モンスターハンターアルカディア   作:ぷにぷに狸

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2章:彷徨う狩人達・4話

「じょ、冗談じゃないよ‼︎」

 

 第一声、受け入れ難い要求に俺は叫んだ。

 

「じゃあ、あの子を見殺しにする気?」

 

 詰め寄るセツナ。そこには、拒絶する俺の心を射抜くような鋭い眼差しがあった。

 

「見殺しってわけじゃないけど、結局それ、俺が入団する流れになっちまうじゃないか」

 

 ただ姉に会わせるだけなのに、小狼の面倒を最後まで見なけりゃならないとか。まさに本末転倒だ。

 しかしセツナは、そんな反応を示す俺に、歯に絹を着せぬ形で言葉巧みに言い返す。

 

「別にいいじゃない、入団しなくたって。二人で面倒見るくらいだもの」

「二人って、まさか俺とケインのことか?」

「そう」

 

 (即答かよ!)

 

 内心、そう突っ込みを入れ

 

「じょ、冗談じゃないよ。何で俺たちが。第一、お前んとこの団員じゃないか。俺たちとは関係ないだろう?」

 

 すると、開き直って

 

「そうだよ。でも、こうなった以上、面倒なの」

「何がだよ!!」

「だ、だって……」

 

 思いっきし訳ありです。そう申し上げたい様子なのか、もじもじさせて心境を吐露する。

 

「どのみち、あたしの責任になっちゃうじゃない。小凜から頼まれたんだよ。ポッケ荘で待っててくれるよう釘を刺してくれ、とあれほど」

「なんだよそれ! それを言うなら、姉から弟に直接、お願いすれば良かったじゃないか」

 

 筋が通っていないような。変な言い訳っぽく、しかも、まるで責任逃れしているような釈明に、俺は苛立ちを募らせる。

 一方、ふか~い事情でもあるのか、セツナは

 

「そうだよ、本当はそうしたいんだよ、あたしも。だけど……」

「だけど、なんだ?」

 

 こうなった以上、その真相とやらを訊かなくてはならない。そうしないと気が収まらなかった俺は、今度はお返しにとばかり、逆に詰め寄った。

 一方、そんな俺に対して、彼女は、か細い声で一言。

 

「……喧嘩」

 

 当然、聞こえずらく

 

「え!? なんだって?」

 

 再度聞き返す。そんな俺に右往左往視線を泳がし、僅かばかり躊躇う様子を見せていたセツナだったが、そこで目力を込めるや腹を括ったかのように大声を出した。

 

「だ・か・ら――!! 喧嘩!! したんだってば――!! 弟と!」

「う、うわ――!! な、なんだ、いきなりそんな大声出して」

 

 流石の俺も吃驚仰天、腰を抜かしてしまう。抜かしてしまい、手を突いたところが段差の角だったばかりに、手を滑らせそのまま

 

「うわっ!」

 

 ドテンッ!!

 

 盛大にひっくり返ってしまった。

 

 間を置いて――

 

 つつつ……

 

 苦悶の表情。頭を抱え、よろめきながら起き上がる。

 

「いってぇ~。ったく、なんだよ。別に大声出さなくてもいいじゃないか」

「だって~、凄く言いずらかったんだもん。団長の立場だけに」

「団長の立場って……。今は関係ないだろう? 別に団員がいるわけじゃないしさ」

「そ、そうだけど……」

「ん~、分らない奴だな」

 

 まるで心が読めん。そのことだけに、俺は困り果ててしまった。けれど、それでもただ一つだけ、一つだけ分ったことがある。

 

「ともかく、その喧嘩とやらが原因なんだな。姉弟間での」

「……うん」

 

 は~

 

 ため息が零れた。要するにこういうことであった。姉・小凜は弟想い。そのことだけに、小狼を危険なクエストには連れてきたくなかった。だけど、弟・小狼としては、姉と同じく心配性。

 それゆえに、姉の身に何かあったらと思うと、居ても立ってもいられず、例え危険なクエストだろうと付いていきたいと。

 互いに心配しているからこそ、話し合いがまとまらず。挙げ句には喧嘩。埒が明かないとみた小凜は、団長の力を借りて弟をポッケ荘で待機させるよう申し出た。そう言う構図であったのだ。

 

「そう言うことなんだな」

 

