「とりあえずこのくらいかな」
そんなに多くはらなかった。なにせシビレ肉を作るのに、マヒダケは2、3個あれば十分だったから。調合を済ませた俺は、準備完了の合図をケインとサユリに送る。俺も含め3人揃ったところで、ケイン達に見せるべく生態マップを表示させ、ババコンガが標的を見失った感じが見て取れたかどうか確認する。
「もう十分じゃねえ」
「なんだか、きょろきょろとし出しましたね」
2人が言うババコンガ。その様は、何かを探しているそぶりをしていた。と言っても、ババコンガはマーカーで示されている感じであり、その動きがまさにそんな感じが見て取れたからである。
頃合いかな。心の中で呟く。
「じゃあ、2人とも。手筈通りに頼むぜ」
「ああ」
「うん」
2人はそう頷くと、ケインは落とし穴作り、サユリは調合で作った煙玉での撹乱作戦と早速行動に移った。2人がそれぞれ行動に移り姿を消すと、俺は手元ににシビレ肉を出現させて時を待つ。そしてその間、ババコンガが見える位置へと、茂みの中を蛇が進むがごとくゆっくりと忍ばせて移動して行った。草と草の間からこっそりと顔をのぞかせ様子を窺う中、そのババコンガが視界の前方に居座っていた。俺たちがどこかへと行ってしまったとすっかり思い込んでいいるのだろうか。とうのババコンガは再びキノコを美味しそうにほうばっていた。
いいぞいいぞ。心の中で調子付かせる。送信画面を表示させ、サユリとケインに準備の方はどうなのかと確認をとる。
しばしの間の後、2人からOKのサインが送られてくる。本当のところ、どっちかと行ったらケインの方がちょっと心配な点はあったが、大丈夫だろうと自分に言い聞かせて置いた。というのも、落とし穴を仕掛ける位置からして、ババコンガが通りそうな場所ということで大体の位置は俺は伝えておいたが、その正確な位置がややあいまいだったからである。きちんと分かったとは思いたいが、果たして……といったような微妙な感じがあった。
ともかく心配していてもしょうがないので、俺は彼を信じてサユリに煙玉投擲の合図を送ってやった。
〝了解〞のメッセージが送られてきて、少しの間の後、ババコンガの周囲の景色に靄がかかり始めて行った。
うるるるるるぅぅぅぅぅぅ――
周辺の異様な光景に気が付いたのか、ババコンガはキノコを食べるのを中断し、当然のことながら警戒し出す。俺はほぼ視界がババコンガだけしか見えなくなってきたところで、行動に打って出た。奴が背を向けている間、俺は忍び足で近寄って行き、こっそりとシビレ肉を設置。再び身を隠す。――とそこで、ガサガサと草葉が揺れた音に気が付いたのか、ババコンガは自分の方へと振り向いて来た。
(しまった、ばれたか)
一瞬そう思って青ざめた。が、とうのババコンガは様子を窺うだけだったらしく、クエスチョンマークよろしく首を傾げるのみだった。俺はふーと一拍置き、胸をなでおろした。
(さて、どうでるかな)
そう思いながら様子を窺う俺。足元にはシビレ肉。ババコンガは首を傾げた後、眼下に置いていたシビレ肉に気が付いた。さすがにちょこっとは警戒したらしく、その肉の臭いを嗅ぐ仕草は見せた。が、元からのアホな性格だったこともあり、ババコンガはすぐに警戒心を解くと、いつものようにがっつりと食らいついた。――直後、ババコンガは全身を震わせ、電撃のエフェクトを迸らせ痺れ出す。俺は今だと思い、すかさずケインやサユリに一斉攻撃せよと合図のメッセージを送る。
「いやあー!!」「えーい!!」
2人の気合い声が重なると共に、彼らが茂みの中から勢いよく飛び出す。
