モンスターハンターアルカディア   作:ぷにぷに狸

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3章:燃える夜空へ・7話

切替(スイッチ)だ?? ケイン!」

「うぉおおおー??」

 

 ドスファンゴの巨体を強靭な盾で防いだ間隙を突き、ノブ公の後方に控えていたケインが雄叫びを放ちながら躍り出た。

 大上段の構えから奴の斜め横へと切り込んでは、無造作に斬撃を浴びせまくる。

 やがて練気ゲージが高ぶれば昂るほど、内なる闘志が沸き立ち、やがてそれが赤きオーラとなって、具現化していく。だが、冷静さを保っていたノブ公は、そこで言い放つ。

 

「引け?? ケイン!」

「え??」

 

 次の瞬間、ターゲットを変えたドスファンゴが、ケイン目掛けて牙を振りかざす。

 

 くっ!

 

 歯を食いしばっては、切り下がりから顔面スレスレ。強靭な牙が空を切った。

 間一髪交わしたケインは、そのまま敵に背を向け、ノブ公の後方へと引き下がる。

 一方、ノブ公は銃槍を構えては

 

「喰らえー!」

 

 ドンー?? ドンー??

 

 2発、連続射撃。小タル爆弾並の爆炎を巻き上げた。だが、怯まない。竜撃砲の黒焦げ痕を垣間見たケインは、こちらを向いたドスファンゴを目の前にノブ公に向かって叫ぶ。

 

「オッサン!」

「言われなくても!」

 

 ガッチリとガードを構える手前、後ろ足を擦っては、猛然と突進の構えを奴は取り始めた。が――

 

 ヒュンー!

 

 何かが飛来。そして、得体の知れない信管が、ドスッ! と頭部に刺さったかに見えた。次の瞬間、

 

 ボーンー!

 

「な、なんだ??」

 

 驚愕に目を見開いた。しかし、その1発ではなかった。やや、5秒間を置いた後、もう1発、着弾。直後、

 

 ボーンー??

 

 再び爆発を起こしたのである。2回とも食い、流石に怯むドスファンゴ。

 

「今のは?」

「徹甲榴弾だ。……ケイン、今だ! 斬り込め!」

「お、おう」

 

 一瞬躊躇してしまったが、しかし、勇気を持ってダンッと踏み込んでは、

 

「うわ――??」

 

 連続斬り。鮮血を幾重にも迸らせ、最後に――

 

「これでも喰らえー!」

 

 トドメの一撃とばかり、赤き衝撃波を激らせ

 

 〝鬼刃斬り″

 

 見舞いしてやった。そして――

 

「離れろ??」

「え? ――っ!」

 

 その視界たるや、なんと銃槍にパワー充電しまくるノブ公の姿が。直感で――

 

 (これはヤバイ!)

 

 途端に青ざめては、

 

「ひぃいいい――??」

 

 と全力逃走。近くの倒木の陰へとダイブし、それから数秒した後、

 

 ボカ――ン――??

 

 凄まじい爆音、それに伴う爆風が吹き荒れ、周辺を薙ぎ払ったのだ。

 

 竜撃砲。

 

 事前に1回目の大規模大爆発の正体を知らされたとは言え、変に近くにいたらひとたまりもないことこの上ない瞬間であった。

 

「こ、鼓膜が破れるかと思った……」

 

 身を隠した直後、耳を塞いだとは言え、その爆発音は、そう、強いて例えるなら、まさに戦車。その戦車の射撃音を間近で聞くようなレベルに相応しいくらいだったのだ。

 事を終え、ノコノコと倒木から顔を出す。

 

「お、オッサン……」

「終わったぜ。新入りにしては大した方だったぞ。他のみんなもな」

「だ、だから?、俺は入団しているわけじゃ――」

 

 とそこで言葉を飲み込んだ。討伐したドスファンゴ。その巨体を改めて見て、

 

(にしても、よくこんな奴を仕留められたものだな?)

