軽やかに交わした俺は、その隙を突いて
全体像を捉え再び相対する中、俺は思う。思ったよりも(ドスジャグラスは)普通だなぁと。例を挙げるとしたら、そのサイズはイャンクックとさほど変わらないと言ったところ。そんな体躯から、自然と疑問が脳裏をよぎった。
普通サイズであるのにも関わらず、なぜこんなにも遺跡群がめちゃくちゃにされたのだろうと。一部破壊するだけでも、オブジェクト耐久値を削り切るのに一苦労の筈なのに。
しかし、対峙している今、そう言った素朴な疑問を考える余裕なんてない。よぎった疑問を振り払い迎え撃つ。そのなかで、先陣切って向かってくるはドスジャグラス 。仲間が攻撃を受け続けていたことに見兼ねてなのだろう。そいつは突進してきた。
一方、冷静に動向を見極めていた俺は、斜め横に逸れる感じで駆け交わす。ズシンッ?? と遺跡の壁にぶち当たり、建造物の一部が崩壊。ドスジャグラスは崩壊した瓦礫に体の半分を埋める格好となった。
僅かな隙を見逃さなかった俺は、ドスジャグラスの動きが一時的に封じられた中、ジャグラスの群の中へと踊り出る。剣の舞のごとくズバズバ切り裂いていき、刃が唸る。一匹、また一匹、と獲物を仕留めていく中、流石のジャグラスも危機感を抱いたのだろう。剣舞を披露する俺を取り囲むようにして円陣を描き、間合いを開けた。
身の危険を感じて奴らは威嚇し、直接、攻めて来なくなる中、流石の俺も標的がばらけてしまったことで、攻めるのに躊躇してしまう。
そうした中、さっきまで瓦礫に埋もれていたドスジャグラスが無理にでも瓦礫を押しのけ這い出てくる。そして、こちらに向くや否や、その巨体を投げるかのようにいきなり飛びかかってきた。
「くっ!」
歯を食いしばり真横へと身を投げた。直後、ドシンッ?? と地響きを立て、交わしきれた俺は一息ついた。思うに、ガードで一応耐えられるからと言って、建造物をいとも容易く破壊せしめるようなあんな巨躯。まともに受ける気にはなれなかった。とは言え、動けるようになったドスジャグラスとジャグラス達を相手にこれ以上戦い続けるには、多勢に無勢。携帯ゲームとは勝手が違うからこそ、現実的ではなかった。確実に一体一体仕留めるにしろ、どの道、複数相手にする羽目になることには違いない。
(なんとか一番厄介なドスジャグラスだけでも巻ければ)
そう考えつつ、視線だけで周囲の地形に目配せする。そうした中、遺跡群は所々、入り組んでいることに気付く。そしてそこで思った。一旦、身を隠そうと。考えが纏まった今、ジャグラス達を迂回するかのように遺跡群の更なる奥地へと走って目指す。一方、ドスジャグラス達も獲物を逃すまいとして、追いかけてきた。
倒壊しまくっていた遺跡群の奥地奥地へと踏み込んでいくに連れ、それはそれは当然のように踏み込みづらくなって行った。一方、ジャグラス達は4足歩行な上、トカゲのような身のこなしが相まってか、所狭しと散乱した障害物をいとも容易く乗り込んでくる。当然、追いつかれるのも時間の問題であった。とは言え、捲くにしても丁度いいタイミングがなかなかなく、逃げる中、困り果てていた。でも、まぁ最悪、乱戦になったとしても、リスクは高くなるものの切り抜けられなくはないが。
間合いを詰められていく中、頃合いを見計らって立ち止まった俺は、そこで柄に手を当てがう。いつでも迎え打てるよう、身構え周囲の気配に耳を傾ける。幸い拓けた場所であったことから、乱戦になった際、少しはマシな討伐戦はできるだろう。そう読んだ。
そして、立ち止まったことにより、瞬く間に包囲されてしまう。背後の気配も空気を通して感じる中、神経を研ぎ澄ませーーそこで、今までこちらの動向を円を描きながら伺っていたジャグラス達は我先にと言わんばかりに一斉に迫ってくる。だがそこで、突如として遺跡の壁をぶち破ってくるは、あのドスジャグラス 。ジャグラス達の連携攻撃を無視してか、彼らを巻き込んでそのまま突進してくるではないか。
「な、なんだ?? こいつ、仲間を踏み台にして――」
皆まで言う余裕はなかった。包囲されていた上、襲来されていたことによりその場から動けなかった俺は、止むを得ず頼りない盾を構え全力でガード。しかし、巨体故の威力が故、甲高い金属音を轟かせるや強い衝撃を受けて吹き飛ばされてしまった。
