クエストやり始めてから2時間ほど。肉焼きセットを完成させ、おびき寄せ迫りくるブルファンゴを討伐し、ようやく必要数の生肉が。果てはこんがり肉、生焼け肉と条件個数があと一歩で揃いそうな今、ケインは出来立ての最後のこんがり肉を゛上手に焼けました~♪〝のシステム音声と共に掲げる。
「よっしゃー!! これで個数が揃ったぜ」
「肉焼きに限っては、ほんとおまえは大したもんだよ」
狩りだけは全然ダメダメなケインであったが、肉焼きに限っては素人とは思えない上出来っぷりに俺はそう驚く。
画面を表示させてこんがり肉をしまうケインをよそに、俺はこれまでの一連の流れを、火を灯す肉焼きセットを見つめながら思い浮かべるかのように振り返る。
「にしても、結構かかったなあ。所要時間を見てもざっと2時間ってとこだし」
それを聞いていたケインは答える。
「そんなにかかったのか? 全然気付かなかったぜ」
「誰だって夢中になればそうなるさ。さてと」
重い腰を持ち上げて、画面を表示。ささっと操作して肉焼きセットをしまう。
「行くのか?」
「ああ。個数も揃ったんだし。それに今回のクエストではタイムアタック制も含まれているからな」
そう言うと、俺は帰ってきた方向を確認して一歩踏み出す。目指すは
ところがそこで、誰かの気合い声が周囲に響きわたる。それを聞いたケインは、
「なあ、さっきの声って、もしかして……」
「ああ、間違いない。あいつだ」
呆れた表情をして、それに答える。ドスの利いたような声の主――J.Oは、すぐ近くにいたのだ。
このままここにいたんじゃ、きっとそのうち遭遇すること間違いない。遭遇すれば、きっと面倒なことにはなりかねない。クエストやる前だって、邪魔してやるからな、とか言っていたのだから間違いないのだ。
そのこともあって俺は、
「なあケイン、ここは早く……」
と言い切る前に、ケインは興味を注がれたかのように遮った。
「なあ、ちと覗き見しに行こうぜ」
「えっ? なんでだよ」
「いいからいいから」
そう言って、手を引っ張ってくる。俺としては面倒事にはごめんだったし、早くクエスト終わりたかったこともあり、ここで手を振りほどく。
「いいよ、俺は」
「えっ、いいのかよ」
「ああ、面倒事になりそうだから」
「なら、俺だけでも覗いて行こうかなあ~」
そう言うや否や忍び足で草むらへと近づいて行く。
俺は
「おいおい、やめておけって」
というが、構わず向かっていくので、
「ったくもぉー」
と、2人同時にBCへと戻らないと帰還できなかったこともあり、渋々とケインの後に着いて行く。
がさがさと潜り込んだ矢先、隙間からのぞきこむと、そこには、案の定、奴――J.Oがいた。
予測はしていたが、とっととこの場から立ち去りたい気分になる。まったくもって、最悪以外何者でもなかった。
一方、ケインはJ.Oの様を興味津々とばかりに見いっていた。
「そんなに彼の動向が気になるのかよ」
「まあユウトも、せっかくだから見ておけって。豚頭の実力、この目で実際に確かめられるんだからさあ」
「はあ~、悪趣味だぞケイン。人の実力なんてそれぞれなんだしさ」
とかいいながら、俺も実はこっそりと横目でJ.Oの動向を見てたりしていた。
実力なんてどうでもよかったはずなのに、やっぱり自然と気になるもんだった。ある意味、俺も人のことは言えなかった達であった。
一方、俺たちが見ているJ.Oはというと、モスを庇いながら威嚇する3頭のブルファンゴに囲まれていた。見るからに追い込まれている状況でもあった。
しかし、J.Oは動じる事なく、持ち前の根性で乗り越えて見せるぞー的な勢いで気合い声を発し、手にした
思うに追い込まれている状況とは言え、彼は大丈夫そうでもあった。頃合いを見計らって、この場を後にしようとケインに声掛ける。
「なあ、そろそろ行こうぜ。こんなとこにいても埒あかないって」
「まあまあ。そう言わず」