猛攻に猛攻を重ね斬りつけまくる。血のエフェクトが噴水のごとく吹き荒れ、ババコンガの体力を確実に奪っていく。俺は2人が攻撃に夢中になっている間、試作型大タル爆弾の調合を行い、そして、彼らの加勢に打って出る。やがて、頃合いを見計らった俺は、ケイン達に離れろの合図を出す。
「もう十分だ。一旦離れろ!!」
サユリは素直に従い離れる。しかし、ケインはその攻撃からによる興奮のあまり、聞く耳を持たず無我夢中で「まだだ。まだまだ終わってねぇぜ。おりゃあー!!」と叫びながら斬りつけまくっていた。
俺はケインの腕をすかさず鷲掴みすると、一声かけ呼びとめる。
「おいおい落ち着けって、ケイン」
今まさに止めの一撃ぃとばかりに飛びかかろうとしていたケインは、そこで俺に止められたことで我に返り自分の方を向く。
「あっ、ああ」
そう言うや否や、やっと俺の指示通り、その場を一旦退く。2人を自分の背後の茂みへと隠れさせた俺は、ババコンガの痺れ効果が途切れる時を待つ。そして、痺れ効果はきれ、ババコンガはぬくーと起き上がった。
一呼吸を置いた後、先までの猛攻に応えたのだろうか、ババコンガは突如として裏声を鳴らすとともにコンガと同じく腹を鳴らす。
それは再び怒り状態になったのと同義であり、俺たちにさらなる脅威が振り撒かれようとしていた合図でもあった。
俺は落とし穴が敷かれてあるであろう地点を挟んでおびき寄せる。すると、ババコンガは血眼になって、俺の予期せぬ行動。つまり、突如としてジャンプ。俺めがけボディプレスをかましてきやがった。
「ユウト!!」「ユウトさん!!」
2人の声が同時に重なる。目を離さず冷静になっていた俺は、すかさず横っとびにこれを避ける。とその直後、
ドシ――ン!!!
地響きと共に土ぼこりと衝撃波が襲う。一時的な揺れ状態に陥り動けなくなるものの、どうにか3、4秒ほどで脱出。今度は確実に嵌らせるべく
獲物を一撃で仕留められなかったババコンガは、再び態勢を立て直すと、悔しそうに、
がるるるるるるぅ――!!
そう唸り声をあげ、今度は無我夢中で、かつ、確実に仕留めるべく突進を仕掛けてきた。
普通では避けられそうにもない突進。だが、これが、俺の狙い目でもあった。そう、ババコンガは見事までにケインが仕掛けてくれた落とし穴に見事なまでに、ドシ―ン!! と転落。身動きが取れなくなってしまったのだ。
ざまあみやがれと思った俺は、そこでケイン達に呼び掛ける。
「今だ。今のうちに叩き込めー!!」
それを聞いたケイン達は、気合い声と共に無我夢中で茂みから飛び出してきた。
身動きとれないながらでも、上半身だけ露出して暴れまわるババコンガ。全面は避け、背後に回って再び猛攻をけしかけていく。
ズバズバズバ!!
切り刻むたび、迸る血飛沫のエフェクト。次第にだが、ババコンガの体力も限界に近付いて来たらしく、その動きも次第に緩慢になっていく。俺は頃合いを見て攻撃をやめ、ババコンガの側面立つ。
「おい、何してんだよ、ユウト?」
疑問を持つケイン。
「まあ、こっちは気にしなくていいから続けてろって」
それを言われ、
「ふーん」
とだけ返す。俺は調合で前もって準備しておいた試作型大タル爆弾のセットに取り掛かった。設置できる最大数は2つ。俺はその2つを出現させ、設置させた。
「これでよし。おーい、その辺でいいから、とりあえずは離れてろ!!」
「え、なんでだよ。……って、おいっ、それはまさか!?」
爆弾の存在を見るや驚愕するケイン。一方、サユリは俺の意図を察したらしく、言われた通り攻撃の手をやめババコンガとの距離をとった。
「そのまさかだよ。早く逃げろっての!!」
「あ、ああ」
早々と離れるケイン。2人が離れたところで、俺はすかさず起爆すべく盾を構え、その刃を振り下ろそうと掲げた。――とその直後、何か強い衝撃を感じ、吹っ飛ばされた。
(なんだ!?)