勢いが有り余って地を転がり続けた俺は、途中、砕かれた円柱にぶち当たり反動で円柱の後方へ。丁度、円柱の陰に隠れる格好となった。
「う、うう?」
頭部を打った感じがあったことから、本来はそんなに痛くはないのだが、癖で頭に手を当てがいよろよろと起き上がろうとした。――が、その直後、突如として床面が崩壊。
「うわっ??」
驚き声を上げるや否や、不運なことに地下の空洞へと落下してしまった。
「う、うう……」
頭がぼんやりとしている中、ゆっくりと目覚めた。次第に視界が晴れてくるにつれ、頭上ではあのジャグラス達の鳴き声が聞こえていた。
ふと天井を見上げると小さな穴が空いており、そこから弱々しい光が差し込んでいた。
(あそから落ちたのか……)
ぼんやりそう感じて、指をサッと動かし空を切った。いつもの画面が現れると、手慣れた手付きでパパッと操作。自分の体力ゲージを確認。すると、ガードして防いだとは言え、緑色ゲージが2割程削られていた。多分だと思うが、吹き飛ばされた際、色々ぶつけてしまったのが主な要因だろう。そう納得した。軽く深呼吸し、辺りを見回す。と、そこで、額に冷たい雫がピチャリッ。
「ッ!」
冷たい感触が伝わった。手で額を擦った後、改めて周りを見渡す。そして、天井を見上げてポツリと呟いた。
「はて、どしたもんだか」
多分だと思うがジャグラス達を巻いたのは間違いないだろう。そう信じてこれからのことを考える。とは言え、早いとこここから脱出しジャグラス達を蹴散らし、ケイン達と合流することには、変わりないが。
とりあえずそんなことを考えながら、俺は歩き出した。そして思うが、この地下空洞、自然に出来た感じではないことを知った。と言うのも、地上の遺跡群と同じく、ここも全体的に人工物で築き上げられた感じだったからである。特に目の前で倒れている円柱や誰が作ったのか分からないが石像なんかは、その意味を成していた。
そう言えばと、そこでミルクが言っていたことを思い出す。この地区一帯は元々彼らの住処だったことを。それを考えれば、この遺跡群を築き上げたのも彼らじゃないのか。そう考察すれば、自然と合点した。
「にしても、出口あるかな……。ないと困るんだけども」
呟きながら辺りを散策する。所狭しと散乱している壊れかけの備品を踏まないよう、奥へ奥へと踏み込んでいく。この場所でも暮らしていたとしたら、常識的に考えればきっと出口はあるはず。そう信じて奥の壁に辿り着く。地上と違ってこの地下空洞は光があまり差し込まないためか、かなり薄暗い感じではあった。が、この場所が最奥だとなんとなく分かった。
壁に手を当てがい壁伝いに手探りで歩いて行く。すると、そこで突如として!三角アイコンが出現。おっ、これはもしや。期待に胸を少し膨らます。
アイコンの意味は何かのイベント出現合図。躊躇わずアイコンに手を触れた。ピコンッと効果音が鳴り、選択肢が2つほど現れる。
・オプジェクトステータスの確認
・登る
この2択であった。
(登るとは?)
首を傾げた俺は真上を見上げた。天井はくり抜かれており、僅かばかりの外の光が差し込んでいた。思うにここからくり抜かれた天井の中へと登って行くのだろう。そう捉えた。とは言え、登るにしても梯子が見当たらない。選択すれば何かしらの返答はあるとは思うが。
一方、そのこととは別に、もう一つのことも気になっていた。それは、〝オプジェクトステータスの確認″の項目である。俺は思った。登るを選択する前に一応確認してみるか、と。それもあって、その項目を先に選択してみる。
すると画面が切り替わり、対象のオプジェクトに関する詳細が表示されるではないか。色々記載されている中、俺は一つの項目に目がいく。
前から気になっていたこと。――オプジェクト耐久値。それがフォルダ形式で記載されていた。思うに、オプジェクト耐久値はプレイヤーで言えば、体力ゲージみたいな扱い同じ。しかし、オプジェクトだけに、その耐久値は500から1000ほどあっていとも容易く破壊されないはず。そう常識的に思っていた。だが、いざ表示してみると、その常識は呆気なく崩れ去った。
(えっ?)
