モンスターハンターアルカディア   作:ぷにぷに狸

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3章:越えるべき壁・4話

 酒場はいつも通り賑わっていた。それはプレイヤーとNPC。大きく分けて2種類のアバターが入り乱れる交流区域となっており、そこは当然として、ハンターだけでなく、給仕ネコや受付嬢。はたまたドンドルマに住まう住人だったりと多種多様に及んでいた。とまあ、俺たち3人は、とりあえず壁際にある一角、それも人目につきにくそうな席に腰を落ち着かせていた。

 

「わるいな。あまり人でごった返している真ん中は、好きじゃないもので」

「ユウトのことだから、大体そうだろうと思っていたぜ」

 

 前々からの付き合いでいたケインは、そこは素直に察してくれていた。一方、サユリは俺たちと出会ってから、さほど月日も経っていないこともあり、色々と知らないことが多かった。

 

「ユウトさんって、もしかしてこういう場所、苦手とか」

「いや、そう言うわけじゃないんだ。ただ、集中してごった返している真ん中ら辺は、居心地悪い気がしていたからさ」

「そうなんですね。でも、それだったら、酒場じゃなくて別なところでもよかった気がしますけど」

「うーん、それもあるっちゃあるけど、この後の予定のことを考えると、手っ取り早くここの方がいいんだ」

「この後の予定?」

 

 と首をかしげる。一方、ケインは俺の意図を察してか、口を挟んできた。

 

「どうせ、討伐のことだろう。なんとなく想像がつくけどな」

「ま、まあ。当たりと言えば当たりだな。でも、それだけでもないけどな」

「というと?」

 

 ここでケインも疑問を抱く。

 

「先のクエスト中でも言っていたけど、お前らに教える約束もあるだろう。パターン化がどうたらこうたらとか言っていた件で。まあ、忘れているとは思うが、その約束はここ数日前のことからきているけどな」

 

 そこで思い出したかのように、サユリが「あ、そういえば」と言う。

 

「確かに言っていましたね。パターン化がどうたらこうたらと」

「そうそう」

 

 そこでケインも思い出したらしく、

 

「あ~、あれね」

 

 と言い出す。

 

「さて」

 

 一段落した後、ウィンドウ画面を表示させ、注文メニューを表示。彼らに何が欲しいのか尋ねてみる。

 

「ここは俺のおごりで、一杯いかねえか。気分直しにさ」

 

 それを言われサユリとケインは顔を見合わせると、

 

「そうだなあ」

 

 と言う。

 

「といっても、どんなのがあるんです?」

 

 サユリの質問に俺は

 

「一応ひと通り、こんなものがあるな」

 

 と言いつつメニューを反転させ、彼女とケイン、2人に見せる。

 

「へぇ~」

「ほお……」

 

 2人は項目を凝視し、ふむふむとどこか納得する。

 

「てか、ざっと見て思うんだが、酒類、多くねえか?」

「私、飲めないんですけど……」

 

 再び反転し、項目を確認。

 

「確かに。多い気がするな、酒類」

 

 だが、

 

「けど、いいんじゃね。酔っ払うと言っても、ここは仮想世界なんだぜ。現実的に実際酔うわけじゃないしさ」

 

 それを言われ、今度は彼らが、確かに……、と頷く。

 

「じゃあ、一杯飲もうぜ。名目上、決戦前の一服、ということで」

 

 といい、俺は再び、画面を反転させた。

 

「そうだな」

「ですね」

 

 2人は互いに頷き、項目の中からそれぞれどれがいいのか選択し出す。

 

「んー、好み的には甘いものがいいんだけどな……」

 

 彼女は迷う様子。一方、ケインは早速どれにするのか決めたらしく

 

「お、俺はこれがいいな。説明文にも書いてあるけど、なんだか全身しびりっとくる味わいを感じるとか書いてあるし」

 

 と興味津々でジンオウカクテルを選ぶ。 ジンオウカクテルを選ぶということは、それなりのリスクを負うということ。知ってか知らずかケインの選択に、俺は少しばかり驚く。

 

