モンスターハンターアルカディア   作:ぷにぷに狸

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1章:悪夢の祭典・4話

 俺とケインが静かに見守るなか、公開記念祭開催を意味するカウントダウン花火が打ち上がり続ける。夜空に散りつつも色鮮やかに表示されたカウントダウン花火は残り7秒目を示し、――6――5――4――3――2――1――『OPEN START』の文字花火が打ち上がると共に、盛大な音楽が流され遂に開幕する。直後、そこらじゅうから歓声が沸き上がるなか、隣席で興奮するケインをよそに、俺は遂に始まったかと微笑む。

 

「とうとうって感じやな。これから開かれる数多なクエストに行けると思うとワクワクするぜ。な~ユウト♪」

 

  と、ろくに会話も聞いていないのに、高揚としたケインはここぞという形で突然俺にふってくる。内容を知らない俺は、そこで適当に合わせる。

 

「え、あ、ああま~そうだな。うんうん」

「だろう? やっぱりユウトもそうなんだよな」

 

 そう言って、にこやかに俺の背中をポンと軽く叩いてくる。俺は調子合わせるように、へ、へへへと軽く微笑み返す。のだが、心中、どうでもよかった。――とそこで、ふと会場の真ん中にある大舞台に視線を移した俺は、そこで、舞台上に人影が出てきたことを見て、なあなあと逆に呼び掛けケインを振り向かせる。

 一方、ケインはえっ、とだけ答えると、そのまま言われたとおりに振り向いた。人影はゆったりと舞台の真中まで歩いてくると、そこで両掌を前に重ねて立ち止まる。よくよく見ると、赤ラインが入ったベレー帽を被っている上、 赤ラインが入ったセーラー服を着、さらに三つ編みをした華奢な女の子。本作の看板娘・ローラこと先ほど桟橋で遭ったばかりのセツナだった。彼女いわく、モデラー(ローラ)としての衣装よりか桟橋で遭った時の私服の方がいいと言っていたが、俺的にはその逆が似合っているんだけどなあと思った。でも、こればかりは本人の好みなので、これ以上は何も思うことはなかった。

 俺たち――いや、観衆が一様に見つめる中、セツナはささっと手を払ってウィンドウ画面を出すと、手際良く操作。出現したマイクを手にし、開口一番元気よくそこで挨拶をしだす。

 

「プレイヤーの皆さーん、こん・にち・わ――!!」

 

 虚空に響き渡るセツナの声音。木霊のごとく、その場にいたプレイヤーは返す。

 

「「こん・にち・わ――」」

 

「はーい、プレイヤーの皆さん、元気でなによりですねぇ~。ではでは、ログイン者数1500万人達成を記念して開催されることになる本祭典。この私ローラが、司会担当を務めさせて頂きますね~」

 

 それを受けて、返すようにして観衆が返事をする。

 

「「はーい」」

 

 伴って、つられてケインも

 

「はーい」

 

  と高らかに手を振って返事をしてみせる。続けて、何かを吟味するかのように

 

「んー」

「どうした?」

「やっぱりローラちゃん。どこからどうみても可愛いぜ。なあ、そう思うだろう? ユウト」

 

 しかし俺は、それには直接答えず

 

「可愛いも何も、お前知らないのか?」

「何を?」

 

 逆に言われてキョトンとするケイン。俺はローラの正体をさらりと告げた。

 

「ローラ役を演じているのはセツナだよ」

 

「え!? マジかそれ」

 

 初めて知りました的な表情を浮かばせて、そう驚く。

 

「知らなかったのか? 雑誌に記載されていたぞ。裏表紙に小さくとだけど」

 

 ところが、

 

「雑誌? そんなの買っていないからわかんねぇ~」

 

 と、外国人がオーノーといった感じでポーズし出す。

 

「重要書籍だと言うのに買っていないんかよ。……はあ~、一冊でもいいから雑誌買えよ雑誌」

 

 せっかくの大作だと言うのに、雑誌すらかっていないとは。俺は頭を抱える勢いでやれやれと呆れてしまう。そうしたなか、ローラの方では、次なる紹介コーナーへと移っていた。

 

「ではでは、私の自己紹介も終えたところで、早速あとの二人も紹介したいと思いまーす」

 

 元気よくそう言うと、舞台背後の垂れ幕の方へと掌を向ける。舞台両端の台座から燃え上がる炎に照らし出され、垂れ幕から一人の紳士が現れる。

 一方、宙には大型ホログラムが投影される。現れた紳士は皆にやあやあと軽く挨拶をすると、指定位置へと向かって歩み出す。俺はその紳士を見るなり、何となくだが本作の開発者じゃないかと察する。あのタキシードにサングラスかけたその姿は。間違いない。開発ディレクター・篠崎直哉だ、と。案の定、それを裏付けるかのようにローラは紹介する。