言わずにはいられなかった。と言うのも、顔をしかめる俺の眼前には、〝60″と表示されていたからである。それも耐久値を意味するその小さな数字がはっきりと。信じられないと思った俺は、目をこすり再確認する。
しかし、数字は変わらなかった。どういう事だろう? 疑問に思った俺は、思案してみる。
うーん……。
そこで思う。もしかして、この弱小耐久値は、一部に限ってそうなっているだけなのだろうか、と。そしてそれは、他のオプジェクトでは、自身が考えている通りの高耐久値になっているはずだとも。
しかし、そう言った勝手な解釈とは裏腹に、どうも土妻が合わない事が浮上していた。それは、経験談から一番の理由として、ドスジャグラス戦での出来事である。と言うのも、戦闘の最中、奴が突進をけしかけて来た際、その勢いで遺跡の壁に激突した時である。恐らくダメージは加えられてはいないだろうその遺跡の壁は、たったドスジャグラスの突進の前に一撃で崩壊したのだ。もし、一部だけオプジェクト耐久値が低いのならば、あの一撃で崩壊するにしては、あまりにもできすぎているのだ。
それに、あの破壊された遺跡群の惨状。一部だけ、と言うのはどうも腑に落ちなかった。暫し考えた末、結局、結論が出なかった俺は、とりあえずその事は後回しに、地上に出るべく〝登る″を選択。直後、頭上から降りて来た、なんだか頼りなさそうな縄の梯子に足をかけた。
登って行く中、なんだか足をかけた縄が切れそうな感じがしつつもようやく出口直前まで登り詰めた俺。穴から顔を覗かせ周囲を警戒する。モンスターの鳴き声が遠くから聞こえてくることから近くにはいなさそうと判断。地上に出、素早く近くの瓦礫に身を潜めた。顔を覗かせ、念のために再確認。警戒する。
(……近くにはいないみたいだな)
落下した地点からそんなには離れてはいないことを考えると、ジャグラス達は獲物を逃したと勘違いし、どこかへ行ってしまったらしい。ふぅ?、と息を吐き緊張がほぐれたのか胸を撫で下ろす。今後、どうしようか。このままケイン達と合流し体勢を立て直すと言う手もあるが、はて、どうしたものか。
方針を立てる中、とりあえず生態マップを表示。現在地を示すマーカー周辺の詳細を知るべく拡大する。マップ上の地形には特に変化はないが、ケインと離れ離れになったであろう地点を探す。
(確かあの場所は……)
思い出せば、あの場所は遺跡群の入り口からそんなに離れていなかったはず。それを考えれば……。
目視でおおよそのメドを立て、マップとは別の画面――チャット機能を表示させた。念のためにチャットでケインの安否を聞く。離れ離れになる間際、ドスジャグラスの気を引いた感じであったが、あまり危険な目には遭ってはいないとは思う。が、ただ、ケイン達の側にいたであろうキングチャチャブーを多分相手にしているはずだから、正直なところそこが気がかりではあった。
そして、しばし待つこと数分。返信がすぐ来ないことに心配してはいたが、埒が明かないこと。そして、ミルクもいるから大丈夫だろう。そう考えたこともあり、彼と合流すべく歩き出した。
――と、そこで、
グシャッ!
泥を踏みつけるような、滑り気のある感触が足元から伝わってきた。
「ん!?」
思わず足元を見やる。すると、やっぱりそこは泥溜まりだった。だが、よくよく見ると、ただの泥溜まりではなかったことに気付かされる。
泥溜まりから出た俺は、一段と高い場所から確認すべく、瓦礫の上によじ登った。そしたら――
「これは……」
まさに〝痕跡?であった。具体的には、何か大型モンスターの足跡。それもドスジャグラスが残した足跡と言う名の痕跡よりもさらに大きなもの。
(他にもいるのか? この樹海に?)
嫌な予感が脳裏をよぎる。俺は思った。一刻も早くケインと合流せねばと。得体の知れない大型モンスターの存在を知った俺は、瓦礫の上から下り、ケインがいるであろう方向へと駆けた。
タッ、タッ、タッ、タッ……
地を蹴って走って行く中、道中には、あのドスジャグラスが手下のジャグラス数頭を連れ待ち受けていた。足止めを食らった俺は、そこでさっと身を隠そうとする。――が、そこで、俺はドスジャグラスの背中に得体の知れない爪痕が刻まれていることに気付かされる。
一見して、鋭利な牙で噛まれたような痕。肉がやや抉れたようなその痛々しい傷跡から、何かに襲われたような感じが見て取れた。
(もしかして、さっきの痕跡と何か関係あるのでは……)
予想が脳裏を駆け巡る。だが、その直後、
パキッ!