立ち去ろる気ゼロのケイン。俺はやれやれと呆れ、ふと後ろを振り返った。するとそこには、一匹の大型牙獣種がいつの間にかうろついているではないか。太く尖った両の牙。それにいかつい目つき。間違いない、ブルファンゴであった。……だが、よくよく見ると通常種のブルファンゴにしては体格が一回りもふた回りも大きい。俺は本能からして確信した。あれは間違いない。ドスファンゴだと。きっと仲間が相次いで倒されたことに危機を感じて、調査しに来たのだと俺はそう察したのであった。
このままじゃまずいと思った俺は、この事態を知らせるべくケインの肩を叩く。
「あ?」
「ん」
と指でクイッと後方を指す。ふとケインはそちらの方へと見、途端にその目丸くする。
「あ、あわあわあわわわわ……」
次第に青ざめていくケイン。俺は我に返すべく、口元に人差し指を立て
「しっ、静かにしろよ」
そう言って、落ち着かせる。一方、危うく声を出しそうになったケインは、そこで我に返り両手で口を押さえる。
「ドスファンゴだ。きっと、仲間の危機を察して来たに違いない。音立てるんじゃないぞ」
忠告を受けるや否や、ケインは小刻みに首を縦に振るう。俺は前に向き直り、ドスファンゴの動向を窺った。
普通だったら、このまま奇襲掛けて速攻戦に持ち込む手を打つが、今回はそうはいかないのがめんどくさかった。なにせJ.Oが近くにいる。速攻戦に持ち込めば、否応なくJ.Oに気付かれ、討伐した後も面倒事になること間違いないからだ。もとはと言えば、ケインがJ.Oに因縁をつけたのがそもそもの発端。俺はそれを踏まえていたこともあり、ここはやり過ごす選択をする。
何事もなくその場を去ってくれ。俺は静かにそう願う。……だが、その願いははかなくも再び聞こえてきたJ.Oの気合い声によって打ち砕かれてしまう。
ドスファンゴは先の声を聞くや否や、俺たちの方へとにらみを利かせて歩み寄ってきた。
これはまずい。そう心の中で焦る。俺は石ころを拾うと、遠くへと投げつけた。カサッと葉音がし、ドスファンゴはそちらの方へと気をとられる。その様子に、しめた。これならやり過ごせるぞ。そう思う中、ドスファンゴは投げつけた方へと向きを変えて歩み寄っていった。
草むらの中へと消えゆく巨体。ほっと一息をつく俺。これで一安心だ。そう安堵した。――とその矢先、パキッと枝を折るような音が背後から聞こえ俺は咄嗟に振り向く。
するとそこには、折れた枝葉が。そして、しまったと言わんばかりの表情を浮かばせるケインの姿があった。どうやら先の音はケインが枝葉を追ってしまった音だったらしい。俺は人差し指を立ててしーと注意する。だが、問題はそれで済まなかった。向き直った矢先、ドスファンゴはこちらの存在に気付いてか、こちらに向かってくる。
〝これはまずい〞
本能がそう囁く。俺は厄介なJ.Oに見つかる覚悟を決め、ケインと共に抜剣。草むらから飛び出した。
地を駆け、斜め横から切り込むべく振りかぶった。一方、すでに身構えていたドスファンゴ、猛然と駆けだす。わずかなタイミングでかすり傷しか与えられなかった俺。駆けだしていく方向を見定める。するとその先にはケインが。やばいと思った俺は思わず叫ぶ。
「ケインっ!」
「あわっ、あわあわあわあわ……」
当然、突然の出来事に対処できず、そのまま――
「っ!」
とドスファンゴの突進を食らい、勢いが勢いなので、そのまま草むらの向こうへ。J.Oがいる場所へと吹っ飛ばされてしまう。直後――
「な、なんだてめぇーは!?」
と驚愕の声を上げるJ.Oの声が。俺は内心、あっちゃーと覚悟はしていたもののため息を漏らしてしまう。
けれど、幸いなことに、すぐに厄介事に巻き込まれるのは俺ではなくケイン。事の発端を考えると2人でよろしくやっていな。的な短絡思考にもさせられる。とまあ、俺はケインの方は無視して改めてドスファンゴと相対する。
一方、とうのドスファンゴは仲間殺しの真犯人を眼前にして強くい憤り立っていた。殺意に満ちたその目からは、まっすぐ俺を捉えている。鼻息を荒上げ、ぶるしゅるるるぅぅぅ~と震わせて、今にも突進戦とばかりに地を蹴り始める。
いつでも突進してきてもいいように、俺は一端、納刀。改めて身構える。
心の中で、゛さーこい!〞と念じ、そして、ぶひぃー!! と雄叫びをあげて、ドスファンゴは突進してきた。風を切り物凄い勢いで突進してくるドスファンゴ。俺は飛び込み前転する形で軽やかに交わす。しかし、突進先は俺ではなかった。
