モンスターハンターアルカディア   作:ぷにぷに狸

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2章:新たな出会い・5話

 仄かな明かりにやや薄暗さが合い混じり、大衆でにぎわうドンドルマの酒場では、どことなく酒臭い匂いが漂っていた。また、それに伴って、見るからにごっつい重装備をしたハンターから軽装備をしたハンター。そして、趣向を凝らしたハンターまでいたりと様々なハンターでにぎわっていた。見渡す限り、大多数がおっさん風情のハンターばかりであり、サユリみたいな幼い少女がいたらたちまち絡まれそうな予感までしてくる感じではあった。そこで、ケインはサユリと手をつないで歩き、その後ろを俺は護るような格好で歩いていくこととなった。堂々とした足取りでなく、いたって普通な足取りで歩いていたわけであるのだが、肝心のケインは雰囲気に圧倒されビビりがちに。それにつられて、サユリの方もどことなく不安そうな感じですっかりいずくまってしまっていた。

 向かう先はギルドマスターのところ。なのだが、なにせ酒場自体がだだっ広いせいなのか、やけに遠く感じてやまない。不安がっている2人を見かねた俺は、特にケインの方へと目をやる。

 

「おいおい、大丈夫かよ」

 

 しかしケインは、ビビりながらでも強気で答える。

 

「へ、へへへ。だ、大丈夫さ。このくらい」

「そうかよ」

 

 両脚をブルブルと震わせて答えるその様は、全然大丈夫そうには見えなかった。でも、ケインがそう言うなら、これ以上何もいうことはなかった。一方、サユリの方は、ケインの震える両脚見るや単刀直入にズバッと言ってきた。

 

「おじさん、私よりも怖がっているように見える……」

「しー、それを言うなよな」

 

 それは秘密事項だと言わんばかりに、口元に人差し指を立てる。見かねた俺は

 

「何がし―だ。全然、駄目じゃねーかよ」

 

 とぼそり。それを偶然聞こえていたのか、ケインは

 

「おいっ、だめとか言うなよな! これでも俺はこの場でのあり方についてちゃんとしているつもりなんだぜ」

「どうだかなあ~。それに、見た通り、両脚、すっかり震えているしよ」

「ば、ばかっ。これは恐くて震えているんじゃねえ。武者ぶるいだ。武者ぶるい」

 

 何の武者震いなんだか。とか呆れてしまう俺。――とそこで、酔っ払いすぎた巨漢のハンターが、テーブルに片足をドスンッと乗せ、堂々と大声で言い放った。

 

「我こそ! 最強の猟団、グリックス兵団!! どんなモンスターだろうとこの拳で一撃よぉ!!」

 

 それを聞いてか、ケインは

 

「ひぃー!!」

 

 とかいって、すっかり縮こまってしまった。やっぱりビビっているじゃんかよ。心の中で、仕方なしに俺は呟くのだった。

 

「はあ~、しょうがねえな。俺一人で彼女 (サユリ)の捜索依頼出してくるから、2人して外出ていろよな」

 

 そう言われ、自身の状況もあってかケインは気落ちする。

 

「すまねえ、ユウト。行こうぜ、サユリ」

 

 サユリは無言で頷く。

 その後、俺はギルドマスターに捜索依頼してもらうよう頼み込むこととなった。ギルドマスターというのは、もちろんシステム上NPCなのだが、容姿からして小柄で髭を伸ばしたお爺さんであった。〝竜人〞そう言われる種族の者であり、その知識は公式では豊富らしいとのこと。きっと救済措置(ハンターズギルドにサユリを預け、あとのことは面倒を見てくれるだろうよという意味で)はしてくれるだろうと俺は少なからず希望を抱いた。とは言え、何するにしても、対応策がハンターズギルドからなされるまでの間、当分、3人でということになるのだが、なにはともあれ俺は何食わぬ顔で外で待つ二人の元へと戻ってきた。

 

「っで、どうだった?」

 

 ケインが尋ねる。

 

「どうだったって。事務手続きでしかないさ。そんなの」

「そうか~」

「そうか~、ってそれだけかよ」

「それだけって。他に何か言えってか」

「いや、そういうわけではなく……」

 