「結構挑戦的なんだな、おまえ」

「挑戦的というか、ただの興味本位だよ。全身びりっとくる感覚と言うのはどんなものか気になったからな」

「へ~」

 

 嫌味的な目つきな俺に、ケインは少しばかりか身構える。

 

「なんだよ、その目つきはよ」

「いや、別に……」

 

 ――とそこでサユリがどれにするのか決めたらしく、

 

「これでいいかな。ブレスワインで」

 

 と項目をタップする。

 ブレスワイン。確かに安牌かもな。ジンオウカクテルなんかよりも。俺はそう考えると、俺自身もどれにするのか選ぶべく反転させる。

 

「さーて、俺は……」

「ジンオウカクテルだな」

 

 思わずつられて

 

「ジンオウカクテル…………って、ああ!!」

 

 そこで気付くのが遅かった。ケインと同じく意図せずしてジンオウカクテルを選択してしまう自分に、情けなく思う。

 

「お、お前!! 引っかけたな~」

 

 睨みつける。対するケインは、どこぞと吹く風のごとく、明後日の方向に口笛を吹いて知らんぷり。俺はむかっ腹が立ち、

 

 バンッ!! 

 

 と卓上を叩いて

 

「て、てめえ~」

 

 と怨嗟の声を漏らす。その様子を見てか、サユリは

 

「まあまあ」

 

 と場の雰囲気を悪くしないよう取り計らうつもりなのか、俺をなだめる。俺は舌打ちをし、ここは一旦深呼吸をし落ち着かせる。ともかく、意地の悪いこいつ(ケイン)の仕業だとは言え、なってしまったのは仕方ない。俺は諦めて運命を受け入れてしまう。

 注文確定によりキャンセルできない中、俺はため息を零す。諦めているとはいえ、本当は別のメニューが頼みたい。そんなもどかしさから俺はため息が出たのだ。

 

「ところで、下準備、するんでしたよね。一体どんなものを準備して行くつもりなんですか?」

 

 純粋にサユリが質問してくる。

 

「特にそこは決まっていないな。下準備と言っても、それぞれが万全に挑めるよう、これだと思った道具を買い揃えていけばいいと思う」

「万全の道具、ですか……」

 

 そう、万全の準備。俺的にはこいつらの分まで賄えるよう、余分に回復役関係は多めに持って行こうと思っていた。

 けれど、ある程度は自分で賄えるよう、俺はあえてアドバイスをくれてやる。

 

「まあ、敷いて言えば、最低限、回復役関係は多めに持って行った方がいいと思う」

「回復役関係、……ですか……」

 

 同じく、ケインもどこか納得したかのように頷く。

 

「ちなみに、それ以外にもいくつ重要なアイテムがあるけど、まずはそれが一番かな」

「結局、俺とサユリが重要なのは、とりあえず生き残ること。これが言いたいんだろう。ユウト」

「まあね。極端な話」

「まあ、相手があのモンスターだしな。そこは頼りにしているぜ」

「私からも、頼りにしていますね」

「2人とも、そんなに頼られてもな……」

 

 2人から言われ、どことなく照れくさくなってしまう。――とそこで注文したメニューが来たのか、蒼いエプロンを着こなしたウェトレスが俺たちのいる席へと近づいてきた。それを見てか、

 

「お、きたきた」

 

 と、ケインが期待に胸を躍らせる。 その様子はあまりに子供っぽかったので、つい、そんなに嬉しいことなのかあ、と疑問に感じてしまう。

 ただ、一方で、俺が意図せずして注文してしまったジンオウカクテル(2号)があるのを目で確認すると、そこはそこでため息が零れてしまった。

 注文したメニューがテーブル上にきちんと置かれると、ウェトレスは無表情のまま確認を聞いてくる。

 

「以上で、注文をお届けしました。追加メニューがありましたら、言ってくださいね」

 

 それを合図に、追加するかどうかのメニューが表示される。俺はNOを選択。

 

「これでいいよな?」

「私はいいかな」

「俺も」

 

