モンスターハンターアルカディア   作:ぷにぷに狸

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2章:新たな出会い・2話

 公開祭での出来事から1週間後、ランポス討伐クエスト〝青き鳥竜種の群れ〞を終えた俺とケインは、揃って加工屋を訪れていた。というのも、今後、クエストを進めていく上で何が必要になっていくのか見定めるためである。とはいえ、武具や防具、おまけに護石の類は山のようにとはいいすぎだが、とにかくその種類はありすぎるので、何がいいのか円卓を挟んで悩みながら話し合っていた。

 木製の円卓に肘おいて頭を抱えるケイン。俺からのアドバイスは聞いていたものの、結局、理解はしていないみたいだった。ドンドルマの喧騒を呆然と聞きながらなのか、ケインはえーととか、あーととかいいながら、何が言いたいのか分からずじまいであやふやな返事を繰り返すのみでいた。

 

「とまあ、武具、防具、護石については以上だな。……って、ケイン聞いているのか?」

 

 説明を終える俺をよそに、ケインはちんぷんかんぷんな表情をぼんやりとしながら浮かべていた。俺はったくしょうがねえと思い、手っ取り早く自分のステータス画面をケインに見せてやるべく、ウィンドウ画面を開く。――とそこで、ケインが話しかけてきた。

 

「結局よ。おめぇさんが詳しく説明してくれるのはありがたいけどよ。ド素人の俺にとっては、理解しがたいぜ。ただ、これだけは分かった気がするな。防具に関して言えば、防御力が高ければ高いほどいいと。そして、武器に関しては、攻撃力が高ければ高いほどいいと。こんな具合にな」

 

 そう言われて、操作の手が止まる俺。

 

「う、う~ん。まあ、極端なこと言えばそうなるけども……」

 

 伝わったと言えば伝わったのだが、なんだか、妙なところだよなあ。と心の中でボヤく。防御力が高ければ高いほどモンスターから受けるダメージは減少するし、攻撃力だって高ければ高いほどモンスターに与えるダメージは高くなる。確かに極論から言えばそうなるのだ。答えは単純なのだ。でも……。どこか納得がいかないような。そんな感じがうずまいていた。

 

「何だよユウト、その顔は。なんだか腑に落ちないぜ、って表情をしているぜ」

 

 腑に落ちないも何も。本当はもっと奥深さがあって、そのことを伝えたかったのだ。でも、まあいいっか。ケインくらいのルーキーだったらそのくらいの理解でも十分か。ここは開き直ってみることにする。

 

「あ、いや、なんでもないんだ。でもま、ともかく、参考程度に俺のステータス画面でも見せてやるよ」

 

 そう付け加え、ぱっぱと操作して画面を反転させてみせる。ステータス画面にはこう書いてあった。多少省略してあるが

 

プレイヤー名:ユウト

 HR:25

 

 所持金:116000z

 

 総合防御力:39

 

☛装備一覧:防具 

 ハンターヘルム    ……  Lv3

 ハンターメイル    ……  Lv1

 ハンターアーム    ……  Lv2

 ハンターフォールド  ……  Lv1

 ハンターグリーヴ   ……  Lv2

 

 装備一覧:武器

     :

     :

 

とこんな感じに。その他にも色々と詳細は載ってはいるが、ケインとしては、特に防具関連の方に目が止まったんだろうか。指でその一覧をなぞりだす。しかもそれに伴って、なにやらぶつぶつと小言を言っているようだ。俺は黙って見つめる。

 

「へぇ~」

 

何やら関心するケイン。ちっとは装備の重要性でも分かってもらえたんだろうか。良かった良かったと思う。が

 

「やっぱ、ちーともわかんねぇや」

「あらっ」

 

 とんだ期待外れの返答に俺はがくっと一瞬だけ、体をかしげてしまった。でも、そんな中でもケインは、気になった箇所があったらしく、その口を開く。

 

「この〝Lv〞ってなんだ?  ところどころ〝2〞とか〝3〞とかあるみたいだけど」

「ん?」

 

 と俺の方へと画面を反転させて確認。

 

「ああ、これか」

 

と言い、再度、ケインの方へとまた戻す。今度は指で示しながら解説を加えて。

 

「これは〝防具レベル〞って言うんだ」

「防具レベル?」

 

 疑問符を頭に載せたような感じで、彼は首をかしげる。

 

