際に詳しいんだからさ」

「まぁ、そうだけど……」

 

 正直なところ、自信はなかった。確かにモンハンにかけての知識は豊富だ。豊富なのだが、なんというか〜。

 このゲームの環境に順応していくうちに、想定外(イレギュラー)なことが多々あり、モンスターの種類は分かるが、どのモンスターがどのクエスト難度で出現するとか、分からなくなって来たのである。

 特に、やはり印象に残ったのは、デスゲームが幕を開けて以降、リオレイアと遭遇したことだ。

 ハンターランクが低い上に、初心者向けクエストだったのにも関わらず姿を見せたこと(襲われもしたが……)。

 普通なら、遭遇することはほぼないはずなのに、それが難度関係なしで姿を見せる辺り、正直、今までの常識が通用しないのを思い知らされているのだ。

 だから――。

 

「珍しいわね、ユウトが自信無くすなんて」

 

 とセツナ。だが、俺は、ここでやや強い気に出た。

 

「自信なくした、って訳では……。ただ、色んな可能性について思考を張り巡らせてみたんだよ」

「へ〜、思考ね。……で、結論は出たの?」

「出た、て言うか〜。ノブ公のおっさん。ポポに関して、他に情報はないか?」

「あら、聞くの? ここで」

「べ、別にいいじゃんかよ。確認だよ、確認。口から出まかせ言うよりかはマシだろう?」

 

 そして、思い出していたノブ公は、それに答えた。

 

「確か、傷跡が深かったとか。……なんでも、ザックリと引き裂いたような傷跡のように見えた、とか話していたかな」

「ふむ〜、これは」

 

 今まで黙秘していたブレットが、何かの結論が出たような振る舞いをした。しかし――

 

「なにか、分かったのにゃ?」

「まぁにゃ」

 

 ミルクの問いに一言、発したのみだった。

 

「ともかく、これだけは言えるな。いずれにせよ、その2箇所は確認する必要があると。特にポポの遺体の方は、何かしらの痕跡が出てくる可能性は十分あり得るな」

「で、でもよ、ユウト」

「ん?」

「場所、分からないんじゃないか? 小屋の方はまだしも、遺体の方は……」

 

 すると、ノブ公は

 

「それについては大丈夫だ。場所については、ある程度、訊いてあるからな」

「なら、問題はなさそうだな」

 

 彼の言葉を受けて、憂いが晴れた気がした。

 

「と、なると、問題は天候あるネ。ただでさえ、天候が不安定だから、もし、大雪が降り積もった際、痕跡が見つかりにくい。或いは、かき消されてしまう可能性も否めないネ」

「あ〜、確かに。それも一理だな」

「なぁ、どうするんだよ、ユウト?」

 

 俺は考えた。考えて、それでいて――

 

「と、ともかく、行ってみましょう。話はそれからの方が早いかと」

「カデットさん……」

 

 その目線の先、そこには既に準備満タン、かつ、愛も変わらずメイド姿の彼女がそこにいた。

 軽く腕組みをしながら、続けて――

 

「それに、どの道、決着つけないとならないですし」

「だな。……ま、そう言うことだ」

 

 クエストを進める上でも避けて通れない案件だけに、カデットの言葉は、なんだか勇気つけられたような気がした。

 最後に取り仕切るは、団長たるセツナ。

 

「他には意見はない?」

 

 と尋ね、そして、周りを見渡し、それでいて俺も含めて特にないこと確認。

 

「なら、決まりね」

 

 と一言。広げられた地図を折り畳んではしまうと、

 

「さて、行きましょうか? まずは装備新調するためにね」

 

 カデットを除いて、一同を促した。

 

 

 

 

 向かった先は、ドーラとライラが親子揃って経営する武具屋だった。いつもすれ違う店の筈なのに、なんだか久々に来たような錯覚を覚える。

 

 無理もない。

 

