モンスターハンターアルカディア   作:ぷにぷに狸

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3章:越えるべき壁・2話

 ケインの言っていることには、信憑性あるようでないような感じが見て取れていた。と言うのも、エリア移動中、偶然にしろ尾にキノコを携えた牙獣種を一瞬だったが目撃したというのだ。サユリはそんなのいなかったよ。って、言って信じようとはしなかったけれど、それでもケインは必死になってそのことを話していたのである。

 もし、それが本当だとしたら、間違いなくアレ――コンガたちのボス、ババコンガだ。

 

「本当かどうかはさておき……」

「おいおい、ユウトまで。俺を信じない気か?」

「別に信じないわけではなくてだなあ」

「だったら」

 

 信じようとしない感じの俺になんだか焦り出すケイン。俺としては、実際にこの目で見ていないので何とも言えないこともあって、ただの見間違いの可能性も否定できない点があり、それゆえ、信じるべきかどうか決めかねていたのであった。

 

「……じゃあ、こうしよう。仮にそいつ――ババコンガを見かけたとしてだ」

「仮にじゃなくて、本当に見たんだって!」

「まあまあまあ。落ち着けって」

 

 とここはなだめる。ケインは言われて押し黙る感じで口をつぐむ。

 

「とりあえずだ。ババコンガがいたとしても、どの道俺たちには追跡は厳しいと思うぜ」

「なんでだよ?」

「ペイントボール、付けたのか? そいつに」

 

 そこでケインは

 

「あっ」

 

 と気が付いた。俺はその様子からに、案の定、付けていないなあと察した。

 

「やっぱりな」

「だけどよ。そいつがいると言うことは、ととのつまり、今回のクエストのメインモンスターじゃあねぇのか?」

「ふーん……」

 

 そう言われて、俺は顎にグーを宛がい今までのことを思い返す。確かに、コンガたち群れの頭数は普段とは違って多い感じがしなくもない。そう考えてみれば、例えクエスト対象リストにババコンガが載っていてもおかしくないのだ。と。

 

「言われてみれば確かにそうだ」

「だろう」

 

 そこでサユリは意見を述べる。

 

「だとすると、今回のクエスト、一層、気を引き締めていかないといけませんね」

「ま、まあな。でも、確定はしていないけどな」

 

 確かに確定はしていない。それにペイントボールが付いていない以上、ババコンガの行方も全然。俺は一旦しゃがみ、生態マップを表示させた。

 

「ケイン、最後にババコンガを見た位置がどの辺だかわかるか?」

 

 ケインはんーとと言いながら、あやふやな記憶を思い起こしてみる。

 

「確か……この辺だったような……」

 

 そう言って指差した個所は、等高線が入り組んではいるものの列記とした崖の上だった。それも俺たちがいる場所のすぐ斜め右下の箇所。崖上の道は俺たちのいる場所から北部へとほどなく歩いた開けた密林地帯の場所まで繋がっていた。

 

「その場所だとすると、このまま先に進めばいずれ遭遇するチャンスかもな。ただ……」

「ただ……? なんだ」

「いや、なんでもない」

 

 本当は遭遇するチャンスなのかもしれないが、一点だけ気がかりなことがあった。それはババコンガ自体のエリア移動で遠くまでジャンプして行ってしまうこと。それも、エリアをまたいで遠くへとだ。けれど、俺はその時はその時だと思い留まり、口を閉ざしてしまうのであった。

 

「ほら、行こうぜ」

「あ、ああ」

 つられるがままに、ケインはサユリと共に再び歩き出す俺の後について行くのであった。

 

 

 

 

 雑木林を掻きわけかき分け、道行く道を突き進んでいく。先ほども思った通り、ババコンガがこの先で待っているとは限らないが、それでもペイントボールが付いていない以上、確かめずにはいられない。とはいえ、本クエストの達成条件がババコンガ討伐で果たせるかどうかといった点についても、不確定であった。

 なにせ、クエスト達成条件が条件であり、きちんと対象モンスターが記載されていなかったからである。クエスト名〝畑を荒らす獣たち〞。確かによく良く考えればババコンガもその一種に属していることには間違いなかった。もし、討伐することによってクエストクリアがなされるのなら、ここは全力で行こうと思う。

 一種の期待を抱きつつも、当の目標としていたモンスターババコンガは、ついに目の前に現れるのであった。

 

