まさにあの
その影響もあってか、歩くスピードが自然と遅くなり、先を急ぐ俺たちにとっては、次第に厳しいと言わざるを得なくなっていた。
〝時間かけても洞窟ルートを取るべきだった〞
まさに後悔先に立たずとは、このことを意味していた。ゴーグル越しから、吹雪の中、僅かに見える山々を遠望しては、希望を見出そうと懸命に歩き続ける。
その中で、時折振り返ってはケイン達がはぐれていないかどうか幾度となく確かめていた。そんな中――
「やっぱり言わんこっちゃないよ。引き返そうぜ、ユウト」
我慢の限界なのか、ケインが弱音を吐いてきた。
「確かに。思った以上に酷いな、これは。視界がまだあるだけでもマシなくらいだけども。だけど、引き返すにせよ、この吹雪の中を何時間もかけてか?」
「そ、それは……」
俺の問いに、ケインは言葉を詰まらせた。無理もない。ここまで来るのに、4時間くらいかかっているのだ。吹雪の中を4時間くらいかけて引き返す。彼も分っているとは思うが、それは逆に無謀とも言える下山であった。
「ん? どうした?」
呼ばれたようにされたので、ケインは後ろを向く。すると、小狼が俺たち宛にメッセを表示させていた。メッセにはこう書かれていた。俺達を励ますかのように。
『あと少し。あと少しだから、設営地までは』
と。
「あと少しって……」
困った表情を浮かべるケイン。と言うのも、進行方向を他人任せにしていただけに、あとどのくらいかかるのか、見当が付いていなかったからである。BCにあった生態マップは2枚だけ。それを俺と小狼が、それぞれ手にしていたから、肝心なケインは持っていなかったのである。
それゆえに、俺に尋ねてきた。
「なあ、あとどのくらいなんだよ? その……、目的地まではよ」
「ん~……」
聞かれたことに、改めてマップ上を確認する。吹雪が視界を邪魔する中、指先でカーソルを動かし、到達点から現在地までのルートをなぞっていく。ナビ機能も付いていただけに、すんなり目安時間が表示された。
「早くて30分。遅くて、1時間ってとこか」
「3,30分、か。ん~」
何を思ったのか、ケインは眉間に皺を寄せ両腕を組んで考え込んだ。しかし、俺が提示したのはあくまで目安であって、
「何を思ったかは知らないけど、現実的に考えて1時間以上はかかると思うぜ。何よりも今、まさにこれから天気が悪くなる一方だしな」
「で、でもよ。30分、30分だぜ。ここから全速力で登り切れば、目的地なんてすぐに――」
「それは無理だにゃ」
ケインの希望をぶった斬るが如く、ジャムがケインのグリーヴに猫手を当てて否定した。ケインはすぐさま反論する。
「え? な、なんでだよ! 今なんてまだ、視界がいい方なんだぜ。それに――」
けどそこで、俺はケインに冷静になってもらうよう促す。
「よーく考えて見ろよ。天候が悪化の一途を辿っているんだぜ。全速力もなにもないと思うが」
がしかし
「じゃあ、なんでそんな期待させるような時間配分言ってくるんだよ? 期待しちゃうじゃないか」
「だーかーらー! それはただの目安だよ。め・や・す!」
「目安? 目安って……」
そこで彼の表情に陰りが出始める。
「そう、目安。……あー、分った。正確な時間を言えばいいんだろう。正確な」
「ま、まあ……。その方がありがたいけどよ」
どこかしら俺の言葉を聞いてか、動揺をし始める。
「ったくも……」
めんどくさいなあとか思いつつも、俺の手は止まることなく。生態マップ上にて、天候も含めた正確な到達時間を割り出してみせた。