「うひゃあー!!」
「な、なんだ!!」
ケインとJ.O、2人の声が重なり合う。そう、かの牙獣種の標的は俺ではなく彼らだったのだ。俺はしまったと思い、慌てて納刀しケイン達の方へと駆けだす。枝葉をかき分け慌てて飛び出した矢先、俺は目の前の光景に思わず立ち止まってしまう。
「てめぇのせいで、狩りがめちゃくちゃじゃねえか」
「だから悪かったって」
新手であるドスファンゴに相対しつつも、文句を並べ立てるJ.O。ばつが悪そうにぺこぺこ頭を下げるケイン。そんな戦いながらの一方的なやり取り的な光景がそこにはあった。
暴れまわるドスファンゴを中心に取り巻きのブルファンゴ3頭たちと距離を置きつつ、J.Oは溜め攻撃の態勢をとる。
「あやまって済むのなら、こんな目にあわねぇっての。それに俺の彼女にもし危害があったなら、あやまったって絶対に許せねぇからな」
その彼女という言葉に疑問を感じたのか、ケインは
「彼女?」
と訝しげに質問する。
「そうだ。そこにいる彼女にだ」
そう言って、のんきにキノコをむしゃむしゃほうばっているモスに指をさす。ケインはその様を見るや、まさに場違いな光景であったために口元を引きつらせた。俺もまたケインと同じく表情を引きつらせて思う。こんなやつ、守る価値なんかあるのだろうかって。ただのモンスターだろうが。なんて心の底でつぶやいたりもした。
しかし当の本人(J.O)は、そんな場違いなモスを相当大切に思っているらしく、すごく険しい顔で睨んできた。俺たちは仕方なく(どうもこうもこれ以上のトラブルは避けたかったのでやむを得ず)、J.Oの気持ちを計らってモスを庇うように前へとたった。とは言え、相手はブルファンゴ3体にドスファンゴ。どちらも強靭な肉体ゆえの突進は抑え込むすべがなかった。願わくば、モスに当たらないことだけを願うのみである。とまあ、先ほどまで気を溜め続けていたJ.Oは、ここぞとばかりに先陣を切って振り下ろした。
どしーん!!
と強烈な地響きと衝撃破が俺たちを襲い、当のブルファンゴはその一撃の名のもとに盛大な血飛沫を立ててぶっ倒れる。俺はすさまじい一撃を目の当たりに、ケインと共にぽかーんとした表情を浮かべてしまった。だが、こちらに振り向いたJ.Oが
「何をぼさっとしているのだ、てめぇら! はようやれ!!」
と一喝したこともあり、俺たちは我に返る。
慌てて身構えると、今度はドスファンゴが荒い息を立てて、こちらに突進戦とばかりに地をこすり身構えてきた。
〝来る〞
本能的にそう察知した。直後、察知した通り、突っ込んできた。風を切るような音をたてんばかりに巨体が攻めてくる。俺は楯を斜め横に身構え突進を受け流して身を捌く。背後をとった俺はそのまま切り込みにかかりそのまま
さすがにあれだけの巨体。コンボ攻撃といえども、全く怯みもしなかった。片手剣にしたのがまずったかな。なーんて今さながらにやや後悔する。
ちらっと目線でケインの方を見る。ケインはブルファンゴ一体に善戦しているようだった。ドスファンゴと違い突進だけという単調な攻撃ゆえに相手の弱点を見出し攻撃をうまく繰り出して立ちまわっているみたいだった。
「ケイン!! 俺は
と一声。
「お、おう。サンキューな」
視線を戻して相対する。一方、J.Oは再び気合い溜めに入ると、攻撃のタイミングを計りにかかった。視線を辿っていく先、次の相手も同じくブルファンゴだった。無言のまま相対しているところから、周りは見えていないのだろう。やはり背にはモスがいたことから、どうやら庇いながら戦っているらしかった。その様から必死さが窺えていた。
モスの面倒はJ.Oに任せて、俺は安心してドスファンゴを相手にする。だが、そこでケインは愚痴るようにして言ってきた。
「なあ、こんなの面倒だからこっそり抜け出そうぜ。ユウト」
「抜けるも何も、どさくさにまぎれてか?」
「そうそう。もう俺たちにはクリア条件ってのが揃ってんだし」
そう言われて、俺は確かにとさえ思った。でも、