「いたぞ」

 

 小声でケイン達に語りかける。ケインもサユリも頷き、俺にならって草木で体を隠した。

 

「やっぱり、群れのボスだけあってでっけぇなあ」

 

 と感想を漏らすケイン。サユリもその巨体に息を呑む。2人とも俺から予備知識としてババコンガに関する情報を教えてもらったとは言え、実際にVR内で遭遇するのは初めて。そのこともあってか、

 

「手の震えが止まらない」

「俺もだぜ」

 

 などと、本心を口にしていた。

 一方、当の俺もババコンガに対する知識はそれなりにあったものの、実際に本作で遭遇するのは初めてであった。

 まあ、リオレイア討伐に比べれば大分ましなんだろうけれど、やはり大型モンスターを相手にするとその威圧感はどうもぬぐいきれないみたいだった。

 多少なりとも両手が震えていることを自覚し、深呼吸して落ち着かせる。それからウィンドウ画面を手早く表示させ手際よく、アイテム一覧からペイントボールを選択・取り出す。

 

「なあユウトにサユリ、俺が言った通りだったろう」

 どこか自慢げに話すケイン。俺は「まあな」とだけ告げておく。

「っで、これからどうするんだ?」

「んー」

 

 ペイントボールを手に持ったまま、しばし考え込む。そのなかで、もう一度アイテム一覧を表示させてみる。一瞥して行く中でこんがり肉が数個とあり、一つ何かに使えそうな感じでもあった。さらに輪をかけて、ババコンガのいるこのエリアでは多種多様に上るキノコが鬱蒼と生い茂っていたのである。

 

「とりあえず、見つからないように素材採取と行こうか」

 

 目当てはキノコ。それもマヒダケだけとか毒キノコあたりがよさげだと思っての提案だった。しかし、ケインからは不満が零れた。

 

「なんで素材採取なん? そのまま一気にけしかけていけばいいじゃん」

「それができればすでに挑んでいるさ」

「だったら」

 

 そこで俺は否定する。

 

「よく考えてみろよ。PSPXと同じに客観的視点から軽快に立ち回れそうなのかを」

 

 それを言われてケインもどことなく理解したのだろう。

 

「うっ、それは……」

 

 と言葉に詰まってしまう。

 

「だろう? だからだよ。まあ、ババコンガに限らず全てのモンスターのパターンを掴めさえすれば、作戦なんて立てずともまともに立ち回ることも可能だろうけどもな」

「パターン? なんだそりゃあ」

 

 ケインはきょとんとして応える。サユリもその言葉に興味ありげに耳を傾ける。

 

「そう、パターン。いわゆるパターン化と言うやつかな。このクエストが終わったら、あとで教えてやるよ、その意味を。それに約束だもんな、何日か前の。なあサユリ」

 

 そう、約束。それはどのくらい前だったか、覚えている限りでは1週間くらい前だったようなそうでもないような曖昧な約束のこと。サユリは弾かれ思い出したかのように約束の詳細を話す。

 

「そうでした。確か六日ほど前の約束だったような気がする。狩りをする上での立ち回り方を教えてもらう約束でしたもんね、ユウトさん」

「そうそう」

「狩り方の約束。そんなのしたっけかな?」

 

 疑問符を浮かべる彼に、俺はこう答える。

 

「ケインは、確かあ、あの時いなかったような気がするな。ちょうど」

「おいおい、俺に黙って秘密の約束でもしてたってことかよ」

「結果的には……でも、いいじゃん。サユリと一緒に学べるんだからよ」

 

 都合よさげに話す俺。けれど、ケインは不機嫌そうに不平をこぼす。

 

「話が出てこなかったら、俺、知らないままだったろうが」

「そこは、う~ん、悪かったよ」

「う~ん、じゃねぇよ。ったく、……まあいいや。それよりも話を戻すけどさ。なんでこの場で素材採取しようなんて思ったわけなんだ?」

「あ、ああ、それはな」

 

 そう言ってウィンドウ画面に目を戻す。そしてその理由を示すかのように、反転してケイン達に見せた。

 

「このこんがり肉なんだけどな。こいつとキノコを使って罠でも作ろうかと思ってな」

「肉でか」

「そう、肉」

「美味しそうですね」

「だろう。……って、そこじゃなーい!」

「ふふふ」

「ふふかよ」

 