 

 と、正直、驚きつつ、続きの言葉を紡ぐ以上に、そのサイズに呆気に取られてしまったからだ。その様な巨体に、ノブ公はそっと手を当てがい、一言。

 

「驚いたかい?」

「ま、ま?、何というか……」

 

 と言葉に言い表せなかった。そんなケインに、ふんっ、と鼻で笑うと

 

「ま?、無理もないさ。なにせ、この巨体相手だったからな。……ん?、見るからに金冠サイズは近いと見たか」

 

 と考察気味に言い残し、柄を地面に押し当てガチャリと割れた銃槍に弾丸を再装填。銃火器の様な武器は、見事に折り畳まれ、そのまま大楯と共に背中に背負わされた。

 一方、その様子を見ていたケインは、ふと尋ねてみたいことが。

 

「な?、気になっていたんだけど……」

「ん? なんだ?」

「ソレ、その背中に背負っている重火器、なんで言うんだ?」

 

 と、まさに素朴な疑問を口にしたのだ。すると、ノブ公は――

 

「ああ?、これか」

 

 と述べた後、にこやかな笑みを浮かべては

 

「ガンランス、ガンランスって言うんだぜ。カッコいいだろう?」

 

 と自慢げに嘯いた。

 

「ガンランス?」

「ま?、正式には、スティールガンランス、と言う名だけどな」

「スティール、ガンランス、か?」

 

 不思議と興味を惹かれたのか、ケインはノブ公の背後へと周った。重厚な大楯の下に、銃槍が折り畳まれて見える。リボルバーと言うべきか、それがよく目につき、そのことがガンランス最大の特徴のような印象を匂わせる。

 

「ふむ?……」

 

 (見た感じ、悪くないような……)

 

 そんな感慨が脳裏を過ぎった。

 

「どうだ、ケイン。試しに装備してみないか? きっと気にいると思うぞ」

「う?ん、確かに、そう言われてみれば……」

 

 腑に落ちなくも言えなかった。――とそこで、小凛が途中から口を挟む。

 

「それは、止めた方がいいアル」

「え?」

 

 思わぬ指摘にキョトンとしてしまい、

 

 (なんでだ?)

 

 そんな疑問が浮かぶ間もなく

 

「単的に言って、扱い方が上級者向けだからネ」

「上級者向け?」

「そうネ。第一、試験をクリアしないと購入も無理だからアルネ」

「試験?」

 

 思わず顔を顰めた。一方、そこでノブ公は今さっき思い出したかのように、頭の後ろに手を当て

 

「あ?、言い忘れていたわ。あったな、そう言えば。試験とかいう面倒な関門が」

 

 そして、その事情を話すまでもなく

 

「やっぱりやめだ、やめ。ケイン、ガンランスは魅力はあるが、あまりお勧めできないわ」

「は、は?」

 

 とは言え、内心、その試練とやらも受けるかどうかは別として、気にはなったが。

 

「ま?、それより、依頼(サブクエ)の一つは完了したんだ。ひとまず山菜ジジイのとこに行こう」

「ああ、ちょ、ちょっと……」

 

 ガンランスに関して、他に訊きたい感じがしていたが、気を取り直して歩き出すノブ公を前に、一つため息。仕方なく連れ立った。

 

 

 (試験とはなんだろう?)

 

 そのことが頭から離れなかった。想像するに、ガンランスの扱い方についての講習か何か、とまでは思い描けるが。

 しかし、本格的に太刀を扱うようになった当初は、ガンランス、なんて言葉すら眼中になかったからだ。

 

 しかも、しかもだ。

 

 (武器に試験を課すような項目なんてあったっけ?)

 

 その辺り、漠然としていた。実際、太刀を扱うようになってから今に至るまで、武器試験なんて一切なかったから。一方、

 

武器(ジャンル)ごとに違うんかな……」

 

 そんな気もしない訳でもなかった。

 

「な?、J.O」

「あん?」

 

 隣に歩く巨体は、前を見ながら応える。

 

「一つ訊いてもいいか?」

「何をだ?」

「武器を扱うのに、試験、なんて、本当にあるんか? 訊いた事ないから」

「試験、試験、か?。ん?……」

 

 そこで記憶の糸を手繰り寄せるように、上の空で考え込む。

 

 (ひょっとすると)

 