 今まで素材集めや狩猟技術向上、或いはコンテンツ拡張のため、クエストやら農場やらで奔走。武具屋なんて、眼中にもなかったからである。だから、なのかも知れないが……

 

「いらっしゃい! お久しぶりね。雁首揃えて、ここに来ると言うことは、遂に来たのね?」

 

 筋骨隆々のガタイのいい体格をした、男勝りのおばちゃんことドーラが、意気揚々と挨拶をかまして来た。

 や〜や〜、と手を振りながら、気前よくセツナは答えた。

 

「まぁね。だからこそ、みんなで来た訳」

「やっぱりね〜。で、抜かりはないんだろうね? 相手はあのティガレックスだよ。きちんとした装備にはきちんと十分な素材もいる訳だし」

「そこは大丈夫、かも。……ね〜、みんな」

 

 こちらに振り向いて問いかけた。ノブ公は勿論のこと、レイナ、小狼、小凛、J.O、俺、ケイン。他、オトモ達は、揃いも揃って頷いたり、軽く返答したりで、OKを告げた。

 

「なら、問題はなさそうね。……ライラ! お得意様から注文入るよ。準備いいね?」

 

 振り向いた先、奥で竈門近くで精錬をしている最中のライラが、こちらを向いては頷いた。

 

「こっちもOKだ。いつでもいいよ」

「なら、まずは暇を貰おうかしらね。吟味しないと始まらないから」 

「分かったよ。じっくり考えな、素材は大事だからね」

 

 それを皮切りにドーラとの会話を終え、踵を返した。俺たちが見つめる中、セツナは辺りを見渡す。

 そして、円卓と幾つかの細かい丸太を見つけると、その場所に皆を案内した。俺も含めて一同が円卓に集う。

 それぞれがそれぞれの丸太に座り、そして、各々は画面を表示させた。勿論、装備と素材関連画面であることは想像に難くない。

 素材リストには沢山の種々雑多な素材がある。何を作るべきか、正直、迷う。手始めに、武器にするか防具にするか……。

 いずれにせよ、どちらも作れなくはないが、護石を当て嵌めてスキルを発動するとなると、護石作成用の素材も必要な訳であり、武器から作った結果、スキルを発動できませんでした。

 なんて、ことになるのは計算した挙句、そのような結論が見え隠れしていた。

 

「ここは攻撃力を求めたいが〜、しかし……」

 

 そんな時である。

 

「なぁ、ユウト」

「あん?」

「どんな装備にするか、決まったか?」

「ケイン……、まぁ、なんとなくはな」

「そっか。なら、問題はなさそうだな」

「問題なさそうって?」

「あ、いや〜。武器にするか防具にするかで、なかなか踏ん切りつかなくてさ。素材も限られている訳だし」

「あ〜、そのことね。……同感だな」

 

 そのことに関しては、俺も似たようなものである。ましてやケインは、俺のように素材が豊富と言う訳ではない。と言うのも、素材集め始めていた当初、ケインは装備の値段が高いことを気にしてか、沢山の素材を売却していたのを遅れて目撃したからである。

 遅れて気付いた俺は、慌てて静止させたが、結局、後の祭りであり、残ったのは支給品で貰える回復アイテムか、研ぎ石、素材玉、キノコ類くらいしか残っていなかった。

 その経緯があり、彼は今更ながら素材不足に陥っていて、事ここに至って、それを悩んでいるのだろう。

 そう推測するのは容易であった。

 

 (自業自得だな、それは)

 

 言いたくはなったが、敢えて口には出さなかった。なにわともあれ、クエストで死なせたくないだけに。

 

「で、今、何が残っているんだ?」

 

 俺の問い掛けに、彼はバツが悪そうに答える。

 

「ざっと答えると、ギアノス系とブランコ系。それに氷結石、くらいかな」

「え? たった3種類ほど?」

「だって、他には、……回復薬類や研ぎ石しか。……あ、あとは、こんがり肉があったか」

「あ〜、なるほどな。……やっぱりか」

 