すると、間を置かずして、冷徹な到達時間が表示されるではないか。これにはさすがの俺も吃驚。
「あ、ああ……」
今度は俺が言葉を詰まらせる羽目にとなった。と言うのも、表示された到達時間は、思った以上にかかることを意味しており――
「何を固まっているんだよ? どうなんだ? 時間はよ」
現状をまたく理解していない彼は、俺の心理状況を知らずして問答無用で問い詰め。仕方なしに再確認の意味合いを含ませて、俺は問い返す。
「どうしても知りたいのか? どうしても?」
と、繰り返す。どこか嫌な予感を匂わせて。
「な、なんだよ。な~んか、その言い方。何かありそうな感じじゃないか」
心理的に後ずさりしてしまったかのように、彼は身構えて言った。その様子に、俺は率直に応えて言いべきかどうか迷ってしまう。
「まあ、あるにはあるけどな」
「なんだよ、それ。水くさいような喋り方しやがって」
「だ、だってさ……」
このまま結論を言ってしまってもいだろうか。正直、返答に困ってしまう。――そんな中、ケインの後ろから唐突に
「2時間だにゃ」
思わず
「えっ?」「っ!」
同時に視線がそちらへと向いた。声の主は、小狼に寄り添うバター。どうやら、その情報は小狼かららしい。彼の面前には、生態マップが表示されてあった。
「2,2時間って。ま、まさかな……」
表情がこれでもか、って言うほど引きつる。そんなケインをよそに、バターはトドメとばかりに捲し立てた。
「そのまさかだにゃ。ねぇ、小狼?」
コクリッ
即答と言わんばかりに、彼は頷いた。一方、現実を受け入れ切れていないケインは、戸惑いを隠せなくなる。
「おいおい、冗談だろう? この吹雪の中でか?」
そこで俺は、補足的に介入。その際、俺の言わんとしていたことを代弁してくれたバターに、感謝をする。
「冗談じゃないさ。ほらっ、見てみろよ」
そう言いながら画面を反転。彼に現実を突きつけた。画面越しに凝視するケイン。その表情は、次第に血の気が引いていき――しまいには
「う、うそだろう……」
と呟きを漏らすまでに至った。
「嘘じゃない、だろう?」
確認の意味を込めて問う。肩を落とし、すっかり絶望に暮れるケイン。その気持ちも十分理解していた。けど、いつまでもこうしていられるのも時間の問題。先を急ぐに越したことはなかった。モチベーションが下がり切ってしまったケインに、彼の相棒・ジャムが寄り添う。
「まあまあ。元気出すにゃ、ケイン」
励ますつもりで声をかける。しかし、当のケインは、ジャムの思惑通り前向きになろうとはしなかった。それどころか、俯いたまま様子がおかしくなっていき、やがては唸り声を上げる始末に。さすがに俺たちも心配になっていく。
「大丈夫かにゃ? ケイン殿」
とミルク。つられて俺も
「ケイン?」
と声かけ。すると、何を言い出そう。彼から発せられた一声は、恨み辛みが込められたものであった。
「……の、せいだ……」
しかし、その声はあまりにも小さく。
「せい?」
とだけ言っては、小首を傾げた。だが、次は明確さが増したのだろうか。誰に向けて放ったのか定かではないが
「お前の、せいだ」
と一言。
「お前のせい?」
またもや、理解できなかったことから首を傾げる。すると、堰を切ったように恨みの感情が溢れてきたのだろうか。
「お前のせいだ。お前のせいだ! お前の、……お前の! お前の、せいだ――!!」
そこで完全にブチ切れたのだろう。いきなり小狼へと詰め寄り、庇おうとするバターを問答無用で蹴っ飛ばしては、
ガシッ!!