「そう、防具レベル。基本的にすべての防具は購入当初、レベル1に設定されているんだ。そんでもって、防具一つ一つにはわずかながらでも防御力ってのがあってな。それで――」

 

 とここで、ケインは〝ちょっと待った〞を入れてくる。何だろうかと思い、俺は口を一端閉ざす。

 

「ということはよ、つまり、このレベルは防具の強度レベルってことなのか?」

「そうだけど」

「じゃじゃ、つまりお前さんはハンターシリーズを極めているってことなのか」

「まあ、そういうわけでは……」

 

 言葉を詰まらす俺。極めているわけではないが、ある程度強化していることは確かではあった。

 

「じゃあなんだ? やっぱあれか」

「あれとは?」

「そう……なんというか。あれだあれ。そう、次なるクエストに向けての一時的な強化って感じの」

「う~ん、まあ、当たっていると言えばそうなるかな」

 

 ケインの言ったことは確かに的を射ていた。確かに次なるクエストのためにも防具強化はしていたのである。でも、いくら防具強化とは言え、ハンターシリーズの各レベルをMAXまで強化する気なんてさらさらなかった。 

 ケインはふーんと鼻で納得すると、自分もウィンドウ画面を開いた。きっと自分のステータスチェックに入ったのだろう。

 

「防具強化ねえ……」

 

 俺はここぞとばかりに言って見せた。

 

「今度はケインの番だぞ。俺のステータス画面見せたんだからさ」

 

 彼はしばし悩むしぐさを見せると、しゃあねえなとか言って、画面を反転させる。

 

「どーれ……」

 

 ステータス詳細を吟味し出す俺。ケインは照れ臭く

 

「あまりじろじろと見るなよ」

「まあ、いいじゃないか。……ふ~ん、なるほどね」

 

 色々と項目を確認してみるが、一つだけ言えるとしたら、スキル〝自動マーキング″は発動しているものの総合的な防御力が全体的に低く見えた。そして、〝装備一覧:武器〞の欄でも切れ味があまり芳しくないことも見てとれた。はっきり言って、購入当初のまま、ということであった。

 

「なるほどねえって、なんかわかったのかよ」とケイン。

「まあね。ある程度、方針が定まったかなってところだな」

「方針って……。ともかくだっ。俺も俺で結構考えてみたんだぜ。素人なりにな」

 

 ムキになるケインに

 

「分かった分かったって」

 

 とその場を取り繕う。というのも、偶然なのかはさておき、スキル発動している点を考えられることから、ある程度は彼なりに考えたんだろうなあと窺わせる節があったからだ。シリーズが滅茶苦茶ではなく、統一していること。そのことは評価しようと思う。

 堪えかねたケインは、画面を反転させるとともに

 

「もうおしまい。あまり見てもらいたくねえからな」

「はいはい」

「ともかくだ。その方針とやら。どういう風に決まったのか教えて貰おうかね」と偉そうに腕を組むケイン。俺はこう提示する。

「まあ、方針つっても、防具と武具の強化ってのがメインだけどな」

「装備強化……って、結局それかよ」

 

 それには俺も反論する。

 

「おいおい、〝それかよー〞はないだろう? 結構大事なことなんだし」

「ん~まあ……」

 

 素人であったケインからすれば反論はできなかったらしく、ここで頭を掻き押し黙ってしまう。――様に見えたが

 

「そうであるともいえるし、そうでないとも言えるし……」

 

 何とも言えないような意見を述べる。

 

「ともかくだ!! そうなんだよケイン。お前には分かりずらいかもしれないけどよ。防具と武器の強化は今後生き残りつつクエスト進める上で重要なんだ。ついでに言うと、護石も重要になってくるけど、まだお前には早すぎるから言わないだけだがな」

 

 そこまで言われしばし黙り込んだ後、ケインはようやく結論を出す。

 

「う~ん、わかった。わかったよユウト。そこまで言うなら、俺もそれに従うよ」

 

 渋々と言った感じでもあった。無理もない。装備関連はまったくのド素人でもあったからだ。ここは素直にうなずくしかない。そう考えたのだろう。

 

「ただし、だ」

 

 ここで条件をつけてくる。

 

「アドバイスしてくれるんなら、きちんと責任とれよ」

「責任って……」

 

 さすがにこれには苦笑いした。責任とれよと言われても、こればかしは千差万別の考え方があって。これが正しいという答え的な物は存在しないからだ。端的にいえば、〝自己責任〞となってしまうが。