 聞いた限り、あまり使えなさそうな感じは否めなかった。

 

「や、やっぱりって、……わ、悪かったよ。俺がドジったばかりによ。なんなら、俺は留守番しているよ」

「あ、い、いや。そこまでしなくていいよ。ただ、素材が想像以上に少なかったみたいだから、落胆したくらいだし」

「ら、落胆って、じゃあ、そっちが決めなくても留守番するよ。足で惑いなるの嫌だしさ」

「おいおい、そこまで言ってないだろう!」

 

 張り合ううちに、こちらも熱を覚えずにはいられなかった。そんな中、横からJ.Oが割り込んできて――

 

「おい! 何問答を繰り返しているんだよ? ケイン、なんか困り事でもあるのか?」

「J.O……」

「な、なんでもないよ。……ただ、素材が足りなかったくらいで」

「素材が足りない? 装備が作れないのか?」

「あ、い、いや〜」

 

 返答に戸惑ってしまった。J.Oは首を傾げ、疑問符が付いたらしい。代わりに俺が答えた。

 

「なんて言うか、作れなくはないんだな」

「お、おい! ユウト」

 

 しかし、俺は続けて

 

「防具に関しては、多分、ギリギリ一つできるかできないか。武器に関しては、絶望的、だろうとの見方なんだな。どれくらい素材数があるか分からないけど」

「ふ〜ん。……そうなのか? ケイン」

「……」

 

 何も答えなかった。そう言うことなのだろう。そう捉えただけに、歩み寄ってからに彼の肩に、ポンッ、と軽く手を置く。

 

「なに、そう言うことなら問題無いぜ、ケイン。俺も似たようなものだからな」

「J.O……」

「珍しい? ような……」

 

 普段なら、豚頭、呼ばわりしてもおかしく無い気がしたが、今回ばかりは悩みも悩みだけあって、アバター名で応えた格好だ。

 彼は自分ごとのように語り始めた。

 

「実は俺も、素材類、そんなある訳ないんよな。なにせ、せいぜいあるとしたら、鎧玉が10個とブルファンゴ素材が少々あるくらいで、あとは、全部売り飛ばしたくらいだからさ」

「え?」

 

 え?

 

 久々に、ケインと気持ちがあったような気がした。流石に黙って見ていられず、横から割り込むような形で入る。

 彼のことだけに、冗談じゃないような気がして心配になったのだ。

 

「J.O、まさかとは思うが、それ、ホントか?」

「ああ、ホントだとも。どうもこうもファンゴ類以外、あまり興味を持てなくてよ」

 

 その言葉に、今度はケインが詮索の目を向けた。

 

「じゃ、じゃあ、まさか防具も武器も……」

「勿論だとも。このブルファンゴフェイスさえ作れば、あとはどうてことないからな」

「どうてことないって……」

 

 恐らくケインも同じ気持ちを抱いたのだろう。嫌な予感がしてならなかった。まさか、その初期装備まがいの防具で、あの轟竜に挑むんじゃないだろうかとな。

 

「なぁ、参考程度に装備見せてもらっていいかな?」

「おう、いいぜ」

 

 ケインの疑問に応える形で、J.Oは慣れた手付きで画面操作を施し、そして、反転させてみせた。嫌な予感がするだけに俺も気になり、歩み寄る。一通り目を通して見れば――

 

・武器:ブルヘッドハンマー

・頭:ブルファンゴフェイス・Lv1

・胴:チェーンメイル・Lv2

・腰:タロスメイル・Lv1

・腕:スティールアーム・Lv1

・脚:グリーンジャージ・Lv2

・装飾品:なし

 

「どんなもんよ!」

 

 最後に、自慢げに一言言い放った。

 

「……」

 

 (思わず口元が引きずってしまうのは、俺だけであろうか?)

