正直、俺は驚いた。目の前にセツナ達がいたものだから。もっと、こーう、再会するまでには時間を要するものかと思っていたから。それに、ここには見知った者達だけではない。
アメリア曰く、恐らく猟団同盟の面々だと思うかも。とにかく、100までは行かずとも、数十単位。ざっくり見積もって50人前後くらいと言ったところだろう。
広々とした合流地点では、それくらい人が集まっていた。でも、安心しただけではなかった。
どちらかと言うと、複雑な心境である。アメリア達は同盟を仕切っているプレイヤー。確か、マルグリッド、だったか。
ともかく、顔も知らない人のところへ報告しに行ってしまった。
何やらだべっている。そんな中、こちらの存在に気付いてか。小凛が声を上げた。
「あ、ユウト!」
その声を皮切りに、団員達が一斉にこちらを向く。俺は、やあやあ、と軽く手で返し、彼らの元へと歩んだ。
「生きてたんだな。ほんと、心配したぜ」
とケイン。親友が無事だったことを確かめ合うように、俺とハグして交わす。
セツナも歩み寄る。そして、ケインを強引に押し除けるや、胸の中へと飛び込み――
「バカバカバカー‼︎ 本当にバカー! てっきり、死んじゃったものかと思ったわよー!」
ポコポコ、胸元を叩くように、ありったけの想いをぶちまけ、泣きじゃくった。
「わ、悪い。心配かけて」
バツが悪そうに、謝った次第である。
「別にいいよ。生きてたんだから。ね? そう思うよね?」
セツナの問いかけに、ケイン含めて団員達が頷いた。そんな中、団の仲間でもないカデットは、そっぽを向きながら
「わ、私は別に心配なんか……」
そんな彼女に、J.Oは
「うっそだー。肩が震えてやがるだけに」
直後、
「余計なお世話です!」
ドガ!
「あぐ‼︎」
図星だったのだろうか?
これよがしに、彼――J.Oの足の爪先の甲を、思いっきり踏んづけてやった。当然ながら、彼は悶絶する羽目になったが。
「それにしても、どうやってここまで?」
ミルクが問いかけた。セツナが気を取り直して離れる中、
「ああ、同行していたんだ。猟団とな」
「同行? 猟団とにゃ?」
「まあね。名は……、グーク響奏局、だったか? マルグリッド、とか言う奴のところに行ってしまったけど」
「っ!」
何か思うところがあるのか?
カデットは、視線を逸らしたように見えた。伴って、表情も険しいように見えて――
「どうしたアルカ?」
不思議そうなものを見るように、小凛が問いかけた。けれど、
「べ、別に。何でもありません」
理由は語ろうとはせず。少し、気にはなったけども、これ以上、詮索するのは憚かれるような気がしてやめておいた。
「それより……」
と、口火を切らすように、思い切ってあることを問うてみた。
「ここにいるってことは、なにかの伝手か何かか? 偶然、居合わせたわけではないだろう?」
すると、セツナが
「あ、それね」
と言い出し。続けて
「案内してもらったのよ。途中でマルグリッドさんにも会ったりして。それに、いい話もあって」
「いい話?」
何の話だろうか?
やや気にもなったところで、背後から見知らぬ男の声が。タイミングを合わせたかのように声をかけてきた。
「そう言うことだ。悪くない話だからな」
え?