小狼の胸ぐらを鷲掴みに。さらに、さらにだ。怒りは収まらずと言ったところか。そのまま腕尽くで小さき体を持ち上げてしまう。
その様たるや、尋常ではなく。慌てて俺は止めようと駆け寄る。
「おいおい。落ち着けよ、落ち着けよケイン!! 苦しがっているじゃないか」
しかし、当本人の理性はすでにぶっ飛んでいるようで、
「うるさい! 黙れ!! 俺の気持ちが分って堪るか」
「いや~、そ、それは、分らなくもないけど……。てか、いい加減話してやれよ。苦しませるだけならまだしも、彼の体力ケージ、少なからず削って来てるぞ。本気で
そこで、苦虫を噛んだような表情を浮かべるケイン。俺と小狼、交互に視線を行き来した後、舌打ちして解放してあげた。葛藤の末、って感じだろう。俺たちに背を向けた。
「ありがとうな」
「ふんっ、俺は許さないからな。この状況に陥れたことを」
「まあまあ……」
宥める。一方、小狼もケインの怒りの心境を感じ取ったのだろう。自分が押し通して下した決断に、後悔の念が少なからず滲み出ていた。そのこともあってか、小言だが、彼は自分の口から喋った。
「……なさい……」
と。だが、あまりにも小さかったため聞き取れなかった俺は、
「え? 今なんて?」
聞き返す。だが、勇気を出したその一言は、もはや見ることなく。
「すまなかった、ってにゃ」
バターが代弁して見せた。
「すまなかった、って……」
どう言い表せればいいのだろうか。小狼自身、自分の下した決断に自身が持てなくなっているような様子に、俺はかける言葉を懸命に探していた。そんな中、渋々、妥協したのだろう。
「けっ。ったく、仕方ねぇなあ。興が冷めちまったよ」
「ケイン殿……」
とミルク。すっかり開き直ったケインは、こちらを向き
「早いとこ行こうぜ。これから酷くなるんだったら、なおさらだ」
そう言い残し俺の隣に来た。そして、横顔を覗くなり、その表情には、先ほどまであった怒りとやらはすっかりとなくなっていた。顔色を窺う俺をよそに、ケインは後ろを向き呼びかける。
「行かないのか?」
と。一方、彼の改心に戸惑う小狼とバター。お互い見つめ合うが、互いにどう返事をしてよいのか迷っていた様子であった。が、
〝まあいっか〞
そう思ったのだろう。互いに頷き合うや、
「今行くにゃ」
小狼の代わりにバターが返事をした。
「もう、大丈夫なのか?」
心配になって聞く俺。吹雪いている中、前方の山を一望しながら、ケインは答える。
「大丈夫も何も。さっきも言った通り、興が冷めちまったからな。それに、それにだ。このままここにいても天気が悪くなる一方みたいだし。かと言って、引き返すにしろ手遅れのような気もするしさ」
「まあ、そうだけどさ」
「だったら、答えは一つじゃん。
は~
天気の関係もあるが、心変わりが早いというかなんというか。思ったことを口走る性格だけに、ある種の気まぐれタイプ。そんな風にも見えなくはないような気がした。
「どうかしたか? ユウト」
いつの間にか呆れ顔になっていたのだろう。今度はケインが顔色を窺っていた。
「いや、なんでも」
別にどうてことない。そのことだけに否定すると、気を取り直し改めて生態マップに目を落とした。
あれからどのくらい経ったのであろうか。刻一刻と悪化の一途を辿っていた吹雪は、ついに全方位が真っ白のホワイトアウトの景色へと突入していた。
当然ではあるが、先ほど一時休憩した時よりも地吹雪がさらに強くなっていて、今ではもう、ホットドリンクを飲んだところで顔中痛いのが収まらないくらいである。痛い=寒すぎて痛い。そう言った認識だ。
ゴーグル越しで見る視界では、全く当てにならない。そうした中、唯一頼りになるのは、手元に表示させていた生態マップ。
「距離的には、あと少しなんだけどな……」
そう呟く俺。視界が見えないだけに、目的地である第一キレットの絶壁が肉眼で確認できない。生態マップ上では、あと数メートル先なのにだ。確実に歩いてきているはずなのに、どこか不安が渦巻いてくる。
「おーい!! 後もう少しだけど、はぐれていないだろうなー!」
この
「あー! なんとかなー!」
(よかった)
