モンスターハンターアルカディア   作:ぷにぷに狸

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1章:悪夢の祭典・7話

 遡って開幕式が終わった後……。なんとなく殺風景な感じがしてやまない社長室では、リクラに座ってくつろいでいた船橋社長がいた。船橋社長は手にした一枚の書類と睨めっこしながら、なにやら思案していた。書類にはお題目として「〝モンスターハンターアルカディア・オンライン〞運用契約期間通達書」と記載されてあり、その内容を見ての睨めっこであった。

 どうもこうも内容からして省庁からよこした通達書なのだが、その運用期間の日数。あまりにも短いことにどうも納得がいかない様子であった。

 それもそのはず、たったの2週間ばかりなのだ。ととのつまり、モンスターハンターアルカディア・オンラインの運用が2週間しかできないということであり、このことでユーザー様にどう説明していいのか迷っていたのである。唐突の宣告。それも運用開始が公式に決まった日から二日後にきたからなおのことである。

 きっと、ユーザーからクレームが殺到するだろうなあ。そればかりか信用が失墜しするのもま逃れないよなあ。なんて迷っていたのである。

 仕方なしに船橋は一枚の書類をデスクにしまった。これ以上考えても埒あかないと思ったからだ。このことは、あとで幹部会議でも開いて話し合うことにしよう、と。

 それはそうとして、船橋社長は神宮寺のことを思い出す。開幕式くらいまでには出ると言っていた彼女。結局、開幕式にも出ないで何をしているのだろうかと少し心配になる。再度の連絡もよこさず、業務上真面目な彼女らしくもないからだ。

 そうしたなか、一本の着信が入ってくる。ぶーぶーと鳴り続けるスマホを手に出てみる。

 

「どうした?」

 

 すると、向こうは何やら切羽詰まったような声でこう言ってきた。

 

「た、大変です!! 社長! 社員寮が、社員寮が」

「社員寮がどうしたって?」

「社員寮が火事になっているんですよ」

 

 その言葉に、船橋社長は笑ってこう答えた。

 

「それはそれは、いきなり何の冗談かね。君」

 

 しかし相手は、

 

「じょ、冗談って。 私そんなつもりじゃあ」

「分かった分かった。ともかく落ち着きたまえ」

「落ち着くも何も。こんな状況じゃ落ち着けませんよ」

「そうなのか」と半信半疑の船橋社長。ともかく相手の出方を窺う。

「あー、その返答だと信じてもらえなさそうですね。なんなら窓の外をご覧くださいよ。一目で分かりますから」

 

 そう言われ、

 

「仕方ないなあ~」

 

 と渋々立ち上がり、スマホを片手に

 

「どーれ」

 

 とカーテンを開け、窓の外を眺める。すると、船橋社長は一瞬にしてその目を丸くした。それはとてもじゃないが信じられない。とそういった表情へと変化していく形相を伴っての目だった。というのも、社員寮はただっ広い会社の敷地において北端の方にあり、その外観は真っ赤に燃え盛る炎に建物の3分の1が埋め尽くされ、事態がただことじゃないことを意味していたのだ。

 なんとか絞り出した言葉が

 

「し、信じられない……」

「どうです? 分かりましたか」

「あ、ああ…………こ、これは大変だ!」

 

 そして、

 

「今向かう。ともかく現状を詳しく話したまえ」

 

 そう言って慌て出すと、船橋社長は急いで身支度を済ませ、社長室から飛び出すように出て行った。

 

 

 

 

 東京・AE支社――

 

 それが支社名である。敷地と言えば、全部で5つの区画に分かれており、その面積と言ったらディズニーランドと同等の広さもあった。5つの区画と言ったが、実際には東西南北、そして中央と区画に分かれ、中央が支社区域。それ以外が社員寮区域、と言ったように分かれている。

 ところで火事の騒ぎにがあったのは、そのうちの北棟にあたり、それもコンクリートと木製のハイブリット性の建築物だったことが災いしてか、上層部がひどく焼け崩れていた。炎の特性から上へ上へと燃え上がっていくことから、そう言う風な燃え方をしているのだろうということである。

 そんな中、現場では野次馬やらマスコミやらでごった返していた。警官たちで規制線を張ってはいるものの、いつ突破されてもおかしくないと言ったような感じで人が溢れ返っていたのである。

 そう言った中、船橋社長は自家用車(オープンカー)で現場へと辿り着いた。到着時には一時驚いていたものの、そこはさすがに社長としてのものか、比較的に状況を理解しすぐさま冷静になっていた。

 幹部たちの姿を見るやそこら辺で車を止め、急ぎ足で彼らのもとへと向かう。

 