 俺の突っ込みをよそにサユリはほくそ笑み続けた。

 

「ともかく話は戻すが、今回はその肉とある素材を使って罠を張ろうかと思う」

 

 そう言うと、俺はある一点ににらみを利かせて目を細めた。

 

「ある素材?」

「そうだ」

 

 そう言う先にはキノコ。それも鬱蒼と生えたキノコを見て俺は言う。そして、ケインの疑問を返すかのように俺は応える。

 

「ほら、あれ。あそこに生えているキノコ。それを使って罠を作ろうと思うんだ」

「キノコかよ」

「調合でもするのですか?」

 

 サユリの意見に俺は

 

「ズバリそれだ。調合。まさにそうだ」

「キノコと合わせて何作るってんだ? ユウト」

「そうだなあ。シビレ肉と言ったところかな」

「シビレ肉? 奴をマヒらせるつもりなのか?」

「そんなところかな。妥当な案だと思ってね」

「ふーん」

 

 今日なさげなケインに、俺はおいおいとそれはねぇぞ、と煽る。

 

「ふーんって、作戦としてはいいだろう。作戦としては。まともにブチ当たるよりかはいいと思うけどな」

「まあ、それはそうだろうけどもよ……」

 

 どこか残念そうな感じの表情を浮かべるケイン。俺に一体何を期待していたんだろうか。気になる点を突いて俺は応える。

 

「おいおい何だよその顔は。じゃあ何か。俺が奴と真っ向から挑めばいいのか?」

「まあその……なんだ。ようするに……らしくもないというか」

 ケインが言わんとしていること。大体分からないわけでもなかった。ようするに、罠とか投擲アイテムなど抜きにして、ガチでババコンガと相手しろよ。そういうことであった。

 

「あ~。要するにあれか。俺が奴とガチで挑めってか」

「まあ、そうだな」

 

 案の定、まさにそうであった。ぼりぼりと頬を掻くケインに俺は、「はあ」とため息を漏らす。

 

「いいかケイン。俺はな、奴と真っ向から挑もうと思えばいくらでも挑めるさ。だけどよ、それじゃあ――」

 

 とそこで、サユリが興味津々で口を挟んできた。

 

「私も見てみたいです」

 

 2人そろって、思わず

 

「「えっ」」

 

 と声が重なってしまう。それはもう無理もないこと。サユリらしくもない発言であったがゆえに驚かされたのであった。

 

「おいおい、サユリ……」

 

 唖然とする俺。ケインは彼女の発言の次いでと言わんばかりに、気前よくしゃしゃり出る。

 

「おーおー、なんだからしくない感じがするけど。まあ、これよがしに、なあ、頼むよ、ユウト」

 

 おまけに肩をポンと叩かれてしまう。

 

「頼むよって……。もう、2人してなあ」

 

 これまた、困ってしまったものである。ババコンガ討伐。リオレイア討伐に比べればらくっちゃ楽であるけど、俺が単身で挑んだところで本来の主旨(ケインやサユリに狩りの基本的なやり方を教える)とは違うわけであり、あまり気が進まない感じがしてならなかった。とはいえ、2人して俺の腕の見せどころを見させてくれと頼まれたんじゃあ断るに断れない空気を醸し出しており、結局、俺はNOとは言えなかった。

 再びため息を漏らし、しょうがなく俺は応える。

 

「仕方がないなあ」

「ありがとうよ」

「ありがとうじゃないよ。……ったく、今回は特別だぞ」

 

 まさに、ため息交じりのサービス精神であった。俺はいつでも抜剣して切り込めるよう身構える。そして、手に持ったままのペイントボールを食事中のババコンガに向け投げつけた。

 ペイントボールはきれいな放物線を描き、ババコンガの背中に見事に命中。とうのババコンガはそれに一瞬だけ気が付いたようであったが、すぐに気のせいだと思ったらしく背中をぼりぼりと掻くだけにとどまった。

 

 はあ。

 

 ため息が自然と零れる。こんなんじゃないんだけどなあと思いつつも、俺はババコンガの周囲を確認。とりあえず見た感じでババコンガ一頭だけしかいなかったことに少しばかりか安堵した後、茂みから一気に飛び出す。

 

 タッタッタッタ……

 

 駆ける足音。それに伴う気配に気が付いたのか、食事中であったババコンガは振り向いた。――と同時に俺は抜剣し、片手剣(アサシンカリンガー)の刃を思いっきり叩きつける。

 

 ブシュー!! 