間を置かずして返ってきた返事に、今になって心底安心する。と言っても、ケインの後方には生態マップを手にした小狼達が近くにいるから、ケインが滑落するなんて事がない限り、まず遭難するリスクは低い方だとは見ていた。
一方、俺だけでなくケインも気になっているのだろう。
「あと、どのくらいで着くんだ? その~、設営地とやらは」
その問いかけに、俺は希望を持たせるようにして答える。
「もう少し。もう少しなんだ」
「もう少しって?」
「あと、数メートル先」
「数メートルって……。全然、その気配がないぞ。全く」
まあ、無理もなかった。当然の答えに、心の中で、
(だよな~)
と共感する。他方、ケインの後方、小狼とバターとでは、何やら互いに確認し合おうとしていた。
「小狼……」
すると、俺たちには聞こえないよう、小言で
「あと、……トルほど」
「そこまで来たのだにゃ」
「……」
小さき声が吹雪に遮られ、何を言っているのか分らなかった。だが、話がまとまったのだろうか。
「あと、10メートル。だそうだにゃ」
バターが声を張り上げて俺たちに知らせる。
「えっ? 10メートル!? もう、そこまで来たのか! よっしゃ〜」
ザクザクザクザクザク……。
早る気持ちのままに、急いで積雪を踏み付けて行く足音。わずかな距離だけにケインが浮かれ出す。
「あ、ああ。ちょ、ちょっと!! あまり急いじゃ」
バターが慌てて呼び止める。ホワイトアウトの中を俺のいる方に向かって駆け出すケイン。バターと同じく、急ぐと危険であるが故、俺も呼び止めようとする。
「待て待てケイン!! そんなに急いだら危ないぞ!」
だがしかし――
「大丈夫だって。あと、10メートルなんだろう。もう、目の前じゃん」
俺の制止を振り切って、俺の前方を走り抜けようとする。――とそこで、思わぬ事態に直面。
「うわっ!」
「ケイン!!」
こちらを向いたまま何かに埋まったケインの姿が、次の瞬間、一瞬にして下へと消えた。そのことに、
バッ!!
反射的にダイブし、手を差し出す。そして――
ガシッ!
瞬間、空中で
ぶら~りん……
と垂れ下がる。まさに見えないクレパス。奈落の底へと粉雪が落ちていく中、俺の差し出した右手は、間一髪、ケインの右腕を掴んでいた。
「ほらっ、言わんこっちゃない」
「ひぇ~。た、助かったよ、ユウト」
奈落の底を見るや唾を飲み込んでいたケインが、身の危険に肝を冷やす。他方、滑落した瞬間を捉えていたミルクが、慌てて駆け寄る。
「大丈夫かにゃ?」
「ああ、なんとかな」
掴んだ腕に力を入れ、気合いで引き上げる。
ふぅ~。
吹雪く中、ようやく相棒を引き上げた俺は、一息を着いた。一方、先ほどまで余裕そうでいたケインの表情からは、すでに余裕のよの字が完全いなくなっていた。
「全くも~。注意したのににゃ」
とバター。
「……よかった……」
気のせいだろうか。小狼の小さな、そして、安心したような声が聞こえたような気がした。そのこともあり、
「今さっき――」
しかしそこで、
「ともかく無事で何よりだにゃ」
と声に遮られたことに、その流れから
「ああ、全くだ」
気付きは脇に置いといて、ミルクと共に頷いた。一方、これに懲りたのか、ケインは頭をかきながら言う。
「ありがとな、ユウト。今度から注意するよ。例え、目の前にあったとしてもな」
「ああ、そうしてくれ。この吹雪だから、なおさらにな」
そう言い残し、俺は再び立ち上がった。生態マップを再確認するや、現在地を確認。
「やはりな……」
そう呟くやまさに一目瞭然であった。と言うのも、ケインが滑落しかけたのは、まさに崖。
そう……。
クレパスではなく、雪庇と化していた断崖であった。それも、等高線を見た限り、200mはゆうにありそうな感じの断崖。まさに、そのまま落ちていたら無事では済まなかった事を意味していた。改めて思うが、肝を冷やされる始末である。
「とりあえず、ここにいても仕方ないにゃ。先を急ごうにゃ」
「そうだな。……ケイン、先ほど身をもって思い知ったと思うが――」
「ああ、分っている、分っている。お前の言いたいことは」
「なら、いいが。ともかく、今回に限っては先走った行動するんじゃないぞ」
「はいはい」