その痛々しい傷跡に多少動揺してしまったのだろう。いつの間にか、後ずさり、思わず枝葉を踏みつけてしまった。
ヤバッ!!
だが、時はすでに遅かった。音に敏感に反応してか、ドスジャグラス達の群れのうちの一匹がこちらに気付いて振り向いたのである。瞬く間に周囲の空気は張り詰め、こちらを向いたその一匹と対峙する。本当のことを言えば、得体の知れない痕跡を見つけた以上、騒動を起こさずすぐさま素通りし、ケイン達と合流したかった。だが、この一触即発の空気では、そうそうやすやすと通過できそうもなかった。
両者睨みつつ警戒し合う中、ついに威嚇の鳴き声をジャグラスは吠えた。
「チッ! 結局かよ」
舌打ちし、迎え撃つ態勢を。一方、群れのリーダーであるドスジャグラスは、先の鳴き声による害敵発見の知らせを受け、例のジャグラスと同じ向きに。当然、こちらに気付いてしまう。もはやこうなった以上、やるしかない。いくら雑魚のジャグラスとは言え、多勢に無勢。そして、おまけにドスジャグラス。気を引き締めて構える。
先陣切ってジャグラスが3匹、かかってくる。噛みつき攻撃を連続でかましてくる。が、俺は軽やかにかわすと、ドスジャグラスをできる限り視界にとどめつつも、その3匹のうちの一匹にカウンターを仕掛ける。
間髪入れず、連続攻撃。4撃目を加えたところで、真横から食らいついて来たジャグラスの攻撃から飛びのく。囲まれるのを防ぐべく間合いを空け、先ほどまでのジャグラスとの交戦を無視して俺は2匹目へと斬りかかった。だが、そこでドスジャグラスが割り込む。突っ込むように迫ってきた感じから、突進か?? と一瞬思い走って避ける。が、次の瞬間、それは見せかけだと気付かされる。急に立ち止まったかと思われたドスジャグラスは、急遽、真横へと避けた俺をめがけ大口を開け、体を捻って噛み付いてきたのである。
「うわ!」
流石の俺もこれにはびっくり。思わず後ずさり、足元が泥溜まりだったこともあり足をすくわれ尻餅をついてしまう。しかし、すぐさま立ち上がり体勢を立て直すと、その場を離れる。まずは気が散って仕方ないジャグラスの掃討が先。近くにいたジャグラス一頭に斬りかかる。一撃、二撃、三撃、と続けていく中、ついにその一頭は、堪らず怯んだ。追い討ちをかけたかったが、そこは深追いせず、ジャグラスの群れの全体像を掴む形で距離を置く。ーーと、そこで先に交戦したであろジャグラスがいつの間にか裂傷状態になっていたことにより、断末魔を上げるとその場で力尽きてしまうのを目撃する。
(一匹は仕留めた。あと、3、4、5……8匹)
得体の知れない痕跡が見つかったことにより、早く済ませたいといった焦りを感じつつも、そこは我慢。確実に数を減らしドスジャグラスを始末する事だけに集中する。
ドスジャグラスを中心とした群れ全体を回り込むようにして立ち回り、ついでにジャグラス一頭に向け再び斬りかかる。そうした中、ドスジャグラスはその巨体を生かし、攻撃中の俺に向け飛びかかってきた。
しかし、奴の動向を予め視界に捉えていたことにより、攻撃の予備動作から難なく交わすことはできた。一方、奴の飛びかかり攻撃に巻き込まれたジャグラスは、堪らずその巨体の前に下敷きになった。
これであと7匹。
うまく立ち回り囲まれそうになる危険を回避しつつ、追撃をかけていく。
そのなかで、ドスバイトダカーの刃がうねりを上げ、一匹、また、一匹と獲物を仕留めては、時折、裂傷の状態異常を付与。確実に数を減らしていった。
「ふぅ~、これでようやく……」
溜め込んでいた息を吐き出し、ぽつりとつぶやく。
現状、残りはドスジャグラスを含めてあと3匹。
とにかくジャグラス2頭さえいなくなれば、あとはドスジャグラスだけ。そうなれば切り抜けられる自信はあった。柄を改めて握り締め直し、最後にもう一度気合いを入れ相対する。
――とそこで、どこからともなく、
ガサガサ
と葉音が。そして、それと同時に
ズシンッ!! ズシンッ!!