「もとはと言えば、ケインが寄り道しようなんて言ったのが、そもそもの始まりじゃないのか?」
「だけどよ」
「責任とれよ、ケイン。それにJ.Oとの因縁の後始末も含めてだ」
「豚頭とのぉ、えー」
肩をがくりと落すケイン。ところがその会話を聞いていたのか、J.Oはここで機嫌を損ねる。
「おいっ、誰が豚頭だといった?」
ねめつけるようにして物を言うJ.O。俺は必死こいて否定し、あいつあいつと
「この野郎。また俺のことを……」
怒りマーク全開の形相を露わにケインを問いただしにかかる。それを見るやケインは、
「わ、悪かったって。でも、見た目通りなんだけどね」
と余計なひと言を。この様に、俺はドスファンゴ達との緊迫感以上に彼らの殺伐感からくる緊張感を覚えた。正直、逃げ出したかった。というのも、J.Oの握る手がハンマーの柄をより締め付けるかのようにギチギチと音を立てているのがひしひしと伝わってきたからだ。
マジでやばい。これはキレる寸前だ。本能で察した。俺は逃げる算段を考え始める。けれどそんなか、ぶひっ、とモスの鳴き声が上がった。その声に反応してか、J.Oはすばやく振り向く。
すると、近くにはドスファンゴが。どうやら向きを変えるさなか、後ろ脚を軽く踏んでしまったらしい。そのさまに、J.Oは我に返り、
「大丈夫かー!!」
と一言。一方、モスはそんな彼の言葉を受け取ってる気配すらないのか、お食事を邪魔されたことに対し反撃として攻撃態勢に入る。
「モスよ、早まるな!! 敵は俺が排除するから、な」
そして、当てつけに俺らに当たり散らす。
「お前らのせいだ!! モスがこうなったのも」
「俺も含むのかよ」
と小声で。
「お前らが、いや、特にケイン。お前が俺の気を引いて怒らすからこうなったじゃないか!!」
ビシッと指をさされ、ケインはやや動揺する。が、しかし――
「はいはいそうですかって、なんであんな子豚一匹に、そうムキになるんだよ」
「こ、子豚だと。あいつは俺の彼女だ。そう彼女。豚呼ばわりするんじゃねぇ」
「彼女って。じゃあ、お持ち帰りでもするのか? そうなら大したもんだぜ」
そんな話無理に決まっていると思う。なぜなら、クエスト中に登場するモンスターは全てお持ち帰りなんてできない仕様だからだ。システム的にできない仕様に、J.Oはなんて答えるのだろうか。そう見守っていると
「お持ち帰りなんてしない。ここで飼うのだ。ここが、この場所が俺にとっての庭みたいなもんだからな」
「ここで飼うって……」
と心の中で苦笑いする。そうしたなか、ケインは
「この場所が庭だって!? ドスファンゴとかブルファンゴがあちらこちらにいるのにか。ぷふふふ」
正直、俺も同じく笑いたくなってきた。どう考えてもまともな人間が言うような答えではないからな。が、ここは我慢我慢。人にはいろんな考えがあるのだ。たまたまそういった考えも持った人と接してしまっただけのことだと切り替えつつそう堪える。そうしたなか、
「笑うんじゃねえ!! それにこの場所を汚したお前ら。きちんと責任とってもらうからな」
「責任って……………あっ」
そこでケインは、いや俺もだが、モスの動向が気になり、一瞬だがそちらに目が行ってしまった。つられて、J.Oも思わずと言った形で、そちらの方へと目が行ってしまう。そして、彼は目を丸くするなり、慌ててこう言ったのだった。
「や、やめろモス!! 立ち向かっていくんじゃねえ!!」
とモンスターに向かって突進(実際には俺たちハンターに向かって突進しているんだが、そこはJ.Oは気付いていないみたいなので黙っているとして)していくのを制止させようと試みる。
しかし、時は遅く、向かっていった先にはちょうどドスファンゴがいた。こつんとぶつかっただけでドスファンゴの巨体が障害物となってそこで止まってしまう。だが、悲劇というかなんというか。いや、J.Oにとっては悲劇なのかもしれないが、先ほどから仲間を殺されて興奮していたったドスファンゴは、そこで巨大な牙を振り上げつつ大暴れだしたのだ。
「も、モス――!!!」
そう叫ぶが願いはかなく、モスは大暴れするドスファンゴに巻き込まれて、
ぶひー!!!
