モンスターハンターアルカディア   作:ぷにぷに狸

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3章:越えるべき壁・10話

 こうなっては、他者との関わりがどうこうなんて、ましてやトライアルマスターだからと言って、そのプライドを胸に勝手に判断して討伐に行こうなんて言ってられなかった。レイア討伐に当たっては、キャンプ送りが現実世界における死そのものを意味している以上、一人でも実力あるハンターいてくれると助かる状況だった。

 J.Oがどのくらいの実力があるのか、外見から判断してイマイチなところであった。防具はシリーズとしてまとまっている感じではなく、頭部が相変わらずのモスフェイクを除いて、ハイメタメイル、タロスアーム、タロスコイル、ランポスグリーヴといった感じであった。どのくらい強化しているのかはともかく、防具からしてイャンクックやゲリョスといった中型モンスターを討伐したと言った感じはみられなかった。

 岩に腰掛けて、みんなに見えるように生態マップを表示していた俺は、ある一点を示す。

 

「ある程度レイアの体力は削れたはずだとは言え、一切合財油断できないのは承知の通り。俺は地形を利用してこの場所がいいかなあと思う。J.Oはどう思う?」

 

 示したところはまさに、一種の袋小路となっていた場所であった。

 

「段差を使って乗り技を決め、レイアをダウンへと導かせていく作戦か……」

「察しがいいじゃないか」

「なんとなく言っただけだ。それに前もって言うが、俺はそんな危険な真似はしないぞ、絶対に」

「そこは俺に任せておけ」

 

 胸を張って言ったわけではないが、乗り技の一つや二つくらいは、BT時代のレイア討伐戦で経験済みだから、自信は少なくともあった。だから言ったのである。

 

「その様子では、少なからず自信あるようだな」

 

 J.Oは俺をたしなむような目つきで見た。

 

「まあな」

「ユウトくらいならできると思うぜ。何せこいつは……」

「ああ、そこは言わなくていい」

 

 そこで気が付いたかのように、ケインは開いていた口を閉じた。J.Oはケインが何を言いたかったのか少なからず気になった様子ではあったが、どうやら他人の事情にはあまり頓着しないタイプであったのだろう。首をかしげただけで、そこは触れないでくれた。

 

「ともかく、作戦ではレイアをこの袋小路に引き寄せてくれればいいというわけだ」

「いいけどさ。ユウト、俺たちはどうすればいいんだ?」

「そうですよ」

 

 ケインと共にサユリもどうすればいいのか聞いてくる。

 

「そうだなあ」

 

 と言い、俺はしばし考え込むとケインやサユリの実力を考慮して役を与えた。

 

「直接、レイアと相対するのは、厳しい上に危険極まりないからな。お前らには罠の設置役に回って欲しいかも」

「具体的には?」

「そうだな……」

 

 そこで思案してみる。うーん、と唸りやがて提案する。

 

「ケインはシビレ罠の設置を頼む。具体的には、この袋小路の先がいいかも。そして、サユリだが……」

 

 そこでウィンドウ画面を、続いてアイテム一覧を表示させて、一つの回復系アイテムを見せた。

 

「この生命の粉を使って、俺たちのサポートをしてほしい」

「生命の粉、ですか……持っていたかな」

 

 サユリもまた、ウィンドウ画面を開く。

 

「さっきJ.Oさんが使っていた物ですよね。ありますよ。ただ、そんなに多くありませんが」

「わかった。どちらかと言うと直接危険な目に遭うのは、俺くらいなものだと思うけど、やばくなったら頼むな」

「分かりました」

 

 これで、作戦上は問題なくなったはずだ。俺はそう思った。そして、開いていた生態マップ上から現在のリオレイアの位置を確認する。

 方角が示す矢印に沿ってスライドさせていき、やがて密林の奥地エリアにて発見する。

 

「うーん、ちょっと袋小路に誘うには手こずるかもしれないが、なんとかなるかもしれないな」

「なあユウト」

 

 J.Oが珍しくも尋ねてくる。

 

「なんだ?」

「先の作戦上における役割では、俺はレイアを誘導させる役に回った方がいいのか?」

「そうだあ。そうしてくれると助かる」

「了解。誘導させるくらいなら、なんとかできそうだな」

「頼むよ。……さて、それぞれ役が決まったところで、作戦上の進行を説明しようか」

「ああ、そうしてくれ。そこが肝心だからな」

「ですね」

 