 諦めというか何というか。そのような似た感情を抱きながらその理由を知ってしまうと、確かに団長に責任があることに納得がいった。言ったのだが

 

「だけど。だからと言ってお前の猟団事情に、なんで俺が、俺たちが巻き込まれるんだよ? 確かに事情としては、共感できなくはないけどさ」

 

 するとセツナは、バッと素早い動作で居住まいを正し、何を思ったのか土下座。思わず驚く俺を前にして

 

「お願い」

 

 と一言。

 

「お願いって……」

 

 戸惑う俺。そこへ畳みかけるようにして

 

「だから、お願い! お願いします、マジで」

 

 その懇願たるや、必死の形相。そのあまりにも強い願いに、どよめきが走った俺は

 

「お、お、お願いって。……っ! おいおいおいおい、勘弁してくれよ~」

 

 困り果てた俺は、正直、願い下げしたかった。しかし、それが土下座までしてやがってからに、必死に懇願されてしまう状況。この瞬間、心理的に断り切れる状況じゃなくなってしまった。

 

 (くっそ~)

 

 自身の性格が優しいところを見抜いていたのか、まさに足下を掬われたようなもの。悔しさをかみ殺し、もはやヤケクソ。

 

「あ~も~! 分った、分ったよぉ。ったくぅ」

 

 彼女の頼み事である小狼の面倒、最後まで見る羽目になってしまった。

 

「ありがとう」

「だ、だけど、条件がある」

「条件?」

「あ~条件。どのみち、ケイン達とその猟団とやらに無事、合流できたらな」

「うん」

 

 皮肉に思っている俺の前に、セツナはにこやかに笑みを返した。

 

 

 

 

 

 吹雪が去り、星々が煌めく夜空を背景に炎を見つめては、ただただ溜息が零れる。その中で、本当に情けなく思える。自分の性格が災いして、したくもない頼み事を引き受ける。

 それは、狩友とさえ認めていない他者とは干渉したくない俺から言わせれば、極論から言って矛楯しているようなものであったからだ。

 なのに、なのにだ……。

 

「なっさけねぇ~」

 

 不甲斐なさから、その言葉がぽつりと口に出た。そんな中、視線を隣に移せば、セツナも一緒に焚き火を眺めているのが見えた。

 しかしその表情には、どこか安心しているのであろうか。明るい印象が窺えた。ほどよい感じに燃えさかる焚き火を見つめながら、なんだか懐かしむかのように物思いに耽るセツナは、

 

「ねぇ、ユウト。あの時を覚えている?」

「あの時?」

「うん、あの時。あたしがまだ小学6年生だった頃にさ、大型ハリケーンがカリフォニア州を直撃してさ」

「小6の時? ん~」

 

 言われて記憶の糸を手繰り寄せてみる。手繰り寄せてみるのだが、小学生の時の記憶、どう言う訳か霞が掛かっていてなんだか……。

 

「覚えてねぇ、そんな前の記憶なんか」

 

 すると、信じられないと言った口調で

 

「えー、だって2、3年くらい前のことじゃん。それに、あんな大規模災害を共に体験したんだよ。流石に覚えていないわけが――」

「だって、本当に覚えていないんだもん。まるきっし」

「そ、そんな〜」

 

 とんでもない程の記憶力の悪さを目の当たりにした様子であり、セツナは愕然として肩を落とした。その大災害とやらに苦楽を共にした仲なのに、ショックを隠せないみたいだ。

 けれど、

 

「それに、前にも言わなかったけ、それ。確かゲームショウの時にも?」

 

 俺が言いたいのは、晃とケインと俺の3人で東京ビックサイトで行われていたゲームショウへ足を運んだ時のことであった。ちなみにそのゲームショウとは、このゲーム(モンハンアルカディア)に関連したショウイベントのこと。

 ほぼ鮮明に覚えていることだが、セツナとはその時に初めて出会ったことには間違いないはずなのだ。しかも初対面早々、小6、……いや、小5だったか。まぁ、どちらでも構わないが、その時の思い出話をいきなり持ちかけられ、ほんと、訳が分からなかったことだけは覚えていた。まさに、

 

 (何言ってんだ? こいつは)

 

 的な感じにだ。一方、セツナは俺の話を聞いてなかったのか、焦るようにして逆に訊いてくる。

 

「じゃ、じゃあ。覚えていないなら仕方ないわ。でも、流石にその時の名前くらいは――」

「は? 名前?」

 