 

 他人に答えを求めたくなった。そんな中、小凛はこちらの様子を伺うようにして尋ねてきた。

 

「なになに? なんか、凄い装備でも作ったアルカ?」

「あ、いや〜。そうでなくて……」

「ん?」

 

 俺の受け答えに首を傾げた。彼女は更に深掘りする。

 

「ちょっと見せてアルカ?」

「おぅ、いいぜ」

 

 乗り出す彼女に、J.Oは気重ねなくその初期まがいの装備とやらを見せた。見せて、見た小凛は、最初、にこやかに見つめていたが……

 

「……はいー‼︎ なんなのコレ? 豚頭、舐めてんの? 今から行くクエスト」

「なんだ、豚頭だと! 言われなくても、そんな事くらい理解しているわ。考えて考えて考えて考えて考えた末の結論だぞ。文句あるのか?」

「いや、文句も何も……」

 

 そして、ノブ公と親子揃って装備を吟味していたセツナを呼び出した。

 

「ね〜、団長! ちょっと……」

「なに? 小凛」

 

 呼ばれて、対話を打ち切ったセツナが、俺とケイン。そして、小凛とJ.Oの方へと歩み寄って来た。

 

「なんか、悩み事でもあるの?」

 

 とセツナに、小凛が

 

「これ、どう思う?」

 

 J.Oの装備画面を指差し、同時に疑問を投げかけた。不思議そうに覗き見ようとするセツナ。他方、俺とケインは、そんなやり取りを側から見守るしか打つ手がなく――

 

「パッと見、まだ、新調前のようね。これから変更するんじゃないの?」

 

 と投げかけた。のだが、小凛は、J.Oの言い分を代弁するかのように話した。

 

「いや、それが、このまま行くんだって」

 

 すると、当然ながら

 

「え? まさか〜」

 

 と信じられない、と言った反応を見せた。そんな中、側から見ていた俺とケインであったが、彼女らの話は長く続きそうに見えたと悟ったのだろう。俺もそんな心境だが、

 

「なぁ、ユウト。俺、どうしたらいいかな?」

 

 改めて相談を持ちかけて来た。そのことから、正直なところ、ケインがまだ、まともで相談して来たことに、感謝したい気分になった。

 小凛達の話を尻目に、俺もまたケインと向き合う。

 

「そうだな〜」

 

 そんなことをぼやきながら、色々と思考を張り巡らしてみた。そして、改めて今ある素材について確認してみる。

 

「どう言った素材があるか、具体的なところを知りたいかな」

「具体的な?」

「ああ、実際、見てみないと分からないからな」

「……分かった」

 

 やや躊躇いがちな素振りを見せたものの、その詳細とやらを俺に見せてきた。画面を注視しながら、ふむふむ、と考え込んでみせる。

 

 (確かに、使えそうな素材はなくはないが……)

 

 羅列された素材リストを眺めながら、そんなことを思う。ただ、残念な部分を挙げるとしたら、

 

 〝新しい防具が作れない″

 

 と言ったところだった。本当だったら、危なくてクエストに同行させるのを断るのだが……

 

「やっぱり、厳しいよな?」

 

 の問いかけに、俺は

 

「まぁ、普通ならな」

 

 と答え、

 

「ただ、お前も役に立ちたいだろう?」

 

 と逆に質問を質問で返した。トーンダウンしたような口調で、

 

「あ、ああ……」

 

 と返事してみせた。だよな〜、と思う。素材リストを見つめる俺は、より使えそうな素材を探す。

 すると、

 

「鎧玉に、ツタの葉に、粘着草か〜。……あの方法ならいけそうか」

 

 脳裏に過ぎるは、罠を駆使した戦法だった。直接攻撃に打って出ることはできずとも、この方法ならいけそうな感じはしなくもなかったからだ。

 そう思い立った。その直後である。

 

「ダメに決まっているでしょ‼︎ 何を意地になっているのさ、この変態!」

「んだとー!」

 