 ケインとサユリ、2人が言う。作戦上における進行。大体のことは頭に入れていたが、最終的には総力戦は避けられそうにはないとも思っていた。最後の最後におけるリスク、なるべく減らしたいところではあったが、うーん……。

 

「とりあえずだな。レイアを発見次第、攻撃よりもこの袋小路のところまで誘導させることに専念してくれ。それが第一の作戦だ」

「うむ」

 

 J.Oが頷く。

 

「その際だが、レイアからの攻撃、当然だがくれぐれも注意してくれよな」

「そこは理解している。俺もダテにソロでやっているわけではないからな」

「お前の経験を信じるよ。さて、第二の作戦だが、ここで俺はレイアの隙をついてレイアの頭上から急襲をかけ乗り技をかける。自信の度合いは五分五分と言ったところだが、なんとかダウンに持ち越させるよ。っで、レイアがダウンをとったら、ケインは俺と共に、サユリは無理しない範囲でレイアの尾を集中的に攻撃してくれ。うまくいけば切断することろまで行けるかもしれないからな」

「分かったぜ、ユウト」

「分かりました」

「で、J.Oはというと、そのハンマーの特徴を踏まえて、レイアを気絶状態にさせるべく頭部への集中攻撃を頼む」

「あいよ」

「で、最後に俺の合図でもって、ケイン、サユリ。全力でレイアから距離をとってくれ。そして、俺とJ.Oとで、シビレ罠に誘導させる。そこで最後、残りの試作型大タル爆弾で持ってして止めを刺しにかかる。以上だな」

「具体的な作戦は理解したよ」

「私もです」

「J.Oは、どうだ?」

 

 う~ん、と少し納得いかないような表情を浮かべていたJ.Oだったが、やがて

 

「了解」

 

 とだけ一言は発した。

 俺は彼の思案に少し気になっていたが、作戦上、問題ないと思って片手を出す。続いて、俺の意図を読んだのか、サユリが、ケインが片手を差し出し、俺の手の上に重ねるように。

 

「では、これにて各々武運を祈る。って、J.Oは?」

「ああ、そうだな」

 

 何か考えごとでもあったのだろうか。弾かれたかのように、彼もまた手を重ねた。

 

「じゃあ、武運を祈ってレイア討伐、成功させるぞ」

「「「「おお――!!」」」」

 

 そうして各々が気合い声をあげた後、俺も含め4人は、各々アイテムの確認を済ませた後、リオレイアが待つ密林奥地へと向かうべく洞窟を後にした。

 

 

 

 

 密林奥地付近は山脈に囲まれた中腹地帯に位置していた。それもあってか、傾斜は時おり厳しくなったり、なだらかになったりと高低差が激しかった。しかし、全体的に見ると、密林奥地に近付くにつれ緩やかに平坦な場所へとなっていた。奥地と言う限りでは、密林が鬱蒼とこれまで以上に鬱蒼と生えていたので、とにかく視界が芳しくなかった。さらに言わせると、生態マップを確認しながら歩こうなら、すぐにでも木々にぶつかってしまうんじゃないかと言ったほど、ところせましに狭く感じられていた。そうしたなか、俺は背後が気になって振り向く。

 

「さっきから、なんか妙に気になるんだよなあ」

 

 目線の先にはJ.Oがいた。それも、なにやら時折落ち葉を漁っては、小瓶を持ち出し何かを採取している感じでもあった。幾度となく、そんな感じで何かを採取していたので、思わずと言った感じに振り向き問いかけたのである。

 一方、俺の目線に気が付いてか、J.Oは小瓶を片手に持ったまま立ち上がる。

 

「ああ、これか。別にそんな大したことないよ」

「大したことない? 見るからに、採取瓶じゃないか。それ」

 

 その採取瓶に向かって指差す俺。中身が何かは分からないが、円筒筒状の瓶から察するに、採取した痕跡を入れる瓶だと推測する。

 

「別にいいだろう。お前らには関係ないしな」

「う~ん、それは場合によるな。思うにそれ、採取した痕跡を入れる瓶だろう。何のモンスターの痕跡を辿っているかは分からないけど、場合によっては危険なモンスターの痕跡を辿っている可能性もあるしな」