驚愕する俺。地面をニ三度転げ回り、すぐさま態勢を立て直す。すると、眼前にコンガが3、4匹、試作型大タル爆弾の前で群がっているではないか。
たちどころにケイン達のいる茂みの方もコンガの群れで包囲されていた。なんてこった。俺は想定外の事態に焦りを感じてしまう。
2人そろって包囲されたケインとサユリ。孤立無援と化し、同じく包囲されてしまった俺。そんな状況下の中、ついにババコンガはコンガの助けを借りて落とし穴から脱してしまう。
「くっそー」
あとちょっとだったのにー、と悔しくも唇をかみしめる。正直、形勢逆転といったところ。ろ。悔しい反面、絶体絶命に陥っているのは、俺たちであった。特にケイン達の方が危ない。リンチに遭えばたちどころに体力を持って行かれる危険性があったからだ。とはいえ、一発逆転のチャンスは完全に消え失せたわけではなかった。むしろチャンスは今すぐそこにあったのだ。というのも、気付いているのか気付いていないのか、ババコンガたちを含めた大多数のコンガの群れは、試作型大タル爆弾の周辺に群がっていた。ととのつまり、こう言うことである。
〝起爆させることさえできれば、大多数のコンガの群れを一掃できる上、運良ければババコンガを一撃で仕留めることができるかもしれない〞
そういうことであった。
俺は手早くウィンドウ画面を表示させるや、アイテム一覧から何か秘策となるものがないのか警戒しつつくまなく探し始める。そうしたなか
「どうすんだよ、ユウト」
「ユウトさん」
2人の心配げな声が聞こえてくる。その声に内心、ちょっとまってろよ、何かいいものを……、と念じながら探していると――
「ペイントボールか……」
残り物のペイントボールに自然と目が止まる。何の変哲もない投擲アイテム。しかし、俺はそこで閃く。そうだ。これだ。これを試作型大タル爆弾に当てれば、と。そう、試作型大タル爆弾は、何か衝撃を与えれば起爆する。そのことに関して、ペイントボールというのが最適であった。
「よし、あとはこいつで当てるだけ……」
迫ってくるコンガを見ながらつぶやく。アサシンカリンが―を納刀し、ペイントボールを手にした俺は、コンガの群れの中へ。大タル爆弾の近くまで全力で走りだす。
「ケイン! サユリ! 伏せてろー!!」
「「えっ?」」
2人の言葉が重なり、2人とも咄嗟に伏せた。――と同時に、俺は襲ってくるコンガを避けに避けまくり、試作型大タル爆弾めがけペイントボールを投げつけた。直後、俺は横っ飛びにダイヴし身を伏せる。一方、ペイントボールは緩やかな放物線を描くき、そして、大タル爆弾へと命中。直後、ドカーン!!!!! と凄まじい衝撃波を伴って爆炎が弾け、群がるコンガもろともババコンガを一瞬にして包み込んだ。
(やったか?)
煙で辺り見えない中、討伐しただろう、さすがに。といったような期待感が滲ませる。やがて、煙が薄らいでいき、どうなったのかがはっきりと見えてくる。――とそこで、やや驚愕することに。
「う、嘘だろう!?」
その光景はまさしく、化け物と言っても過言ではなかった。ババコンガに群がっていたコンガは全滅したものの、とうのババコンガ。そいつはまだ生きていたのだ。
「くっそー。しぶといぜ、さすがに」
毒づく俺。ケインもサユリもその様子に再び身構える。だが、その直後、ババコンガの様子が一変。何かに堪えかねたかのように、力尽き崩れ落ちた。
「やっと、終ったか……」
ふうーとため息が零れる。とそこで、ウィンドウ画面が現れメッセージが表示される。メッセージにはこう書いてあった。
〝依頼達成!! コンガの群れが田園地帯から退き始めました〞
それを裏付けるかのように、周辺にまだ残っていたコンガたちが、群れのリーダーを失ったことでどこかへと散り始めていく。
「今度こそ終わったみたいだな。多分」
「これでクエストクリア、ですかね?」