 そんな脳裏が過ったが、しかし――

 

「やっぱ、知らんな。俺も俺で、こうして(ハンマーを)手軽に扱っている訳だし。試験なんて……」

「そっか?」

 

 その返答を受けてか、肩を落とした。そんなケインに

 

「もしかして、副団長とのアレか? なんかお前、ガンランスに少し興味を抱いたみたいに見えたから」

「あ、ああ?、まぁな。正直、格好いいなぁと思ってな。……そうだな?、まさに雰囲気が、ロマン砲を担いでいるみたいでな」

「ふ?ん、男の子はそんなロマンを抱くんだな」

「男の子?」

 

 (なんださっきのセリフは!)

 

 まさに、妙な違和感を抱いた。そう捉えてもおかしくないキーワードを、ケインは耳にしたのだ。訝しむ顔に、

 

「あ、い、いや。そう言う奴もいるんだな?、と言う意味でだ」

 

 とかなんとか、はぐらかす素振りを見せた。どう言う事なんだろうか? 少し深堀りしてみた。

 

「は?。じゃあ、普段、お前が見てきた奴は、どんな感じだったんだ?」

 

 と。すると、

 

「そ、そうだな?。……筋肉質で、逞しくて……。子供っぽいが優しくて?、と言うか?。……っ! し、しまっ――」

 

 その表情たるや、白昼夢に耽る乙女のようなもの。途中でハッとなって我に返るや時既に遅し。そこを見抜いたかのように

 

「は、は?ん……」

「な、なんだその目つきは」

 

 悪戯っぽいジト目に、J.Oは気色ばんだ。ケインは思った。この際だから、こいつの正体を明らかにしようかと、下心丸出しで。

 その第一歩として、人差し指を立てるや名探偵宜しく

 

「つまりはだ。つまり――」

 

 そこで、ゴクリッ、と唾を飲み込む音が。しかし、構わずこう指摘。

 

「お前、……実は〝男の()″だろう」

 

 と。

 その答え、その答えに、ガクッ、とJ.Oはバランスを崩しかけ、

 

「んな訳ないだろうが??」

 

 と一喝。そして――

 

「俺は、この俺は、列記とした男だ?? それ以上でもそれ以下でもない! 履き違えるな!」

「あ、アレ? ち、違ったか?」

「違うわ!」

 

 とあくまで否定を貫いた。そんな彼に

 

 (見当違いだったのだろうか?)

 

 そう半信半疑になる反面、確かにあの時、ドスファンゴにやられて彼にぶつかった際、女の子のような悲鳴が聞こえたのだが、気のせいだったのだろうか?

 そんなモヤモヤした感じが、シコリとなって残った。そんな中、

 

「さっきからゴチャゴチャと。な?に、2人で盛り上がってるんネ」

 

 流石に2人のやり取りが気になったのか、顔だけ向けて小凛が訊いてきた。

 最初に取り繕ったのは、ケイン。

 

「あ、いや、俺は別に……」

 

 と思わず訊きたかったことを避けてしまった。一方、J.Oはと言うと、フォローを求めて立ち回った。

 

「訊いてくれよ、小凛。こいつからガンランスのことを訊かれて、ただ単に知らんと答えたってのに、どう言う経緯か俺自身の素性を明かそうとするんだぜ。ひでぇ?、とは思わね?か?」

 

 すると、彼女は戸惑った風に

 

「そ、そんなことを訊かれても、困るネ。ただ、ガンランスに関しては、うちが大体知っているから、代わりに答えてもいいけど?」

「だってよ? 俺に訊かずに小凛に訊けば良かったものの」

「あ?、分かった。分かったよ」

 

 小凛からJ.Oを介して、渋々、了解したケインは、J.Oの素性のことを詮索するのは、一旦、頭の隅に置いとくことにした。

 しかし、それでも、内心は、ちぇ?、と不快感を抱いたが。何やらぶつくさと文句を垂れ流すJ.Oを他所に、小凛へと話題が向く。

 

「で、ガンランスの何ついて知りたいアルカ?」

「あ、ああ?。そうだな」

 

 とそこで、一回咳払いをし気を取り直すと

 