鶴の一声とまではいかないが、ミルクの声がかかったことに、俺たちは俺を先頭にして雪庇に近づかないよう注意。そうしながら、絶壁を迂回して目的地のキレットを目指した。
第一キレット――
そこもまた、ある種の絶壁みたいなところであった。しかし、他の絶壁とは違って、そこにはこの猛吹雪の中を凌げる唯一の避難場所があった。具体的には、絶壁に大きな亀裂が入っており、大の大人一人、やっと入れるくらいの通路みたいなのが。さらには、地形の構造上、猛吹雪に晒されにくく、強風に晒される心配が天と地ほどの差があるみたいにほとんどなかったのである。
けど、ホワイトアウトだったためか。その亀裂に入るに当たって、奥行きが検討がつきにくい上に薄暗く。さらには、奥から不気味な風切り音が時折響いてくることも相まって恐怖感が煽られ。それゆえに、一時だが、入るのを躊躇ってしまったわけである。だが、この猛吹雪には堪えがたいものがあったためか入りざるを得なく。いざ入ってしまえば、なんてことのない場所であった。てか、避難場所としては、不気味な風切り音以外、とても快適な場所とも言えた。
まさに、砂漠に例えるならオアシス。それも、猛吹雪に晒された極寒の地におけるオアシス。そう言っても差し支えないほどにだ。
「とは言え、どこまで続くんだよ、これ?」
「ん~、わからんな……」
曖昧な返事を返すのも無理もなかった。と言うのも、生態マップ上では、この通路染みたルートの詳細が省かれており、焚き火マークならぬ設営地アイコンが記載されているだけで、どこまで突き進めばいいのか定かじゃないのだ。
「ともかく、モンスターには出くわさないことだけは祈りたいものだにゃ」
とジャム。
「同感だよ、それ」
とケイン。揃って、歩きながら頷く。一方、俺もまた、その意見には賛同であった。
暫く進んでいく中、ふと空を見上げれば、白く激しい気流が乱れているのが見て取れる。このことから、この大きな亀裂は、どうも山塊を真っ二つにしたような裂け目であることがなんとなくであるがそう伺えた。と言うのも、先ほどまでは薄暗い通路でしかなかったが、どうやら天井の裂け目は至る所に凹凸が突き出ており、空が見えずらい模様。
しかし、奥へ奥へと進めば進むほど、若干、登っているような感じであったことから、ふと後方を。それも来た道を辿ればそのように見えたから、この裂け目はずっと空に続いていたと俺は思っていた。
「どうした? ユウト。後ろなんかを向いて」
気になったのか、ケインが声をかける。
「いや、特に……」
別に大したことではなかったが故、ケインの疑問には答えなかった。
「そっか……」
彼もまた、興味が失せたかのように、それ以上は詮索しなかった。
さらに暫くして……
「ん?」
前方に何かのアイコンが見えてきたことに気が付く。
(もしかして……)
脳裏に過ぎるは、設営地アイコン。そこで俺は駆けだした。
「お、おい! 勝手に突っ走ってどこ行くんだよ」
直後、ケインの後ろからバターの声。
「小狼、みつけたにゃ」
そして、ケインを抜かして、二人は揃って俺の後を追う。一方、事情を知らないケインは、慌ててふためく。
「あっ! ちょ、ちょっと。ま、待ってよー」
タ、タ、タ、……
駆け出すその先、待っていたのは、案の定、焚き火マークごと設営地点であった。生態マップ上では至近距離のように見えたが、実際にはそれ相応の距離があったことに、心底、ようやくか。とうんざりした。
発見して立ち止まる俺の隣。バターとミルク。そして、小狼が。遅れてケインがやってきては、はあ、はあ、と息を切らす。
「どうやら、はあ……、はあ……、着いたみたいだな」
そう安堵するケインの頭上、すでにスタミナケージがすっかりとなくなっていた。そのこともあってか、安心しきったのか、その場でへたり込んでしまった。
「ひとまずはお疲れだにゃ」
とミルク。
「ほんとうだよ。……ったく、散々だったぜ」
バテてしまったが故に、ケインは不満を漏らした。一方、俺と小狼はそこまでスタミナケージは使い切っていなかった。
それゆえ、仕方ないなあ。とか思いつつ、早速、彼と協力して寝床の確保へと取りかかった。本当のことを言えば、ケインも手伝って欲しかったけども。