小鳥のさえずりがかわいらしく聞こえてきた。鳴き声とともにやってくるそよ風、とても清々しい気分にさせられる。
今は何時だろうか。ぼーとする頭の中、ふとそんなことがよぎる。 カーテンから降り注ぐ日の光を浴びて、むにゃむにゃむにゃむにゃ~、とか寝言言いながら眠たい目をこすり、目の前の一風変わったデジタル時計をみやる。レウス装備のオトモアイルーを象ったようなデジタル時計。表示された時刻は『AM7:00』、と起きるにしてはちと早すぎていた。
そう言えば今日は……とかなんとか、と思い出してみるが、記憶が不鮮明だったこと、そして、眠たかったことが相まって、再び意識が飛んでしまう。
………
……
「お兄ちゃーん! 行ってくるねぇー」
ところが、そこから数十秒も経たないうちに、突然アラームが鳴り響く。静寂なる空間を一瞬でブチ壊し、部屋中に響き渡るソレは、まさしく大型モンスターの咆哮と同然。当然、黙って見過ごすわけには行かず、眠たい中、
ところがなかなかうまい具合に掴むことができない。どこにあるのだ。どこに奴が……と、探っているうちにイライラ感が募り出していく。
そして――
「あー! もぉー!」
目をがっと見開き、目標を定めて勢いよく飛び出す。――とそこで、バンと叩くようにしてキャッチ! と同時に、アラームを消し去り捕獲成功っ! と優越感に浸った次の瞬間、
「おっ! おわー!!」
体の半分以上がベットから飛び出していたためか、そこで俺はバランスを崩す。 勢いよくベット下へ落下。と同時に、ガタンッ! と机に体がぶつかり、その反動でデジタル時計も落下。バーンッ、と頭部に直撃する。
痛ぅ――。と呻き、頭に手を当てつつ、朝っぱからこんな目に合うとは、ほんと、最悪だあ。とかなんとか心の中で怨嗟を撒き散らしつつ、デジタル時計を机の上に戻し、プーギーの絵柄が施されたベットへと這い上がる。フカフカな布団の上に体をあずけ、
そう言えばと思い出しつつも、ぼんやりと眺める中、このサイトで何を調べようとしていたんだっけ? と言ったような疑問が湧いてくる。
そうしたなかで、デカデカとしたタイトル『公開記念祭、遂に開幕!!』付近にある『VIP席予約者様』という欄にふと目が止まる。小文字で表示されたそのタグ『VIP席予約者様』。じーと見つめている中、ビビッと脳内に電気が走ったかのように、俺は
そういうわけで、早速、机上から今月のゲーム雑誌『特報! アルカディア通信.COM』を手に取り、パラパラパラと素早くページを開く。
そうしつつ、俺はスマホを手にとる。今回のフェスティバル。ケインと行くこともあり、最初にメール内容を確認したかったのである。
手馴れた手つきでサッとロック画面を解除。メール一通と5件ほどのしつこい着信履歴が目に入る。とにかく、着信の方は後回しに、メールの内容だけを確認する。
『Another, but it is happening? YUTO』。
早速、英文で書かれた意味不なメール文が出てきた。あいつ、ふざけているのだろうか。朝っぱから……。と、やや気に食わなく思いつつ、
「ったく、仕方ねぇな……」
とか愚痴りながら、翻訳モードに切り替える。瞬く間に切り替わり、
『もう、起きているよな、ユウト』
と、まともな日本語へと変換される。
「……」
適当に返事を返し、再びあのゲーム雑誌へと目を向ける。
「確か……」
そうつぶやきながら、多種多様な魅力ある情報が記載された見開きページの隅々まで目を凝らし、そして、VIP席予約コードの欄を見つけ出し、確認。パッと見て、いくつかの数列が目に映る。 事細かに記載されてあることから、錯覚を覚えてやまない。――が、自分のコードをようやく見つけ出す。サイト上の入力欄とゲーム雑誌を見比べながら、2、1、0、4、……と、丁寧に入力していく。