「オッサンが言っていた試験とやらについて、訊きたくてな。なにせ、武器を扱うのに訊いた事なかったもんで」

「あ、あ?、そう言うことアルネ。いいネ、この際だから知っている限りのことを話すネ。副長に話せば早いけど、いいアルヨ」

「サンキューな」

 

 すると、共に歩きながらであるが、小凛は慣れた手つきで眼前にマニュフェストとやらを表示。こちらへと向くなり、その画面を見せながら解説に入った。

 

「はい、これ。ご存知かどうかはさておき、まずこの際だから言うけど、ジャンルは全部で15種類あるネ」

「じゅ、15種類も??」

 

 目で確かめるよりも早く、その言葉の前に驚いた。けれど、一項目ずつ武器アイコンを数えていくうちに、確かに15種類あることに気が付いた。

 まさに、その15種類とは、片手剣、双剣、ハンマー、ランス、太刀、大剣、狩猟笛、ガンランス、チャージアックス、スラッシュアックス、弓、ライトボウガン、ヘビーボウガン、操虫棍、そして、後一つ――シークレットのことを意味していた。

 

「た、確かに……」

「でしょ? たけど、ザックバランに分けて――」

「あ、ああ……。一つ訊いていいか?」

「ん? 何アルカ?」

「この〝シークレット″ってなんだ? シルエットしか描かれてないけど……」

「シークレット?」

 

 すると、彼女も今更ながらに気になったのか、画面を反転した。して――

 

「あ?、これネ。分からないネ」

「わ、分からない? 15種類あるとか言っておきながら?」

「私だって全て知る訳ないネ。ただ、15種類あると言うのは、シークレットも含めての事だから」

「う、う?ん……」

 

 どうも腑に落ちない。そんな表情が滲み出てしまった。一方、そのことに、小凛は訝しむ顔になり不快感を口にした。

 

「何? その顔? 何か文句がありそうアルネ」

「も、文句と言うか……」

「ふ?ん、さては、教える側であって、全部知っていて当たり前。そんなことでアルカ?」

「うっ」

 

 まさに図星だった。その心中、この際だから、全て知りたい。そんな好奇心がいても立ってもいられなかったからだ。

 

「やっぱりね?」

 

 そこでため息を一つ。

 

「好奇心旺盛なのはいい事だけど、流石に買い被りすぎよ、買い被りすぎ。全く?」

「す、すんません」

 

 教えられる側だけあって、立場が弱かった。少なからず肩を落とすと、小凛は話の振り出しに戻った。

 

「で、なんだっけ? ……あっ! そうそう。15種類のうちに、だったアルネ。そ、15種類のうちにネ、大まかに二つに分けられるアルネ。中には、3つあると言うプレイヤーもいるけど」

「3つ? 2つ?」

「ま?、近接系と遠隔系、と言ったところネ。で、――お! おーと!」

 

 っ!

 

 ガシッ!

 

「だ、大丈夫か?」

「あ、ありがとうネ」

 

 飛び出た枝に足を取られ、バランスを崩した小凛は、転倒間際、ケインに助けられた。

 

「大丈夫? 小凛さん」

「ご、ごめん。レイナさん」

 

 バランスを崩しかけた小凛を心配してか、レイナを含めて皆の足が止まっていた。

 

「なんだか、気まずそう……。ケイン、また、今度でいいアルカ? レクチャーは」

「あ、ああ?。別に直ぐとは言わないさ」

「ありがとうネ。この事は、時間が空いたらまた話すネ」

「ああ、期待してるよ」

 

 その言葉を最後に、レクチャーは一時中断することになった。

 しかし、後に残るはただ一つ。頭の隅に置いていた好奇心。それが、今更ながら枷が外れたかのように悪戯心が湧いて来て――。

 

 (やっぱり、気になる)

 

 暇を弄ばんばかりに意表を突かの如く、

 

「つん」

 

 J.Oの脇腹を突っついた。途端、跳ね上がるかのように

 

「ひゃっ!」

 

 と女の子のような黄色い悲鳴が。憶測がマトを得たかのように

 