 

「そうだ、責任だ。今後クエストを進めていく上でこっちは命をかけなきゃならないんだからな」

「それを言うなら、こっちだって同じ条件さ。それに装備関連云々については、ある程度は教えるけど、そこから先はそっちの自己責任でやってくれよな」

「そ、そんな……。俺、ユウトの指示なしじゃ、この先どうすればいいのか……」

 

 言われたことにがくりと肩を落とすケイン。その台詞から、何から何まで頼りっきりになろうとしていたみたいだった。正直、確かに命をかけたクエスト攻略となるかもしれないが、頼りっきりというのはちょっと甘えすぎなんじゃないのかと思った。

けれど、そんな中、俺はこう付け加えておいた。助け舟として。

 

「でも、まあ……、しばらくはアドバイスしてやるよ。なにせモンハンにかけては、俺の方が詳しいからな」

 

 言われて元気が出るケイン。

 

「あ、ありがとよ、ユウト」

「おいおい、勘違いするなよ。ある程度はアドバイスしてやると言う意味で……」

「それでもさ。俺にとっては嬉しいことだぜ」

「ふ~ん。まあ、それでいいなら」

 

 鼻で答えて、少なからずケインの言い分に納得して見せた。そして、話の路線を戻してこう切り出す。

 

「とりあえずだな。話を戻すが、とにかくケインに重要なのは防具と武器の強化。これだけは言っておく。さあて――」

 

 話がまとまったと思った俺は、重い腰を上げて背筋を伸ばすと、加工屋の主人の方へクイッと親指を立てる。

 

「早速行こうぜ、ケイン」

「あ、ああ。そうだな」

 

とつられてケインも立つ。その様は、どこか嬉しそうな表情を浮かばせていた。多分、俺がしばらくはアドバイスしてやるからなとか言ったのが嬉しかったのだと思う。

 ゆったりとした足取りでふとっちょの店主へと近づくと、その店主は軽く挨拶をしてきた。

 

「あいよー」

 

 ややとこちらも挨拶を交わし、そして、ウィンドウ画面を開く。ササッと操作して、新たに表示された〝購買〞 を選択。画面にて、武具・防具・装備強化・護石と一覧となって表示されたので、ケインにも見せるような形で今の画面を拡大表示させてみた。

 

「まずは強化からってことで」

 

と項目〝装備強化・武器〞を選択。つづいて、プレイヤー選択をケインに指定させた。直後、一覧表示がなされ、そのページ数が5ページほど。そんでもって作れそうなものは、沢山ある割にはほぼ皆無に等しかった。

 

「全部黒表示だけど、これって」とケイン。

「ああ、必要素材が揃ってなく強化できないって意味だ。こりゃあ、全然だな……」

 

 どれもこれも素材が足りなくてできないものばかり。そんななか、俺が目にしたものは、現在装備している鉄刀の項目。というのも、素材は足りていないことは確かなのだが、すぐに集められそうな素材で構成されていたからだ。素材名は、鉄鉱石。必要数が16個と比較的少なめであった。

 

「どーも、まずは現状の武器から強化を図った方が良さげだな」

「現状の武器? 鉄刀からってことか?」

「そうだな。こいつを強化すれば鉄刀【楔】って言って、切れ味と攻撃力が一段と高まった武器になるからな」

「鉄刀【楔】か……。イイ感じの武器じゃねえか」

「お前の強化後の武器だ。多分、それなりに強くなると思うよ」

「なら、それに決定だな」

 

 と早くも納得するケイン。

 

「で、その鉄刀【楔】とかいう武器はどんな感じなんだ? 見た目は」

「それなら」

 

 とレビューを表示させる。ケインはレビューを見て何やら吟味する感じで目を細めると、

 

「ふ~ん、まずまずってとこだな」

 

 と返すのみ。

 俺としては、その程度の武器のレビューなんてどうでもよかったが……。

 

「じゃ、次防具いくか?」

「ああ」

 

 画面を一つ前へと戻し、今度は装備強化・防具で選択し画面を切り替える。これもまた、星の数ほどというのは極端だが、それに近いような沢山の防具の種類があった。しかしこれもまた、黒表示となっており、使えるような防具は現状、なさそうであった。

 

「うわあ~。これもまた、色々あるんだな~……ん? これって」

 

 一覧を眺めるケインが反応を見せる。

 

「この防具って……あいつの」

 