 (またまた何を言っているんだ、こいつは? 性懲りも無く……)

 

 理解不能だけに、当たり前のことを返す。

 

「名前も何も、俺は俺。最初から狩巧友斗だぜ」

 

 すると、何を訝しく思ったのか。その表情に戸惑いが現れる。その様たるや、持ち合わせている自分の記憶と俺の記憶とで土妻が合ってなさそうだけに、更なる混乱をきたしているようであった。

 しかし、確かな記憶の擦り合わせだけはしとかなければと思ったのだろう。

 

「じゃあ、あたしの記憶の中にいる友斗は?」

 

 確認のつもりなのだろうか、問いかけてくる。けれど、

 

「そんなの知らないよ。てか、誰なんだよ、そいつの名前は?」

 

 言った側から、苛立ちが募る。すると半ば呆れたのか、え〜! と何故かドン引きした彼女は、やがてその重たい口を開き、

 

「だーかーらー」

 

 と長ったらしく前置き。続けて話そうとしたかと思えば、その直後、うっ、となって脳内に、

 

 ザザザザザザ〜

 

 とか言うノイズが急に走った。

 

 (な、なんだ⁉︎ 一体全体)

 

 突然の事態に困惑する。かと思いきや、謎のノイズは直ぐに収まり、その間の周囲の時間の流れが一時的に遅くなったのだろうか。その間に喋り切れなかったセツナの口からは

 

「って名前だったんだよ」

 

 と、肝心な名前の部分だけは口パクのように垣間見えて、まるきっし聞こえなかった。そのことに、慌てて俺は訊き返す。

 

「ちょ、ちょ、ちょっと待った。今、なんて?」

 

 するとセツナは、訝しげに

 

「え? 聞いていなかったの? だから、って名前で……」

「は?」

 

 流石に首を傾げた。そこは大事だろうと思う箇所。なんと! その単語の部分だけ、なぜか聞き取れなかったのである。まさに初めての現象。事態の困惑を招いた俺は、再び

 

「すまん。もう一度、言ってくれないか? さっきの名前を」

 

 と頼み込んだ。そのことに、彼女はため息を漏らし

 

「だ〜か〜ら〜‼︎ 友斗、って名前だったんだよ。って。分かる?」

 

 (……ダメだ。全然聞き取れねー)

 

 どうなっているのか、さっぱりである。一体全体、俺の身に何が。混乱する俺、それを見兼ねたセツナは、

 

「……もう、やめよ。この話」

「え? なんでだよ?」

「だって、話、聞いてないんだもん。それどころか、側から見て、何か思い詰めているようにも見えてきたしさ」

「そ、そんな〜」

 

 その瞬間、愕然とした。確かに突然の事態に困惑してはいるが、そこまで心配されていたなんて。俺としてはショックであった。

 

「それに、なんだかあたしの記憶の中にいる友斗と、今、目の前にいる友斗、別人のようにも見えてきたし。顔つきだけは、かなり似ているけど」

 

 諦めたかのように、肩を落とした。けど、仕方ないことではある。それは、嘘ではないから。小学生の時の記憶、綺麗さっぱり覚えていないことは。

 しかし、正直、釈然としない点ではある。小学6年生と言ったら、彼女が言った通り、今から2、3年くらい前のこと。いくらなんでも覚えてない訳がないのだ、普通。

 それに大規模災害があったとも言っていたのだ、セツナは。そんな衝撃的な事件を経験していたなら、どう考えても

 

 〝記憶喪失”

 

 それ以外に考えられなかった。ほんと、改めて思うけど、一体その時、俺の身に何があったのだろうか? 先程の会話から肝心な名前を聞こうとすると、その部分だけ何故か聞き取れないのも然り。

 しまいには、もしかして、その災害とやらに巻き込まれて頭でも打った? そんな考えに至り

 

 (まさかな〜)

 

 そう自問自答してみたりする始末である。一方、そんな思考を巡らす中、自分を見つめるかのようにセツナは口を開く。

 

「ねぇ、ユウト」

「ん?」

「そう言えばと思って、まだ、言っていなかったよね?」

「何を?」

 

 (先程の思い出話の続きだろうか?)