 (やっぱり、男じゃ――)

 

 しかし、そう思ったのも束の間、振り向き様に

 

「て、てめぇ?、何するんじゃ?? ボケー!」

 

 とか言って、いきなりグーパンチ。反応しきれず

 

「うぶっ!」

 

 モロに顔面に食らってしまった。

 

 

 

 

「あれ?」

 

 第一声、ノブ公は違和感を口にした。

 

「どうしたんですか? 副長さん」

「あ、いや?。爺さんがいなくてな」

 

 ノブ公とレイナの会話を遠目で見るケインは、風の流れに乗って来る声を訊いた。

 

「なんかあったんか?」

 

 すると、列の向こうを覗き見る小狼が答えた。

 

「どうも、問題があったみたい」

「問題? もしかして、山菜ジジイ関連かな?」

「そこまでは……」

 

 彼自身も分からないみたいであった。他方、オトモ達も気にしているみたいであり、特にブレットは状況を推し始めた。

 

「思うに、不在で困っている、みたいだにゃ」

 

 その小さき声に

 

 (不在? やっぱり……)

 

 ケイン自身も察したようであった。そのこともあってか、レイナさんがノブ公の代弁者となってケイン達に通達する。

 

「皆さ?ん、どうも例の山菜お爺ちゃんがいないみたいで?す。なので、ここは一つ、一緒に探してもらえないでしょうか?」

 

 と。

 

「ったく、仕方ねぇな」

 

 その言葉に、J.Oは渋面を滲ませる。対してケインは、その山菜ジジイとやらに一度も会っていないだけに、どんな奴なのかは分からない。分からないが、ここは一つ、協力することにした。

 

 手分けして周辺を探し回った。すると、しゃがまないと抜けれない小さな道を発見。その道を抜けた先にて、膝より少しだけ背丈が小さい、荷を背負った老人がいた。

 近寄って見るからに名前が表示され、彼こそ山菜ジジイであることが分かった。

 第一発見者はケイン。皆に呼びかける。

 

「おーい?? いたぞー!」

 

 そして、その声に人の気配を感じたのか、ご老人はこちらを向く。

 

「お主、新たな依頼人かのぅ??」

 

 しかし、問われたことに、ケインにはさっぱり。

 

「い、依頼人と言うか……」

 

 そこで、現れたのはノブ公のおっさん。話が通じているのか。先に

 

「どうもな、ケイン」

 

 と礼をした後、

 

「依頼のものは果たしました」

 

 そう述べた後、画面から依頼書を提示してみせた。

 

「うむ、ご苦労。では、最後に――」

 

 そう言うなり、爺さんは副団長に何かを提示してみせた。受け取ったノブ公は、こちらを向くなり通達する。

 

「設営地の再建には、あと一つ依頼をこなさないといけないそうだ。だから、それを今から送信するから頼めるか?」

「あと一つ、ネ?」

「どんな内容かにゃ?」

 

 小凛、バターが気になる様子。口々に呟く。そして、ケイン以外、依頼内容を送信され、へ?、と納得したようだった。

 ノブ公はケインの方へと歩むが、そこで通達されなかったオトモ達が声を上げる。

 

「私達はどうすれば?」

「そうだにゃ。僕たちは?」

 

 すると、ノブ公は、

 

「君たちは、パートナーと一緒にサポートしてくれれば良いさ」

「了解だにゃ」

 

 そこで、レイナさんは

 

「じゃあ、そう言うことなら、ブレット君は私と共にいいかしら?」

「レイナさんが? いいけど」

「じゃ、決まりね」

 

 これで、ケインを除いて、編成と依頼内容は把握したみたいであった。

 

「では、早速……」

 

 と改めてケインと向き合い

 

「君は、ギルドカードまだだったね」

「ギルドカード? ああ?、まー」

 

 曖昧な返答。やや笑みを浮かべたノブ公は、

 

「その様子だと、互いの自己紹介はどうもきちんとしてないみたいだね。なら、この際、自己紹介の証としてギルドカード、送信しとくよ。はい、これ」

「あ、ああ、どうも」

 