安心した2人が聞いてくる。ホストしか見えないこのメッセージを見つめながら、俺はただただ、
「ああ」
とだけ答えてやった。
クエストクリアから戻った俺たちに、ある知らせが届いていた。それは〝拠点解放クエスト〞と呼ばれた緊急クエストの依頼である。ただ、依頼内容は直接受付嬢に聞かないといけなかったので、今はそこに向かう途中であった。
「どんなクエストだろうな。簡単だったら最高なんだけどな」
ケインが気楽に希望的観測を口にする。しかし、サユリは否定的な見解を口にした。
「逆なんじゃないでしょうか。難しい気もします」
「同意見だ」
「えっ?」
「ん?」
「あ、いや。サユリの意見に同意見だという意味さ。俺の経験上、緊急クエストの類はそれ相応難しいものとなっているからな」
「え、そ、それじゃあ……」とケインはやや青ざめる。サユリも俺の言葉を聞き、唾をごくりと飲み込む。その様子に俺はやや慌てて2人を気遣うように、
「そ、そんなに気を引き締めなくても……」
「だ、だけどよ……」
「なんだか、ユウトさんが言うと、相当に手ごわい相手が待っている気がして、なんだか不安です」
「た、ただの経験に基づいた予想だよ予想。今回のモンハンもそう来るとは限らないしさ。俺だって、面倒なモンスターとか相手にしたくないしさ」
「外れてくれるといいけどな。その予想」
となんだか、ジト目で睨んでくる。サユリも彼と同じく、ジト目で睨みはしないけどどこか訝しげに見つめてくる。
「ふ、2人とも、そんなに俺を見なくても。特にケイン。何だよその目つきはよ」
そう言われると、ケインはジト目をやめ、明後日の方を見た。
「いや、なんでもねぇーよ。それよりもさ、誰が確認しに行くじか決めようぜ」
「誰がって、そりゃあ、俺たち3人で行った方がいいんじゃねえか。なあ、サユリ」
ところが彼女は遠慮そうに手を振った。
「私はやめておきます。なんだか、恐いですし……」
「おいおい、なんだよ。じゃあ、お前と俺とで決めようぜ」
ここは仕方なく、彼とじゃんけんで決めることとなる。
「じゃあ、行くぞケイン。最初はグー。じゃんけん――ポン!!」
出された勝敗。俺はパー。ケインはチョキだった。結果は俺の負け。結局予想はある程度はしていたが、俺が確認しに行く結果となってしまう。
「はあ、結局俺かよ。決めるも何もまるで最初から俺で決まっていたようなもんだなこりゃあ」
「頼んだよ、ユウト」
気前よくケインは俺の肩を軽くポンと叩いた。俺は心の中で何が頼んだよーだよ。と、愚痴をこぼすのであった。とは言え、緊急クエストの内容とやらには不安と興味があった。何が待ち受けているのか。それを確認するにあたり、俺の経験上からくる予想ではかなりの手ごわい相手が来るだろうと踏んでいた。と言うのも、俺とケインと晃の3人がやっていた前のモンハンでは、いや、その前のモンハンでもそうなのだが、緊急クエストの類は一段と難しくなっているものなのだ。ケイン達にあーだこーだとただの予想だとか言って見たわいいけど、正直、難しいものが来るのは実際のところ間違いないと思う。恐らく今回も。それを思うと、心に不安と言うのがちらつく。
しかし、俺はその不安は断ち切るかのように受付嬢のいる受付所歩いて来た。
「はーい、いらっしゃーい」
受付嬢が気前よく挨拶をしてくる。ただのAIだというのは分かっているのだが、俺は普通に人と話すかのように、挨拶を返す。
「緊急クエストのお知らせが届いていると思うんだ。それを確認しに来た」
「了解です。それではちょっと確認してみますね」
〝Now Looding〞と表示され、しばしの間の後、受付嬢は手のひらを返し、表示されたリスト表を示す。
「では、こちらから。確認をお願いしますね」
無言のうちに、俺は受信ボックスをクリックし、そのメールの内容を確認。開く直前、手ごわい相手が来ませんようにと願い事でも叶えるかのように祈りながら、震える手で開いた。