と大きな振動を伴った足音が聞こえてくる。
俺は、まさか、奴が、と直感を働かせた。しかし、その一瞬が仇となった。新たな気配に気を盗られていた俺は、ドスジャグラスの飛びかかり攻撃の予備動作に気が付かず、ハッとなって気がついていた時にはすでに遅し。
思わず盾を構えガードするものの、その巨体からくる衝撃に耐えられず、またもや吹き飛ばされてしまう。刹那、緩やかな放物線を描き、そして、木々に背中を激しく叩きつけられてしまう。
「……いてててて……」
背中と頭を手でさすり、苦悶の表情を浮かばせる。そのなかで、幸いなことに気を失わなかったものの、先ほどのダメージで体力ケージも持っていかれただろう。そう感じて、恐る恐る体力ケージバーを表示。確認する。
(大分、減らされたな……)
体力残高は半分程度と言ったところ。これ以上、油断していると、あっという間に残量が尽きる恐れが見えていた。
〝キャンプ送りだけは、なんとしてでも避けなければ″
警告文のように、そう脳裏によぎる。画面を表示させ、手早く操作。ここはできる限り使うまいとしていた回復薬。それを選択し、掌に出現。早速、使おうと旨いジュースを一気飲みするかのように口元に近付けた。――と、その矢先、新たな気配の正体が茂みの中から露わに。俺は思わず目を見開く。
(アンナジャフ??)
思わず付いた言葉。しかし、言ったそばから、俺に向けこれから追撃して来ようとしていたドスジャグラスへとそのまま襲いかかり、そして――
ガブリッ??
鋭い牙を幾重にもギラつかせた
だが、アンナジャフの強靭な噛み付きは、そんな抵抗をものともしない。一旦、解放するが、そこで今度こそ大好物な肉を全力で食らいつく感じで再びーー
ガブリッ??
厚肉を引き千切らんばかりに、強引に顎を振るう。一方、流石のドスジャグラスもこれには、応えたのだろう。こっちのことはもはや眼中になく、これまで以上の大出血を吹き出しながら、更なる抵抗、暴れ回る。たが、アンナジャフの2度目の一撃が致命的なものになったのだろう。食い千切られ体力のほぼ全てを奪われたドスジャグラスは、最終的にささやかな抵抗した後、そのまま力尽きてしまった。
まさに衝撃的なシーンを終始傍観していた俺は、底知れない恐怖を感じながら思う。
(あんな目に遭うのはごめん)
だと。全身が戦慄する中、すっかり腰が引けて動けない俺。方やアンナジャフの出現とリーダーを一瞬で奪われた2頭のジャグラスは、これには流石に死の恐怖を感じたのだろう。弱々しい威嚇を見せたものの、アンナジャフの咆哮の前にドキリッ?? 今度こそ命の危機を感じ、一目散に散ってしまった。
弱肉強食とはこのことを言うんだな。アンナジャフに気付かれる前にそそくさと倒木の陰に隠れていた俺は、そう改めて認識する。
その後、暫く肉の塊と化したドスジャグラスを頬張っていたが、ある程度食い終わると、満足気にこちらに見向きもせずに立ち去ってしまった。残るは自分だけとなる中、恐る恐る木陰から姿を見せた俺は、亡骸と化したドスジャグラスへと近付く。そこら中に食い千切られた肉片が散乱しているところを見ると、アンナジャフの凶暴性、野蛮性がひしひしと伝わってきた。
辛うじて最初に見た深い噛み跡が残っていたのを再び見た俺は思う。多分であるが、このドスジャグラス 。きっとアンナジャフ から狙われ逃れてくる中、きっとこの住処に辿り着いたのだろうと。アンナジャフがこの(猫の)住処にまでわざわざ来るなんてまず考えにくいことから、アンナジャフ目線からすれば奴はそのドスジャグラスを執拗に追ってきたことに合点がいった。
ドスジャグラスの出現により住処が奪われた理由を知った俺は、片手剣を納刀。
(さて……)
そう、ぼやきつつ再度、生態マップを表示。ケイン達の居所にメドをつける。――と、ここで受信欄に〝New″の表示がなされ彼から返信が来ていることに気付く。
(お、来てたか)
返信来てくれたことに半ば安堵した俺は、早速、開封。そこでケイン達が置かれた状況が非常にまずいことになっていることを知る。返信内容から、ケインの居所を知った俺は、必死で踏ん張っている彼らの元へと助太刀しに向かう。