 そして、受け取ったギルドカードを見る前に、ケインも同様、ギルドカードを彼に向けて送信しといた。

 

「入団するかどうかはさておき、改めてよろしくな。ケイン」

「こ、こちらこそ」

 

 差し出された手を受け取り、たじろぎながらもキチンとした自己紹介を済ました。

 

 ノブ公から受け取った依頼は、次の通り――

 

 ・ガウシカの角 ×1

 ・針葉樹の端材 ×3

 

 この2つであった。そして、組まされたパーティーと言うのは、自分と小狼、さらには、ミルクとバターの4名と言ったところ。

 ちなみに、集合場所は、先の山菜ジジイのとこではなく、あのボロ屋エリア。そこで、どうも山菜ジジイが待っていてくれるそうだ。

 

 ザク、ザク、ザク、ザク……

 

 雪を踏みしめながら、ふとケインは呟いた。

 

「端材に、角、ね?」

 

 と。それは、連れの小狼にも言える事でもあった。あの時、ノブ公のおっさんから受けた内容とは、まさにオトモを除いたケイン達、一人一人に割り当てられた必要素材だったのだ。

 そして、特に端材に関しては、自前の剥ぎ取りナイフだけで十分であり、入手方法は亀裂が入った針葉樹から得られるそうだ。

 ともかく、そんな訳で互いに目が届く範囲で行動していた。

 

「にしても、亀裂がある木ってどこに……」

 

 そう呟くのは、歩き回れど簡単には見つかりそうにないことへの戸惑いからであった。

 確かに木々はごまんと沢山ある。しかし、どれもこれも幹が細かったり、太くても傷なしの木、大雑把に言ってそればかりだったからだ。

 

 は?

 

 ため息が溢れる。その中、ふと横目に視線をずらせば、そこには、小狼、バター、ミルクの姿が目に映る。

 

 (何してんだ?? あいつら)

 

 小丘と木を挟んで見えただけで、彼らが何しているのか分からなかった。気になったケインは、3人の元へと向かう。

 すると、一本の木を相手に何かを剥ぎ取っている姿が。

 

「おーい! もしかして……」

 

 その声に、

 

「あ、ケイン。そうだよ、ポイントを見つけたから」

「これで、あと一つだにゃ。小狼くん」

「うん」

 

 バターの呼びかけに、小狼は頷く。

 

「へ?」

 

 (先に見つけやがってからに)

 

 内心、上手くいってそうな彼らに、僅かばかりの嫉妬を抱く。

 

「ところで、ケインはどうかにゃ?」

「あ、ああ?。俺か? 俺は――」

 

 ミルクの質問に、ケインは言葉を詰まらした。しかし――

 

「う?ん、順調かな。ちと、手こずっているけど」

 

 頬を指先で掻いては、実は上手く行ってないことに対してのはぐらかしだった。

 

「そっか?」

 

 そして、

 

「バターに小狼、ここで待っていてくれないかにゃ?」

 

 え?

 

「あ、いいけど」

「私も」

「どうもにゃ」

 

 礼を言われるや、ケインの方へと歩み寄って来た。

 

 (な、なんだ?)

 

 彼女の行動に疑問符が浮かぶ。が、どうも見透かされたらしい。

 

「ボクも手伝うにゃ。ちょうど手が空いていたし」

「え? ええ、いいよ、そんな。俺なんて……」

「いいから、いいから。それに、上手くいってないんでしょ? だから」

「あ、いや、そう言う訳じゃなくて……」

「さ、さ?」

「……ったく?」

 

 ここは一つ、押し切られてしまったケインが、ミルクと共に仕方なく素材集めをすることとなった。

 けれど、その内心では困っていただけに、非常に助かったと思っていた。

 

 

「こんなものか」

「あとはいいのかにゃ?」

「ま?な。あとは、討伐だけみたいだし」

「そっか?、なら大丈夫そうで何よりだにゃ」

「ありがとな、ミルク」

 

 端材が3つとも揃っただけに、ひとまず安心感を滲ませていた。残るは――

 

 〝ガウシカの角″

 

 対象モンスターを見つけ次第仕留めれば、楽勝。まさに楽観視していた。

 