 2人の確認が取れると、そのまま決定。ウェトレスを引きさがらせた。 グラスに注がれたジンオウカクテル。火花を散らし迸る電気が纏う黄緑色のカクテルは、まさに飲食者をビリビリせんとばかりに待ち構えているかのように見えていた。俺は手でそっと持つと、眺めるかのように見つめる。――とそこで、ケインがなんだか珍しいものでも見るかのようにまじまじとカクテルを見つめると、

 

「どーれ、お味は」

 

 と試し飲みもせず一気に飲み干した。俺は心配になる。

 

「おいおい、一気かよ。大丈夫か?」

 

 舌で何度か味を確かめたあと、

 

「う~ん、これはなかなか旨い」

 

 と感想を述べる。だが、その2、3秒後、彼に異変が起きた!!

 

「うっ!? うヴヴヴヴヴ……!!!」

 

 激しい呻き声と共に体が突如として激しく震え、全身から稲妻が迸らせた。それはあまりにも激しく、まるでスマホのバイブレーションのごときブルブル感。瞬く間に堪え切れず、彼は地に落ちてしまう。

 

「だ、大丈夫ですか!! ケインさん!」

 

 慌てて寄り沿うサユリ。俺は額に手を当て

 

「ダメだこりゃあ」

 

 と呆れてしまう。

 

「サユリ、ともかくそいつはしばらく動けなさそうだから、とりあえずは今はほっとこう、な」

「で、でも……」

「大丈夫だって。酔いが覚めたら、気が付くからさ」

 

 俺とうつぶせで倒れているケインを交互に見やり、サユリはそっと元の席に戻る。

 

「ま、気になるだろうけど、とりあえずだ。基本、ジンオウカクテルはちょびちょびと飲むのがいいんだ」

 

 そう言って、俺は一口、カクテルを口にする。そして、全身に痺れるようなピリッと感が口を中心に広がっていくのを感じながら、俺は一旦、ここでグラスを置く。

 

「そうなんですか?」

 

 そう言った後、彼女は手にしたブレスワインを一口飲む。

 

「どうりで、ケインさん見たくひどい目に遭っているんですね」

「ああ、こいつは基本を知らずして飲んだから、罰が当たったのさ。それだけさ」

「でも、どのみち、私は選ばなくて正解だったかも」

「その方がいい。素人が知らずして飲むと酷いからな」

 

 再び口にした後、俺は本題へと戻す。

 

「さて、この後の予定なんだけど、俺は次のクエストに向けて買い出しに行こうと思う。サユリはどうするんだ?」

 

 それを言われ、彼女はどうも気になっているのだろう、酔いつぶれているケインと俺とを交互に見比べる。そして、

 

「わ、私は、ケインさんと共に行きます。なんだかかんだで、ほっとけないですし」

「優しいんだな。まあ、あとでチャットでも送ればいいんだけどさ」

「そうなんですか? なんやかんやで機能(ツール)使いこなせていないところが見え隠れしてますけど」

「なーに、大丈夫さ。こいつだって最低限の使い方くらいは知っているはず。実際、チャットやコールでのやり取りなんか今までやってきたからな。そこは心配しなくてもいいと思うぜ。さてと……」

 

 そこで区切りをつけるべく席を立ち、

 

「じゃあ、俺はこのまま行くけど、サユリはケインと一緒でということでいいんだな?」

「え、は、はい。ちょっと心配な気がするけど。そうします」

「了解。じゃあ、集合場所だけ伝えておくな。あっ、そうだ。ついでだが、集合時間については、そっちの準備時間に合わせるから、準備ができたら教えてくれよな」

「わかりました」

「じゃあ、集合場所なんだが……」

 

 さっと空をスライドさせウィンドウ画面を表示させると、手早く操作。ドンドルマのマップを表示させ彼女に見せた。

 

「この場所にしようと思う。だだっ広いからすぐわかると思うけど」

「練武広場、ですか?」

「そうそう。それにここには、教官もいるからちょうどいいと思ってさ」

「なるほどですね」

「さて……」

 

 グラスを手にジンオウカクテルを見つめる。そして、もう一口、俺は最後にと一思いに飲むと、〝返却〞を選択し、さっさと片付け、俺はその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

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