ゆっくりと両目を開け、その開かれた目で俺はそのメール内容を読み上げた。メール内容にはこう書かれてあった。
【依頼内容】
ミナガルデ拠点解放クエスト:
密林に君臨するは、陸の女王
【討伐対象】
リオレイアの討伐
【依頼主からのメッセージ】
―以下省略ー
「り、リオレイアの討伐⁉︎ げぇ~」
思わず声が漏れてしまった。ある程度想定はしていたが、まさか来るとは。来てしまった悪夢に俺はケイン達にどう応えてやっていいものか困り果ててしまう。
ぼーとメール内容を見つめていると、俺の様子に心配してかケイン達がやってきた。
「来るのが遅いから、こちらから出向いてきたぜ。どうだ、クエストの方は?」
耳に入ってきたものの、素通りしてしまう。いわば、脳死状態。何も答えられなかった。
「おいっ。おーい!!」
「はっ!?」
耳元で大声出され、そこで我に返る。
「あ、ああ。わりぃ。ぼーとしていた」
「おいおい、しっかりしろよ、な」
そこで、気休め程度にポンと肩を軽く叩く。続けて
「ところでよ、お知らせの方はどうだった?」
肝心なところを聞いてくる。俺はどう応えていいものか迷っていたが、結局、埒が明かないと思い、そこで事実のまま話すことにした。
「討伐依頼が出されていた」
「討伐依頼!? なーんか、嫌な予感が……」
一方でサユリの方は、大体見当がついていたらしく、やっぱりなあと言った表情を浮かばさせる。
「で、どんな討伐クエストなんです?」
「リオレイアだ。あの猟団の面々を全滅させた」
「リオレイア……」
そうつぶやく彼女は、そこで暗い影を落とす。無理もなかった。リオレイアと言えば、あの猟団「肉球カフェ」を全滅させた飛竜。宿敵とも言える存在であったからだ。同じくして、ケインも彼女の気持ちを察してか、ここで黙り込んでしまう。そんな空気に、俺はなんといっていいか迷う。だが、
「どの道、避けては通れないクエストには変わらないがな。どうする?」
少しの間の後、サユリからぽつりと本音が零れた。
「……仇はとりたい。でも、正直、恐いです。それが今の気持ち」
そう言い残すと、何を思ったのか彼女は後ろの方へと振り向く。彼女の言った恐い。意味は、気持ちは、十分わかっていた。特に俺なんか、猟団の面々を目の前で失っているから、サユリの気持ちは痛いほど分かっていた。さらにしばしの沈黙の後、再びぽつりとつぶやく。
「私……、どうすればいいのか、分からないです」
そんな言葉に、俺はそっと彼女の肩に手を添える。それにつられ、サユリもまた俺の手に触れる。そんな光景。――を、ケインは歯がゆく思ってか、励ましの言葉をかける。
「俺たちがいるから大丈夫だと思うぜ、きっと」
「ケインさん……」
「こいつの言うとおりだと思うぜ。まあ、その大部分は俺頼みだと思うがな」
振られて、図星だと言わんばかりに「うう」と唸る。その様子にサユリは、ふふふ、とほくそ笑む。俺も彼女が少しばかり笑顔になってくれたことにより、多少なりとも安心する。ケインはほくそ笑むサユリに対し、照れくさそうに頭を掻いた。俺は一呼吸し
「ともかくよかったよ、笑顔になってくれて。さっきまで暗かったから、心配していたよ」
「ありがとう、ユウトさん」
「なーに、なんてことはないさ」
そこで、ケインは己の立場を主張し出す。
「俺はどうなるのよ?」
「ケインはいつものケインじゃないか。特に心配してないぞ、そこは」
「おいおい、俺だって、正直なところ――」
そこでケインの気持ちは差し置いて、サユリに語りかける。
「まあ、立ち話もあれだから、クエスト受注は後にしてとりあえず酒場に行かねえか」
「……そうですね」
「おいおい、聞いているのかよ? ユウト」
「ああ、聞いているさ。多分」
「多分って……。って、おいっ!」
置いて行かれそうになり、ケインは勝手に酒場へと行こうとする俺とサユリの後を追いかけるようにして、慌てて歩き出した。