「とりあえす、あとはガウシカだよな。……ガウシカ、ガウシカ、ガウ……」

 

 木々で入り組んだ景色を見渡す。ところかしこに種種雑多な環境生物が点在し、肝心のガウシカの存在が見当たらない。

 振り返れば、ノブ公曰く、ガウシカとは鹿のようなモンスターだそう。いればすぐ見つけやすいとの話だそうだが……。

 

「ケイン」

「っ! な、なんだ?? ……て、小狼か。ど、どうした?」

 

 探すのに夢中になっていただけに、急に後ろから声を掛けられ心臓が飛び出すかと思った。

 

「そんなに驚かなくても……。それより、こっちは終わったから、手伝いに来たんだよね。ミルクから訊いたけど、ガウシカを探しているって?」

「あ、ああ。そうなんだな。今のところ見つからなくてな」

「そうなんだ?」

「検討がつきそうか?」

「ん?」

 

 何かを探すつもりなのか、雪面に目を落とした。そして、何処かへ行く訳でもないが、歩き出し、そこでしゃがんで見せた。

 

「小狼?」

「見て、ケイン。ここに痕跡があるよ」

「痕跡?」

 

 気になったケインは、彼の元へと歩み寄り、同じく目線を下に。そこで一言

 

「あ??」

 

 と発する。と言うのも、確かにモンスターの痕跡には間違いない。見るからに、それは蹄の形を成していた。

 

「てことは……」

「うん、途中で消えてなければ、この足跡を辿ればガウシカの居所にありつけるよ」

「ふん、なら早速、向かおうぜ」

「もちろん」

 

 それから暫くして……

 

 案の定と言うべきか、そこにはガウシカがいた。それも一頭ではなく10頭近くも。

 大手を振って腕によりを掛け、

 

「そんじゃぁ、早速――」

 

 小狼、ミルク、バターが見守る中、その群れの中の一頭に狙いをつけ、一気に攻勢に出る。

 ジャキッ、と鞘から抜刀し、そのままガウシカの背後を狙った。

 

「てりゃー??」

 

 大上段からの袈裟斬り。か・ら・の、斬連を浴びせまくり。意表を突かれたガウシカは、反撃の余地を与えられないまま崩れ落ちた。

 

「ふん、このくらい楽勝よ。……さてと」

 

 剥ぎ取りナイフを取り出したケインは、試しに剥ぎ取って見せる。が、結果は――

 

「ちぇ、生肉かよ」

 

 ハズレだった。しかも、剥ぎ取り回数は、一回しかできないと言う……。

 

 (仕方ない、次行こう)

 

 一回目だけで出る訳ではない。それは分かっていたから、当然と言えば当然であった。

 次に狙いを定めて――そして――

 

「またかよ」

 

 またしてもハズレ。今度も、一回目同様、生肉であった。それからと言うもの、襲ってはハズレ、襲ってはハズレを繰り返し。

 今いるガウシカも、遂には4頭しか居なくなっていた。

 

「どうなっているんだ? 一体」

 

 流石のケインも焦りがで始める。一方、静観していた小狼達も、ケインがうまく行っていなさそうに、戸惑いを隠せないでいた。

 頭を掻き始めるケイン。互いにどうするべきか打開策が見出せないでいる小狼達が、ただただ時間を無駄にしていた。

 ――とそこへ

 

「よ!」

「……あ、J.Oさん」

「ん? J.O? 豚頭がいるのか?」

 

 第三者の登場の声に、ケインは振り返った。スパイクハンマーを肩に乗せては、意気揚々。その余裕そうな態度を見るからに、やるべきことは終わり。暇を弄んでいるようにさえ思えた。

 

「この惨状、なんかあったのか? そこら辺にガウシカの遺体が散乱しているが」

「あ、いや?。これは……」

「? 推測するに、お目当ての素材が出ない的な」

「……」

 

 返す言葉がなかった。

 

「返答がないとは、つまりそう言うことだな」

「う、うるっせぇよ」

 

 いつもは小馬鹿にしている立場であるだけに、いざ反対側に立たされたケインは、悔しい思いでいっぱいであった。

 

「ったくな?。素直にそう言えばいいじゃんかよ。で、目当ての素材ってなんだ?」

「……角」

「角? ……あ?、ガウシカの角か。ふむふむ、成る程な合点がいく訳だ」

 

 そこで小狼が

 

「どういうこと? J.Oさん」

「ああ? あ、つまりだな。つまり……」

 

 わざと間引きしつつ、ハンマーを構え直しては力を溜めていくと、一頭のガウシカの背後へと近づき

 

「こういう事さ??」

 

 ズシンッ??