俺は咄嗟に振り向く。10数歩離れたところにて、二の腕を組んだそいつはいた。
頭部以外は黒色に染め上げたかのような、レウス装備で固めたプレイヤーが、威厳を放つかのように立っていたのである。
気圧されただけに、思わず身構えてしまったものの
「あんたは?」
なんとか言葉を絞り出してみせた。
「これは失礼。君の場合、初めましてだね。私はマルグリッド、猟団同盟――アルカディア解放軍を束ねる者だ」
こいつが……
アメリアから度々聞かされたのだけど、ようやくその人物とお目にかかれたようだ。
このままだと失礼に当たると思い、こちらとしても自分の名前くらいは名乗っておく。
「あ、いや、こちらこそ。俺はユウト、だ」
と、緊張してか、どこかぎこちなく。
だけど、当然ながら警戒心は解けそうもなく。それゆえ、身構えたまま、俺は緊張していた。
瞬時に感じたけど、この男。どーも、相当、相性的に苦手の部類に入りそう。そんな雰囲気を醸し出していた。
「二度は言わない主義だが、君にも話しておこう。端的に言って、是非、同盟に入ってみないか?」
「い、いきなりなにを?」
あまりにも唐突過ぎたので、戸惑ってしまう。
「セツナ、いい話というのは?」
「そう、猟団同盟に入ることなのよ。今後、クエストを進めておく上で、これまで以上に情報が入るから。あと、それなりに優遇もしてくれるって話で」
「入るって……」
「どうだね? 悪い話ではないだろう?」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ」
俺は混乱の渦中にいた。ある程度、表面的な話を聞いていたとは言え、入ります。なんて、口が裂けてでも言えたものじゃなかったから。
「どうしたの? 別にいいでしょう? それに、あたし達は参加する形で話を進めたしさ」
「な、なんだって⁉︎ じょ、冗談じゃない! 詳細も知らないのに」
「あれ? ダメなの?」
「当然だ! 俺は反対だ。情報があまりにも少な過ぎる。第一、優遇って何だよ?」
「あ、それね。特別契約でハウスの料金をただにしてくれるって話。食事代も込みで。ほら、今まで高い金を払ってきたから」
「そ、それだけかよ? 他には」
「そうね……」
そこで、マルグリッドから
「情報提供さ。調査団がいるから、今度、新たにクエストを攻略する際に、得られた情報を皆で共有って訳さ」
「……」
俺は迷った。確かに、それだけを聞くに当たり、メリットしかないように思える。
手探り状態だった今までとは違い、こちらの方は確実性があるように思えたから。
「ふん。どうやら、話がまとまりそうではなさそうだね。決断できたら、正式に声を掛けてくれ。そうしたら、話を進めよう。じゃ、私はこれにて」
そう言い残すや、マルグリッドは踵を返し、そのまま去ろうとした。でも、そこから数歩進んだところで、不意に思い出したかのように
「あ、そうそう。言い忘れていた」
言いながらこちらに振り向いて、言付けを残すかのように
「渡した契約書、改めて確認するようにね。それと、
〝
その意味を噛み締めておくように。それだけを伝えておくよ」
それだけを言うと、今度こそ、どこかへと去ってしまった。
「契約書? バーター?」
なんか嫌な予感しかないような。そう感じずにはいられなかった。
「ともかくにゃ。ユウトもお腹をすかしてることだし、早速、何か食べようにゃ」
ミルクが言い出し、妙に契約書やバーターの件が引っかかっていたが、俺たちは食事が取れる場所へと向かった。
「なんだよこれは‼︎」
ようやく手渡された契約書を見て、俺は第一声、声を荒げた。対して、負けじと反論するかのように、セツナも、声を大にして言い返す。
「だから言ったじゃない! 見ない方がいいって」
「そう言う問題じゃないだろう! なんだよ、軍律って? 俺を軍隊みたいなところに招きれるってか? しかも、このことを隠したままで。冗談じゃない!」
「決まった訳じゃないでしょ? あたし達の待遇は、別かもしれないし」
「別なものか? 契約書に書いてあるから、間違いないじゃないか。俺は反対だぞ! 軍隊まがいなところに入るなんか」
とうとう俺は意固地になった。なにがいい話だ! 詳しく知る限り、俺がいるような場所じゃないじゃないか。
他者への抵抗が強い性格があるだけあって、軍隊みたいな猟団同盟ほど、居心地が悪いことはなかったのだ。