『2104-7-1-4649.YK よろしいですか?』
サイト側の確認メッセージ。よくよく確認し、俺は『はい』をクリックする。
とりあず、ケインとの待ち合わせ時間までには、しばし時間がある。そういうわけで、1階から朝食を運んできた俺は、机の上に置いて食べだす。食事の合間、AEOGサイト系列の配信動画サイト『WORLD・LIVE/24』へのリンクをクリックした俺は、ぼんやりとその配信動画を眺めていく。
インド、ドイツ、ケニア、アメリカ、中国、そして、日本……。チャンネルを切り替えて思うことだが、どの国のゲーム販売店も行列ができている。そして、その行列ができている店の前では、アナウンサーが生中継している姿も。何をどうあれ、買い求める客は皆、あのゲームが目当てで正式サービスの恩恵を受けていると察しがつく。
そう、あのゲーム……。
それは、2004年から今現在2104年にかけて100年間人気が衰えず。それどころか、国内を超えて海外まで人気が出、そして、なお愛され続けたモンスターハンター。そのモンハン待望のVRMMO最新作、
〝モンスターハンターアルカディア・オンライン″
のこと。
そういうこともあり、動画を見ているうち、俺はこのゲームの素晴らしさ、凄さを改めて実感させられてしまう。なんという人気度。無数にある他のオンラインゲームの存在が、霞隠れしそうになるくらいに……。
ま、いずれにせよ、すごいことはそれだけではないのだ。
この配信している大手サイト。いわば、AE社が運営しているサイトなのだが、この企業。俺の知る限り、世界中にまたをかける多国籍企業でもあるのだ。つまり、俺が言いたいことはこう言うことである。
AE……〝Arcadia of Entertainment〞の略で、『娯楽の理想郷』を意味するこの企業では、なんとっ!! 世界初のフルダイヴ型VRMMOの実現に成功した企業でもあるということが言いたのだ。とは言え、もともとVR技術は前々からあったのも事実。でも、このAE社みたいに、五感全てを
朝食を軽く済ませた後、早速、ゲーム機が入ったBOXを棚から取り出す。ケインとの約束の時間――9時。現時刻8時半と、そろそろ時間が迫っていた。
鋼色に染まる硬質なヘルメット。システム型ヘルメットということもあり、シールド部分に指紋が付着しないようBOXから優しく取り出す。とはいえ、最低でも1年以上は使い込んでいるゲーム機。ところどころ擦り傷等が入っていたりするが、それでも、俺にとってはまさに、新品同様、愛しいお宝そのものだった。その証拠にほらっ、ヘルメットの側面にリオレウスの絵柄が印刷されている。普通、こういったVR機には、リオレウスとかリオレイア、他にティガレックスとかイャンクックとか、計、7種類くらいかな……といった有名なモンスターの印刷なんてされていない。
つまり、どういうことなのかというと、答えは簡単っ! 俺の手にしているこのVR機は、まさしく俺が
〝プレミアムなゲーム機″
だからだ。そしてそのゲーム機こそ、あの(MHA・Oの)世界へと連れて行ってくれる唯一の
『
そういう意味が込められたゲーム機でもあり、名をVRSことヴァーチャルリアリティーステーション。略して、ヴァイアールステーション。あるいは、ヴァイステとも呼ばれた、ゲーマーが待ち望んでいた夢のゲーム機。そのものなのだ。
とまあ、そんなわけで、愛おしいVRSに軽くキスをすると、早速、付属の仲介コードをPCへと繋げ電源をON。 ブゥ――ン、という羽音に似たような音を伴い起動。しばしの間の後、ウェブサイト『AEOG』とVRSを、PCを介して同期されていく。その間、俺はVRSを被り、準備が整うまでの間、ベット上で長まった。
透過性シールド越しで表示されていく、ステータス値。その向こう。PCモニターの側に立てかけられたフォトフレームをふと見つめる。陽の光で反射して見えづらくなっているものの、そこに映っている物は今更確認するまでもない。