 

 撃鉄を見舞い、一撃で気絶状態に仕上げた。

 

「ほら、ケイン。剥ぎ取りしてこいよ」

「……お前の功績じゃん、それ」

「お前の功績って……」

 

 戸惑いを見せた。けれど、ケインとしては、J.Oなんかの手を借りたくはなかっただけに、意固地。

 その反応に、ミルクが諭す。

 

「ケイン、ここは意固地にならなくても……」

「そうだにゃ、ケインくん」

「……あー?? 分かった、分かったよ。剥ぎ取ればいいんだろ、剥ぎ取れば」

 

 まさに、渋々、剥ぎ取りに向かった。ナイフを振りかざし、そして――

 

 〝ガウシカの角を手に入れました″

 

 不本意ながら、見事に手中に収めたのであった。

 

「どうだったにゃ? ケイン」

「あー、入ったよ。手に入りましたよ?だ」

「ったく、素直じゃないんだから」

 

 流石にこれには、J.O自身も半ば呆れてしまったようだ。

 

 条件は全て揃った。あとはあの廃屋エリアへ向かうだけ。あの入手に手を焼いていたガウシカの角。その入手条件とは、ガウシカの討伐ではなく、ガウシカを気絶させること。

 つまるところ、ハンマーで気絶させる必要があったのだ。そのことだけに、小狼とケイン達ではどうすることもできない訳であり、J.Oの協力が必要だった訳である。

 黙々と前に歩くJ.O。その背中を見ながら、ケインと小狼は後方からついて歩いていた。

 

「な?、小狼」

 

 と気軽に声をかけ

 

「気になっていたんだけど、この糞ゲーム、なんで始めるようになったんだ?」

「糞ゲーム?」

「モンハンアルカディアのことだよ。始めたきっかけ、知りたくてな」

 

 すると、小狼は上の空で

 

「ん?、あまりよく覚えていないんだけど、確かシャオネーに誘われたからかな」

「誘われた?」

「うん。僕ってほら、こう見えても人見知りある方だから、シャオネーがそれを克服するきっかけとして、誘ってくれたんだと思う」

「ふ?ん、きっかけね?」

「ま?、運悪くこうしてデスゲームに巻き込まれちゃった訳だけどね」

「まさに災難だったな」

「ま?ね。ところでケインこそ、どんな事情で?」

「え? あ、あ?、俺か? 俺は?、なに、ユウト(あいつ)と俺と。今はいないけど、もう一人のダチと一緒に狩人王を目指そうって約束したのがそうかな」

「へ?。でも、今はいないってのは?」

「そ、それは……」

 

 一瞬表情が暗くなるケインを見て、何かを察したのだろう。

 

「あ、ご、ごめん。そこは訊いちゃダメだよね」

 

 遠慮してしまった。しかし――

 

「いや、いいんだ、別に。過去のことだしさ」

「じゃ?……」

「多分察しているとは思うけど、そいつ、事故で亡くなったんよな。電車の衝突事故でさ」

 

 それを訊いて小狼はどう思ったのか、しんみりとしてしまった。

 悲しそうな表情を浮かべる彼に、ケインは額をこづいてやった。

 

「んな暗い顔するなって」

「た、だけど……」

 

 軽く鼻で笑って

 

「ありがとな。気遣ってくれて。……お! どうやら着いたみたいだぜ」

 

 ようやく針葉樹林を抜けようとするケイン達一行。その先、廃屋エリアでは、約束通り山菜ジジイがいて、なんと! 既にあの廃屋が再建され、それに付随する形で設営地が完成しつつあった。

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