手渡された契約書を、殴り返すようにセツナに返すや、俺はそっぽを向く。どうでもいいことだが、彼女のため息が聞こえたような気がした。
もうこの際、一刻も早く同盟の連中とやらが
「どうするにゃ?」
「見立てでは、この際、ユウトくんを切り捨てるしか……」
「にゃに言ってるんだにゃ! ブレット。その発言はNGだにゃ」
「っ! 失敬。つい……」
ジャムに怒られただけに、ブレットはこれ以上、話すまいとして口を塞いだようだ。
小耳に挟んだとは言え、それもNG発言だったとは言え、その方が俺にとって、ある意味、楽だった気がした。
但し、ケインも俺についてくるならばの話だが……
「団長、どうするんだよ? ユウトがあの調子だしよ」
「……あたし、どうしたら」
J.Oに問われ、セツナとしては団長とは言え、答えに困ったようだ。そんな中、ノブ公が提案してくる。
「この件は保留でいいじゃないか? まだ、決まった訳ではないし。それに、今は無事に下山することが優先だ。だから――」
「団長さんの言う通りだわ、セツナさん」
「パパ、レイナ……」
――とここに来て、
「話を一部始終訊いていたか分からないが。ユウト君、この件は保留でいいかな? 契約はまだしてない訳だし、それに――」
「無事に下山することが優先、だろう? 最後まで言わなくても分かるよ」
「じゃ、話が早い。そう言うことだ」
「ノブ公が言うなら……。だけどセツナ、俺は絶対に反対だからな」
「わ、分かったわよ。ったく〜」
彼女なりにも文句の一言や二つ、あるような感じに見えたが、敢えて俺はほじくらないでおいた。
「この件は、保留ね〜。確かに」
どことなく口を噤んでいたブレットが、納得したようだ。
他の猟団が集う場所。そして、美味そうな香りがほんわかと漂ってきそうな場所。そこで無償提供された料理とやらを、俺たちは食べることになった。
提供された物は、ご飯類を中心に、味噌汁、こんがり肉、蜂蜜スープと様々。特にこんがり肉でも、最上だと思われるような特性こんがり肉に関しては、肉汁が受け皿から溢れかえる程。この光景たるや、食欲を暴走しかねないような、美味しさを醸し出していた。
どれを取っても美味なバイキング料理に、俺を除いて楽しそうにありついていた。
特に、ケインとJ.Oに関しては、ケインがJ.Oを揶揄いブチ切らせては、恥を知らずに大はしゃぎの有様だ。
側から見て思うが、そいつらを見ていると羨ましく思えてしまう。
「食べないの? ユウト」
「ん? セツナか……」
は〜
ため息を漏らすや、肩を落とす。ポツリと発した言葉はこれだった。
「そんな気分になれるかよ」
と。
「……まだ、気にしているのね。契約書の件」
「当たり前だろう? 俺の性格上、賛同するはずがないことくらい」
「うん、そうだよね」
「じゃあ、なんで?」
勢い余って、思わず隣に座るセツナを見た。彼女は俯きながら、なにやら悩ましい限りのことがあるかのように、表情が険しくなっていて。
「天秤に掛けたの」
「天秤? 俺と、あの軍隊もどきな同盟とやらにか?」
「そう」
「は? ふざけん――」
「分かってたよ‼︎」
っ!
いきなり声を張り上げただけに、意表を突かれたかのように俺は驚き、言葉を飲み込んでしまった。
そんな俺をよそに
「……分かっていたわよ。そのくらい……」
「わ、悪かったよ。そんな急に声を上げなくたって」
何か事情でもあるのだろうか?
なんだか、皮肉ながらバツが悪そうに思えてきた。そうした中、セツナは訳を滔々と語り始める。
「とにかく情報が欲しかったの。あたし、こう見えても団長でしょ? 団員に何かあったらと思うと、居た堪れなくて」
その言葉を訊いてか。彼女の置かれた立場とやらを、改めて認識してしまう。
俺もまた、肩の力を抜くと、力なく
「……そ、そうだよな」
それだけを述べるに留めた。
「でも、もういいの。あの契約書、破棄する方向にするから」
「え? いいのか?」
「別にいいよ。嫌がっている団員がいる中で契約するのも、なんだか心苦しいし」
「……そっか」
セツナにこんな思いを抱かせるなんて。なんだか、俺が全部悪いように思えてきた。
俺が見ている中、彼女は眼前に画面を表示させる。貴重アイテム欄を選択して。それから、表示されたリストの中から、何かを探してみせる。
一連の動作。何をしようか直ぐに分かっていた。契約書の削除。これ以外に考えられないだけに。
案の定、契約書を表示して――。それでいて、
「……」
相当迷っているのか?