 

 話の流れから、間を開ける彼女を他所にそう思っていた。しかし、実際には違った様子。再び開かれた口からは、

 

「なんで、あたしが一人でいたのか? 他の団員はどうしたのかとか」

「あ、そう言えば」

「でしょう? 多分、ユウトもその辺り疑問に思っていたんじゃないかって」

「確かに……」

 

 まさにその通りであった。同時に、今更ながらに自分が特に気にしていたことを思い出した。思い出して、焚き火を見つめるセツナの方へと向く。

 一方、焚き火を見つめながら、セツナは穏やかに笑みを浮かべるや、静かに語り始める。

 

「でね、あたしの猟団、蒼天の翼、って言うんだけど。……ん〜、まず経緯から話そうか? 分かりやすいように」

「ん〜、そうだな。その方が助かるかも」

「分かった」

 

 そう理解すると、猟団の軌跡、そして、セツナがなぜ団員達と離れて単独行動に出ていたのか? その経緯とやらを語り始めた。

 

 メンバーは、団長・セツナ以下、4人。ノブ公、小狼、少凛、レイナ。そんなに規模は大きくなかった。普通、多い方となると、10人を超えて数十人規模。猟団同士で結束し合い組織化された猟団同盟となると、数百人以上にも及ぶとのことだそうだ。

 

「と、猟団に関しては、そんな感じ。でね……」

 

 彼女の話は続く。拠点先の情報がないまま、

 

「ポッケ村に到着して早々……」

 

 問題が発生したこと。その要因を探るべく、そして、キークエストのクリアも兼ね備え、フラヒヤ山脈に足を踏み入れたことなどを話してくれた。

 

「てわけ。でも、本当の要因はそこじゃなく」

 

 ポッケ村で噂になっていた白き獅子。まぁ、正体はドドブランコだったが、痕跡やら何やら調べていたら、あの轟竜(ティガレックス)に行き着いた。とそんな訳であった。

 そこまで経緯を述べてくれたところで、なんとなく推測はできなくもなく。途中から口を挟んだ。

 

「あ〜、大体検討ついたよ。お前が言いたいことは」

「え? まだ、話終わってないんだけど」

 

 しかし、

 

「ようは、結論から言って、そのティガレックス討伐に出向いた。しかし、討伐し損ねて自分だけ滑落。そう言いたいんだろう?」

 

 最後まで言わなくても分かるさ。俺はその気になっていた。けど、セツナの返答はどうも違ったみたいだ。

 

「全然違うし。勝手に解釈しないでよ」

「え? だってパーティー組んでいるんだろう? その気になればティガレックスくらい――」

 

 ――とそこで、

 

「バカじゃないの!」

「え?」

 

 意外な返答。思わずキョトンとしてしまう。

 

「いくらなんでも無茶よ。犠牲者が出るじゃない」

「え? だ、だって、こっちは複数人だぜ。いくら強敵だろうとティガレックスくらいは――」

 

 すると

 

「甘いわよ! その考え」

「え?」

 

 指摘され、すっかり固まってしまう。そして、

 

「何を根拠に挑戦しようとか思ったかは知らないけど、このクエストに出てくるティガレックス、ハッキリ言って一撃死を招くくらい凶悪なのよ。例えネコ飯で体力の底上げを図っても」

「は、はい〜⁉︎ な、なんだって!」

 

 まさに耳を疑う内容であった。その反面、あまり信じられないような気もしていた。それが表情に表れていたのだろう、彼女は俺の心境を読み取った。

 

「その様子じゃあ、半信半疑ね。だけど事実なの。多分、見たでしょ? ドドブランコが捕食されていたのを」

「あ、あ〜」

 

 戸惑いつつも、その脳裏には、あのドドブランコの遺体のイメージが思い浮かんでいた。とは言え、直接、捕食シーンは見てはいないが。

 

「でしょ? 普通、ドドブランコともなると、仕留めるのにかなり手こずるはず。それを一撃で仕留めたのよ。少なくとも、あたしは直接、目撃しているから分かるのよ」

「一撃って……」

 

 確かに、争った形跡はあまり見られなかった。強いて言えば、牙が折れていたくらい。無惨に血だら真っ赤になった腹部は見なかったけども。

 その言葉がもし本当ならと思うと……。ただで寒いのに、さらにそれを助長するかのように悪寒がしてきた。

 

「そう言う訳。だから、あたし達はティガレックスとはやり合ってはいないの」

「分かった、分かったよ。じゃ、じゃあ本題に戻るけど、なんで一人でこんなところを彷徨ってたんだよ? そこ、まだ聞いてないぞ」

「そ、それは……」

 