 変にプライドを押し通そうとするJ.Oと、仲間の命を大事にするセツナの怒号が飛び込んできたのである。

 敢えて気にしないでいようとは思ってはいたが、ここまで白熱してしまうとなれば、彼との相談なんて、これ以上は厳しいそうだった。

 

「ミルク、俺らちょっと席を外すわ。いいか?」

「ま、ま〜、いいけど……」

「んじゃ、そうさせてもらうわ。……ケイン、向こうに行こうぜ」

「あ、ああ……」

 

 俺は、この場から彼を連れ出した。

 

 

 

 

 とは言え、どこに行く宛もなかった。結局、オムラ村長宅に戻って来たのである。閑散とした空気感が漂う。

 

「誰も、いないみたいだな」

 

 第一印象から感じたことを呟いてみせた。すると、奥からカタンッと物音が。

 

「誰かいるのか?」

 

 気配を感じて呼びかけた。

 

「なんか、不気味なほど静かだな。なぁ、ユウト。……ユウト?」

 

 先に様子見しに行く俺に、ケインは不思議そうな面もちを覗かせていた。そんな彼をよそに、歩み続ける。

 そして、角を曲がった先、目の前に現れた木戸に手を当てがおうとした。その時、扉の向こうから、囁くような声が。

 思わず耳を澄ましてみれば――

 

「……今度こそ、私は。このボウガンで蹴りをつけて――」

 

 聞き覚えのある声だった。それだけに、すぐ誰なのか分かった。だが、敢えて俺は、二回ほどノックしてから、向こうの返事に応えるような形を取った。

 

 (やはりな……)

 

 とは思った。見るからに、ライトボウガン(クックアンガー)だろうとは思うが。ともかくカデットは、そのライトボウガンを丁寧に磨いている最中だった。

 

「邪魔したか?」

 

 の問いかけに、カデットは

 

「いえ」

 

 無愛想さながら、素っ気なく返してみせた。

 

「そっか」

 

 と俺も吊られて、素っ気なく返した。

 

「なにか、用でも?」

「いや、特にあんた自身には。ただ、こいつの相談相手するのに、打ってつけな場所がないかとな」

「どうも……」

 

 指名されただけなのに、なんだかケインはバツが悪そうに悪びれた様子を見せた。でも、そんなことはどうでもいいらしい。カデットは彼に関しては、特段、意に介さず仕舞いだった。

 

「そうですか……。あ、そう言えば、セツナさん達は鍛冶屋の方に行かれたんですよね? 一緒にいなかったんですか?」

「そ、それがな……」

 

 そこに関しては、カクカクシカジカ……。流れの経緯とそれによるトラブルに関する事柄を説明した。

 ふん、と鼻で笑うだけで、なるほどね〜、とそれだけ呟き納得したようだった。

 

「と、そんな訳だ。邪魔なら、別な場所でも構わないけど」

「いえ。さっき話した通り、私は構わないので」

「そっか。悪いな、ありがとうな」

「……」

 

 特に、そこに関しては、反応するまでもなかったみたいだ。

 

「と、そんな訳だ」

「い、いいのかよ? 流石の俺でも――」

 

 だが、俺は

 

「いいじゃんかよ。彼女だって、いい、と言う話だぜ。つまりは許可は取れているわけで」

 

 しかしケインは、早々に乗る気になれる訳がなく。俺とカデット、交互に目配せをし始めることに。

 だけど、それもいっ時。そもそも、悩み事があっての今だけに

 

「なんなら……」

 

 遠慮がちではあるが、俺の言葉を信じる方を選んだ。

 愛銃を手入れしながら思い馳せるカデットの傍ら、余っている椅子にそれぞれ腰を据える。

 円卓までは、流石に余ってはなかったが、そこまで必要としなかった。

 

「で、なんだけどな……」

「ああ、そうだな。ん〜、端的に提案するとなれば、後方支援くらいはできるんじゃないかとな」

「後方支援?」

「ああ。つまるところ、罠の類を設置する役目さ。さすがにティガレックスと面と向かって対峙するのは無謀だから、その方法ならリスクを極力下げることができるはずだからさ」