 

 そこでJ.Oは、ぬぐぐぐぐ、と唸り声を洩らした後、何かをあきらめたかのように一息吐くと、

 

「ほらよ。お前自身の目で確認しな」

 

 と俺にその瓶を投げてよこす。その様子から、恐らくある意味での妥協と言ったところなのかもしれない。

 そう、パーティーを組んでいる以上、情報は自分だけのものではないということで、やや葛藤しての答えだったのかもしれなかった。

 J.Oと瓶に交互に視線を送ると、俺はウィンドウ画面を開き、入手アイテム検索にこの瓶を検査させた。しばらくして、検索結果が大体的に表示される。

 

「蹄?」

 

 大体的に表示されたそれは、蹄の形状をした痕跡だった。そして、その形状の大きさから、ある中型モンスターを連想する。

 

「まさかな……」

 

 そのつぶやきに応えるかのように、J.Oが応える。

 

「そのまさかだよ」

 

 いやな予感が脳裏をよぎる。一方、ケインは気になってか、俺に尋ねてくる。

 

「何か悪いことでもあるのか?」

「ああ、少しな」

 

 それだけ言う。しかし、嫌な予感と言うのは、遠からず的中する可能性を孕んでいた。と言うのも、俺が予感する悪い予感と言うのが、その蹄の主――ドスファンゴのこと。ドスファンゴの痕跡があると言うことは、奴がここを通る習性があるという証であり、それは即ち、レイア討伐において、ドスファンゴと遭遇する危険性を孕んでいたからであった。

 俺はどうしようかと対策を考えた。

 

「う~ん……」

 

 そして、アイテム欄を表示させて何があるのか吟味していく。

 

「なあ、J.O?」

「なんだ?」

「こやし玉、持っていないか?」

「いいんや。ドスファンゴ討伐前提だったから、あいにく持ち合わせていないな。だが、ペイントボールを調合する際に持ってきた素材玉ならいくついか余っているぞ」

 

 素材玉か……。

 

 確か、こやし玉の調合材料は……。そんなことを考えながら、現地調達において、こやし玉を確保する方法を思いつく。

 そう、それは、素材玉さえあれば、あとはモンスターのフンを見つけ出せばこやし玉が確保できるということ。そういうことであった。

 

「なんとかなるな」

 

 俺は自分で頷き呟く。

 

「どうするんだ?」

 

 ケインが、この問題に対して尋ねてくる。

 

「こやし玉を確保する必要があるみたいだ、どのみち。J.O……」

 

 俺は信じて顔を彼に向ける。

 

「言いたいことは何となく理解したよ。ようは、こやし玉確保として、フンを集めて来いってことだろう?」

「まあな」

「いいぜ。そのくらい任せておけ」

「すまない」

 

 礼を述べた。その後、J.Oとは一旦別れ、俺たち3人は、先にレイアのいる場所まで行くこととなった。枝葉で気配を殺し、レイアの様子を窺う。生態マップを表示してみれば、この先、道幅が狭く入り組んでいる地形が確認できた。なんとかして誘い込む分には、なんとかなるかもしれないが、いかせん、ドスファンゴの動向にも注意したいところでもあった。

 

「ケイン、頼んだぞ。くれぐれも発見されないようにな」

「了解」

 

 ビシッ、とまでとはいかないものの、彼なりに気を引き締めたみたいだ。

 ケインが下がった後、サユリに問う。

 

「サポート役、任せてくれるな」

「うん」

 

 彼女は小さく頷く。しかし、その表情は意を決したかのように、凛としていた。ゆえにウィンドウ画面を開くや否や、めまぐるしく項目を確認しているのだろう。瞳が右往左往して動いていた。

 

「さて、あとはJ.Oが来るのを待つだけか……」

 

 彼の準備が終わるまでの間、俺も位置に着くべく動き出す。木々との間を気配を殺すかのように隠れながら移動し、高台へと向かう。

 

「この位置でいいか。あとは……」

 

 その時だった。タイミングを見計らったかのように、J.Oからメッセージが入る。

 

『例のアイテムは確保した。あとは作戦通り行けるぞ』

 

 準備できた知らせを受けて、俺は一拍置くと

 

『なら始めてくれ』

 

 と返信した。

 

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