 肝心なところなのに、本当に訳ありなのか。セツナは口を籠らした。籠らして、やや間を置いたとこで再び口を開く。

 

「……雪庇」

 

 その一言。けど、表情には複雑な心境が滲みでいた。当然、その一言だけでは理解は出来なかった俺。

 

「雪庇?」

 

 その一言に対して、疑問を投げかける。何か気不味そうな、それとも恥ずかしいのか。あるいは、第3の心境でもあるのか。ともかく戸惑ったような仕草を見せた。

 けれど――

 

「あまり、こう言ったこと情けなくて話したくないんだけど、あたし、雪庇で足を踏み外して転落したのよね」

「雪庇って、お前……」

「だ、だ、だってしょうがないじゃない! その時、ホワイトアウトで分からなかったんだもん。あと、このことは絶対秘密だからね、絶対に‼︎ 団長たる者が、そんな間抜けなことがあったなんて、みんなに知られたくないから」

 

 なかなかの剣幕で詰め寄る。そんなに気にしていて人に言いたくないなら、別に無理せんでも。そう思っていたが、

 

「わ、わわわ、分かったよ。そんな怖い顔せんでも」

 

 そして、狼狽えつつ

 

「と、とりあえず、とりあえずだ。一応、生態マップは見なかったのか? それを見れば雪庇があることくらい――」

「見てたわよ! ……そう、見てた。途中までは」

 

 最後の方は訳ありなのか、声のトーンがやや下がった。

 

「途中って……」

 

 すると、語気を強め

 

「案内役、交代したのよ! 仕方なく」

「仕方ないって、どう言う?」

「だって、しょうがないじゃない。あの洞窟が悪いんだから。入り組み過ぎよ、入り組み過ぎ」

「え? てことは……」

 

 そこまで言って、なんとなく察しが付いたような気がした。それが示すように

 

「想像通りよ。ったく〜、なんであたしが、あんなところで」

 

 迷路みたく入り組んだ洞窟だけに、まさに怨嗟を撒き散らすかのようなものであった。その向ける相手は、恐らく不甲斐ない自分自身だとは思うが。訊いた感じ、洞窟のせいにしているようにも見えた。

 つまり、どう言うことかと言うと、入り組んだ構造を有する洞窟だけあって、マップを見ながらであるが、結局、迷子になった。どうしようもなくなり、地図の案内役を団員の誰かに委ねた。と言ったところだろう。

 ようするに

 

「それ、ただの方向音痴じゃあ〜」

「う、う、うるさい‼︎ それを言うな!」

 

 図星だっただけに顔を真っ赤にした。そして、それからと言うもの、先程の理由によりホワイトアウトからの雪庇による転落。命拾いしたものの、雪原を彷徨う羽目になったこと。

 その中で、崩落と共に落下する人影を偶然目撃。気になって駆けつけて見れば俺がいて、不運なことにドドブランコとも遭遇。あわやそのまま遭遇戦になるかと思いきや、ティガレックスが乱入。隠れ蓑の装衣を纏い、気を失ったままの俺を庇いながら事態が鎮静化するまで凌いでいたことなど。

 そんなところを、赤裸々にセツナは明かしてくれたのであった。そう語り明かして、

 

 ――そしてその晩。

 

 設営地のある祠の外は未だに吹雪。今は特段何をするわけでもなく。それでもモンスターが侵入してくる可能性がなくはなかった。だからこそ、警戒は怠るわけにはいかない。

 けれど、俺の傍、すやすやとぐっすり寝ているセツナの愛くるしい姿をみれば、俺自身も影響して流石に寝たくなってきた。

 そんな状況下、日が登るまで見張りをし続けるか。はたまた、疲れを癒やすべく寝ちゃうか。かなり悩むところではあった。しかし、もう答えは自分の中で決まっていたようなものだった。

 

「もう、寝よっかな」

 

 いくら仮想世界(ゲーム)の中だからとは言え、休まないことには精神的に辛いものがある。そんなわけで、彼女と同じく、焚き火を眼前に捉えながら静かに横になった。

 

 (明日のことは、明日、考えればいいや)

 

 ほぼ丸投げ的な考えの中、その目を閉じた。余程疲れていたのであろうか、意識は瞬く間に深淵へと誘った。

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