「罠、ね〜。……ふん、まぁ、そうなるか」

「? そうなる、って?」

「あ、いや。こっちの話。……で、罠を張るにも作戦とかいるんじゃないか? 相手の動き、ある程度読めないとダメなんだろう?」

「まぁな。ただ、その点に関してはおいおい説明するさ。それよりも、まずは防具の強化さ。今のままでは、さすがに心許ないからな」

「え? 防具強化って……。俺、そこまで素材を持ち合わせてないぞ」

「そう思うだろう。だけど、そこは大丈夫さ。素材リストの中に、鎧玉があったからな。それを使えば、ある程度はマシになるさ」

「よ、鎧玉、ね〜」

 

 その表情たるや、自分で持っておいて、まるで聞き慣れない物を指摘されたような。

 そんな、チグハグしたなんとも言えないものだった。

 

「ま、安心しろ。今はよく分からずとも、どの道、防具強化する段階において、避けて通れない代物になって来るからさ」

「そ、そうなのか……」

 

 半信半疑、そんな感じであった。

 

「それよりも、罠だ。まずはそのための道具を揃えよう。今のままでは、素材あっても、調合するための道具がないからさ」

「分かった」

 

 ――とそこで、珍しく、これよがしにとカデットが口を挟んできた。ライトボウガンを見つめながら

 

「私も、後方支援に回ってもいいですか?」

「あ、ああ。いいけど。……あ、そうだ。ついでなら、ケインにも節々でアドバイスしてくれるなら、ある程度、助かるが」

 

 だがしかし、

 

「遠慮しときます」

 

 まさに即決、断られてしまった。そして――

 

「私は、私なりに、アイツと独自で渡り歩きたいので。それに、今回のクエストは、ある意味、利害の一致、みたいなものですし」

「そ、そうか」

 

 それを聞いただけに、少なからず残念な気もした。

 

 (まぁ、入団するとは言ってなかったしな)

 

 改めて、同行する際の、彼女の判断を思い出した。

 

「さて、行くとするか」

「え? どこへ?」

「え? 何って、道具屋さ。行かないのか? ケイン」

「え? あ、ああ、そうだな」

 

 ?

 

 (何を思っていたんだろうか?)

 

 話の流れが読めていなかったケインに、俺は不思議さを抱かずにはいられなかった。

 

 

 戻って来た。

 

 その場所とは、セツナ達がいた場所――鍛冶屋だった。

 

「あ、2人とも」

 

 団員達と雑談していたセツナが、戻って来た俺とケインの存在に気づいたようだ。そんな折、ふと俺は気付く。

 

「? J.Oは?」

 

 と。すると、アイツね〜、と切り出してから

 

「あそこに……」

 

 とある場所に指を指す。示された方向には、確かに彼はいた。いたが、なんだか、1人だけ不貞腐れた態度をとっていた。

 

「なんかあったのか?」

 

 と問う俺に、セツナは

 

「それがね〜」

 

 詳しくは言わなかったが、簡単に言えば、頭以外、好きでもない装備に変えさせた。そんな感じで話してくれた。

 

「装備変更でね〜」

 

 J.Oの性格だけに、想像するに越したことはなかった。連れて行かないと言う選択肢もあったのかも知れないが……。

 そんな選択も過ったが、セツナ達が決めたこと。そこまで聞く必要性はないと思った。

 そんな中、

 

「珍しいなJ.O。装備変更なんて」

 

 とケイン。事情を知って頂けに、不貞腐れた態度で、

 

「うるっせ!」

 

 と悪態つくのも無理もなく。当然、事情を知らないケインは、なんで怒るのか理解に苦しむことになった。

 まぁ、なにわともあれ、装備変更前の装備よりかはマシになったのは良いこと。不機嫌なことはさて置き、結果オーライだと思った。

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