間合いを見誤らないよう慎重に足運びをしながら、迫る凶器を気合いで交わしまくる。そんななか、チャチャブーの持つ鉈がキングチャチャブーとは違い、大してリーチが長くなかったことが幸いしそこまで苦労して交わす必要がなかった。だが、これだけは言えた。ミルクと共闘して対処しているとは言え、確実に
〝追い詰められていた″
前へ前へと踏み出して行けば、そのうち切り抜けられる見込みが見えるはず。なのだが、多勢に無勢。間髪入れず襲いかかってくるチャチャブーの前に、後退しざるを得なかった。敵から目を背けず聞く。
「ユウト、まだか? こっちはもう限界に近いぞ」
「多分、もう少しだと思う。奴の動きが徐々に鈍くなってきているから。だから――」
そこで言葉が途切れ、代わりにキングチャチャブーの奇声が飛び交う。次の瞬間、奴の攻撃行動を予測したのだろう。
「ケイン?? そこからよけろ!」
彼の切迫詰まったような声音。ケインは思わず振り向くと共に
「えっ?? どうした?」
次の瞬間、眼前に
「うわっ!」
振り下ろされる。目を見開いたケインは、間一髪、その場から飛び退く。うつ伏せから立ち上がり、額に冷や汗を掻いて
「じょ、冗談じゃねぇや、今の」
肝冷やしたと言わんばかりに青ざめる。だが、ケイン自身、気付いてはいなかったが、これはある意味好機と捉えたのだろう。
「ある意味、これはラッキーかも」
ユウトは小さく呟いた。一方、その言葉を聞いたケインは、何のことなのかさっぱりと言わんばかりに文句を吐きつける。
「何がラッキーだよ。こっちは危うく斬りつけられるとこだったんだぞ。あの
「あー、はいはい。だが、よく見ろよ。先ほどまで挟み打ちだった状況が、これで覆ったじゃないか。ミルクは別だけど」
「覆ったって。何を言っているんだ。だってどの道囲まれていることには……」
そこでケインもようやく気付く。確かに追い詰められてはいたが、先ほどまでの挟み打ちとは状況が違っていたことを。ととのつまり、壁際付近まで追い詰められてはいたが、挟み打ち的な状況よりかは大分戦いやすい戦況となったのである。それもあり、ユウトはここで気を取り直す。
「こっからが正念場だぞ、ケイン。気合い入れて斬り込むぞ」
しかし、ケインは状況が状況だけに、彼の戦法が無謀に思えた。それもあって反論する。
「でも、斬り込むつったって。あの群れの中にいるキング、どうやって仕留めにかかるんだよ? どう見たって自殺行為じゃないか」
――とそこで、ミルクがなさげなさそうな声をあげて助けを乞う。
「た、助けてにゃ~」
しかし、2人はそんな声に耳を貸すことはなく、話は続く。ましてやケインなんかは、ミルクの声に耳を貸す余裕なんて微塵たりともなかった。なんてたって、命がかかっているんだから。
「確かにな」
「だったら」
そこで、ユウトはケインに見せるように、握っていた掌を見せた。そこには、さっき投げ付けた物と同じ投擲
「ん? 煙玉?」
首をかしげるケイン。ユウトは
「そう、煙玉。最後の一個さ」
そこでケインは、勘繰ったのだろう。
「まさか??」
それに応えるように
「そのまさかさ」
言ったそばから、最後の煙玉を群れの眼前に投げ付けた。そして、煙玉の効果が出る前に彼は言い放つ。
「一気に畳み掛けるぞ。ケイン、雑魚は頼んだ」
「お、おい!」
制止を振り切り、ユウトは猛然と駆け、群れの中へと斬り込んで行った。片や取り残されたケインは、そこでヤケを起こす。
「あーもー?? どうなっても知らんぞ」
直後、ボンッ! ボンッ! と煙が立つ。そんな中、ケインもケインで、太刀を無闇矢鱈に振り回して突撃すべく走り出す。白煙の真っ只中を斬り込んでいく中、振り回した刃が次々とチャチャブーに当たり、時折、白い空間に鮮血が迸る。やはり、視界を奪われたチャチャブーは隙だらけになり攻撃が当てやすい。そう感じたケインは、さらに勢いに乗って乱舞しまくる。だがしかし、視界を奪われたチャチャブーはやられてばかりではなかった。見えないなら見えないなりに、こちらも小柄の鉈を振り回し、奇声を上げて襲いかかる。
互いによく見えていない状況。そうした中、太刀を振り回しまくっていたケインは、そこで刀身が仄かな紅色のオーラを纏っていることに気づく。
「これは一体……」
しかし、闇雲に次から次へと襲いかかるチャチャブー達を相手にそんなボーとしている余裕はなく、頭を切り替えケインは変化を生じた太刀をブンブン振り回して切りまくった。そして、太刀に生じた変化は、全身にも気となって伝わり、一つの新技を編み出す道筋となっていき――
「おりゃ――??」
最後の一閃が真横へと切り結んだ直後、紅色の一閃が衝撃波となってチャチャブー達を襲い――
ガキキキ――ン??