 そこで、言い合っている俺たちに割り込むような形でサユリが口を挟んでくる。

 

「これからどうするの?」

 

 俺とケインは彼女の方へと同時に振り向き、再びケインと向き直る。

 

「どうするって……いわれてもなあ」

 

 確かに。これからどうするにも、本当のところ当てがなかった。情報が出されるまでの間、簡単なクエストでもするか、しか思い当たる節がないわけであり、かといって、狩友でもない彼女とのクエスト同行なんて正直なところやりたくもなかった。

 

「いい案、ないのか? ユウト」

 

 振られて

 

「いい案って言われても……」

 

 ここは仕方ないのだろうか。このまま待っているというのも手なのだが、どうにも2人には言い出しずらいし……。そんななか、何も言わずどうしようか迷う俺の前で、ケインは提案する。

 

「だったらさ。クエスト、なにかやってこねーか。こうして待っていても、時間、もったいないし」

「あ、ああ……。そ、それはちょっと――」

 

 ちょっと待ってくれよ、と言いきる前に、サユリが答える。

 

「私はそれでいいです」

 

 唐突に振り向かれて、思わず

 

「あ、ああ。うう~ん」

 

 すかさず

 

「いいだろう? なあユウト?」

 

 なんて答えようか思案する間に、

 

「ほらっ。いいってさ」

 

 と勝手にきめてしまう。俺は慌てて

 

「お、おい!!」

 

 しかし時すでに遅く

 

「うん」

 

 サユリは勝手に頷くは、ケインは勝手に方針を決めてしまうはで、俺の意見を挟む余地などなくなっていた。俺は渋々深くため息をこぼすのだった。――とそんなわけで、俺たち3人はギルドからの情報提供がなされるまでの間、どこか簡単なクエストを、ケインの勝手な判断の下、行くこととなった。とはいえ、どこに行くにしろ、サユリの装備と言い技量と言い、そういった細々した所を見てから決めていきたいとこであった。なにせ、一回のキャンプ送りがゲームオーバーであり、その意味するところは現実での〝死〞。もし、早まって難度の高いクエストに挑もうものなら、命の保証はないからだった。

 けれど、サユリを連れてのクエスト攻略には気が引けていたこともあり、頭に手を当てつつ俺は どことなくやる気のなさ全開で尋ねる。

 

「ったく、しっかたねえーなあ。じゃあ早速、装備見せてもらってもいいか」

 

 そう言われてサユリは軽く頷くと、ウィンドウ画面を出すと自分のステータスを見せる。あまりにも躊躇いなさ過ぎていたこともあり、俺は思わず、こいつ、ケインと違って自分のステータス見せるのになんの躊躇いもないんだな。とか思ってしまった。思いつつも、ぱっと見て装備が所々未装備であることにすぐ気付く。ゆえに、総合的な防御力もかなり低めであった。

 吟味していく中で、サユリはやや上目使いになって「どう?」と聞いてくる。

 潤いのまなざしを受けて、思うわず〝うう〞と唸ってしまう。

 

「ど、どうって言われてもなあ」

 

 答えるのに困ってしまう。なにせ何かを期待しているようなオーラを発している。ややしどろもどろになりつつも、ようやく口を開いた俺は、

 

「と、とりあえずだ。素材採取クエストがちょうどいいと思う」

 

 適当に答えたつもりであった。しかし、サユリはそれでもいいと言ってくれた。俺達に全権を委ねているようでもあった。俺としては、出会ったばかりだと言うのに、全権を委ねるというのはどうかと思うのだが、という考えもあったが、特に彼女からそれ以上何も意見が出てこなかったので、それ以上詮索はしなかった。

 一方、ケインは、どことなく不満があるようで

 

「えー素材採取ぅ~」

 

 と愚痴が零れる。そこで俺は

 

「なら、討伐クエストでも行きたいのか?」

 

 そう言って見せた。が、ケインは

 

「いや、まあ~」

 

 愚痴をこぼした割には、討伐クエストには行く気が無い様である。

 

「じゃあ、どこにいきたい?」

 