 俺もまたケインが指定した防具を見て苦笑いする。その防具とは、モスシリーズの防具。そう、あいつ――J.Oが装備していた防具のことであった。

 

「素材見るからに、こりゃあひどいなあ……。どんだけモスやブルファンゴが好きなんだよって言いたくなるほどだよ」

「確かに……」

 

 そう答える訳は、必要素材において、ブルファンゴの素材やらモスの素材やらがこれでもかってほどに必要だったからである。具体的には、一つの防具だけ見ても、モスの苔×50、モスの舌×100、モスの毛皮×100。ブルファンゴの素材の方も見てもそれ相応の素材を必要としているのが窺わされた。

 全身モスシリーズで埋め尽くしていたあいつのこと。モスに対する依存心、いや中毒と言った方がいいのか。ともかく、すさまじい執念があることを改めて思い知ることとなった。――とそこで、ケインの方から話を切り替えてきた。

 

「でよ。防具の方はどうなんだ?」

 

 俺は我に返り

 

「あ、ああ。そうだな。えーとだな……」

 

 素早く吟味し、やや慌ててこう答える。

 

「ま、とにかく現状装備の強化で行こうか」

「現状装備って」

 

 苦笑いするケイン。なにやら不安な様子。

 

「そうだ。現状装備だ。素材も全然の中、新たな装備を作るのは難儀だろうからさ。」

「ふ~ん」

「な、なんだよ」

「いやあ、何と言うかさ。モンハン詳しい奴(特にユウトのこと)でもさ、考えには限界があるんだなあと思ってさ」

「なんだよそれ」

 

 目線を細めているケインに、俺はどこかしら気に食わなそうな表情を作る。しかし、ケインは詳しいことは明かさず

 

「ま、別に気にするこたあねよ」

 

 とだけ返すのみだった。俺はそう言われ

 

「逆に気になるじゃないか。なんだか、もっと考えを練り直せって言ってるみたいで」

 

 ところがケインは

 

「無理にとは言っていないじゃないか。ただ、意外だなあと思っただけよ」

 

 肩を鎮める俺。そう言われてそれ以上詮索する気も失せてしまう。あ~あ、晃ならもっといい案が浮かんだのかもなあ。と自分の無知さを嘆くのだった。というのも、晃もまた、モンハンファンであったからである。恐らく俺以上に詳しいんじゃないのかなあというくらいにだ。

 肩を鎮める俺にケインは心配になって声をかけてくる。

 

「どうしたんだ? そんなに落ち込んで」

「いやあ、なんでもないよ」

 

 気持ちを切り替えて

 

「とりあえずだ。今、足りないのは鉄鉱石だと思うから、それに見合ったクエストを選びに行こうぜ。鉄鉱石さえ足りてくれば、武器や防具が一段と強化できるからさ」

「ふ~ん、そうだな」

 

 画面を閉じ加工屋を後にすると、受付嬢のところまで歩み出す。

 何人か列に並んでいたが、すぐに順番が回ってきた。てか、並んでいる最中に思ったことなんだか、本当のところ並ぶ必要なんてあったのだろうか? ウィンドウ画面からクエストを選択し、受付嬢に送信さえずれば、別に並ばなくても勝手にクエスト一覧が出てくる仕様。それを思い出した俺は、無駄足を踏んでしまったなあと阿附らしく思っていた。――で、クエストを選択している最中なんだけど、とにかく10~15個ほどクエストがあり、どれにしようか迷っている最中でもあった。

 ケインがきょろきょろとクエスト一覧を眺めている中、俺は妥当な物を見つけ出す。

 

「これがいいんじゃないか?」

「森丘に眠る鉄鉱石? そのまんまで分かりやすそうだな」

 

 と共感するケイン。

 

「じゃあ、これにするか」

 

 とあっさり決めてしまう。――とそこで、受付嬢からなにやらメールが届いてくる。〝NEW〞とついたそのメール。俺は開封する。すると、

 

〝只今そのクエストでは、リオレイアの目撃情報が入っています。目撃した際は、速やかな撤退をお勧めします〞

 

 といった、簡単な忠告メールが記載されていた。

 

「リオレイアだって? どんなモンスターかは知らねえけどよ。ともかくそいつが出ても、ユウトがいるから大丈夫そうだな」

 

 簡単に言ってくれるぜ。リオレイアと全く遭遇していないからそんなことが言えるんだろう。心の中で文句を垂れ、肩を落としてため息を零す。

 

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