ゴミ箱アイコンに触れるか触れないか。消すか消さないか。判断を決めあぐねてしまっていた。
判断がつかない状況。――と、ここに来て、どこからともなく、聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「契約書を破棄するなら、共に下山はできないね」
「え?」
っ!
聞き覚えのある声に、俺はそちらを向く。
「あ、あんたは!」
「マルグリットさん⁉︎」
いつの間にかではあったが、そこには先程、軽く挨拶を交わした程度しか面識がなかった狩人――マルグリットがいた。
いきなり現れたことに、一時的に取り乱してしまう。そんな中を、彼は続けて一言添える。
「おっと、驚かせてしまったか」
と。
「驚いたわよ! いきなり背後から、それも気配がない中で声をかけてくるなんて」
「それはすまない」
「……」
一回二回、咳払いをして、気を取り直した俺は、さっきの言葉の意味を問う。
「それはともかく、どう言う意味なんだ? 共に下山出来ないって」
すると、マルグリットの表情に真剣さが滲み出
「そのままの意味だ。バーターが成立しないのだったら、協力する義理がないからね」
「は? バーター? ……っ! もしかして、契約書のことか?」
「ご明察」
「なんだとぉ!」
人の弱みに漬け込みやがってからに。憤りが沸々湧き出そうとした。――と、ここに来て、セツナが反論。
「話が違うじゃない! 判断はあたし達で決めるから、と言う話でしょ? まだ、バーターの話ではないはず」
すると、意外なことに
「そうだね」
あっさりと認めてしまう。甚だ疑問に思えた俺は、
「じゃ、なんでだよ?」
突っかかった。マルグリットは翻ってからに、俺とセツナに背を向けては、訳のわからない哲学を持ち出してきやがった。
「この世に、バーターで成り立たない物はない」
と。思わず俺は、
「は?」
首を傾げた。
「契約書を渡すと共に〝バーター″についても考えておくように。私はそう言ったはずだが」
その言葉を訊いてからに、俺は思い返してみた。そして、少し間を置いてからに
「そう言うことか」
確かに言っていた、それも後付けするようにして。その瞬間、符合するかのように納得した。
「どうやら思い出したようだね」
「ああ、思い出したよ、よーくね」
「なら、現状を鑑みれば、答えは出てくるはずだが?」
そこでセツナが
「ちょっと、卑怯よ! あたし達には確かに貸しがあるけど、こんな話があったなんて訊いてないわ」
「貸し? ……あ〜、あの
「つまるところ、貸しの件とは関係ない?」
「そうだね。あくまで私達と契約するかしないか? その一点だ」
「なら、俺の答えは簡単だ。契約書にはサインしない。それだけだ。あんたみたいな人がいる同盟なんか、反吐が出るくらい入ってたまるか」
俺は吐き捨てるかのように、毒ついてみせた。
「そうか。それは残念だ。……で、どうするんだ? 団長さんは」
俺は諭すようにセツナに問いかける。
「セツナも決まりだろう? こんな野郎のところなんて」
しかし、当の彼女は迷っていたらしい。すぐには返事を返さないでいた。何かを決めあぐねている。そんな感じを醸し出しているように見えたから。
「おいおい、セツナ」
「……」
「ふん、どうやら現状を知っているだけに、返事が返せないみたいだね」
「ご、ごめん、ユウト。今、思い返せば、どの道、選択肢はなかったよ」
「おい! なんだよ、それ。ついさっきまで、俺の気持ちを汲み取ってからに、契約書を破棄する方向、だったんじゃないのか? 話が違うぞ‼︎」
当然のように文句を言われたからなのか?
それとも、
別の意味があったのか?
セツナは、何かを躊躇うように言葉を詰まらせていた。とは言え、マルグリットはと言うと、セツナが抱えている問題を見抜いていた模様。ムカつくように、ややにんまりした笑みを浮かべたように見えた。
「ま、無理もないさ。どうしても、結論が出ないと言うのなら。契約書の件とは代わりに、別の選択肢を与えるよ。その課題を独力でクリアするかどうか? それ次第で、決めることにしようか」
「……別の課題?」
気になったのか?