そう断末魔を立てるとともに吹き飛ばされ犠牲となってしまう。俺らとしてはあっちゃ―程度で済んでいたのだが、当の本人=J.Oはそうはいかなく、呆然とその場で立ち尽くしていた。モスは彼にとってなくてはならない存在だったのだろう。他にもいるのにね。
「お、俺の彼女が……」
呆然とつぶやく彼に、追い打ちをかけるかのようにブルファンゴが突っ込んでくる。危なーいと思ったが時すでに遅く、J.Oはそのまま吹き飛ばされてしまった。
そこらの地面にごろごろと転がり、座り込んでしまう。しかし俺たちは、そんな彼なんてお構いなしだった。とにかく、残ったブルファンゴにドスファンゴ。こいつらの相手に手いっぱいだった。場合によってはこの場でおさらばしたい気もするが、なんだが逃げづらい雰囲気が漂い返って留まりざるを得なくなっていた。
さすがに片手剣じゃ火力不足か。そんな思いが頭の隅によぎってくる中、ケインの悲鳴が聞こえてくる。
一瞬、ちらっとだけケインの方へと目線がいってしまう。
「ケイン!!」
だがその一瞬が仇となった。突然大牙を思いっきり振り回し、間合いに入っていた俺はその振り回された大牙の前に吹き飛ばされてしまう。
「ぐはっ」
よろよろと立ちあがり、表示されていた体力ケージバーが2割程度減ってしまうことをこの目でふと確認してしまう。以外に強烈な一撃だったんだなあ。なんて思いながら、態勢を立て直すや否や、近くでJ.Oのつぶやきが聞こえてくる。
「よくも、よくも俺の彼女を。よくも俺の彼女を! よくも俺の彼女を――!!」
精神的に吹き飛ばされそうになってしまわんばかりの気迫を込めて放った怒声。彼は勢いよく立ちあがると、ハンマーの柄を握り潰さんばかりに握り締め溜めモーションをとった。
「絶対にぶっ殺してやる――! うわ――!!」
そう叫ぶや否や突っ込んでいく。その様、まるで憎悪を煮たぎらせる鬼神のような、とても言い表せようもない恐るべき恐さがあった。ま、裏を返せば、それほどモスを愛していたことにもなるのだが……。
とにかく、彼はそのままブルファンゴにめがけ、一撃をお見舞い。どしんっ!! と慈悲機を立てるや否や、一撃でブルファンゴを地に沈めた。
さらに溜めに入ると、もう一匹のブルファンゴへ。これはケインも相対しているブルファンゴであり、ケインを巻き込まんばかりにこう言い放つ。
「貴様ら、まとめてぶっ飛ばしてやるぅー!!」
「おいおい、ちとまてよ。俺を巻き込むんじゃ――」
最後まで言い切りそこね、J.Oはケインも巻き込んでブルファンゴを地に沈めた。もちろん叩きつけの衝撃波は、待て待てと説得を試みていたケインもを吹き飛ばして。
味方なのかどうかは別としてだ。プレイヤーもモンスターも見境なく攻撃するその姿は、まさに〝暴走〞と呼ぶにふさわしかった。
で、そのあとだが、J.Oは我を忘れて暴走したまま、ドスファンゴにも食らいついた。彼の鬼のような形相の前に完全に傍観者となってしまった俺たちは、ただただ見守るしかなかった。
やがて傷付きまくり命に危険さえ及んだと見たのか、ドスファンゴはそうそうに退散していった。親玉の撤退。復讐という思念に取り付かれたJ.Oは、やりばのない気持ちでどうしようもなく、結局その矛先は俺たちに向けられることとなった。俺としてはこうなる覚悟ではいたのだが、八つ当たりしてくる彼を相手にするのは、クエスト攻略する上での疲弊以上に疲れてしまう結果となってしまった。
どの道、こう言う結果を生んでしまった原因は、ケイン。心の底で、よくもまあこんな目に遭わせや
がったなあと恨んでしまうのであった。