 

「まずはこの方から紹介したいと思いまーす。…………本作の開発ディレクターであり、その天才的な頭脳を持ち合わせていることから、異名、神の頭脳と呼ばれた天才開発者、篠崎直哉でーす」

 

 観衆が、おおーと頷く中、篠崎直哉は静かに、なおかつ、礼儀正しく低頭する。そして、群衆の歓声を浴びながら一言こう言う。

 

「こよなく愛する僕の作品へとログインしてくださいましたユーザー様。まことに感謝します」

「さてさて、続いてはこの方。AE会社取締役代表、船橋社長でーす」

 

 ローラ指示す方、そこにはホログラム投影された大型ホログラムがあり、そこから映像が映り込む。現実世界とリンクしているのか、そこにはあの船橋社長が現れる。リクラニングに座りながらデスク上に両掌を組み合わせ、彼はゆったりと挨拶をする。

 

「ユーザーの皆さま方、本作に登録していただき誠に感謝します。私が今作を作るきっかけとして――」

 

 そこでケインは、何か焦っている感じを漂わせてユウトに告げる。

 

「なあ、ユウト」

 

 その様子に俺は思わず振り向く。

 

「ん? どうした?」

「ちとわりんだけど、ここで一端ログアウトするわ。どうやらリアルでジュース飲みすぎたみたいだからさ」

 

 そう言って、股間に両手を当てる様子を見せる。瞬間的に俺は、ああ、小便かと察する。そう、このシステムには、現実世界における自身の体調管理がウィンドウ画面上に数値的なデータとして表示されている。しかもリアルタイムで。そう言うこともあって、ケインは画面上で表示された体調管理モニタを見てそう言ったんだろうと思った。

 

「ああいいよ。俺はここで待っているから」

「わりいなユウト。すぐ戻ってくるよ」

 

 そう言い残すと、ささっと操作してログアウト。一方俺は、やれやれと思い向き直る。は~、仕方ないなあ。なんて思う傍ら、ローラの方では、いよいよ、最後の御挨拶へと入ろうとしていた。

 

「社長、誠にありがとうございました。さーて、いよいよ開幕式もクライマックス。最後に出てくるのはこの方!」

 

 そう勢いづけると、ローラは夜空を仰ぎみた。つられて観衆が一斉に夜空を仰ぎみる。すると、次第にではあるが、天満な夜空の一角からポリゴン状のホログラムが投影されてくるではないか。なんだなんだと観衆が真剣に見守る中、ポリゴン状のホログラムは人の顔へと変容を遂げていく。それと共にローラは紹介する。

 

「本作の支配下に置くGM(ゲームマスター)、COMでーす」

「アア、皆サンコンニチワ。ワタシ、コノ世界ヲ統制スルCOMト申シマス」

 

 挨拶も束の間、ローラはここで補足を付け加える。

 

「皆さーん。御存じの通り、このCOMは、人類の英知を結集して、父・直哉の指揮の下で生みだされた、世界唯一の人工知能によるGMです。何か分からないことあれば、ウィンドウ画面の問い合わせから、何でも聞いてくださいねぇ~」

 

 観衆がローラが言ったことに呼び答えたあと、COMはここで待っていましたかと言わんばかりに口を開く。

 

「デハデハ、挨拶モ済マシタコトデスノデ、ココデプレイヤーノ皆サマ方ニハ、閉幕式ノ最後二、素敵ナプレゼントヲ差シ上ゲマスコトヲココデ伝エシマスネ。是非楽シミニシテクダサイネ」

 

 にこやかにそう告げると、COMはここで軽めに低頭し姿を消した。観衆の大半は素敵なプレゼントは何だろうかといった期待感で膨らませるんだろうなあといった感じに、たちまちその話題に持ちっきりになる。正直言って俺自身もわくわくしていた。だけど、心の奥底ではこの時、なぜか一途の不安が宿っていた。素敵なプレゼントなのにどうして? 得体の知れない不安を残し、そのまま俯いてしまう。――とそこで、用を足したケインが戻ってきた。

 

「待たせたな、ユウト」

 

 そこで、顔を覗き込んで心配そうに尋ねてくる。

 

「ん? どうした? そんな暗い顔して」

「あ、いや、何でもないんだ」

「そうか」

 

 なんだか不思議な物を見る感じにはなるが、それ以上は何も言ってこなかった。ほんとはこの不安材料のことを言えばよかったんだよな。そんな風には思ったりもしたけど精神的に不確かな面もあったので、夜空を仰ぎみながら、ここはやぱ気のせいだよな。とそう片付けてしまった。

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