金属を打ち砕かんとばかりの効果音と共に、これまで以上の大出血を伴ってチャチャブー達数匹は吹き飛んだ。自分が何を繰り出したのか理解出来なかったケインは僅かに反応が遅れて
「……えっ??」
きょとんとなってしまう。それはまさに、自分が何をしたのかまるで分かっていないよう。未だに紅く仄かに輝く太刀を見つめて不思議がっていた。だが――
「ケイン!!」
そこでハッとなって我に返った彼は、咄嗟に真横を見、
キィー!! キィー!! キィー!!
訳の分らん奇声を上げ、自分に向かって飛びかかるチャチャブーを目の当たりに。
「のわっ!」
と再び驚き尻餅。けれど、すぐさま立ち上がろうとする。――が、間髪いれず斬りかかってくるチャチャブー達の猛攻にそんな余裕話なく、結果的に尻ずり状態に。やみくもに太刀を振り回すも無駄なあがきでしかなく、とうとう壁際まで追い込まれてしまい――
(もう、ダメだ――!!)
両手を掲げ、まとめて2、3匹飛び込んでくるチャチャブーを相手に覚悟を決めた。――とその時、振りかざされたのは
〝
ポンッとのかったのは、チャチャブーの体。小柄な体格からくる少々重い体重であったのだ。思わず
「えっ!?」
となったケインは、視線を奴と合わす。すると、そこには凶悪じみたチャチャブーの様ではなく、何かしら戸惑っているような感じを滲ませる子供のような様であった。これはどういう……。そんな疑問が頭をもたげる。が、その疑問はユウトの声で打ち消されることとなった。
「ふぅー、やっと片付いたぜ」
手で額の汗をふき通りながら、すがすがしい表情を見せる彼。
「片付いたって?」
何が起きたのかさっぱりだったケインは、そんな事を口にする。
「ああ、片付いたさ。ほらな」
そう言ってユウトは、一つのある物を指差す。他のチャチャブー達が地面に穴を掘って退散する中、そこにはある物ーー焼き肉セットがポツンと置いてあった。それを見たケインは、もしかして擬態しているんじゃあとか疑念を抱き険しい表情を見せるが、ユウトはそれを否定する。
「そんな顔するなよ。討伐しきったんだからさ」
言うや否や、ユウトは残された焼き肉セットに近づく。少し様子見していたケインであったが、焼き肉セットが何も反応見せる様子がないことから、ようやく安心。はぁ?とため息を漏らすと共に、全身の力が抜けたのか、ガスが抜けた風船のごとく、その場でへたり込んでしまった。
「やっと終わったんだな……」
「ああ、やっとな。お疲れさん」
労う言葉を返し、残された肉焼きセットを剥ぎ取る。
「ところでユウト。何手に入れたんだ? 一目見た感じから、どうせただの肉焼きセットだと思うが」
「まぁ、言う通り肉焼きセットだな。だけど、ただの肉焼きセットじゃないことは確かなようだぜ」
「それって、どう言う……」
そこでユウトは、先程手に入れた戦利品を画面上で表示させ彼に見せた。一見して、ただの肉焼きセットに見えるが、よくよく見ると、一般的な肉焼きセットよりも串の部分が長く、焚き火部分の囲いやら付属の腰掛け椅子やらが結構、手の凝った作りとなっていた。
「これは……」
「高級焼き肉セット。今回のイベント専用素材さ」
「じゃあ……」
「ああ、どの道、討伐した甲斐があったってことさ」
そのことを聞いて純粋に喜ぶケイン。
「やったな」
「ああ」
二人はパチンッと喜びのタッチを交わす。
「さて……。そろそろもど――」
そこでケインが前々から疑問に思っていたことを聞いてみた。
「ところでよ、ユウト」
「ん?」
何用かと言わんばかりに、視線だけを送る。
「そう言えば、俺があのチビすけたちに追い詰められていた際、どこからともなく現れてくれたけれど、どこからこのエリアに来られたんだ? 包囲されている中、割って行って助太刀できるわけないと思うけど」
しばし、何のことなのか思い出す感じで黙した後
「……ああ、そのことか。それは簡単さ」
そう言って、ある一点を指さす。