 

 血が勢いよく効果音を伴って迸る。元々の斬れ味がほどよくあるおかげか、その血飛沫のエフェクトは勢い良く演出された。立て続けに、二撃、三撃と連続攻撃をお見舞いして行く。一方、ババコンガは攻撃されっぱなしと言うわけでもなかった。巨体だけに攻撃された際の反応が鈍かっただけに反撃が出遅れたものの、ババコンガはその剛腕でもって振り払ってきた。

 とっさに横っ跳びに避け、間合いを空ける。そして、側に立ち、側から再度連撃を叩き込んでいく。一進一退の攻防が繰り出されていく中、遠くからケインの声援が聞こえてくる。正直、どうでもいいが。

 

「おお、さすがユウト!! なかなかやるじゃん」

 

 ババコンガの放屁を間一髪で交わし、俺はその声援を無視し夢中で攻撃し続ける。――とそこで、ババコンガの表情が一変。顔を赤らめ、ガラガラと裏声を放ったのだ。怒り状態。俺の猛攻に耐えかねたババコンガがついに自棄を起こし、その堪忍袋を切らしたのだ。

 俺は見計らってアサシンカリンガ―を納刀し、急いで間合いを空けようと全力ダッシュをする。

 

「さあ来い」

 

 小さく呟く。攻撃力、速さ、そのステータスがさらに倍増する怒りが、俺に降ってかかろうとしていた。

 ――とそこで、思わぬ事態が起きてしまう。

 

「っ!! なんだと!?」

 

 まさに予期せぬ事態であった。それは怒り状態のババコンガが、猪突猛進に自分に向かって突っ込んでくるのとは違い、180°向きを変えたかと思うと、なんとケイン達の方へと突っ込んで行ったのだ! しまったと思うのも束の間、ババコンガはケイン達のいる茂みの中へと突っ込んで行った。

 

「ケイ――ン!!」

 

 思わず俺は叫ぶ。そして――

 

「キャー!!」

「うわあ!!」

 

 当然のことながら、とばっちりを受けた彼らの叫び声がしてきた。そして、間一髪で交わし茂みから飛び出すサユリとケインの姿が確認される。

 

「つててて。なんだよ。なんでこっちまで巻き添えを食らわなきゃ」

 

 参ったよと言わんばかりに頭を掻くケイン。サユリも当然ながら同じ反応をする。俺は彼らの背後でガサガサと音を立てるババコンガの巨体の姿がこちらを向かんばかりになっていることに気が付き声を張り上げる。

 

「何にしてんだ!! 早くこっちに逃げて来い! 襲われるぞ!」

 

 言われてハッとなり、慌てて立ち上がる2人。

 

「そんなの言われなくても」

 

 と全力疾走でこちらへ走っていく。そして、彼らを追撃するかのように、背後の草むらからババコンガが飛び出してくるのが見えた。

 俺は咄嗟に思った。

 

 〝ケイン達を守らなきゃ〞

 

 と、使命感を抱き。アサシンカリンが―を再度抜き、再び身構える。

 

「お前の相手は俺だ!」

 

 言い捨てる否や、突進してくるババコンガに立ち向かう。斜め横から斬り込むかのように接近しつつ、ババコンガの突進を避けるとともに、一撃を一太刀浴びせ気をそらす。

 

 うぉぉぉぉぉー!!!

 

 この攻撃で気がそれたのか、ババコンガは再び俺の方へと向きを変える。 

 

 来るか‼︎

 

 心の中で身構える。それを合図に、ババコンガは再び突進してきた。

 

 ドドドドド……。

 

 地響きとも言える足音を立て、突っ込んでくるババコンガ。俺はすかさず身を投げるかのように左へと飛び退った。そして、すぐさま態勢を立て直し、地を蹴って追撃するかのように剣を振りかざそうとする。――が、そこで、突然急停止したババコンガが、いきなりその剛腕を振り回してくる。

 

「おわっ!!」

 

 咄嗟の出来事で制動が効かず、そのまま突っ込み剛腕の餌食となって吹っ飛ばされてしまう。

 