「百聞は一見に如かずってところだな」

 

 と船橋社長。サングラスをかけ清楚なスーツ姿をした幹部の一人――柳原は

 

「詳しい説明は先も話した通りです」

 

 続いて筋肉質な体系をした幹部のもう一人――馬場は付け足すようにして

 

「出火元は消防隊員が言うには、805号室からのようですぜ」

 

 すると船橋社長は青ざめたように表情になり

 

「確か805号室は」

「はい、神宮寺さんの社宅です。だから心配なんです」

「安否が気になるな。う~ん」

 

 と、すぐさま再度確認したい気持ちを抑えつつ唸る。

 

「それは私たちもです」

 

 何もできないことにもどかしさを感じつつも、次から次へと玄関口から運び出されてくる、あるいは梯子から降ろされてくる負傷者を見つめていく。腕組みしつつ待っている間、次第に貧乏ゆすりもし出し――

 

「もーう待ちきれん! 私からもう一回確認してみる」

 

 そういうと、船橋社長は我慢の限界だと言わんばかりに一人の消防隊員のところへと歩み寄っていこうとした。――が、そこは馬場が彼の肩に手を当て引き止める。

 

「ちょっと待ってくだせい、社長。今はまだ待たれた方がいいかと」

 

 背中越しから

 

「いやしかし……」

「確認したくなる気持ちは十分わかりますぜ、ただ今は無事を祈るだけしかできないのかと。それでも彼らに聞きたいなら構いませんが……」

 

 そう言われ、半ばためらう船橋社長。社長である立場からして、神宮寺だけ特別扱いというわけにはいかないが、それでも彼女には心配すべき点があった。

 思いつめていた節。息子さんが亡くなってから、塞ぎ込んでいた節が多々あったからだ。最悪の事態――いわゆる自殺でも図ったんじゃないのかと思わずにはいられなかったのである。――とそんな中、玄関口から一際大火傷を負ってタンカーで運ばれてきた女性が運び出されてきた。

 もしやと思った船橋社長は、急ぎ足で彼女の方へと駆け寄る。ついで柳原、馬場の二人も後を追う。

 

「神宮寺か? 神宮寺なのか?」

 

 全身大火傷をおい、さらには顔まで焼けただれていたこともあって一瞬そう尋ねてしまう。

しかし、呼吸するのがひどく苦しいそうな中、

 

「あ……晃、……晃……、……ぜ、たいに守って、あげるから……ね」

 

 の小言に、彼女だと確信する。運び出されていく中、気遣うようにして語りかける。

 

「もう、大丈夫だ、神宮寺。とにかく救急車が来たから安心しろ」

 

 う……ああ……あ、と声にもならない声をあげて応える彼女。救急搬送されることに安心したのか、その場で力尽きるようにして意識を失ってしまう。見守る中、救急隊員が船橋社長たちのところへとやってくる。

 

「どうします? あなたたちも、同席しますか?」

 

 しかし社長は、

 

「いや、私はこのあとの後始末をするつもりだから遠慮するよ。馬場君、彼女と同席してあげて貰ってもいいかな」

「わたしは構いませんぜ」

「なら、助かる。お願いするよ」

「任せてくだせい」

 

 そう告げると、馬場は救急車へと乗り込んでいった。

 隊員たちが速やかに乗り込んだ後、すぐさま救急車は搬送していった。後に残った船橋社長と柳原は、このあとどうするのかを話し合った。

 

「社長、どう思います? 今回の件」

「……あまり考えたくもないが……」

「やはりそう思いますか。神宮寺さん、最近の様子から私も少し気になっていたんですよね」

 

 船橋社長は困った表情を浮かばせつつ、腕組をしながらため息をこぼす。

 

「彼女にカウンセリングを付けさせるべきだったのかもしれないな」

「カウンセリングですと」

「そうだ。こうなる前にもう少し気遣ってやればよかったと思ってな」

 

 社員を預かる立場として、こんなことはあってはならないものなのだ。本当のところ、私は社長失格なのかもしれない。なんて、マイナス思考へと走って行ってしまう。

 

「そうでしたか。でも、社長だけの責任ではないですよ。私だって、もう少し見てあげれば……と思っていましたから」

「そう思うのか。ありがとう柳原君」

 

 そう言って、彼の肩に手を添える。

 

「ともかくだ。私は篠崎君にもこのことを伝えに支社へと戻るよ」

「そうですか。連絡は早い方にこしたことないですからね」

「ああ」

 

 その言葉を最後に踵を返すと、船橋社長はマイカーへと歩み寄っていった。

 

 

 

 

 

 

 

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