「あそこから来たのさ。回り道だったからそれなりに時間かかっちゃったけど」
そう言って指差す場所。そこは、ミルクとケインが揃って追い詰められていた際にいた場所にある崖の上。その崖の上にある、雑木林で若干覆われていた抜け道であった。そのこともあって
「ああ、あそこからなのか。てことは……なるほどね」
どういうことなのか、大体理解できた気がした。一方、当たり前のように答えてやったユウトの方は、ケインが何を納得したのかは分かっていない様子であった。
「なるほどって、何か分からないことでもあったのか?」
しかし彼は
「うんうん、なんでもない」
教えなかった。
そう……
ケインが自分で納得したこと。それは、ユウトがどういうルートを辿ってきたかまでは把握できなかったものの、どの道、一方通行ではあるが、ちゃんと道が繋がっていたこと。そして、ケインが助けを呼ぶメールにきちんと応える形で助けに来られたこと。そう言うことであった。
「教えないって。……逆に少し気になるじゃないか」
「だから、何でもないって。さあ、行こうぜ」
歯にものを言わせないぞ。そう言わんばかりに、勝手に歩きだしてしまう。
「ったくよ」
まさに渋々納得した的な表情を見せるのであった。だが、そこでユウトは、何かを思い出したかのように呼びとめる。
「あっ、そうだ。ところでよ」
今度はユウトがケインに語りかけたため、ケインは立ち止まって
「ん?」
と、振り返る。
「言うの忘れてた。新技の会得、おめでとう」
しかし、彼が言っていることを理解できなかったのだろう。一瞬だが、首をかしげた。
「新技?」
しかし、少し間を置いて気付いたのだろう。
「あー、もしかしてアレのこと? なんか、こー刀身が赤みを帯びた際に放った斬撃的な」
「そうそう。そのこと」
「でも、んー、確かにあの一撃は今までとは一味違った感触はあったけど、技を繰り出したような実感、あまりなかったぞ」
自分で言うのもアレだが、確かに実感はなかった。ただ闇雲に斬っていた中での延長で、たまたまあーいう風な形になってしまった感じだったのだ。しかし、ユウトの返答は違っていた。
「それでもさ。多分、技自体、初歩的なものだったからそう感じただけかもな」
「初歩的ねぇ。……でも、実感がなかったとは言え、僅かばかりの変化は感じられたかな。なんか途中から刀身が赤みを帯びていたから」
「それだよそれ」
「えっ?」
突然の指摘に戸惑うケイン。彼の言葉を聞いていたユウトは、単刀直入に言う。
「鬼刃斬り。刀身に赤みを帯びていた際にお前が放った技の名だ」
「鬼刃斬り、ねぇ?。んー、さっきのがそうなのか。ん?」
何か思うところがあるのか、そこで物思いに耽ってしまう。と言うのも、初めて技を繰り出せたことを指摘されても、やはり実感が湧かなかったからである。無我夢中で斬りまくっていただけに、最後の一撃はその延長線上にあるものとしか思えなかったから。そうした中、ユウトはすれ違い様に彼の肩を手を当て、褒める。
「まぁ、そう言うことだ。偶然とは言え、技を繰り出せただけでも、上出来だぜ」
先に歩を進めるユウト。彼が遠くなっていく中、ケインはこれ以上考えても仕方いないと頭を切り替え、歩き出した。ところがそこで、ユウトが立ち止まる。隣に来たケインは尋ねる。
「どうした?」
しかし、ユウトは視線だけを彼に向けるだけで何も言わず、再び前方に向く。不思議に思ったケインは、同じく視線を前に向けーーそこで、遠くからヨロヨロと今にも倒れそうな、1匹のアイルーが近寄ってくるのを見る。
遠くからが故に誰なのか視認しずらかったが、先に動いたのはユウトだった。
「酷いにゃ、……僕を置き去りにして……」
歩み寄りながら、
「でも、頑張ったじゃないか……、おっと!」
力尽きて足元から倒れ込んでしまうミルク。ユウトはギリギリで駆け寄り、そっと抱き抱える。息絶え絶えのミルクは、声を絞り取る感じで文句を言う。
「助けて……はぁ、はぁ、くれなかったから、……危うく八つ裂きにされるとこだったにゃ……」