セツナが確認するように問うた。一方、ムカついてはいたものの、俺も気になった。
「そうだ、別の課題。この件を飲んでくれるなら、下山に協力してもいい。改めて言うが、私は、バーターが成り立たないものは、ありえない。そ言う主義だからね」
主義、主義かよ。身勝手な価値観を、
一番嫌う言葉に、苦虫を噛んだような思いがした。けど、なんとか感情を押し殺し、冷静を取り繕ってみせた。
ここで事を構えたところで、セツナの立場上のことを鑑みて、嫌な予感がしなくもなかったから。
「で、その課題と言うのは?」
男は、俺とセツナを嗜めるかのように見つめ、それから一拍置いて答える。
「リオレウスの討伐、これでどうだ? 勿論、クエストはそちらで決めていいが」
「え? リオレウス?」
モンスター名を訊いて、やや動揺するセツナ。
「いや、かい?」
「それは……」
しかし、俺は断言してみせる。
「やってやろうじゃないか! そんなモンスターの討伐くらい」
「ちょ、ユウト⁉︎」
「な、なんだ?」
うっかり声を荒げてしまったのか。距離が離れていたはずのケイン達にも聞こえてしまい、ケインの一言を機に注目を浴びることになった。
しかし、俺は気にも留めない。挑戦状を突き付けられたようなものだから。それに、モンスターハンターにかけては、プライドじみたこともあって、この課題を蹴る気にはなれなかったのだ。
「おっと! 強気だね」
前のめりすぎたのか?
マルグリットは意外性を見たかのように驚いてみせた。一方、団長だけに、当然ながらセツナは心配したようだ。
裾を引っ張って、発言の撤回を求めようとする。けれど、一回、啖呵を切ったのだ。
お構いなしに
「俺は本気だ」
言い切ってみせた。そんな俺に、マルグリットは
「だが、彼女はそうでないみたいだがね」
隣にいるセツナに目線を向けてみせた。
「気持ちは分かるけど、いくらなんでも無理。あのリオレウスだよ。あたしの身にもなってよ」
堪らず気持ちを声に出してみせた。俺は返答に戸惑う。彼女の気持ちが分かっていただけに。
しかし、自分のプライドも許せないこともあって。
「だとさ。どうするんだ?」
「……」
視線が泳ぐ。プライドが許せない。しかしその一方で、セツナの心境も分からんわけではないだけに。
そんな板挟みが、言葉を躊躇わせるのだ。そんな時に、横槍のように、J.Oが割り込んできた。
「さっきから聞いていればよ。舐めらたものじゃないか? うちの団」
「J.O?」
セツナの声に反応するように、思わず俺も彼を見て。そのJ.Oは、自信たっぷりに意気込んでみせる。
「やってやろうじゃないか? リオレウスだっけか? そんなどこの馬の骨か知らないモンスターくらい、一発でぶちのめしてやるぜ」
「ほほぉおー」
仲間の威勢に、面を食らったかのように、マルグリットは驚いた。
「ちょ、J.O⁉︎」
セツナもまた、面を食らったようだ。
「ユウトも、啖呵切ったんだろう? だったら答えは一つじゃないか」
「お、おおう。そ、そうだ」
思わず彼の威勢に気圧されてしまったものの、俺も言い出した口。同調するように、勢いに乗ってみせた。
「2人とも、あたしの身にもなってよ‼︎」
「いいじゃないかよ、団長さん。舐めらたままじゃ、団の存在意義、ないのと同じだぜ」
「いや、存在意義、って問題じゃないけど」
「セツナ。こいつの話からして、選択肢はないんだ。やるしかない」
「……でも〜」
やはり、何かを躊躇わせているようだ。即答はできそうもないみたい。それを察したかのように、マルグリットは
「君が、私の提示した条件以外の選択肢が取れない理由。なんとなく、分かったような気がしたよ」
「っ!」
「お、その反応、図星のようだね」
「セツナ? やっぱり……」
どこか躊躇う様子から、何かを秘めていたように見えていたが。マルグリットの指摘に図星の様子だけに、それが確信へと変わった。
マルグリットだけでなく、俺とJ.O、そして、気になって歩みって来ていたケイン達も、セツナを見守る中、胸の内を吐露するように訳を話し始めた。