 問いただす俺にケインは、

 

「こーなんというか、もっと面白みのあるクエストとかないのかなあと思って」

「なんだよそれ。具体的じゃないなあ」

「わ、悪かったなあ。ただ、イベントクエスト的なものをやってみたいなあと思ってよ」

「イベントクエスト?」

 

 確かに。ただの討伐やら素材採取クエストとは違った特殊クエストが存在はする。するのだが、俺は手をひらひらと振って拒む。

 

「あーあー、まだ無理だ。」

「無理って……」

 

 すっかり肩を落とすケイン。そこで俺は

 

「ド素人のお前がどこで聞きかじったのかは知らないけど、装備的にも技量的にも未熟なお前には早すぎるってことさ」

「そんなに難しいのか?」

「まあ、ピンからキリまであると思うけど……」

 

 そこでサユリが口を挟んでくる。

 

「なんだか面白そう」

 

 笑顔を見せ、その意味するところも知らず彼女はのってくる。

 

「面白そうって……。イべクエの意味わかってるのか?」

 

「知らない」

 

 と即答。続けて

 

「でも、団で聞いたことあるから」

 

 ケインも続けて

 

「だろう。だったら――」

 

 しかし俺はNGサインで答える。

 

「だーめーだ。2人ともまだ早すぎるよ。それに俺もそうだけど、ランクが低すぎるからそもそも参加できないし」

 

 それを聞いて、ケインは

 

「なーんだ」

 

 と肩をすくめてしまう。

 

「それよりもさっきの話」

 

 と俺は話を戻す。

 

「採取クエストの方が妥当だと思うんだよな。ちょうどいい時間つぶしにもなるし手頃だと思うし。どうだ?」

「へいへーい」

 

 反応は今一であった。正直言うと、適当に採取クエストがいいって言った俺自身も微妙なところでもあったのだ。けれど、サユリの技量が分からなく装備状況もあれでは、と考えると妥当でもあった。それにクエスト自体、簡単な物が豊富にあることも踏まえて、クエストもすぐに終わりハンターズギルドからの情報もいち早く入手できる点、その方が良かったのである。

 

「と、とりあえずだ。それにしようぜ」

「へーい」

「はい」

 

 2人の合意は得られた。とはいえ、その後、実際に受付嬢のところに来て、素材採取クエスト一覧表を見てみるのだが、その豊富さが裏目となってどれを選べばいいのやら困惑する始末であった。そうゆうこともあってか、ケインとサユリはそのクエストの種類の多さから驚いていた。

 

「うへぇ~」

「クエスト、多いですね」

「ざっと見て、10種類以上はあるな。えーと……、5、6、7、8……」

 

 段を下げつつ数えながら呟いて行く。そして、

 

「20個ってとこか。確かに多いな。どれにする? なんでもいいよ」

 

 今度はケイン達に選択を譲ってあげた。というのも、どれも手頃なのばかりだと踏んだからだ。一方でケインとサユリの2人はどれにするのか迷っていた。さすがに20種類ものクエストあると、どれがいいのか迷うみたいだった。実際のところ、俺自身もどれにしようか迷うってしまう。

 

「う~ん……」

 

 入念に一覧を吟味していくケイン。これといってどれが手頃なのか迷っている最中。一方、サユリはケインと同じく迷っていはいたが、やがて結論がでたらしい。

 

「これどうですか?」

 

 そういって、クエスト名〝珍しきキノコの特産品〞を指定する。ついでに内容を確認すると、どうやら特産キノコの納品がクエストクリア条件であり、まんまクエスト名どおりだ。

 そうゆうこともあり、

 

「特産キノコねぇ~。悪くないかも」

 

 とケイン。俺も妥当だと思った。それにこのクエストを選択した際に、俺には思いついたこともあった。それは、解毒剤の調合。ちょうど、解毒剤の個数が足りなかったことを思い出した俺は、この際、このクエストで解毒剤の個数を増やそうと思い立ったのである。だからちょうどいいとも思ったのだ。

 

「じゃあ、それにするか」

 

 呼びかけに応じて、ケインとサユリはそれに応える。

 

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