「悪りぃな。自分たちで余裕なかったばかりに。でも、信じてたぜ。自力でなんとか切り抜けられるだろうってな」
そこで、
「それは買い被り過ぎだにゃ。……はぁはぁ、……いざと言う時に穴掘って逃げれるなんて、……甘すぎ……だにゃ。はぁはぁ、……こっちは……穴掘るだけでも大変にゃのに。それに今回の場合、そんな余裕なんてなかったにゃ??」
怒り口調で捲し立てる彼女。さすがにケインは悪気あったと言わんばかりに
「それはすまなかったなぁ」
ペコペコと何度も頭を下げて謝る。が、ユウトの場合は逆で、てか、メンドくさそうに謝った。
「はいはい。悪かった、悪かったよ」
それはまさに真剣さに欠けた態度。当然っちゃ当然だが、ミルクは、さらに怒りだす。
「なんだにゃ!! その態度は。こっちは本気で怒っているだにゃ。それを……」
「はいはい、悪かった。今度からは、もう少しだけ気にかけるよ」
その態度。まさに半分は真剣で謝っている感じであった。一方、その態度にため息を漏らすと、
「まぁ、これ以上話しても無駄みたいだにゃ。なんかあっても知らないからにゃ」
そう言うや、これ以上、怒り続けても仕方ないと感じたのだろう。ミルクは自力でなんとか立ち上がると、一人、勝手に帰り出してしまう。そして、帰っていくミルクの背を見ながら、ユウトは呟く。
「はぁ?、もうちっと真剣に謝ればよかったかな」
「まぁ、俺は知らないけどな」
「だよなぁ」
こればかりはミルクとユウトの問題。てか、彼があんなふざけた態度を取ったのがそもそもの要因。まぁ、自業自得、ってやつであり、ケインはそう応えるに留めた。
「まぁいっか。いずれ時間が解決してくれるだろうし。よし、帰るぞ、ケイン。サユリが待っている」
そう言うと、ユウトもまた、ミルクの後を追う形で歩きだした。
しばらくして……
時折なく小鳥のさえずり以外、静まり返った遺跡群の真ん中に来たケインとユウト。ミルクとある程度距離を取りながら歩いていたユウトは、そこでミルクが立ち止まったことに同じく立ち止まる。その可愛らしい小耳を立ててそわそわする仕草は、何かを聞きとっているようにも見えた。
(何かあったのだろうか?)
疑問に思ってミルクに歩みよろとしたその時、ちょっと待て、と言わんばかりに手を遮られ制止させられる。思わず立ち止まるケイン。2人して、ミルクの様子を気にかける。
しばしの間を置いて、ミルクはどこへ行くのやら、唐突に明後日の方へと走り出した。一方、ユウトも同じくミルクの後を追いかけだしたので、ケインもつられて後を追う。遺跡群の間を縫うように生い茂る茂みをかき分け、ようやく開けたその場所。そこには、一本の巨大支柱が倒れているものの、その隙間からは白いあるものが2、3個と顔を覗かせていた。よくよく見ると、それは――
「卵?」
ぽつりとつぶやくケイン。それもそのはず、そこには白い楕円形の形をした小さな卵が、フワフワした藁の上に横たわれてあった。何の卵だろうか。疑問に思っていたケインであったが、その答えはミルク自身が告げる形で知ることとなった。
「よかったー。無事だったんだにゃ。グークの卵」
「グーク?」
どこかで聞き覚えのある言葉。ケインは記憶の糸を手繰り寄せるように、唸りながら思い出してみる。すると、そう言えばと、ギリギリ思い出すことができた。
(あー、あの白いアヒルの)
チャチャブーと初めて交戦する前、サユリと共に発見したミルクと大体背丈が同じくらいか、やや小さいくらいのアヒルのことを思い出したのである。心の中で相槌を打つ中、ミルクは無事だった卵以外のものーー肝心のグークを探す。
「おーい、グークゥー!」
親のグークの姿を求めて呼びかけるミルク。二人してミルクを見守る中、どこからともなく、グァー、グァー、鳴く声が。ユウトがミルクを見守る中、ケインは声のする方を探し求め、そこで足元が何かにスリスリされている感触を感じる。思わず足元を見たケインは、そこで、うわぁ?? と驚きたじろいだ。