「不甲斐ないから隠しておきたかったけど、この際、告白するわ。……クシャルダオラの動向が、ね」
「クシャルの動向? まさか、それを気にして――」
「そうよ‼︎ 見たでしょ? あの脅威に、また遭遇したとなれば、今度こそ――」
「は〜、そう言うことか」
セツナの心境を知って、俺はようやく腑に落ちた。確かに、クシャルダオラは脅威だ。それも、神出鬼没となれば尚更。
あの時は運良く生還できたが、次は無事に生還できるか分からない。最悪、次遭遇したとなれば、ここにいる仲間の誰が犠牲になるか、分かったものではないだけに。
「ま、私は提示しただけ。改めて言うが、私はバーターが成り立たないものは、協力しない主義だからね。さ、どうする?」
「くっそー、弱みに漬け込みやがって」
俺の。いや、この場合、セツナもなのか? 2人の気持ちを代弁するかのように、J.Oが悔しさを滲ませてみせた。
俺は、セツナと自分の気持ち。2つを天秤にかける。現実的に考えれば、自ずとマルグリット達の傘下に入ることを条件に、無事にフラヒヤ山脈の下山。
これを選択するのが、正しい選択。そう、正しい選択なのだ。けれど……
「分かった。そうとなれば、ここは
「分かったわ。リオレウスを討伐することが条件で、それを飲めば下山に協力してくれるのね」
「え、ちょ、セツナ?」
さすがにこれは驚きを隠せなかった。セツナが、そんな決断をするなんて、意外すぎたから。
まさか、気でも触れたのか? 或いは、ヤケになったのか?
そう勘繰ってしまいかねないだけに。しかし、セツナは正気だった。
「分かってる、分かっているわよ。でも、そうでないと、ユウトが嫌いな猟団同盟に、約束として入る羽目になるでしょ? 仕方ないじゃん」
「あ、いや、俺は……」
バツが悪い、悪すぎる。こうなるんだったら、セツナの心境を……。いや、違う。俺が最初から我慢すれば良かったのだ。
間違いない。それだ、そうするべきだったのだ。
「いいのか?」
とマルグリット。セツナの決断は変わらない様子。首を立てに振ってみせた。
蒼天の翼の面々が団欒を取る位置から離れた場所、そこにカデットはいた。彼女の見つめる先、そこにはアメリア達、グーク響奏局の面々がいて、アメリア達は仲間同士で何かを語り合っている様子が伺えた。
本当は戻りたい気持ちではあった。なにせ、自分が所属する猟団だから。けれど、どうにも顔を合わせる感じではない。
ドドブランコの調査だったとは言え、自分の責任で、団員達を犠牲にさせてしまっただけに、どの顔をして再会すれば良いのか分からないのである。
それに、サヤカとエルザの姿がいない。2人の安否がまだ不明確なこともあり、2人がどうなったのか分からない状況の中で自分だけがのうのうと再会するなんて、とても出来たものじゃなかったのだ。
そのことだけに、後ろめたい気持ちでいっぱい。こうして、見つめているだけでも、
やがて、ため息と共に肩を落とすと、アメリア達から視線を逸らす。逸らしてからに、
「サヤカ、エルザ。2人はどこに……」
虚空の彼方に呟く。そんな中で、今の心境と言えば、
〝どこかで生きているはず″
そう信じたいところではあった。
やがて、別な方へと視線を向けると、そこにはマルグリットとセツナ、それにユウトとそれ以外の団員達が何やら口論しているのが伺えて。
ここからでは聞き取れないが、なにやら真剣そうに話し合っている様子が垣間見れて。なんとなくだが、話しかけづらい様子を醸し出していた。
だけど、マルグリットさんなら、確かめる価値はありそう。そう感じずにはいられなかった。
正直、こう言ってはなんだが、アメリア達よりかは話しかけやすい。そんな風に思えた。
やがて、彼らの話の決着がついた頃、カデットは重たい腰を上げる。セツナ、ユウト達から離れていくところを見計らって、マルグリットの方へと歩み寄った。
そして、第一声――
「あの〜、すみません」
「ん? 君は――」
カデットは2人の行方について、早速、問い掛けてみた。僅かばかりでもいい。
とにかく行方に関する情報が欲しかっただけに。そんな気持ちを秘めながら――。