それは、今はいない懐かしき〝友〞の姿。それと俺とケイン。それぞれPSPを片手に、3人が写っている写真だ。
〝旅立つ者〞と〝見送る者〞
写真に写っている〝友〞に向かって俺は 微笑んで、それじゃあ、行ってくるなと、心の中で独白し軽く手を振る。
透過性シールド上に表示された数値。次から次へと100%、あるいはOKとなっていく中、肉焼きセットにて、肉を焼いている可愛いハンターの姿とともに総合何%のケージが急速に100%へと高まっていくのを垣間見る。
100%……いわばフルダイヴ準備完了までを示す数値。その数値があと4秒と差し迫り、……3…2…1――そして、0、とケージが100%となる。続けて
『フルダイヴできる環境が整いました』と完了を示す電子音声が流れ、『フルダイヴしますか。 YES/NO』と言った選択肢が表示され、手馴れた操作でYESを選択。肉を焼いていたハンターが、勇ましくも出来たてホヤホヤのこんがり肉を掲げる姿を垣間見、
『上手に焼けました~♪』
続けて、
〝 トトット〞、〝テトッテッ〞、〝テッテェ~ン ♪〞
とテンポよくリズミカルな効果音を伴って、俺はMHA・Oの世界へとまばゆい光に包まれながらフルダイヴしていく。
数々のエフェクトを伴ってやっとおさまったかと思いきや、今度は暗闇の中。しかも、まるで全身麻酔でも打たれたかのように、いつの間にか全身の感覚がなくなっているのにも気付く。
フルダイヴする度に経験していることから、すでに慣れてはいるのだが、正直言って、あまり気分いいものではなかった。
そんな混沌としたなか、たくさんのウィンドウ画面が次から次へと表示されては、何かを読み込んだ直後、消失していくのを垣間見る。なにかのチェック項目らしいのだが、切り替えが早すぎてよく認識できない。
けれど、最後に出てきたウィンドウ画面には――
✔認証コード …… OK
✔
✔アバター名 …… ユウト
✔アバターシンクロ率 …… 100%
――――――――――――――
:
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と、次から次へとチェックされていくのが見て取れた。 いずれにせよ、自分で思い描いたものではないのは確か。どれもこれも、VRSから送られてくる
選択し上に
『本拠点・前線拠点の選択肢……』
と言ったようなメッセージ。表示された拠点というのは、
・ミナガルデ…… 開放数0/4
・ドンドルマ …… 開放数2/2
・タンジア港街 …… 開放数0/3
・ロックラック …… 開放数0/1
・ポッケ村 …… 開放数0/1
・絶島村…… 開放数0/1
・バルバレ …… 開放数0/4
:
:
と、馴染みのある拠点とMHA・Oで新たに追加された拠点のことであり、それが上記のようにリスト化されたことであった。
ミナガルデ、ドンドルマの2つの項目は、拠点となる街や村を含め全ての拠点近郊の村があり、すでに解放されており、他の拠点では未だに開放条件が整っていないという事を指している。開放数とは、特定クエストをクリアして開放された村や街の数を裏付けていた。
ま、後者の項目は、
とにかく、俺はケインとの待ち合わせ場所がメゼポルタ広場であったので、ためらわずに
☛・ドンドルマ
・メゼポルタ広場
と、配列形式で表示されたのを確認。俺はなんの迷いもなく、そのままそれが表示されたドントルマを選択する。すると途端に、今までとは異なる感覚が、〝
そしてある程度、(全身と感覚が)構築されたあと、俺は宙に浮かんでいることを不思議と認識。無重力に抱かれたまま、目の前に現れた溢れだす光の大洪水に対し、両手を広げ、自ら受け入れるかのように飲み込まれていく。