一方、ケインの驚きを聞いたユウトは、
「あ、いた」
と、一言。続いて未だに探し回るミルクに呼びかけた。
「おーい!! いたぞ、ここに。おーい!!」
しかし、ミルクは探すのに夢中になっていたらしく聞こえていない様子。そこでユウトは、何を思ったのか、はぁ~とため息を漏らした後、
「しかたねぇな~」
と彼らしくもなくイタズラ的な笑みを浮かべる。ケインの方へと歩み寄り、未だに彼の足元をスリスリするグークを優しく抱き上げた。
「ユウト?」
さすがのケインも不思議な表情を浮かべる。
「まあ、見てなって」
そう言い残すと、忍び足でミルクに近寄り――彼女の真後ろに付ける感じでグークを置く。一方、ミルクはそんな事は知らずして、探すのに夢中。ここから見える先の展開は、まさにある種のドッキリ作戦と言った感じであった。
と言うのも……
「グークゥ、おーい?? 本当にどこ行ったんだにゃ。……まさか、本当に食べられちゃったんじゃ……」
探しても探しても見つからないことに、とうとうネガティブ思考へ。嫌な予感を口にし出す。それもあってか、すっかり俯いてしまうミルクであったが、そこへ真後ろにいるグークがツンツンとつっついた。最初は気にも留めなかったミルクであったが、何回も突っついてくることに、ユウト達がからかっているのだろうと勘違い。
「いたずらはやめるにゃ。ほっといてくれ。どうせ見つからな――」
そこで後ろを振り向いたミルク。視界にグークの顔が目いっぱい移り込み、これまた
「ふぎゃ――!!」
と驚き腰を抜かす。――が、その直後、その表情は安心感に包まれたかのように笑みで満ち溢れる。
「グーク。そこにいたのだにゃ。心臓が飛び出るほど驚いたけど、無事で本当に良かったにゃ」
そう言うや、グークを抱きしめた。グァーグァー、と鳴くグークは、ミルクを心地よく受け入れるかのように、白羽を広げミルクを抱きしめる。
〝感動の再会?
まさにそんな光景であった。しかし、ケインからすれば、これは半分がユウトの悪戯によって再会したことには変わらない。けれど、そんなことはもはやどうでもよかった。それもあってか、ユウト自身も、どことなく悪戯っぽい笑みが消え、純粋に表情がほころんでいた。
「よかったじゃねぇか」
自分がしたことは伏せておき、言葉をかける。それに応えるかのようにミルクも頷いた。
「じゃ、行こうか、ミルク」
「うん。でも、この子たちも連れて帰るにゃ。どの道、ここにいたら危ないことには……」
そこで、突然ふらふらとしたかと思ったら、あっ、と一言漏らし、その場で崩れ、その様を見たユウトはすぐさま駆け寄り、ミルクを抱きかかえた。めまいみたいなものを感じていたのだろうか。つぶらな瞳を閉じていたミルクはゆっくりと目を開き、弱弱しい声で言った。
「……どうやら、無理しすぎたみたいだにゃ」
「だろうな。さっきから無理して探して回っていたみたいだったからな」
「だにゃ」
薄らいでゆく意識の中、ミルクは彼に頼みごとを述べる。
「お願いがあるにゃ」
その言葉の意味を知っていたのだろう。ユウトは
「ああ、分かっている。そこのグークとその卵、連れて帰るんだろう」
「……そうだにゃ。……お願いできるかにゃ?」
「ああ、いいぜ。だから、ゆっくりと休みな」
そう優しく言われたのか、ミルクはゆっくりと瞼を閉じると
「ありがとうにゃ」
そう言い残して、そのまま安心しきったのか気を失ってしまった。
「さて……」
ミルクをお姫様抱っこのように抱えると、ユウトはケインの方へと向く。
「さっきの話聞いていたと思うけど」
「ああ、分かるさ」
「じゃ、お願いな」
そうニ三ごと言葉を交わすと、ユウトはミルクを。ケインはグークの卵をいくつか抱えアイテムポーチに入れられるものは入れ、グークと共にその場を後に。2人と一匹はサユリ達の待つゴミ捨て場へと帰還する。
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