「ユウト!!」

「ユウトさん!!」

 

 心配そうな2人の声がほぼ同時に重なる。俺は地を3、4回転ほど転げ回り近くにあった大木に体をぶつけてしまう。

 

「いてててて(本当は痛くわないのだが、自然とやってしまって)……」

 

 地べたに体を突っ伏した状態から、うっすらと目を開ける。怒り狂ったババコンガは、先ほどの一撃で気が済んだのか元の冷静なババコンガへ。そして、視界前面に映し出された体力ケージが4割近く削られている状態のが目に見えていた。

 

 (やらかしたな)

 

 油断大敵な自分の行動を省みて、心の中で反省する。押し潰された肺に呼気を名いっぱい吸い込むかのように深く呼吸しつつ、俺はゆっくりと立ち上がる。

 

「大丈夫か、ユウト」

「ユウトさん!」

 

 2人が心配になって駆け寄る。俺は咄嗟に手で制止し「待て!!」と言い放って2人をこれ以上ババコンガに近寄らせないようにした。というのも、ババコンガとの戦いは終わっておらず、ババコンガの標的からケイン達を外したかったからに他ならないからであった。

 アサシンカリンが―の剣先を地に突き立て、若干よろめきつつもゆっくりと立ち上がる。アドレナリンの分泌から脈の速さが高まっている中、ニ三度深呼吸をして息を整え、再び相対する。一方、怒りの収まったババコンガは、しばらく様子見していたが、やがて、がるるるるー!! と唸り声を荒げると、警戒しつつこちらに近寄ってきた。

 俺は舌なめずりをした後、ケインに問う。

 

「っで、どうする、ケイン?  このまま続行と言うことでもいいんだぞ」

 

 しかしケインは、俺の身を案じてかこう言ってきた。

 

「いいよ、いいよ。もう十分だって。それにその体力じゃあ、次の一撃でおしまいじゃんかよ」

「まあ、確かにな。だが、次はヘマしない自信あるはあるけどな」

「ヘマしないって……」

 

 100%ヘマしないといった確証はなかったが、先ほどまでとは違い、俺はBT時代のリオレイア戦同様、もう油断しないと言った気迫で行く覚悟はできていた。

 けれど――

 

「だめですよ、ユウトさん。これ以上無理しちゃあ。それにユウトさんばっかり戦うなんて、私たちなんだかみずくさいじゃないですか」

「お、おお。そうだそうだ。ユウト、これ以上はあかんぞ」

 

 つられてケインも言ってくる。寄ってくるババコンガの間合いを維持しつつ、俺は

 

「じゃあ何か、当初の予定通りでいいってことか?」

「ああ、いいよいいよ。それでいいよ。それにこれ以上、ダメージを負ってほしくないしさ」

「へぇ~、いいのかよ。ま、その方が俺としちゃあ都合がいいんだけどね」

「都合って」

「都合だよ都合。俺としては、ケイン達に狩りの基礎とやらを教えたかったからさ」

「それなら、ここんとこみっちりとはいかないものの、大分教わってきた気もするぜ」

 

 ババコンガの振り払いを掻い潜り、

 

「まだまだ、足りないさ」

「なんだか、師弟関係みたいなもんだな。それ」

 

 やれやれと言わんばかりに、ケインがそう呆れる。一撃をお見舞いし、前転。続けて柄空きとなった脇から2、3撃と叩き込んでコンボを決め切る。

 

「んー、師弟関係。それに近いかもしれないな」

「師弟関係。んー……」

 

 どこか思うところがあるのかもしれない。ケインはどこか納得いかない表情を浮かべる。だけど、そこを説得したのがサユリ。彼女は

 

「いいじゃないですか、それでも。だって、ここじゃ、ユウトさんが一番狩りがうまいんだもの」

 

 説き伏せられてしまったかのように、ケインは仕方ないなあといった感じになった。

 

「じゃ、それでいいよ、まずは。サユリも納得していることだしな。だけどよ、ここはユウトの都合がどうこうではなく、手負いのお前さんを助けると言う意味で納得してやるよ」

「ま、それでもいいさ。じゃあ、お願いするぜ」

「あいよ」

 

 それを置きに、ここは一旦態勢を立て直すべく、エリア外へと脱出を試みることとなった。

 

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